(2)環境保全に配慮した農業の推進
(環境保全型農業の取組の推進)
環境保全に向けた農業分野の取組としては、化学肥料や化学合成農薬の使用量を地域の慣行レベルに比べて低減する栽培のほか、病害虫の発生予察情報等に基づき天敵の利用や農薬散布等を組み合わせて防除を実施する総合的病害虫・雑草管理(IPM(*1))や有機農業等、様々な考え方や手法があります。
農林水産省では、平成11(1999)年から持続性の高い農業生産方式を導入している農業者であるエコファーマー(*2)の普及推進を図っていますが、エコファーマーの認定件数は減少傾向にあり、平成27(2015)年3月末現在で16万6,373件(*3)となっています。認定件数が減少している背景としては、5年間の計画期間が終了した農業者が高齢化等を背景に再認定申請を行わないことや、エコファーマーに対する消費者の認知度の低さ、商品の販売価格として評価されないこと等が考えられます。一方で、平成26(2014)年度に新規に認定を受けた者は6,195件となっています。
環境保全型農業の拡大に向けては、消費者の視点に立った分かりやすい情報提供や、有機農産物や有機加工食品等の需要拡大が見込まれる分野への国産農産物の利用促進等、消費者の理解増進やビジネス展開の促進に向けた取組が課題となっています。
また、近年、連作等の影響による土壌の酸性化や、堆肥の施用量が減ったことに伴う土壌中の有機物の減少の影響による収量の低下等、土壌の性質に由来する農地の生産力である「地力」の低下が顕在化しています。このため、農林水産省では堆肥等の有機物の投入や土壌改良資材の施用による地力強化対策を支援しています。
コラム:国際土壌年

国際土壌年
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国連によると、土壌は、農業開発、生態系の基本的な機能、食料安全保障の基盤であることから、地球上の生命を維持する要であるとされています。このような土壌の重要性への認識を高めるため、国連により、平成27(2015)年は国際土壌年とされ、毎年12月5日は世界土壌デーと定められています。世界各地で土壌に関するイベントが開催され、国内においても土壌に関する展示会やシンポジウムが開催されました。
国連食糧農業機関(FAO)は、世界の土壌の33%が浸食や塩類集積、養分の欠乏等により劣化していると推定しています。また、環境により異なりますが、2cmから3cmの土壌を作るためには千年の時間が必要であるとしています。
今後、人口増加に伴って世界の食料需要が増加していく中、限りある土壌資源に対する認識を高め、持続的に管理することが不可欠です。農業生産においては、土壌の性質が作物の収量や品質を大きく左右します。我が国でも、農地の生産力の低下が顕在化しており、農地の持続的な活用に向けた対策が求められています。
(有機農業の推進)
有機農業とは、化学肥料や農薬を使用しないこと及び遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法です。農林水産省では、「有機農業の推進に関する法律」に基づき、平成26(2014)年に新たな「有機農業の推進に関する基本的な方針」を定め、有機農業の推進に取り組んでいます。JAS法(*1)に基づき定められた、有機農産物の表示のルール・生産方法を満たしているものについては、有機農産物のJAS認定を受けることができます。有機JAS認定ほ場(*2)の面積の増加は緩やかであり、平成27(2015)年は1万haとなりました(図2-5-3)。
有機JAS認定を取得するためには、ほ場管理や栽培の記録等が必要であり、その事務的な負担が大きいという課題がありました。このため、農林水産省では、有機JAS認定に必要な記録類を簡易に作成できるソフトウェアを作成し、ホームページに公表しました。また、有機農業者の参入・定着を促すための研修受入農家の拡大や、有機農産物の流通拡大のためのマッチングフェアの開催、産地育成に向けた栽培実証や技術講習会の実施等を進めています。
欧米では、有機食品の市場規模が大きく、我が国の有機食品の輸出が伸びています。これまで、EU、米国、スイス、コロンビア、カナダの有機制度と我が国の有機制度との同等性が承認され、国内の有機JAS認定を受ければ「有機」の名称を表示してこれらの国へ輸出することができます。同等性の仕組みを利用したEUへの輸出数量(*3)は、開始初年度の平成22(2010)年は27tであったのに対し、5年目の平成26(2014)年には約10倍の293tとなっています。輸出促進の観点から、引き続き、同等性の相互認証を推進していくことが重要です。
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