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農林水産省

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(1)熊本地震


(東日本大震災級の震度7を観測した熊本地震)

熊本地震は、平成28(2016)年4月14日以降、震度7が2回、震度6強が2回、震度6弱が3回、震度1以上の地震は4,284回発生(*1)しました(図表4-1-1)。

*1 平成29(2017)年3月31日時点

図表4-1-1 熊本地震の震度・震源

震度7を観測した地震は東日本大震災以来であり、この地震による熊本県内での死者は224人に達し、避難者は最大で18万3,882人(*2)となりました(図表4-1-2)。また、熊本県を中心に大分県にかけて、家屋の損壊や交通インフラ、ライフライン等へ甚大な被害をもたらしました。

*2 熊本県、平成28(2016)年4月17日時点

図表4-1-2 平成における震度7以上を観測した地震(平成29(2017)年3月31日時点)

熊本県を始めとする九州各県の農林水産被害は1,657億円となっており、このうち農業関係では、農作物等が515億円、農地・農業用施設関係が713億円となっています(図表4-1-3)。

(災害対策本部の設置)

熊本地震の発生を受け、平成28(2016)年4月14日、政府は内閣府に非常災害対策本部を設置し、翌15日には熊本県に政府現地対策本部を設置しました。

農林水産省においても、4月15日に、農林水産大臣を本部長とする農林水産省緊急自然災害対策本部を設置しました。

政府は、4月26日に、熊本地震を激甚災害として指定しました。この激甚災害の指定により、農業関係では、全国を対象に、農地、農業用施設、共同利用施設の災害復旧事業について、被災農業者等の負担軽減を図りました。

(初めて行われたプッシュ型による食料支援)

支援物資を被災地へ

支援物資を被災地へ

政府は、平成28(2016)年4月17日から22日までの間、被災地方自治体からの要請を待たずに支援物資を送るプッシュ型支援(*1)、4月23日から5月13日までの間はプル型支援(*2)により、直ちに食べられる物の供給を基本とした支援を行いました。プル型の食料支援に当たっては、タブレット端末等を活用し、被災地のニーズに応じた支援を行いました。

具体的には、4月17日から19日までの3日間は、主食となるおにぎり、パック御飯、パン、カップ麺等、4月20日から22日までの3日間は精米、保存用パン等のほか、おかずとなる缶詰やレトルト食品、子供・高齢者向けの食品等、バリエーションを増やすための食料供給支援を行いました。

4月23日から25日までの3日間は、これらに加えて清涼飲料水等も供給しました。26日以降は、大型連休中に多くの工場が休止すること等を踏まえ、食料供給が滞ることがないよう、パック御飯、レトルト食品等の保存性の高い食品を中心に被災者のニーズに合わせて必要な食品をまとめて提供しました。その結果、政府の食料供給支援は合計約278万食となりました(図表4-1-4)。なお、5月14日からは熊本県が主体となった物資供給が開始されました。

*1 国が被災都道府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送すること。これは、発災当初は、被災地方自治体において正確な情報把握に時間を要する、民間供給能力が低下する等の東日本大震災の経験を踏まえて、熊本地震で初めて本格的に実施

*2 被災都道府県ができる限り早期に具体的な物資の必要量を把握し、国に物資支援を要請する仕組み

図表4-1-4 主な供給品目リスト

(農林水産省職員を現地に派遣)

農林水産省では、食料供給・物流の円滑化や農地・農業用施設の早期復旧を図るため職員の現地派遣を行いました。

具体的には、物資調達・配達支援担当の責任者として、食料産業局長を九州農政局に派遣するとともに、九州農政局から国の出先機関支援チームに延べ447人の職員を派遣し、現場ニーズの把握や物資の確実な提供の実現に向けた取組を実施しました。また、農林水産省本省幹部職員を九州農政局に派遣し、生産現場の営農再開を支援しました。

さらに、農林水産省本省から災害査定官を熊本県や被災市町村に派遣し、早期の災害復旧に向けた復旧計画の策定、復旧工法の検討の指導を行うとともに、全国から延べ120人の農業土木技術職員を熊本県の10市町村に派遣し、農地・農業用施設の災害査定の指導や査定設計書作成に必要な業務支援を行いました(図表4-1-5)。

図表4-1-5 農業土木技術職員の派遣先・活動状況

(民間による食料供給やボランティア等の支援)

被災地に対しては、農林水産省からの要請に基づく食品製造事業者等からの食料供給支援に加え、県内外の一般企業や生活協同組合、農業協同組合等の各団体からも、食料供給、人材派遣等の支援が行われました。

また、熊本地震発生後、復旧・復興に向けた全国各地からのボランティアによる、農作業を含めた支援活動が数多く行われました。熊本県、大分県では、各市町村に設置された社会福祉協議会が運営するボランティアセンターを通して、ボランティアの募集が行われました。

全国のNGO・NPO(*1)による支援活動も行われました。平成28(2016)年4月30日には、熊本県、大分県で活動しているNGO・NPO等により、熊本地震・支援団体火の国会議が立ち上がり、地方公共団体や支援活動組織等と連携しながら、各種情報の共有や、ボランティア活動のマッチング等の活動が行われました。

*1 用語の解説3(2)を参照

(水田の損壊等の被害が発生)

熊本県内の水田では、農地の亀裂や陥没が発生するとともに、水路の破損による断水が発生しました。熊本県における田植の適期は5月中旬から6月下旬までであり、水稲の作付けを予定していた水田を早期に復旧させる一方、水稲の作付けが困難な水田においては、大豆や飼料作物等への転換により、営農を再開する環境を整えることが急務となりました。

農地・農業用施設では、熊本県内において、水田7,674か所が損壊しましたが、稲の作付けに向けて査定前着工(*1)制度を活用した応急工事等を実施しました。また、熊本県内で変状の発生した13か所のため池で、安全上の観点から一定の水位まで低下させるとともに、ブルーシートによる保護等を実施しました。

*1 早期の災害復旧を図るため、災害査定を待たずに応急工事に着手することができる制度

大きな段差が発生した農道

大きな段差が発生した農道

ひび割れたため池の堤体

ひび割れたため池の堤体

(園芸作物の落果や枯死等の被害が発生)

園芸作物では、メロン、トマトで落果、いちご、レタス、すいか等で枯死、カーネーション、胡蝶蘭(こちょうらん)等の鉢物で落下の被害が発生しました。かんきつ園地では、法面(のりめん)を支える石垣が崩落する被害が発生しました。また、茶では、一番茶の収穫適期を逃して収穫できなかった地域もありました。

共同利用施設のうち選果場では、外壁、選果ライン、かんきつ類の加工施設では、外壁、加工施設等の一部破損が発生しました。

農業用ハウスでは、ハウス本体・高設栽培ベンチ・配管の損傷、燃油タンクの傾き等の被害が発生しました。

畜産では、畜舎等の施設、設備が全壊又は一部損壊したほか、死亡牛も発生しました。また、地震発生直後、熊本県下で集乳できない地域が広がり、生乳の廃棄が発生したものの、4月21日以降は道路事情により集乳できない地域はなくなりました。

倒れたカーネーションの鉢

倒れたカーネーションの鉢

倒壊した畜舎

倒壊した畜舎

(流通施設の被害が発生)

卸売市場では、熊本県熊本市(くまもとし)の株式会社熊本地方卸売市場青果棟と水産物棟において卸売場等の施設の一部に被害が発生しました。また、他の市場においても、事務所等に被害が発生しました。

食品小売業では、スーパーマーケット、コンビニエンスストアにおいて建物の安全性に問題があるなどの理由から、多くの店舗で休業を余儀なくされ、それ以外の店舗においても、商品がすぐに売り切れてしまい、在庫がない状態が続きました。また、食品卸売業においても倉庫内の商品の落下等が発生しました。

食品製造業では、事務所や工場、倉庫の建物被害が発生し、原材料の調達、商品の配送等に支障が出たことから、操業停止になった工場がありました。

(補正予算等により支援対策を実施)

平成28(2016)年5月17日には平成28年度補正予算が成立し、住宅の確保や生活再建支援金の支給等被災支援に要する経費として780億円が計上されるとともに、7千億円の熊本地震復旧等予備費が創設されました。また、10月11日には熊本地震からの復旧・復興に向けて4,139億円の第2次補正予算が成立しました。さらに、平成29(2017)年1月31日には、熊本地震への対応を含めた第3次補正予算が成立し、農村水産関係で306億円が計上されました。

農林水産省では、5月9日に、既存の事業の運用を工夫することなどによる平成28年熊本地震による被災農林漁業者への支援対策(第1弾)を公表し、また、5月18日には、補正予算で措置される熊本地震復旧等予備費を活用した追加対策(第2弾)を公表しました(図表4-1-6)。

図表4-1-6 熊本地震による被災農林漁業者への支援対策

(水稲から大豆への転換等により、不作付地をほぼ解消)

農林水産省は、熊本県、熊本県農業協同組合中央会と水田営農再開連絡会議を設置し、水田の被害状況や農業者の作付意向の確認を行いました。

水田の早期復旧に向けた応急措置として、査定前着工制度を活用した応急工事や多面的機能支払(*1)を活用して水路のひび割れや破損の補修等を実施しました。

また、断水等により水稲の作付けが困難な水田については、大豆や飼料作物等の作付けを推進し、食用大豆の種子転用による種子の確保や作業委託に対する助成等の支援を行いました。この結果、熊本県内において、作付けができなかった水田はほとんどありませんでした。

*1 第3章第2節「農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮」を参照

陥没した農地

陥没した農地

ベニヤ板の型枠を使った水路の補修

ベニヤ板の型枠を使った水路の補修

大豆への作付転換後の水田

大豆への作付転換後の水田

(生産施設、農地・農業用施設等の復旧に向けた支援)

農業者が経営を維持していくために必要な農産物の生産施設の復旧、農業用機械の取得等に対して支援を行いました。

特に、農地・農業用施設の災害復旧については、円滑に災害査定を行うため、現地での査定を省略できる机上査定が可能な範囲を拡大するなど、査定の簡素化を行うとともに、全国の地方農政局等から熊本県に災害査定官を集中的に派遣しました。また、査定設計書の作成に必要な外部への委託費について、平成28(2016)年12月には補助の対象となる費用の上限を拡大することとし、遡及して平成28(2016)年の災害から適用する措置を講じ、被災地方自治体の負担軽減を図りました。

さらに、熊本県が管理する農地海岸については、12海岸で堤体の沈下等を確認し、「大規模災害からの復興に関する法律」に基づく県からの要請を受け、7海岸の復旧を国による直轄代行で実施しています。

(共済金の早期支払と融資の負担軽減)

農業共済について、損害評価を迅速に行い、共済金の早期支払を実施しました。

運転資金や施設復旧資金の調達に向けて、制度資金等の貸付限度額を引き上げるとともに、貸付利子を貸付当初5年間実質無利子化し、実質無担保・無保証人での借入れを可能とする措置を講じました。また、資金借入時の債務保証の保証料を保証当初5年間免除するとともに、農業者の経営再開に向けて、既往融資の償還猶予等の措置を適切に講じるように関係金融機関に要請を行いました。

(生産活動再開に向けた支援)

生産活動の再開に向けて、耕種部門においては、水稲が作付けできずに、大豆等へ作付転換した場合に必要となる生産資材に要する経費の助成、集出荷施設等の被害を受けた産地に対し、人手による選果作業に要する労賃、農作物を他の集出荷施設に輸送し、選果・加工するための輸送費の助成、また、果樹と茶では、倒木等の被害を受けた樹木の植え替えやこれにより生ずる未収益期間に要する経費の助成を措置しました。

また、畜産部門においては、畜産農家の資金繰りを支援するため、経営安定対策事業の積立金等の納付免除や納付期限の3か月延長等を実施するとともに、酪農・畜産農家の経営継続支援のため、家畜導入に要する経費等の助成を措置しました。

(復旧・復興は着実に進展)

農林水産省では、熊本地震で被災した農業者の速やかな経営再開に向け、復旧等予備費、第2次及び第3次補正予算を活用して支援を行いました。このような中、被災地域では野菜等の集出荷貯蔵施設のほとんどで出荷が再開され、農業用ハウスや畜舎等の再建・修繕が進展するなど、復旧・復興は着実に進展しています。

(「自助」「共助」「公助」の大切さ)

今回の地震対応により、「自助」「共助」「公助」の大切さが注目されました。

自助は、農業者が災害に備えて共済に加入し、家庭で食料を備蓄すること、共助は、地域で営農再開に向けて取り組むこと、公助は、自助、共助ではできないことに、国や地方公共団体が予算を確保して対策を講じることです。

農林水産省では、災害への備えに万全を期すため、平素からの、農業者の共済の加入、家庭の食料備蓄、食料産業事業者の事業継続計画(BCP)(*1)の策定の呼びかけを行うとともに、応急用食料の調達・供給を迅速・的確に行うために、調達可能量の調査を行っています。

*1 第1章第3節(2)イ 食料安全保障の確立に向けた取組を参照

事例:被災地域の産品詰め合わせ販売(熊本県)

熊本県阿蘇市
阿蘇復興支援セット

阿蘇復興支援セット

熊本県阿蘇市(あそし)の有限会社阿部牧場では、経産牛244頭の飼養と、牧草197ha、WCS用稲(稲発酵粗飼料用稲)(*1)150haの栽培を行い、また、6次産業化(*2)の取組として牛乳、ヨーグルト等の乳製品の製造・販売を行っています。

熊本地震の発生直後、阿部牧場では、一時的に生乳の廃棄を余儀なくされ、また、牛の飲み水の確保にも苦労しました。

集乳と飲み水の回復が図られた頃、阿部牧場の阿部寛樹(あべひろき)代表取締役は南阿蘇大橋の崩落等を目の当たりにし、地域のために何かをしたいと考え、地域の農業者や取引先等と相談を重ね、阿蘇地域の畜産加工品、お菓子、観光体験チケット等を組み合わせた「阿蘇復興支援セット」を企画しました。ホームページや道の駅で販売を開始し、テレビやSNS(*3)を通じて情報を発信した結果、平成28(2016)年6月までに1万3千セットを売り上げました。

阿部さんは、熊本地震により離農を考えている農業者を励ますことでもう一度地域を盛り上げ、阿蘇で育つ子供たちが希望を持てるようにしたいと考えています。

*1 用語の解説3(2)を参照

*2 用語の解説3(1)を参照

*3 Social Networking Serviceの略。登録された利用者同士が交流できるウエブサイトのサービス



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