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農林水産省

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(2)総合的な食料安全保障の確立に向けた取組 イ 食料安全保障の確立に向けた取組


(特定の国からの輸入が多い我が国の農産物貿易)

平成26(2014)年の農産物の輸入額は6兆3,223億円となっています。主要農産物の国別輸入額をみると、とうもろこし、小麦、大豆については、上位3か国でそれぞれ97.6%、99.2%、97.6%を占めるなど、特定の国への依存度が高くなっています(図1-1-8)。



また、飼料穀物(とうもろこし、こうりゃん等)についても多くを輸入に依存しています。飼料用とうもろこしについてみると、その主な調達先は、米国、ブラジル、アルゼンチン等となっています(図1-1-9)。平成24(2012)年度の米国における高温・乾燥の影響に伴うとうもろこしの生産量の減少により、平成24(2012)年度、平成25(2013)年度は飼料用とうもろこしの調達先の多元化が進行しました。しかしながら、平成26(2014)年度においては、主な調達先のうちブラジル、アルゼンチン、ウクライナの生産量が減少する一方、米国で過去最高の生産量となったこと等から、平成26(2014)年度は米国からの調達が前年度の36.9%から82.3%と回復しています。



輸入先を特定の国に頼ることは、気象変動等により生産量が大きく減少するなどのリスクが大きいため、調達先を確保するなど対処できるようにしておく必要があります。このため、輸送ルートの確保や輸送インフラ整備等に対して海外と連携して取り組むことが重要となっており、平成26(2014)年6月3日の経協インフラ戦略会議(*1)で決定された「インフラシステム輸出戦略(平成26年度改訂版)」においても穀物等の調達の取組の強化や海外農業投資を促進することとされています。平成26(2014)年12月には、我が国と農業開発の協力を進めてきたブラジルと第1回農業・食料対話が開催され、日本の農業・食品関連産業の進出によるフードバリューチェーン(以下「FVC(*2)」という。)の構築や農業食料分野において戦略的なパートナーシップの構築が重要であることが話し合われました。今後は、両国の官民関係者が協力し、FVCの構築や食料を含む輸送インフラの問題等に取り組むため、継続的な対話の場として本対話を原則年1回開催することが合意されました。


*1 我が国企業によるインフラ・システムの海外展開や、エネルギー・鉱物資源の海外権益確保を支援するとともに、我が国の海外経済協力(経協)に関する重要事項を議論し、戦略的かつ効率的な実施を図るための会議
*2 Food Value Chainの略

コラム:外国為替水準の変動と日本農業、食品産業への影響

日本の農業総産出額(*)について、平成12(2000)年以降の数字をみると、8兆円から9兆円の間を推移しています。ところが、ドルに換算した農業総産出額をみると、平成23(2011)年から平成24(2012)年にかけて大きく増加しており、平成25(2013)年には減少しています。これは外国為替水準の変動によるもので、見方を変えると日本農業の違う側面が見えてきます。また、こうした外国為替水準の変動は、日本農業や食品産業等へ影響を及ぼしています。

円高方向に動くと輸入資材は安くなるため、輸入依存度の高い飼料費や燃料費等が減少することになり、日本の農業生産にとって有利になります。それと同時に、輸入農産物等も安くなることから、消費者の購買力は上昇します。また、食品産業を含む日本企業は海外投資がしやすくなります。しかし、日本産の農産物を輸出しようとすると、国際市場での価格は高くなることから競争力は低下します。

一方、円安方向に動くと輸入資材が高くなるため、日本の農業生産にとって不利に働きます。それと同時に、輸入農産物等も高くなることから、消費者の購買力は低下します。また、原材料を輸入に頼る食品産業は、輸入価格の上昇分を製品価格に転嫁せざるを得なくなります。しかし、日本産の農産物を輸出しようという動きには追い風となり、国際市場での価格は安くなることから競争力は上昇します。また、海外からの訪日客の増加が見込まれ、国内での旺盛な消費が期待できます。

いずれにせよ、円高方向・円安方向への推移を問わず、どのような状況になっても、外国為替水準の変動等に耐えられるだけの頑強な日本農業、食品産業をつくっていくことが重要です。


*[用語の解説]を参照

(農業生産資材の安定供給の確保)

肥料は、農業生産に不可欠な生産資材であり、安定調達は重要な課題です。

我が国は化学肥料原料(窒素、りん酸、加里)のほぼ全てを輸入しており、その調達先は特定の国に依存している状況にあります(図1-1-10)。このため、土壌診断(*1)に基づき肥料を過剰に使用せず適正量で使用する取組、国内の未利用又は低利用資源を肥料に有効利用する取組を推進しています。

また、野菜、果樹及び花き等の施設園芸で欠かすことのできない生産資材として、A重油があります。施設園芸では、経営費に占める光熱動力費の割合が高く、土地利用型作物と比べて燃油価格高騰の影響を受けやすくなっています。平成25(2013)年のA重油の価格指数は、平成22(2010)年に比べ30ポイント上昇しています(図1-1-11)。このため、燃油価格高騰の影響を受けにくい経営構造へ転換を進めるため、燃油消費量の削減効果が高いヒートポンプ(*2)等省エネ設備のリース導入やセーフティネット構築(*3)に対する支援を行っています。


*1 [用語の解説]を参照
*2 電気等のエネルギーで、外気等の低温熱エネルギーを高温熱エネルギーに変換し加温する設備
*3 A重油価格の高騰時に、生産者と国により造成された資金により、生産者に対して交付金を交付

(食料等の備蓄の取組)

我が国は、国内の生産量の減少や海外における不測の事態の発生による供給途絶等に備えるため、食料等の備蓄を行っています。

米については、国内の生産量の減少により供給が不足する事態に備え、毎年6月末時点での在庫量100万t程度を適正備蓄水準(*1)として、必要な数量の備蓄を行っています。

食糧用小麦については、海外からの輸入が途絶した場合に備え、実需者において外国産食糧用小麦の需要量の2.3か月分(うち1.8か月分は国による助成)の備蓄を行っています。

飼料穀物については、飼料穀物の需給が逼迫(ひっぱく)し、畜産農家に対する配合飼料の安定的供給が困難となった場合に備え、過去の放出実績等を踏まえて国で60万tの備蓄を行っているほか、民間においても65万tの備蓄を行っています。

また、各家庭においても、大規模な災害や新型インフルエンザ等の発生に備え、平素からふだん使いの食料品を買い置きするなど、緊急時に備えた食料品の備蓄を行うことが重要です。


*1 10年に1度の不作や通常程度の不作が2年連続した事態にも国産米をもって対処し得る水準

(食品のサプライチェーンの機能維持)

食品産業事業者等においては、東日本大震災等の発生により、緊急時における食品のサプライチェーン機能維持の重要性が再認識されました。また、依然として新型インフルエンザ等の発生による食品のサプライチェーンの寸断が懸念されるところです。このため、食品産業事業者等は、事業継続計画(BCP(*1))の策定や食品産業事業者間の連携等に係る取組を強化することが求められます。農林水産省では、地域レベルでの緊急時に備えた食料の安定供給の確保に資する取組の定着・強化を図るため、食品産業事業者等のBCPや事業者間の連携に関する取決め、その他、緊急時に備えた食料の安定供給に対する取組に係る優良事例を取りまとめ、周知・普及や食品産業事業者間の連携・協力体制構築の取組を行っています。


*1 Business Continuity Plan の略。企業が被災しても重要事業を中断させず、中断しても可能な限り短期間で再開させ、中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下等から企業を守るための経営戦略のこと

(世界の栄養不足人口は減少傾向)

国連食糧農業機関(FAO(*1))、国際農業開発基金(IFAD(*2))及び国連世界食糧計画(WFP(*3))が共同で発表した「世界の食料不安の現状2014」によると、2012/14年(*4)において、世界人口の11%(8億500万人)、開発途上地域人口の14%(7億9千万人)が慢性的な栄養不足(*5)に苦しんでいることが報告されています(図1-1-12)。

同報告書において、平成12(2000)年の国連ミレニアム・サミットで合意されたミレニアム開発目標(MDGs(*6))に掲げられている「平成27(2015)年までに飢餓に苦しむ人口の割合を平成2(1990)年比で半減させる」ことについて、「同目標は達成が可能な範囲にありますが、特に進捗が思わしくない国々については相当の努力が即座に必要であり、特にサブサハラアフリカ地域(*7)や西・南アジアでは進捗が十分でなく達成困難」とされています。


*1 Food and Agriculture Organization of the United Nationsの略
*2 International Fund for Agricultural Developmentの略
*3 World Food Programmeの略
*4 2つの年次を「/」で接続したものは、その期間を示す。
*5 十分な食料を摂ることができない状況が最低1年間続く状態で、食事エネルギー必要量を満たすには不十分な食料摂取の水準
*6 Millennium Development Goalsの略
*7 サハラ砂漠より南に位置する国・地域

(農林水産分野における国際協力と新たな取組)

我が国は、開発途上国におけるFVCの構築支援、飢餓・貧困対策への貢献、気候変動や越境性感染症等の地球的規模の課題に対する適切な対応を重点分野として、開発途上国における農業等に関する基礎調査や技術開発・人材育成、農林水産分野の国際機関への拠出等を通じた国際協力を進めています。具体的な取組の事例として、アフリカにおける人口増加や生活様式の変化に伴う米の需要増加による恒常的な食料不足に対処するため、稲作等を通じたアフリカの食料安全保障復興支援・技術実証普及事業による支援を行っています。西アフリカで農民参加により200ha程度の生産基盤を復旧し、1ha当たり4t以上の単収を複数年得られる技術を4か国(*1)で実証するとともに、その成果を農民向けの研修により普及することを目指しています。

また、新たな取組として、グローバル・フードバリューチェーン戦略(*2)に基づき、ベトナム、ミャンマー及びブラジルにおいて、官民が連携し、日本の食品産業等の海外展開と経済協力の戦略的活用によるFVCの構築を推進するため、二国間政策対話を開催しました。

平成27(2015)年2月には、「政府開発援助(ODA)大綱」の見直しにより「開発協力大綱」が閣議決定され、「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅のため「FVCの構築を含む農林水産業の育成」等に必要な支援を行うことや、地球規模課題への取組を通じた持続可能で強靱な国際社会の構築のため「食料安全保障及び栄養」の確保等に取り組むこと等が明記されました。


*1 リベリア、シエラレオネ、トーゴ、ベナン


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