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農林水産省

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第5節 食品産業の動向


人口の減少や高齢化の進行により国内需要が減少する中、食品産業は、介護食品等の需要の増加といった新たな国内需要や、開発途上国の経済成長等により拡大が見込まれる海外需要を取り込んでいくことが重要となっています。また、食品廃棄物や食料品アクセスに関する課題といった、食をめぐる様々な情勢の変化がみられます。以下では、食品産業の役割と動向、食品リサイクルと食品ロスの削減、新しい介護食品(スマイルケア食)の開発・普及、海外展開の取組等について記述します。


(食品産業の国内生産額は減少傾向で推移)

食品産業は、農林水産業とともに食料の安定供給や国民の豊かな食生活の実現に重要な役割を担うとともに、地域経済の担い手としても重要な役割を担っています。我が国における食品産業の国内生産額の推移をみると、食料品価格の低下や少子化等を背景に、1990年代後半から減少傾向にあり、平成24(2012)年度は79兆円となっています。これは全産業(911兆円)の9%を占めています(図1-5-1)。



(食品製造業は地域経済を支える重要な役割)

食品製造業は、農林水産物を加工して多種多様な食料品を製造し、消費者に安定供給するとともに、国産農林水産物の大きな需要先として重要な役割を果たしています。

特に、北海道、宮崎県、鹿児島県においては、製造業全体に占める食品製造業出荷額等の割合が3割から4割を占め、また、従業者数においても3割から5割を占めており、地域経済を支える重要な役割を果たしています(図1-5-2)。



コラム:冷凍食品の歴史と冷凍技術

日本初の冷凍食品の誕生は、昭和5(1930)年まで遡ります。日本で初めて市販された冷凍食品は「イチゴシャーベー」というイチゴを冷凍した商品でした。その後、昭和32(1957)年に南極観測隊の食事として冷凍食品が採用され、1960年代には東京オリンピック選手村食堂で利用されたことによって注目が高まったこと等を背景に、コロッケ、ハンバーグ、シュウマイ等、現在も定番となっている調理冷凍食品が市場に定着し、冷凍食品は成長期を迎えます。昭和45(1970)年には大阪万博での利用を契機に外食産業への展開が進み、平成2(1990)年には100万tを超える生産量となりました。平成11(1999)年には150万tを超え、成熟期とも言える時代に突入しました。近年では、冷凍食品を加熱せずに弁当に入れ、食事の時には自然解凍されて食べ頃になるものや、加熱しても半熟感が保たれる冷凍卵加工品等が登場しています。

このように、冷凍食品は幅広い種類があり、その利用場面も様々です。そのため、製造工程はその商品の特性に合わせて最適なものになっており、一律の製造工程というものはありません。しかし、どの商品にも、急速凍結という工程が存在します。

食品を冷凍するということは、食品中に含まれる水分が凍結することですが、一般的には-1℃から-5℃付近で時間をかけて凍結させると大きな結晶になるという性質があります。食品中の水分が凍結する際に結晶が大きくなると、食品の細胞を破壊してしまい、栄養成分や旨味成分が流出するほか、食感の悪化等の問題が生じます。このため、冷凍食品を製造する際は、急速凍結という工程において、一般的な冷凍食品の管理温度である-18℃よりも大幅に低い温度での凍結装置を使用し、短時間で凍結させています。

このような冷凍技術の開発により、離島等の流通条件が不利な地域から消費地へ、水揚げされた魚をより高い鮮度を保持したまま提供することが可能となっています。

1 冷凍前の細胞 2 急速凍結した細胞 3 緩慢凍結した細胞
 

(食品流通業の動向)

食品流通業は、良質な食品を安定的かつ効率的に供給するとともに、多様化する消費者ニーズを生産者や食品製造業者へ伝達する重要な役割を担っています。

食品流通業のうち食品卸売業の商業販売額をみると、食料・飲料卸売業については、近年は飲食料品小売業の販売額増加、業務用食材の需要増加等により増加傾向となっています。一方、農畜産物・水産物卸売業は平成2(1990)年以降、販売数量の減少等により、減少傾向で推移しています(図1-5-3)。

卸売市場については、青果物の6割(国産青果物では9割)が卸売市場を経由して流通するなど、生鮮食料品等の基幹的な流通インフラとして、効率的で継続的な集荷・分荷や公正な価格形成等の重要な役割を果たしています(*1)。

一方、卸売市場を取り巻く環境が大きく変化する中、コールドチェーン(*2)システムの確立を始めとした生産者及び実需者のニーズへの的確な対応、卸売市場間の機能・役割分担の明確化による効率的な流通の確保等の課題が挙げられています。

このため、農林水産省では、有識者から成る検討会で今後の施策や関係者の取組の方向性を議論するなど、卸売市場の整備・運営の基本となる方針の見直しを進めています。

また、青果物の流通については、燃油価格の高騰、トラックドライバーの不足等により、遠隔産地からの物流の効率化が喫緊の課題となっています。このような中、農林水産省では、物流事業者等を交えた研究会において、青果物流通の現状や課題の共有を行いました。

食品流通業のうち飲食料品小売業全体の販売額をみると、近年は増加傾向となっています(図1-5-4)。また、業態別に食料品販売額の推移をみると、スーパーマーケット、コンビニエンスストアが増加傾向にある一方、百貨店は緩やかに減少しています。


*1 農林水産省「食料需給表」、「青果物卸売市場調査報告」等を基に農林水産省で推計。卸売市場経由率は、国内で流通した加工品を含む国産及び輸入青果物、水産物、食肉、花きのうち、卸売市場(水産物についてはいわゆる産地市場の取扱量を除く。)を経由したものの数量割合(花きについては金額割合)の推計値
*2 [用語の解説]を参照

(中食・外食産業の動向)


外食産業は、消費者の多様な食志向に対応した食事、快適な時間や空間を家庭の外で提供することにより、豊かな食生活の実現に大きな役割を担っています。

平成25(2013)年の外食産業の市場規模は24兆円と推計されており、平成23(2011)年以降増加傾向で推移しています(図1-5-5)。

また、持ち帰り弁当店やそう菜店、テイクアウト主体のファストフード店等の中食(*1)産業の市場規模は6兆円と推計されており、食の簡便化志向や世帯構造の変化等を要因に緩やかな増加傾向で推移しています。


*1 [用語の解説]を参照

(食品リサイクルと食品ロス削減の取組)

環境と資源の制約の下、農林漁業や食品産業の持続的発展を達成するためには、生産・流通・消費のフードチェーン全体における食品廃棄物等の削減と再生利用の取組が重要です。

このような中、食品リサイクル法(*1)に基づく食品廃棄物等の発生抑制及び再生利用の促進により、食品産業全体における食品廃棄物等の年間総発生量が年々減少するとともに、再生利用等実施率は上昇傾向にあります(*2)。

しかしながら、業種別の再生利用等実施率をみると、食品小売業や外食産業等川下に至るほど分別が難しいなどの理由により低迷しています。

食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSSPROJECT)のロゴマーク「ろすのん」
食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS
PROJECT)のロゴマーク「ろすのん」

このため、飼料化・肥料化が困難な場合には多少分別が粗くても対応可能なメタン化の取組等により川下のリサイクルを推進しているほか、発生抑制の目標値を設定し、事業者による発生抑制の取組を推進しています。

また、我が国で年間1,700万t発生する食品廃棄物の中には、まだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」が500~800万t含まれると推計されています(*3)。

このような中、農林水産省の支援の下で発足した食品関連事業者等で構成される「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」において、個別企業等の取組では解決が難しく、フードチェーン全体で解決していくことが必要な過剰在庫や返品等によって発生する食品ロスの削減に向けた検討が行われています。平成26(2014)年度のワーキングチームの取りまとめにおいては、企業における加工食品の納品期限の見直しの拡大、賞味期限の延長及び年月表示化の進展が成果として紹介されるとともに、パン、豆腐等日配品のロスの実態等が整理されています(表1-5-1)。

また、農林水産省及び関係府省庁の連携により、フードチェーンの各段階における食品ロス削減の取組を支援し、生活者一人一人の意識や行動の改革に向けて、官民を挙げた食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を展開しています。


*1 正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」
*2 農林水産省調べ
*3 農林水産省「平成21年度食品ロス統計調査」等を基に農林水産省で推計

表1-5-1 食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチームの平成26(2014)年度における主な成果

(介護食品(スマイルケア食)の開発・普及の取組)

我が国の65歳以上の高齢者人口は、平成15(2003)年度の2,431万人から平成25(2013)年度の3,190万人へと約1.3倍に増加しており、4人に1人が65歳以上の高齢者となっています。また、高齢単身世帯が増加する中、国立長寿医療研究センターが行った調査によると、在宅療養患者である高齢者の7割が栄養状態に問題を抱えています(*1)。

このような中、介護食品のニーズは、要介護者数等から約2兆8千億円(*2)と試算されているものの、平成24(2012)年の介護食品の市場規模は約1千億円(*3)にとどまっており、介護食品の存在や、おいしさ、使いやすさ等について認知度の向上が課題となっています。

このため、農林水産省では、これまで「介護食品」と呼ばれてきたものの範囲を、かむことや飲み込むことが難しい人々の食品だけでなく、低栄養(*4)の予防につながる食品、日々の生活をより快適にする食品という広い領域として捉え、「新しい介護食品」として整理し、普及させていくための検討を進めてきました。

平成26(2014)年11月には、それまでの検討内容を受け、「新しい介護食品」が高齢者だけでなく、障害のある子供から高齢者まで幅広い人々に利用してもらえるよう、公募により愛称を「スマイルケア食」に決定しました。また、それぞれの人の状態にあった商品を選ぶための「新しい介護食品(スマイルケア食)の選び方」を策定しました(図1-5-6)。


*1 国立長寿医療研究センター「平成24年度老人保健健康増進等事業 在宅療養患者の摂取状況・栄養状態の把握に関する調査研究報告書」(平成25(2013)年3月公表)
*2 介護保険施設における介護保険制度上の1日当たりの食費基準額1,380円×365日×要介護者数561万人(平成24(2012)年4月現在)として農林水産省で試算
*3 株式会社富士経済「高齢者向け食品市場の将来展望2013」
*4 きちんと食事をとらないためにエネルギーやたんぱく質等が不足してしまい、体重の減少、食欲減退、だるい、歩けなくなるといった症状が起きてくる状態

図1-5-6 新しい介護食品(スマイルケア食)の選び方

また、平成27(2015)年3月に、食品関連事業者がスマイルケア食をどのように提供していけば良いかを示すガイドラインを公表するとともに、かむこと・飲み込むことに問題を抱えた高齢者等が豊かな生活を送るために食品関連事業者、医療・歯科医療・介護等の専門職が取り組むべき課題を中間整理として取りまとめました。


(食料品アクセス問題への対応)

近年、飲食料品店の減少、大型商業施設の郊外化等が進行した結果、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる消費者が増加しており、食料品アクセス問題として社会的課題となっています。

このような中、これまでのすう勢が継続した場合、平成37(2025)年までに、食料品販売店舗へのアクセスに困難が想定される高齢者の人口(*1)は、生鮮食料品販売店で56.4%増加すると推計されています。また、多様な商品を取り扱う食料品スーパー等へのアクセスでは、26.4%増加すると推計されています(図1-5-7)。これらの人口増加の大部分は人口集中地区(DID(*2))におけるものであり、特に生鮮食料品販売店舗までのアクセスの場合は、DIDで9割増加しています。

食料品アクセス問題は、食品流通、商店街、地域交通、介護・福祉、地域振興等、様々な事業・分野が関係する問題であり、国の関係府省庁、地方公共団体の関係部局が横断的に連携し、民間企業やNPO(*3)、地域住民等の多様な関係者と連携・協力しながら継続的に取り組んでいくことが重要です。

このため、農林水産省では、食料品アクセス問題の解決に向け、多様な関係者が一体となって継続的な取組を行える仕組みづくりを支援するとともに、ホームページにおいて、全国の取組事例や支援施策等、食料品アクセス問題の解決に取り組もうとする者に向けた総合的な情報発信を行っています。


*1 生鮮食料品販売店舗や食料品スーパー等の食料品販売店舗まで500m以上で自動車のない65歳以上の高齢者
*2、3 [用語の解説]を参照

事例:地元スーパーマーケットと連携した移動販売の全国展開

滋賀県東近江市
住友達也さん
住友達也さん
移動販売の様子
移動販売の様子

徳島県徳島市(とくしまし)の株式会社とくし丸は、商品を供給する地元スーパーマーケットや、個人事業主として移動販売を行う販売パートナーと連携し、軽トラックで高齢者の自宅前等まで訪問する移動販売を行っています。

同社代表の住友達也(すみとも たつや)さんは、80歳を超える母親が買物のために車を運転する姿を見て大変そうだと思ったことや、車を持たない近隣の高齢者と買物に行った際、「買える時に買っておかないと」という不安感から手当たり次第に買物をする姿等を見て、地域の高齢者が買物に困っている現状を知り、平成24(2012)年から徳島県内において取組を開始しました。

販売パートナーは、同社からレジ打ち研修等の運営に係るノウハウの提供等によるサポートを受けつつ、地元スーパーマーケットから提供された300品目から400品目の食品や日用品を移動販売車に積載し、週に2回の移動販売を行っています。商品の購入者に、一商品当たりの店頭販売価格に10円上乗せで支払ってもらうことで、採算が合う、持続可能なビジネスモデルを実現しています。また、移動販売の際に単身高齢者等の異変に気づいた場合には、地域包括支援センター等への連絡も行っており、地域における安全・安心にも貢献しています。

同社では、このような取組の全国展開を目指し、県外における食品スーパーマーケットとの連携も進めています。

 
事業の基本的仕組み
 

(食品産業等の海外展開の取組)

日本の食品産業等が成長していくためには、海外展開や輸出の拡大を積極的に推進していくことが重要です。そのため、産学官連携で日本の「強み」を活かした生産から製造・加工、流通、消費に至るフードバリューチェーン(以下「FVC(*1)」という。)の構築を推進し、開発途上国等における食のインフラ整備、日本食の輸出環境の整備、経済協力との連携による開発途上国の経済成長を実現していくことが重要となっています。

このような状況を踏まえ、農林水産省は、平成26(2014)年6月、学識経験者、民間企業、関係省庁等との検討を進め、世界的なFVCの構築のための基本戦略や地域別戦略等を示した「グローバル・フードバリューチェーン戦略」を策定しました。また、同戦略を指針として日本の食品産業等の海外展開等によるFVC構築について協議する官民の協議会を開催し、意見交換等を進めています。このほか、同戦略に基づき、開発途上国等を中心に二国間政策対話を開催しました。


*1 Food Value Chainの略

(取引における食品安全管理等に関する国際標準化の動き)

食品産業等の生産・製造・流通のグローバル化が一段と進展し、世界的なHACCP(危害分析・重要管理点)(*1)の義務化の流れや、食品の安全や消費者の信頼を確保するための取組を世界の食品産業等で統一的に管理する動きが強まっており、取引先に国際的な食品安全管理に関する規格であるFSSC22000(*2)等のGFSI(*3)承認規格の認証を求める動きも増加しています。

一方、我が国の食品産業等では、HACCPの導入率が伸び悩んでおり、今後、HACCPに基づく自主的な衛生管理等の普及を図るとともに、海外からその取組が評価される環境を整え、競争力を確保するため、国際的に通用する規格の策定と国際規格化を官民連携で進めていくことが重要となっています。

このような状況を踏まえ、平成27(2015)年1月、食品事業者と農林水産省は、共同で「食品安全マネジメント等推進に向けた準備委員会」を立ち上げました。同委員会において、食品関連事業者が食品の品質管理や消費者対応等の強化に取り組む「フード・コミュニケーション・プロジェクト(FCP)」での議論も踏まえつつ、規格・認証スキームの構築、人材育成対策、情報発信の具体化が進められています。


*1 [用語の解説]を参照
*2 オランダにある非営利団体FFSC財団(Foundation for Food Safety Certification)が所有する加工食品の食品安全規格及び認証スキーム。平成22(2010)年にGFSIの承認を取得
*3 Global Food Safety Initiativeの略。平成12(2000)年に、グローバルに展開する小売業者・食品製造業者が集まり、食品安全の向上と消費者の信頼強化に向け発足した団体。食品安全リスクの低減とコストの最適化を目指し、多数ある食品安全認証スキームの標準化や食品企業の能力向上等の取組を行っている。The Consumer Goods Forum(TCGF:世界70か国、約400社のメーカー、小売業者、サービス・プロバイダーによる国際的な組織)の下部組織


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