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農林水産省

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(5)移住・定住の促進と新規就農者の育成に向けた取組


地域農業の担い手の高齢化や後継者不足が進行する中、農業及び関連地域産業の衰退を防ぐため、地方自治体や農協が新規就農者を育成する組織を設立し、意欲ある若者を全国から受け入れ、担い手の確保と移住・定住を促進する取組が行われています。

また、田舎暮らしを希望してUIJターンする都市住民等に空き家をあっせんし、地域社会の活力を取り戻すとともに、これら外部人材の力を活かして観光資源や特産品の開発に取り組む事例が展開されています。


定住促進と食による地域振興の取組
~島根県邑南町~

島根県邑南町(おおなんちょう)は、広島県境に接する中山間地域であり、町の86%が山林で覆われ、高齢化率41.5%で過疎化が進む地域です。過疎化に危機感を持った町は、平成23(2011)年、「邑南町農林商工等連携ビジョン」を策定し、定住プロジェクトとして、攻めの「A級グルメ構想」と守りの「日本一の子育て村」、「徹底した移住者ケア」の取組を開始しました。

「日本一の子育て村」については、プロジェクトに先行し、平成22(2010)年、過疎対策事業債のソフト事業を活用し、保育料無料等の当時としては斬新な戦略を展開し始めました。現在、公立病院の産婦人科・小児科専門医の常勤による24時間365日の救急受付、第2子以降の保育料完全無料化、3世代家族の近居のための住宅建築費の助成等を実施しています。

「徹底した移住者ケア」では、平成22(2010)年9月から定住支援コーディネーターとして常勤職員1人と、平成26(2014)年6月から定住促進支援員として公民館長等の人望が厚く地域に精通している2人を配置しています。現在の定住支援コーディネーターは自身がIターン者であり、移住者に対し、事前の集落との話合いから地域での円滑な生活の開始、移住後の仕事や生活への支援・助言を行っています。これまでに町の支援を通じて移住してきた人全員に目配りし、「住居が見付からない」、「地域のしきたりになじめない」、「相談相手がいなくて孤立している」、「希望する就職先がない」といった移住者の悩みに応え、移住当初に仕事をあっせんするだけでなく、仕事を続けられなかった場合は、異なる仕事をあっせんしています。このような徹底的な移住者のケアによって、離村を防いで定住を確保しています。

A級グルメレストラン「素材香房ajikura」と三上智泰さん
A級グルメレストラン「素材香房
ajikura」と三上智泰さん
素材香房ajikuraの店内
素材香房ajikuraの店内

これらの取組によって、平成24(2012)年の合計特殊出生率は2.65人となり、これまでに150人の移住者を受け入れ、平成25(2013)年の人口動態は、転入による増加が転出による減少を上回り、20人の社会増を実現しました(表1-1)。

また、子育て支援によって出生率を上げても、成人後に都市部へ出て行ってしまう人が多くいることから、人口減少対策として、町にとどまるか、一度出て行っても再び戻ってくるための魅力を備える必要がありました。このため、「邑南町農林商工等連携ビジョン」の柱の一つとして、大消費地への売り込みではなく、地元でしか味わえない特産品や体験を「A級グルメ」として地域ブランド化し、人を呼び込んで関連産業の活性化につなげることとしました。具体的には、平成23(2011)年5月、町観光協会の運営によるイタリアンレストラン「素材香房ajikura」を開店し、町内出身の料理長の三上智泰(みかみ ともひろ)さんを始めとして、ソムリエ、パティシエ等の特殊な技能を持つUIJターン者を誘致しました。

また、地域おこし協力隊(*1)事業を活用し、食材づくりから料理までを一貫して行える人材を「耕すシェフ」と銘打って、A級グルメの担い手を育成しています。この取組によって、地元の人が邑南町の風景や食材のすばらしさを認識し、地域に根ざした農業や食に対して抱く愛着・誇り・自負心を生み出すこととなりました。また、起業者が連鎖的に拡大し、農家のおじいちゃん、おばあちゃんによるレストラン等、6次産業化の取組が広がってきています。地域おこし協力隊事業については、平成26(2014)年9月までに町は21人の隊員を受け入れました。「耕すシェフ」のほか、有機農業や6次産業化を目指す「アグリ女子」等、それぞれに求める役割・技能を明確化し、イメージしやすくネーミングしているため、隊員の存在意義が内外に分かりやすく発信されています。

過疎化への危機感から斬新な子育て支援に取り組み、少しずつ成果も現れつつありますが、今後とも一層、食による地域振興と定住起業支援の取組を進めていくこととしています。


*1 都市住民が生活の拠点を過疎、山村、離島、半島等の地域に移し、地域おこし活動の支援や農林漁業の応援、住民の生活支援等の「地域協力活動」に従事、併せてその定住・定着を図りながら、地域の活性化に貢献する取組で、総務省が支援

空き家を活用した移住の受入促進と地域活性化に向けた取組~特定非営利活動法人院内町活性化協議会(大分県宇佐市)~

大分県宇佐市(うさし)の特定非営利活動法人院内町活性化協議会は、空き家が増加し続ける状況に危機感を抱いていた地域住民により、平成20(2008)年9月に設立されました。「空き家に灯りがともれば街が変わる」という思いで、空き家の持ち主と交渉し借り手を探す活動を始め、県内外から100世帯以上が移住しています。

同法人では、移住者を呼び込むため、移住希望者の相談から空き家の手配、受入れまでを一括して担当するとともに、土・日曜日の現地案内や体験宿泊、移住決定後の近隣挨拶への同行、地域内交流の支援等、民間組織だからこそできるきめ細かな対応を行っています。一方、移住希望者に対しては、住民登録や地域の行事への参加、家屋・山林・田畑の整備をお願いしています。

空き家の賃貸に当たっては、所有者が遠方に居住している場合が多いため、同法人が電話で交渉を行い、空き家の放置による安全面や衛生面での問題があることや貸すことで管理人を置く効果があること、地域の活性化につながることを説明し、理解を得るとともに、家賃は1万円に設定しています。

移住者については、定年退職者が占める割合は全体の2割に満たず、仕事を持っているか、持とうとしている現役世代がほとんどで、資格を活かした福祉施設等への勤務や有機農業への取組、農家の作業補助、工芸品の制作・販売等により生計を立てています。

また、同法人が農事組合法人を設立し、耕作放棄地を整備して、農業を始めたい移住者に耕作してもらうほか、そう菜・菓子の加工所を設けて雇用の場を創出しています。


耕作放棄地の整備
耕作放棄地の整備
移住者と移住予定者がしいたけ狩りで交流
移住者と移住予定者がしいたけ狩りで交流
 

20年近く新規就農支援に取り組み、産地回復・若返りを実現した取組~公益財団法人志布志市農業公社(鹿児島県志布志市)~

鹿児島県志布志市(しぶしし)では、昭和43(1968)年からピーマンの促成栽培に取り組み、昭和47(1972)年には「野菜生産出荷安定法」に基づく指定産地となり、昭和52(1977)年には栽培面積が22.5haまで拡大しました。しかし、燃料費の高騰や高齢化・後継者不足から面積が減少し、平成2(1990)年には7.5haまで落ち込み、指定産地要件の10haを下回ったため、指定解除の危機となりました。このため、後継者育成だけでなく市外・県外から新規就農者を募集することとし、平成8(1996)年、志布志町とJAそお鹿児島の共同出資により財団法人志布志町農業公社が設立されました(市町村合併に伴い、平成19(2007)年に財団法人志布志市農業公社)。

平成26(2014)年度の研修生の皆さん
平成26(2014)年度の研修生の皆さん

これまでの研修事業の積み重ねによって、平成25(2013)年には過去最大の栽培面積を上回る23.4haとなり、全国でも主要な産地となっています(図1-4)。高齢化に悩んでいた同JAピーマン部会の平均年齢は48歳まで若返り、地域に子供たちも増え、地域の活性化を実現しています。平成26(2014)年9月時点で、ピーマン部会87人のうち、新規就農者は60人(69%)、特に、同公社の志布志事業所でピーマンの専門研修を受けた新規就農者は45人(52%)と過半を占めています。

研修では、協調性を育てることを重視しており、特に1年目はビニール張り替えや植付け等の共同作業を多く設定し、社会性の向上を図っています。

 

これまで18年間の研修生は96人で、このうち70人(73%)が就農しています。取組当初は、就農時のハウスの初期投資の準備資金が不足し、就農できない人がいましたが、準備資金を持っているか明確に確認すること等により、平成20(2008)年以降は研修途中の辞退や就農後の離農はありません。研修生の9割以上が非農家出身で、年齢構成は30歳代の43%、40歳代の33%が多く、20歳代や50歳代もいます。出身地別では、県外が74人(77%)、県内が22人(23%)となっています。研修に関わる予算は、おおむね、収穫したピーマンの販売収入で賄っています。

課題としては、栽培面積が拡大することに伴い、かんがい設備が整っているまとまった土地を確保することが徐々に難しくなってきていることが挙げられます。また、研修用ハウスは老朽化しており、新築か修繕が必要となっています。今後も研修事業を継続し、栽培面積を拡大していきたいとしています。


酪農の担い手育成による基幹産業の維持と地域振興の取組
~有限会社別海町酪農研修牧場(北海道別海町)~

北海道別海町(べつかいちょう)は、日本一の生乳生産量を誇り、酪農が基幹産業となっていますが、昭和36(1961)年に2,600戸あった酪農家数は、近年、約700戸まで減少しています。

酪農の近代化が進み、規模拡大を志向する農家が増えつつあるものの、基本は家族経営であり、担い手の高齢化や後継者不足により廃業が進んでいることから、平成8(1996)年、町と町内の3つの農協が出資して酪農研修牧場を設立し、担い手の育成に取り組んでいます。

同牧場では、新規就農希望者からの相談を受け付けるとともに、新規就農フェアへの出展やセミナーへの参加により就農希望者を発掘し、新たに酪農を始めようとする意欲ある若者を全国から受け入れています。

安全な牛乳の生産と担い手の教育・訓練のための研修システムを構築し、3年間の研修期間中に酪農の基本的知識や実践的技術、経営能力を座学と実践牧場で習得させるとともに、研修生は家族がいる若者が中心であることから、臨時職員として採用して給与を支給するほか、研修生宿舎を完備し、牛舎内に保育室を設けるなど、安心して研修を受けるための生活支援を行っています。

また、同町では、町立病院での産婦人科の診療を維持しており、道内における同町の出生率も高く、地域ごとに保育園を設置しているほか、小中学校への通学のためスクールバスを運行するなど、子育てを支援しています。

研修終了後の新規就農時には、営農助成金の交付や農場リース事業等により、関係機関をあげて就農支援を行い、別海町を中心とする地域に毎年3人から5人、これまでに100人以上の新規就農者を送り出しています。就農後も関係機関が連携して営農指導と一体的に支援を行い、新規就農者の定着と地域の振興につなげています(図1-5)。


研修館における座学研修
研修館における座学研修

生乳生産のための実践研修
生乳生産のための実践研修
図1-5 関係機関をあげた新規就農者の支援体制
 

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