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農林水産省

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(2)農業の復興に向けた取組


(被災農家の営農再開状況)

東日本大震災により、岩手県では7,700経営体、宮城県では7,290経営体、福島県では17,200経営体、青森県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野県を含めた9県では、37,700経営体が被災し、農地の塩害、がれきの流入、農業用施設の損壊、農地の液状化等の被害を受けました(図4-1-5)。

東北3県における農業経営体の営農再開状況をみると、平成26(2014)年2月現在、営農を再開した経営体の割合は7割(23,100経営体)となりました。

このうち、津波の被害を受けた農業経営体の営農再開状況をみると、営農を再開している経営体数の割合は5割(4,840経営体)となりました。

また、営農を再開できない理由として、岩手県や宮城県では「耕地や施設が使用(耕作)できない」、「生活拠点が定まらない」等の回答が多く、福島県ではほとんどが「原発事故の影響」によるものとなっています(*1)。

*1 農林水産省「被災3県における農業経営体の被災・経営再開状況」(平成26(2014)年3月公表)


(津波被害を受けた農業経営体の農業所得は震災前の6割の水準まで回復)

津波被害を受けた農業経営体の経営の回復状況を継続的に把握するため、市町村を通じて協力を得られた経営再開の意志を有する経営体(315経営体)を対象に、震災から数年間、定点調査を実施することとしており、調査対象経営体のうち平成24(2012)年12月末までに267経営体が経営を再開しています(表4-1-3)。

経営を再開した経営体について、震災前(平成22(2010)年)の農業所得を100とした場合、平成23(2011)年の23から平成24(2012)年は59まで回復しました(図4-1-6)。これは、農地の復旧に伴い水稲主体の経営体を中心に収入の回復が進んだことによるものです。

これを県別にみると、農地の復旧により水稲の作付けが可能となった宮城県で、平成23(2011)年の19から平成24(2012)年の61と大きく回復し、被害を受けた樹園地の新植による支出の増大や農地復旧が宮城県ほど進捗していない等の理由から、岩手県では29から34、福島県では43から54となりました。

また、営農類型別にみると、水稲主体の経営体では平成23(2011)年の24から平成24(2012)年では77、露地野菜主体では50から70、施設野菜主体では14から48となりました。これは、水稲主体、露地野菜主体では農地の復旧が進んだことにより作付けが行えるようになったものの、施設野菜主体ではハウス等の施設の復旧が遅れたことによります。



(被災3県における耕地面積等の回復状況)

東日本大震災の被害を受けた地域の中でも東北3県は、全国でも有数の農業地帯です。平成24(2012)年における東北3県の耕地面積は42万5,000haとなっており、被災前の水準(44万100ha、全国の9.6%)には及びませんが、全国の9.3%を占めています(図4-1-7)。

また、平成24(2012)年における東北3県の水稲(子実用)の作付面積は19万1,000haとなっており、被災前の水準(21万400ha、全国の12.9%)には及びませんが、全国の12.1%を占めています。このように、東北3県における復旧が着実に進んでいます。



(農業者への支援)

農林水産省は、被災した農業経営体が、地域農業復旧組合を設立し農地に堆積するごみや礫(れき)の除去等の経営再開に向けた復旧作業を共同で行う取組に対して、経営再開のための支援金を交付し、地域農業の再生と早期の経営再開に取り組んでいます。平成25(2013)年度においては、19市町村、46組合で取組が実施されています(図4-1-8)。また、被災した農業者の経営再開を支援するため、平成23(2011)年度から、被災農家等が借り入れる株式会社日本政策金融公庫等の災害復旧・復興関係資金について、一定期間(最長18年間)実質無利子、実質無担保・無保証人での借入れ(*1)を可能とする措置を講じています。

また、自治体や民間においても、被災中小企業者の早期経営再建を図るための融資制度による補助や地域ブランドの育成、6次産業化に向けた取組に対する支援、契約栽培による農家経営の安定化等の支援が行われています。

*1 担保や保証人を徴求する場合にあっては、融資対象物件担保や同一経営の範囲内の保証人のみ徴求。

図4-1-8 「被災農家経営支援再開事業」の概要


事例:地震・津波からの復旧・復興の取組
(1)津波による壊滅的な被害から震災前と同規模の作付面積まで回復
名取市
「ゆりあげ港朝市」でのカーネーション配布の様子
「ゆりあげ港朝市」でのカーネーション配布の様子

宮城県名取市(なとりし)の小塚原(こづかはら)地区8戸、高柳(たかやなぎ)地区15戸の花き生産農家で構成される名取花卉生産組合は、東日本大震災の津波により、カーネーション栽培施設に甚大な被害が発生し、特に小塚原地区では3分の1の施設が全壊し、全壊を免れた施設にも大量のがれきや土砂が流入しました。

震災当時の組合長であった菅井俊悦(すがいしゅんえつ)さんは、営農再開に当たっては、平成23(2011)年6月から8月にかけて、ほ場を埋め尽くしていたがれきやヘドロを大勢のボランティアの協力により撤去できたことが一番の後押しとなったとのことです。その後、施設の整備や機械の導入、農地の除塩作業を経て、平成24(2012)年には全農家でカーネーションの出荷を再開し、平成25(2013)年度には作付面積が92%(583a)まで回復しました。また、平成25(2013)年5月には地元の「ゆりあげ港朝市」の営業再開に合わせて、これまでの復興支援に対する感謝の気持ちと産地PRを目的として、1千本のカーネーションを来場者に配布しました。

同組合の農家には、若手後継者が育ってきており、今後は、出荷量を震災前の水準まで回復させることを目指すとともに、カーネーション以外の品目の栽培にも取り組みたいと考えています。また、同組合のハウス内には、まだ除塩が不十分で、カーネーションの生育不良が発生する部分があることから、生産の回復に向けて引き続き除塩作業を続けていくこととしています。

(2)東日本大震災を契機に法人を設立
仙台市
細谷専務(左)と 菊地代表理事(右)
細谷専務(左)と
菊地代表理事(右)

宮城県仙台市(せんだいし)の農事組合法人クローバーズファームは、東日本大震災による被災を契機として、平成24(2012)年4月に4戸の農家により設立され、平成25(2013)年春から、水稲、大豆、トマト、葉物野菜、ねぎ等を栽培しています。

同法人が所在する笹屋敷(ささやしき)地域は120戸のうち70戸が農家であり、震災前は兼業農家が中心で、農家の高齢化も進んでいましたが、同法人代表理事の菊地柳秀(きくちりゅうしゅう)さんは、震災後の復興を目指す中で、改めて地域のことを考えると、「大半が兼業農家で高齢化が進んでいる笹屋敷地区で農業を続けていくためには、農地を担い手に集積し、経営の合理化を図ることができる法人組織を作る必要がある」との考えから、法人設立を決意しました。

同法人の営農開始に当たっては、ボランティアによるほ場のごみ拾い、出荷先からの支援による風力発電施設、堆肥舎の建設等の支援がありました。

今後は、直売所や市民農園の開設にも取り組みたいとしているほか、これまで個々の農家が培ってきた栽培技術等を組織として伝承していく仕組みづくりが課題となっています。


(3)みやぎ生活協同組合の被災地の生産者支援
仙台市
仙台はくさいの収穫作業
仙台はくさいの収穫作業

宮城県仙台市(せんだいし)のみやぎ生活協同組合は、昭和45(1970)年から食育活動の一環として、組合員が産地見学や産地での体験を通じて、生産者から「生産の苦労や食べ物の大切さ」、「地域の文化や食材」、「自然との共生」を学び、消費者への普及活動を行っています。東日本大震災後には、被災地の農業や漁業生産の再開への支援活動に取り組んでいます。

同組合は、地域復興を目指すために「食のみやぎ復興ネットワーク」を立ち上げ、加盟団体と一緒に様々なプロジェクトに取り組み、宮城県の生産者と農業を支援しています。具体的には、伝統野菜「仙台はくさい」の復活のほか、仙台はくさいをはじめとした地場野菜を浅漬けとして開発・販売しています。

また、津波に被災した岩沼市(いわぬまし)の農地では、塩害に強いなたね栽培に取り組む生産者を応援する「なたねプロジェクト」を進め、耕作放棄地(*)化を防ぐとともに、収穫されたはちみつやなたねの商品化を通じて生産者を支えているほか、亘理郡(わたりぐん)では、地域の新しい特産品作りを目指してそばの栽培に挑戦する生産者を応援する「わたりのそばプロジェクト」に取り組み、年越しそばの商品化を進めるなど、今後も更なる発展が期待されます。

*「用語の解説」を参照。
(4)被災地の農業リーダーの育成

キリンビール(株)は、平成25(2013)年に、将来にわたる農業の担い手・リーダー育成を支援するため、(公社)日本フィンランソロピー協会の協力の下、「東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」への支援を実施しました。

同プロジェクトは、キリングループが東日本大震災の復興支援活動として、平成23(2011)年7月に立ち上げた「復興応援 キリン絆プロジェクト」の一環として実施するものです。平成25(2013)年4月から平成26(2014)年3月までの期間で、宮城県等を中心に開催する「農業経営者リーダーズネットワーク in 東北」と東京都を中心に開催する「復興プロデューサーカリキュラム in 東京」の2つを開設し、常に相互に連携しながら、新しい地域の農業ビジネスの創出と、被災地の復興、活性化を目指すこととしています。

「農業経営者リーダーズネットワーク in 東北」では、「1,000人の農業者のボトムアップではなく、1人の真の農業経営者を創る」ことを目指し、岩手県、宮城県、福島県の先進的な農業経営者30人に対して、農業経営を行う上で必要なマネジメント項目について、専門家を招へいして知識・ノウハウを学ぶとともに、各自が抱える課題についての討議や「復興プロデューサーカリキュラム in 東京」のメンバーと合同で現地視察や海外視察(オランダとニュージーランド)を実施しました。

「復興プロデューサーカリキュラム in 東京」では、丸の内朝大学の協力の下、「自分の将来の仕事として地域の仕事、農業に関わっていく復興プロデューサーを創る」ことを目指し、経営コンサルタントや公認会計士、インターネット広告業等に携わる56人の受講者が、農業をビジネスと捉え、被災地のニーズを学び、東北の農業経営者と連携して新しい事業を起こしていくための実践的な取組を行いました。

このプロジェクトを通じて、事業のアイディアと多彩な人脈・信頼関係が生み出されており、農業を中核とした地域活性化を牽引する人材の輩出が期待されます。また、平成26(2014)年度も同プロジェクトを引き続き実施することとしており、1期生と2期生との連携や様々な業界とのネットワークを拡大しながら、地域誘客、新規顧客開拓、新商品開発等の課題解決につなげていくことを考えています。

プロジェクト参加者
プロジェクト参加者
 


コラム:「新しい東北」の創造に向けた取組
野菜工場内の育苗の様子
野菜工場内の育苗の様子

東北地方は、東日本大震災の発生以前から人口減少、高齢化、産業の空洞化等の地域が抱える課題が顕著となっていました。このため、震災からの復旧・復興に当たっては、単に以前の状態に復旧するのではなく、震災復興を契機としてこれらの課題を克服し、我が国や世界のモデルとなる「新しい東北」を創造すべく取組を進めています。具体的には、生産者、大学、NPO(*)等、幅広い担い手による先駆的な取組を加速するための「新しい東北」先導モデル事業等を実施しています。

東北地方には地域の農産品や地域固有の豊かな食材を利用した郷土料理等、東北の特色(強み)を持った地域資源が存在します。これらの地域資源が潜在的に有している価値を発掘・認識した上で、その価値の維持・向上を図るとともに、市場に売り込んでいく必要があります。その際、生産者が消費者との相互交流の中で新しい商品価値を共に創造していく「価値共創ビジネス」というビジネスモデルを推進することも重要となります。

平成25(2013)年度「新しい東北」先導モデル事業では、競争力の高い商品の開発や他の産品との差別化に向けた様々な取組を支援しています。例えば、福島県白河市(しらかわし)では、人工光を利用する完全密閉型の植物工場において、無農薬で野菜の栽培を行っています。これらの野菜は安定供給が可能であり、また、無菌に近い環境で栽培しているので洗わずに食べることができます。安定供給や高付加価値をマーケティングに活用し、新たな販路の開拓を目指しています。また、福島県郡山市(こおりやまし)では、地域で代々受け継がれてきた御前人参(ごぜんにんじん)等、地域野菜の栄養素や食味の分析を通してブランド化を促進する取組を行っています。

* [用語の解説]を参照。

東日本大震災は、食品産業にも大きな影響を及ぼしました。被災直後からしばらくの間は、多くの食品工場の製造ラインが停止するとともに、計画停電や資材メーカーの被災により食品の包装資材の供給量が需要量に追いつかず、納豆や牛乳・乳製品等の生産に影響が生じました。また、多くの卸売市場が被災するとともに、ガソリン等の供給不足により食品の流通に支障が生じたほか、東北6県と茨城県では、多くの小売業者、外食・中食産業事業者が被災し、営業停止等の事態を余儀なくされました。

近年、被害を受けた食品事業者の再開も進んでおり、震災後に経営を再開するとともに、新たな挑戦による売上増を狙いアジア各地の海外商談会に参加し、海外に向けた取引を行う等の積極的な事業展開を図る食品事業者も出てきています。



事例:高品質な鶏肉生産を通じて積極的な事業を展開
大船渡市
工場内の作業風景
工場内の作業風景

岩手県大船渡市(おおふなとし)の(株)アマタケは、銘柄鶏の生産から加工、流通、販売まで一貫して行う地域を代表する企業です。同社では、自然由来のこだわりの飼料と防疫管理を徹底した農場で、抗生物質や合成抗菌剤を一切使わずに高品質な鶏肉を生産しています。

同社は、東日本大震災の地震と津波により、本社が水没し、大船渡市に隣接する陸前高田市(りくぜんたかたし)の2工場は全壊と半壊となりました。鶏を飼育している農場は高台にあったため津波の被害はなかったものの、電力と飼料供給が寸断され、飼養していた100万羽が死滅するなど甚大な被害を受けました。しかしながら、社員の努力と鶏肉加工機器メーカーの協力により、震災から僅か4か月後の平成23(2011)年7月に工場を稼働し、出荷を再開させました。

出荷再開後は、風評被害等による販路の縮小や、労働力不足等の困難に直面しましたが、平成26(2014)年3月末現在の売上げは、震災前の7割まで回復しています。

このような中、平成25(2013)年4月に、大手コンビニエンスストアは、各地のご当地食材を使用したおにぎりシリーズの一環として、同社の銘柄鶏を使用したおにぎりを全国の店舗で発売し、同おにぎりシリーズの販売量1位の記録を達成しました。この人気を受け、同社の銘柄鶏を使用した鍋(11月)や弁当(12月)等も発売され、いずれも好評を得ました。

同社は、震災後、鶏から抽出したコラーゲンを活用した化粧品事業に参入したほか、鶏肉の輸出についても、震災前の香港に加えて米国、中国への輸出にも取り組んでおり、今後も積極的に輸出先国、輸出量を拡大していきたいと考えています。



(産学官が連携した先端的技術の大規模実証研究)

東日本大震災の被災地を新たな食料生産地域としてより一層早期に復興させるため、農林水産省は、これまで産学官が開発してきた多くの農林水産分野における先端技術を組み合わせ、被災地域で実証する研究を行うとともに、その普及・実用化を推進しています。

具体的には、先行する「研究・実証地区」に加えて、平成25(2013)年度から、岩手県及び福島県に農業・農村型、宮城県に漁業・漁村型の「研究・実証地区」を拡大し、多様な被災地のニーズを踏まえ、地域固有課題に対応するための様々な分野の実証研究を進めています(図4-1-9)。


図4-1-9 先端的農業技術の大規模実証研究のスキーム

農業・農村分野の研究では、被災地のニーズを踏まえ緊急的に導入すべき技術や被災地の農業の復興を加速するために必要な技術等に関する実証に取り組んでいます。例えば、①被災水田の復興に向けた土地利用型営農技術、②施設園芸の復興に向けた施設園芸高度化技術、③被災地の間伐材等の木質資源を活用した中山間地域に適用性の高い低コスト施設園芸技術、④水耕システムによる周年安定生産を可能とする花き栽培技術等の実証が進められています(図4-1-10)。


図4-1-10 大規模実証事業の例

また、実証研究によって得られた研究成果を速やかに被災地へ普及するため、本事業により設置した開放研究室(オープンラボ)を活用し、様々な研究成果の展示や、パンフレットの配布、被災地の生産者を対象とした技術講習会等を開催し、積極的な情報発信を行っています。

具体的には、従来よりいちご生産団地であった宮城県亘理町(わたりちょう)・山元町(やまもとちょう)において、団地の復旧・復興が進んでいますが、これまでの土耕栽培方式に代わって、実証研究機関が提示した高設ベンチ養液栽培方式(*1)とクラウン部局所加温技術(*2)の組合せを標準モデルとして採用する団地が現れるなど、積極的な情報発信により、実証研究機関の技術を用いた新たな団地形成の動きがあります。

農林水産省は、実証研究を通じて、東日本大震災による被害を受けた地域における農林水産業の復旧を加速化し、単なる復旧にとどめることなく、多様な環境に応じた新しい技術体系の確立を目指し、持続可能な営農のために必要な研究開発等を実施しています。

*1 苗の位置を高くして、立ったままでの管理作業を可能とし、作業負担の軽減を図る方式。また、養液栽培により、肥料成分が容易に調節でき、安定的な生産が可能。
*2 いちごの株元(クラウン)を部分的に加温・冷却することにより、施設全体の温度管理と比べてエネルギーロスを減らし、省エネルギー・安定生産を実現する技術。



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