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農林水産省

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第1節 農業の構造改革の推進


農業の競争力を強化し、持続可能なものとするためには、農業の構造改革を加速化することが必要となっています。以下では、農業所得(*1)の動向、農地の集積・集約化(*2)、担い手の育成・確保、人材力の強化、女性農業者の活躍等について記述します。

*1 用語の解説2(3)を参照

*2 用語の解説3(1)を参照

(1)農業所得の動向

(農業所得に影響を及ぼす交易条件指数は2年連続で上昇し、所得向上の方向に作用)

農業生産に必要な資材の小売価格を指数化した農業生産資材価格指数を見ると、平成28(2016)年は、畜産用動物等の価格が上昇したものの、飼料、光熱動力等の価格が低下したことから、前年に比べ1.5ポイント低下の98.5となりました(図表2-1-1)。

一方、農家が販売する個々の農産物の価格を指数化した農産物価格指数を見ると、平成28(2016)年は、米、野菜等の価格が上昇したことから、前年に比べ7.4ポイント上昇の107.4となりました。

このような状況を反映し、農産物と農業生産資材の価格の相対的な関係の変化を示す農業の交易条件指数は109.0と2年連続で上昇し、所得向上の方向に作用しました。

図表2-1-1 農業物価指数と農業の交易条件指数(平成27(2015)年を100とする指数)

データ(エクセル:44KB / CSV:2KB

(1経営体当たりの農業所得は直近5年間で最高を記録)

平成28(2016)年の個別経営体と組織法人経営体の調査結果を基に作成した1経営体当たりの農業所得を主な営農類型別に見ると、前年に比べて、いずれの営農類型でも増加しており、直近5年間で最高を記録しました(図表2-1-2)。

水田作経営については、需要に応じた生産の推進により、平成28(2016)年産米の価格が上昇したこと等から、平成28(2016)年の1経営体当たりの農業所得は前年を22.6%上回る78万円となりました。また、作付延べ面積が20ha以上の水田作経営の農業所得は1,967万円となっています。

施設野菜作経営については、加工用や業務用への国産野菜を求める実需者ニーズへの対応により価格が上昇したこと等から、農業所得は前年を12.4%上回る573万円となりました。また、作付延べ面積が1ha以上の施設野菜作経営の農業所得は1,664万円となっています。

果樹作経営については、夏場の少雨等で生産量が減少する一方、高糖度等の品質への評価が高まったことを受け、総じて価格が上昇したこと等から、農業所得は前年を20.1%上回る253万円となりました。また、果樹植栽面積が3ha以上(組織法人経営体は5ha以上)の果樹作経営の農業所得は911万円となっています。

酪農経営については、生乳価格の上昇、搾乳牛1頭当たり乳量の増加、副産物である子牛の価格の上昇等から、農業所得は前年を38.5%上回る1,558万円となりました。また、搾乳牛飼養頭数100頭以上の酪農経営の農業所得は4,771万円となっています。

肥育牛経営については、需要が堅調に推移するとともに、和牛改良の進展や飼養管理技術の向上等により高品質化等が進み、肥育牛価格が上昇したこと等から、農業所得は前年を72.6%上回る2,239万円となりました。また、肥育牛飼養頭数200頭以上(組織法人経営体は300頭以上)の肥育牛経営の農業所得は7,415万円となっています。

図表2-1-2 主な営農類型別の農業所得

食料・農業・農村基本計画(以下「基本計画」という。)においては、農業生産額の増大や生産コストの縮減による農業所得の増大に向けた施策を推進するとされています。平成28(2016)年の生産農業所得(*1)は前年に比べ5千億円増加の3兆8千億円となりました(*2)。なお、生産農業所得から雇用賃金相当額、支払利子・地代相当額、経常補助金等を控除した労働農業所得(家族)は、平成28(2016)年において2兆円で、そのうち経営主に帰属する部分である労働農業所得(経営主)は1兆3千億円と試算されています。

また、基本計画においては、6次産業化(*3)等を通じた農村地域の関連所得(*4)の増大に向けた施策を推進するとされています。日本再興戦略(平成25(2013)年6月閣議決定)において2020年度に6次産業化の市場規模を10兆円とすることが目標とされています。平成27(2015)年度の6次産業化の市場規模は前年度に比べ4千億円増加の5兆5千億円となっており、これから試算される農村地域の関連所得は同2千億円増加の1兆5千億円となります。

*1 用語の解説1を参照

*2 農林水産省「生産農業所得統計」

*3、4 用語の解説3(1)を参照

(2)農地中間管理機構の活用による農地の集積・集約化

(農地面積、作付延べ面積ともに緩やかに減少し、耕地利用率は横ばいで推移)

我が国の農地面積は、平成29(2017)年においては前年に比べ2万7千ha(0.6%)減少の444万4千haとなり、近年、緩やかな減少が続いています(図表2-1-3)。作付(栽培)延べ面積も緩やかな減少が続いており、この結果、耕地利用率は近年92%で推移しています。

担い手が不足している地域では新規就農者や集落営農組織の確保・育成、企業の参入等を図りつつ、担い手への農地の集積・集約化を進め、我が国の限られた農地を有効に利用していくことが重要です。

図表2-1-3 農地面積、作付(栽培)延べ面積、耕地利用率

データ(エクセル:97KB / CSV:3KB

(荒廃農地面積は、横ばいで推移)

市町村と農業委員会が調査した荒廃農地(*1)の面積は、平成28(2016)年においては28万1千haとなり、このうち再生利用が可能なもの(遊休農地(*2))が9万8千ha、再生利用が困難と見込まれるものが18万3千haとなっています(図表2-1-4)。

地域における定期的な話合いを通じ、リタイアを考えている高齢者等の農地を担い手に集積することで荒廃農地の発生を未然に防ぐとともに、担い手や農地中間管理機構(以下「機構」という。)による雑木除去等の取組を支援する事業を活用すること等により、荒廃農地の解消を進めることが重要です。

図表2-1-4 全国の荒廃農地面積

*1、2 用語の解説3(1)を参照

(担い手に対する農地の利用集積率は、前年度に比べ1.7ポイント上昇の54.0%)

農業の競争力を強化し、持続可能なものとするためには、機構が地域内に分散・錯綜(さくそう)する農地を借り受け、これをまとまりのある形で担い手が利用できるよう配慮して貸し付ける、農地の集積・集約化が重要です。

担い手に対する農地の利用集積率は、機構を中心として、農地利用集積円滑化団体や農業委員会等様々な主体が農地の利用集積に向けて取組を進めた結果、平成28(2016)年度においては前年度に比べ1.7ポイント上昇し54.0%となりました(図表2-1-5)。

機構の平成28(2016)年度の実績(フロー)は、条件の良い平場での機構の活用や集落営農組織の法人化に合わせた機構の活用など取り組みやすいケースが一巡する中で農地の出し手・受け手の掘り起こしが十分に行われなかったことから、転貸面積で前年度に比べ3.4万ha(43.6%)減少の4.3万haとなり、この結果、機構の平成28(2016)年度末の累計の転貸面積(ストック)は14.2万haとなりました(図表2-1-6)。

担い手に対する農地の利用集積率については、2023年度までに8割に引き上げる目標が設定されており、この実現に向けて機構の取組を加速化していくことが必要です。このため、農地利用最適化推進委員(*1)の機構と連携した積極的な現場活動、農業者の申請・同意・費用負担によらない機構借入農地の基盤整備等、相続未登記農地の担い手に対する集積を図るための条件整備等を推進しています。

図表2-1-5 担い手に対する農地の利用集積率

データ(エクセル:45KB / CSV:2KB

図表2-1-6 農地中間管理機構の実績(転貸面積・累計値)

データ(エクセル:41KB / CSV:4KB

*1 第2章第6節(2)を参照

(簡易な手続により相続未登記農地に利用権設定が可能となる法案を国会に提出)

土地の登記事項証明書(抜粋イメージ)

近年、農地所有者の死亡後に、相続人が所有権移転の登記を行っていない相続未登記農地等が増えており、平成28(2016)年8月の全農地を対象とした調査の結果、この面積は全農地面積の2割に相当する93万4千ha(*1)に上ることが明らかになりました(*2)。このうち遊休農地は6%に相当する5万4千haに過ぎず、ほとんどの農地では耕作が行われています。しかし、農業者のリタイアにより農地の貸借を行おうとした場合、関係する相続人を探した上で、その持分の過半を有する者から同意を得る必要があるなど、多大な労力が必要となることから、貸借が断念されるケースもあり、このような相続未登記農地の存在が担い手への農地の集積・集約化を進める上での阻害要因の一つになっています。

このため、相続人の一人(*3)が簡易な手続で機構に最長20年間の利用権を設定可能とするため、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。

さらに、相続されたものの登記が行われなかったり、相続自体が放棄されたりすることで発生・拡大する所有者不明土地の問題は、農地を含む土地全般の課題となっていることから、登記制度や土地所有権の在り方等の中期的課題として政府全体で検討を進めています。

*1 登記名義人が死亡していることが確認された農地の面積は約47万7千ha、登記名義人が市町村外に転出し既に死亡している可能性があるなど、相続未登記のおそれのある農地の面積は約45万8千ha

*2 農林水産省調べ

*3 固定資産税等の管理費用を負担している者等

(高齢農業者の意向を速やかに把握できるよう、定期的な話合いが重要)

集落や地域が抱える人と農地の問題を解決するため、地権者や担い手の参加を得た話合いを通じ、地域農業を担う経営体や地域の在り方等をまとめた未来の設計図となる「人・農地プラン(*1)」の作成が進められています。

平成29(2017)年3月末時点における、人・農地プランを作成した地域がある市町村数は1,580、人・農地プラン作成済みの地域数は1万4,511となり、これら地域のうち機構の活用方針が明らかになっているものは80%に相当する1万1,624となっています(図表2-1-7)。

話合いの際に農地を貸し出す意思表示をしていなかった高齢農業者が、健康状態の悪化等から、その1年後には農地を貸したいと心境が変化することもあり得ます。このような農地が荒廃することなく円滑に担い手に集積・集約化されるよう、人・農地プランの見直しと機構の活用に向けて、定期的に話合いの機会が持たれることが重要です。

図表2-1-7 人・農地プランの作成数

*1 用語の解説3(1)を参照

(3)担い手の育成・確保

平成28(2016)年の新規就農者数は6万150人と2年連続で6万人を超え、新規雇用就農者も1万680人と2年連続で1万人を超えました(*1)。

*1 農林水産省「新規就農者調査」。49歳以下の新規就農者の動向は、特集4(1)を参照

(農業経営体数が一貫して減少する中、1経営体当たりの経営規模は着実に増加)

農業経営体(*1)の数は一貫して減少し、平成29(2017)年においては前年に比べ6万(4.6%)減少の125万8千経営体となり、このうち販売農家(*2)は同6万2千(4.9%)減少の120万戸、法人経営体(*3)は1千(4.8%)増加の2万2千経営体となりました(*4)。

農業経営体数の減少は農産物の生産減少につながる懸念がある一方で、経営規模の拡大を志向する経営体にとっては農地等の経営資源を獲得する好機となります。農林業センサスにより近年の1経営体当たりの経営規模の推移を見ると、田、畑、樹園地の経営耕地面積、牛、豚の飼養頭数のいずれも着実に拡大しています(図表2-1-8)。

法人経営には、従業員を集めやすい、経営継続がしやすいなどの利点があることから、大規模農家や集落営農組織を中心に、農業経営を法人化する経営体が徐々に増えています。法人経営体数については、2023年までに5万法人とする目標が設定されており、農業委員会や都道府県農業委員会ネットワーク機構等により、法人経営の利点や制度上の優遇措置への理解の深化、税理士等による相談や法人化手続の支援の更なる周知が求められています。

図表2-1-8 1経営体当たりの経営規模(平成17(2005)年を100とする指数)

データ(エクセル:47KB / CSV:2KB

*1 用語の解説1、2(1)

*2 用語の解説1、2(2)

*3 法人の組織経営体のうち販売目的のものであり、一戸一法人は含まない。

*4 農林水産省「農業構造動態調査」

事例:農外参入企業が7haの巨大温室を再生し、黒字化を実現(北海道)

北海道千歳市
温室で栽培されているトマト

温室で栽培されているトマト

産業用ガスの販売を行うエア・ウォーター株式会社は、北海道千歳市(ちとせし)において、平成23(2011)年4月、子会社として株式会社エア・ウォーター農園を設立し農業生産に参入しました。

放置されていたトマト用の温室7haを再生して始まった農業生産では、安定した販路と販売リスクの分散に重点が置かれ、トマト栽培を4haに限定しつつ、その半分をカゴメ株式会社との契約栽培とし、これにベビーリーフ等を組み合わせることとなりました。また、暖房費を抑えるためトマトの収穫を11月で終える決断をしたこと等から、同社では平成28(2016)年度から単年度黒字が実現しています。

パート社員は、札幌市(さっぽろし)のベッドタウンとして人口が増加している千歳市等から通年社員80人、期間限定社員60人が集まり、地域の雇用創出にも貢献しています。同農園の山王丸(やまおうまる)取締役は、今後、海外のようにサラダ以外の食べ方が広がることでトマトの消費は大きく伸びると期待を寄せています。

(基幹的農業従事者数、常雇い人数とも、49歳以下の割合が上昇)

販売農家における基幹的農業従事者(*1)数は、平成29(2017)年は前年に比べ7万9千人(5.0%)減少の150万7千人となりました(図表2-1-9)。このうち49歳以下の階層では、前年からの減少率が2.3%と全体を下回り、この結果、全体に占める49歳以下の階層の割合は10.2%から10.5%へ0.3ポイント上昇しました。

また、農業経営体における常雇い(*2)人数は、平成29(2017)年は前年に比べ7千人(2.9%)減少の24万人となりました。このうち49歳以下の階層では、前年からの減少率が2.7%と全体を下回り、この結果、全体に占める49歳以下の階層の割合は50.1%から50.2%へ0.1ポイント上昇しました。

基幹的農業従事者と常雇いを合わせた農業就業者については、2023年までに40代以下を40万人に拡大する目標が設定されており、自営農業への従事や法人における雇用等を通じ、新規就農者を確保していくことが必要です。

図表2-1-9 基幹的農業従事者数、常雇い人数

*1、2 用語の解説1、2(4)を参照

事例:第三者継承による新規就農~分べん時期が分散された乳用牛を引き継げたのはメリット~(北海道)

北海道標茶町
新規就農イベントに参加する大宮さん夫妻

新規就農イベントに参加する
大宮さん夫妻

北海道標茶町(しべちゃちょう)の大宮睦美(おおみやむつみ)さん・菜々子(ななこ)さん夫妻は、平成29(2017)年4月に、前経営者からの経営継承によりそれぞれ34歳、30歳で就農し、酪農を始めました。

夫妻は、就農前1年間は前経営者の下で研修を受け、就農に合わせて畜舎、乳用牛等の農業用資産一式と住居を譲り受けました。農業用資産は、農協が前経営者から取得し、夫妻にリースされています。町内市街地に移住した前経営者からは「地域で助け合うことで経営は上手くいく。困ったことがあれば駆けつける」との応援メッセージが寄せられました。

大宮睦美さんは、経営継承について、分べん時期が分散された乳用牛60頭をそのまま引き継げたのは大きなメリットと語り、採草放牧地60haでは、肥料計算や土壌改良等により牧草の収量を高めることで乳用牛の増頭を目指したいとしています。また、将来は、農場を世襲させるのではなく、やる気のある新規就農者に引き継ぎたい、と語っています。

事例:第三者継承による新規就農~ハウスとパート社員を引き継げたのはメリット~(岡山県)

岡山県倉敷市
尾上博信さん(左)と前経営者の難波貞敏(なんばさだとし)さん(右)

尾上博信さん(左)と前経営者の
難波貞敏(なんばさだとし)さん(右)

岡山県倉敷市(くらしきし)の尾上博信(おのうえひろのぶ)さんは、生まれ育った地で荒廃農地が増えている状況を憂慮し、耕作放棄される前に農業を引き継ぐことができないかとの思いから、平成24(2012)年6月に、前経営者からの経営継承により37歳で就農し、農業用ハウス3棟のリースを受けて切り花の生産を始めました。

尾上さんは、多額の初期投資を行うことなく、ハウスと技術を持ったパート社員を引き継げたのは経営継承のメリット、と語ります。現在は前経営者と同じ切り花生産のみを行っていますが、今後は、独自性を発揮し、施設の一部をパクチー等の葉物野菜に切り替えて収益を高め、規模拡大を目指したいとのことです。

尾上さんは、自分の経験や仲間の話から、経営継承における経営を渡す側、受ける側の心構えや準備等で様々なことを学んだといい、将来、自身の農業経営が軌道に乗ったら、新たな活動として、経営継承に取り組む経営を渡す側、受ける側に対し、途中で破綻してしまわないように継承のサポートを行いたいと考えています。

(農業における働き方改革に向けて、農業経営者の取組のヒント等を取りまとめ)

農業においては、一時期、労働力の4割を担った昭和一桁世代が80歳代を迎え、農業生産の第一線から退きました。また、生産年齢人口は平成7(1995)年のピークから減少の一途をたどり、今日、農業を始めとする多くの業種に深刻な人手不足をもたらしています。今後、他産業との人材獲得競争が更に厳しさを増すと見込まれる中、農業の持続的発展に向けて、多様な人材を農業界に呼び込むための「働き方改革」が求められています。

平成29(2017)年における我が国の人口1億2,671万人(*1)は、2050年に1億192万人(*2)にまで減少すると予想されており、他産業との人材獲得競争が激化することが見込まれます。このため、農林水産省では農業の「働き方改革」検討会を開催し、平成30(2018)年3月に、農業経営者による生産性の向上と人に優しい環境作りなどの「働き方改革」の取組の拡大に向け「農業の「働き方改革」経営者向けガイド」等の取りまとめを行いました(図表2-1-10)。同ガイドの中には、先進的な農業経営者等との意見交換等を通じて得られた実例を基に、農業経営者が取り組む具体的手法等が整理されており、今後、農業経営者にこれらの普及を図ることで、農業における「働き方改革」を進めていくこととしています。

図表2-1-10 「農業の「働き方改革」経営者向けガイド」等の概要

*1 総務省「人口推計」(平成29(2017)年10月1日時点)

*2 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

(認定農業者は法人が一貫して増加)

図表2-1-11 認定農業者数

データ(エクセル:50KB / CSV:2KB

認定農業者制度(*1)は農業者が作成した経営発展に向けた計画を市町村が認定するもので、認定を受けた農業者(認定農業者)には、計画の実現に向け、農地の集積・集約化、経営所得安定対策、低利融資等の支援措置が講じられています。

平成29(2017)年3月末時点の認定農業者数は、前年に比べ4千(1.5%)減少の24万2千経営体となりました(図表2-1-11)。

この減少は、計画期間を終えた認定農業者が高齢化等のため再認定申請を行わなかったことによるものです。

なお、認定農業者のうち個人についても高齢化が進行しているものの、65歳以上の割合は32.5%と、基幹的農業従事者の66.4%(*2)よりも低くなっています。

一方、認定農業者のうち法人の数は一貫して増加しており、平成29(2017)年は前年に比べ2千(8.0%)増加の2万2千経営体となりました。

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 農林水産省「平成29年農業構造動態調査」

(集落営農組織は法人化が進展し、法人組織の割合は33.8%までに上昇)

集落営農(*1)は農作業の共同化や機械の共同利用を通じて経営の効率化を目指す取組であり、集落営農組織は主に高齢化が進行した水田地帯で担い手として農業生産を担う役割を果たしています。

近年、集落営農数は横ばいで推移する中、任意組織から法人組織への移行は着実に進み、平成30(2018)年には集落営農組織全体に占める法人組織の割合が33.8%にまで上昇しました(図表2-1-12)。また、任意組織のうち将来の法人化に向けた計画を策定している集落営農数は3,222で、法人化の時期別に割合を見ると、平成30(2018)年としているものは55.1%、平成31(2019)年としているのは14.2%となっています(図表2-1-13)。

任意組織から法人組織への移行は、法人格を有することにより制度資金の利用が可能になる、経営等の責任ある執行体制が確立されるなどの利点があることから、より多くの任意組織において法人化に向けた取組の進展が期待されます。

図表2-1-12 集落営農数と法人組織の割合

データ(エクセル:44KB / CSV:2KB

図表2-1-13 集落営農の法人化予定年別の割合(平成30(2018)年)

*1 用語の解説3(1)を参照

(農地のリース方式による農業への参入企業は、平成28年12月末時点で2,676法人)

平成21(2009)年の農地法の改正により、農地の全てを効率的に利用するなどの基本的な要件を満たす企業は、法人形態や事業内容等にかかわらず農地を借り受けて農業に参入(リース方式)することが可能となりました。改正後から平成28(2016)年12月末時点までに2,676法人がリース方式で参入し、1年当たりの法人参入数は、改正前の5倍のペースとなっています(*1)。

さらに、平成28(2016)年4月に施行された改正後の農地法で、農地を所有できる法人の要件が見直され、法人の議決権に占める農業関係者の割合が4分の3以上から2分の1以上に緩和されました。また、役員要件については、役員又は農場長等の重要な使用人のうち、1人以上が農作業に従事すれば足りることとされました。

*1 農林水産省調べ。1年当たりの平均参入数は、改正前(平成15(2003)年4月から平成21(2009)年12月)は65法人、改正後(平成21(2009)年12月から平成28(2016)年12月)は340法人

(4)人材力の強化

(高い農業技術や経営管理能力を持つ人材の育成が期待される農業大学校)

図表2-1-14 農業大学校卒業生の就農率

データ(エクセル:44KB / CSV:2KB

農業大学校は、農業の担い手を養成する教育機関として、42の道府県に設置されています。近年、卒業生の就農率は50%台で推移しており、平成28(2016)年度は卒業生1,741人に対し就農者は994人となり、就農率は57.1%となりました(図表2-1-14)。

農業大学校の数を就農率別に見ると、80%以上が1校、60%以上80%未満が17校あるのに対し、40%未満も5校あります(*1)。農業大学校には、高校と連携した実習等の実施、就農相談窓口と連携した社会人の積極的な受入れ、国際的に通用するGAP(*2)や輸出に関する学習の導入、特徴あるカリキュラムの創設等により意欲ある若者を集め、高い農業技術や経営管理能力を持つ人材として育て上げ、農業分野に送り出すことが期待されています。

全国の農業高等学校(以下「農業高校」という。)における平成28(2016)年度卒業生の就農率は3.0%(*3)、農業大学校等へ進学した者の割合は4.1%(*4)となっています。このため、農業高校生の就農への関心や意欲の高揚に向けて、都道府県の農業部局が紹介した農業経営者が、農業高校において外部講師や実習受入先となる動きが広がっています。

また、農業高校において習得した基礎的・基本的な知識や技術を、農業大学校において高度で実践的なものに発展させることも、人材力強化の観点から重要となっています。滋賀県では県立八日市(ようかいち)南高等学校農業科等の生徒による農業大学校への訪問が毎年行われており、農業大学校に進学した先輩から学校生活や卒業後の進路等の話を直接聴くことで、生徒の進学の動機付けにつながっています。

*1 全国農業大学校協議会調べ

*2 用語の解説3(2)を参照

*3 文部科学省「学校基本調査」を基に農林水産省で作成

*4 文部科学省「学校基本調査」、全国農業大学校協議会調べを基に農林水産省で作成

事例:農業大学校として全国初のGLOBALG.A.P.認証取得(新潟県)

新潟県新潟市
GAPの学習の様子

GAPの学習の様子

新潟県農業大学校の稲作経営科では、実習時の事故防止と農産物への異物混入防止等の生産工程管理能力やグローバルな人材の育成を目的として、平成28(2016)年11月に、農業大学校として全国初となるGLOBALG.A.P.の認証を米で取得しました。

認証の取得に向けては、講義や演習を積重ねた同科の学生が担当職員とともに審査に臨み、この結果、同校の水田17haが認証ほ場となりました。演習後の学生のレポートには実際に農場や施設でリスク評価を行ってみてGAPの効果や必要性を実感できたとの意見が多数見られ、認証取得のプロセスで学生のGAPに対する理解が深まっています。

平成29(2017)年度には、全科の学生がGAPの意義や内容を学習できるよう、全科の1学年を対象としたカリキュラム「GAP導入演習」を必須科目に加えました。また、同校では他科の学生もGAP認証に関する実践学習ができるよう認証品目の増加を目指しており、平成30(2018)年4月には、新たにいちごでGLOBALG.A.P.の認証を取得する見込みです。

コラム:我が国とフランスの農業高校間の交流がスタート!

平成28(2016)年12月に東京で開催された我が国とフランスによる農政の実務者会合において、若手農業者の新規参入等について相互協力の合意がなされ、この一環として、平成29(2017)年5月に、我が国の農業高校の教員5人によるフランスの農業高校の視察が行われました。

フランスのパドカレ県農業高校での交流の様子

フランスのパドカレ県
農業高校での交流の様子

フランスの農業高校には農業者が技術や経営等を学ぶ「生涯教育センター」が併設されていることも多く、農業高校の施設は、農業を目指す学生だけでなく、現役の農業者にも利用されています。また、地域農業の発展に必要な最先端技術の実証も行われており、地域で求められる人材の育成、新技術の提案といった役割も果たされています。

視察を通じて得られた知見等は5人の教員によって自校内だけでなく他校へも積極的に情報発信が行われています。平成30(2018)年度以降は、フランスの農業高校の教員による我が国への訪問等も計画されています。

(静岡県が、農業分野の専門職大学開学に向けた基本構想を公表)

2020年4月の専門職大学への移行を目指す静岡県立農林大学校

2020年4月の専門職大学への移行を
目指す静岡県立農林大学校

学校教育法の改正により、平成31(2019)年4月1日以降、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関として「専門職大学・専門職短期大学」が開学できることとなりました。農業分野では、質の高い農産物の生産に加えて、直売、加工品開発等も手がけ、高付加価値化、販路拡大等を先導できる人材の育成等が期待されています。静岡県では、県立農林大学校の専門職大学への移行に向けた基本構想を平成30(2018)年2月に公表しました。開学時期は2020年4月を目標としており、農業大学校からの移行により開学する農業分野の専門職大学としては全国初となる見込みです。

近年、大学の農学系の学部において志願者が増えていること等を背景に、全国各地で「農」や「食」を名前に掲げた大学の開設や学部・学科の設置の動きが広がっています。平成30(2018)年4月には、新潟県で新潟食料農業大学が、長野県で食健康学科を持つ長野県立大学がそれぞれ開設されるとともに、東京都の東京家政学院大学では食物学科が、滋賀県の立命館大学では食マネジメント学部がそれぞれ設置されました。また、福島大学では平成31(2019)年4月の食農学類の設置に向けて準備が進められています。「農」や「食」に関わる人材の裾野が広がり、農業分野で活躍する若者の輩出が期待されます。

事例:大学生の目線で、全国の元気な農業者の情報を発信(東京都)

東京都千代田区
女子学生スタッフによる取材の様子

女子学生スタッフによる取材の様子

東京都千代田区(ちよだく)の株式会社NOPPO(のっぽ)では、農業を仕事として考える学生等をターゲットに、全国に元気な農業者がたくさんいることを大学生の目線で情報発信するフリーペーパー「VOICE」を発行しています。季刊誌となる同誌は、同社取締役の福本由紀子(ふくもとゆきこ)さんと農業に興味のある大学生のスタッフにより制作され、全国200校以上の大学、各県の農業大学校や就農センター等に届けられています。

農学系の大学生であっても実際に農業者と接点を持つ機会は少なく、農業に触れる機会を得ようと同誌の編集に参加した大学生は、多くの気づきを得ることができた、農の可能性を肌で感じることができた、といった喜びの声を同誌の編集後記に綴っています。

福本取締役は、同誌のインタビュー記事で農業者を広く知ってもらい、同社や協力企業・団体のホームページに掲載された求人情報等を見てもらうことで、農業法人等へ就職し、農業界で活躍する学生が増えていってほしい、と語っています。

(農業者が営農をしながら体系的に経営を学べる農業経営塾が21県で開講)

農業者が営農をしながら体系的に経営を学ぶ場として、平成29(2017)年度に、農業大学校等が運営主体となり21県で農業経営塾が開講されました(図表2-1-15)。農業経営塾では、経営戦略、財務・労務管理、マーケティング等に関する座学や演習等が、各県において1年間でおおむね10日間以上実施され、全県を通じた受講生は441人となりました。また、平成30(2018)年度の開講を目指す都道府県においては、開講に向けた準備が進められています。

図表2-1-15 農業経営塾の開講状況

事例:全国に先駆けて農業経営塾が開講(山口県)

山口県防府市
塾生による演習の様子

塾生による演習の様子

山口県では、平成29(2017)年度に各県で順次設置が進む農業経営塾を、全国に先駆け5月に「やまぐち尊農塾(そんのうじゅく)」との名称で開講しました。

防府市(ほうふし)の農業大学校をメイン会場に月1回のペースで3月まで10回にわたり講義や演習等が行われた同塾には、県内のモデル経営者となることが期待される農業法人役職員や法人化志向のある自営農業者等23人が集まりました。参加者のうち最多世代は30歳代の11人で、女性は20歳代と40歳代の2人が参加しました。

講師陣は、県外の先進的な農業者のほか、食品スーパー、大学、銀行、県中小企業診断協会等多彩な組織から人材が派遣され、最終日には、参加者各自が、中小企業診断士や県の普及指導員等の指導を受けて作成した自身の経営計画を発表しました。

経営マネジメントやマーケティングの能力を高めた同塾の卒業生が優れた農業経営を実践し、同県農業のけん引役となっていくことが期待されます。

(留学や海外研修を通して国際感覚を身に付ける学生や社会人)

社会や経済のグローバル化が進む中、社会総がかりで将来世界において活躍できる人材を育成するため、高校生、大学生等を対象とする官民が協力した海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」が平成25(2013)年度に始まりました。平成29(2017)年度末時点で、累計137人(*1)の農学系の大学生、同15人の農業高校生が、同プログラムの支援を受け、農業・食品産業分野での留学やインターンシップ等に取り組みました。

また、公益社団法人国際農業者交流協会では、大学・農業大学校の卒業生等の若手が、欧米の農場等で1年から1年半程度の研修を行う海外農業研修プログラムを実施しています。同プログラムの研修生は、近年、年間60人程度となっており、その半数以上は非農家出身者となっています(図表2-1-16)。同協会には国際人材を求める農業法人等から求人が寄せられており、帰国後に就農する研修生も見られます。

農業分野における国際感覚を身に付けた人材の育成に向けて、これらプログラムの更なる活用が期待されています。

図表2-1-16 海外農業研修の参加者の内訳(平成26(2014)年度から平成28(2016)年度)

*1 プログラム開始から平成29(2017)年度末までに留学に出発した人数の合計で、高校生も同様。留学期間は、大学生については28日以上2年以内(3か月以上を推奨)、高校生については2週間から1年間となっている。

(農業支援外国人受入事業の実施に向け京都府、新潟市、愛知県が実施区域に認定)

産地での多様な作物の生産等を推進し、経営規模の拡大などによる「強い農業」を実現するため、農業分野における外国人材の活用を図ることが課題となっています。

このため、平成29(2017)年9月に「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律」が施行され、国家戦略特別区域内において、我が国の農業現場で即戦力となる一定水準以上の技能等を有する外国人材を就労目的で受け入れることが可能となる国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業が創設されました。これにより、農業者は、労働者派遣契約に基づいて、必要な時期に、一定の基準を満たした特定機関に雇用された外国人材の派遣を受けることができるようになりました(図表2-1-17)。平成29(2017)年度末時点で、京都府、新潟市(にいがたし)、愛知県が本事業の実施区域として認定を受けており、これらの区域内で、今後、外国人材が農作業に従事することとなります。

図表2-1-17 農業支援外国人受入事業の概要

農業分野においては、これまで修得した技能や知識の母国への移転という国際協力を目的とした技能実習制度の下、農業関連の技能実習生を受け入れてきました。同制度は、平成29(2017)年11月に技能実習法(*1)が施行されたことを受け、制度の適正化や技能実習生の保護を図るとともに、優良な監理団体と実習実施者の下で行われる技能実習について、技能実習期間の延長や実習実施先での受入人数上限の拡大が図られました。

*1 正式名称は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」

(5)女性農業者の活躍

(組織経営体の常雇いにおいて女性の活躍の場が拡大)

平成29(2017)年における女性農業者は、基幹的農業従事者で前年に比べ3万7千人(5.7%)減少の61万9千人、組織経営体(*1)の常雇いで前年に比べ4千人(8.4%)増加の5万7千人となりました(図表2-1-18)。女性の割合は、基幹的農業従事者がほぼ横ばいであるのに対し、組織経営体の常雇いは2.3ポイント上昇しており、後者において女性農業者の活躍の場が広がっていることが分かります。

また、組織経営体の常雇いを営農類型別に見ると、施設野菜部門と花き・花木部門で女性の割合が高くなっています。これは、男性との体力差がハンデになりづらい、女性の感性やきめ細かさを活かしやすい、職場に女性が多く働きやすいなどが理由として考えられます。

図表2-1-18 農業労働力における女性の割合

*1 用語の解説1、2(1)を参照

(女性農業者の経営参画等につながる家族経営協定の締結農家数は増加)

2世代4人で家族協定を締結した矢郷(やごう)さん一家

2世代4人で家族協定を締結した
矢郷(やごう)さん一家

農家において女性農業者が経営参画や仕事と生活が調和した働き方を実現する上で、家族経営協定(*1)の締結は重要な役割を果たします。平成28(2016)年度末時点で、家族経営協定を締結している農家数は前年度に比べ758戸(1.3%)増加の5万7,155戸(*2)となりました。

また、農業委員と農業協同組合役員に占める女性割合はそれぞれ増加しており、平成29(2017)年は、農業委員は前年に比べ2.5ポイント上昇の10.6%(*3)、農業協同組合役員は0.2ポイント上昇の7.7%(*4)となりました。平成28(2016)年4月に施行された改正後の農業委員会法では、農業委員の任命に際し性別等の偏りに配慮する旨の規定が置かれており、この施行後に任命が行われた農業委員に占める女性の割合は11.8%(*5)となりました。また、女性役員不在の農業協同組合もある中で、長野県の佐久浅間(さくあさま)農業協同組合では、女性役員の全地区からの選出を積極的に働き掛けたところ、平成27(2015)年5月の役員選出で、全38人のうち女性が8人と21%を占めるなど、女性の経営参画を進める動きも見られます。

*1 用語の解説3(1)を参照

*2、3 農林水産省調べ

*4 JA全国女性組織協議会調べ

*5 農林水産省調べ(平成29(2017)年10月1日時点)

事例:25歳で北海道酪農の経営者になった女性農業者(北海道)

北海道川上郡弟子屈町
酪農経営者となった芳賀ひとみさん

酪農経営者となった
芳賀ひとみさん

北海道弟子屈町(てしかがちょう)の酪農家の二女芳賀(はが)ひとみさんは、平成22(2010)年に20歳で実家の酪農の後継者として就農しました。

芳賀さんは、就農時、自給粗飼料を中心に給餌し搾乳牛1頭当たり乳量が極端に低い自家の経営に不安を抱きましたが、4Hクラブ(*)の仲間と勉強会を重ね、経営費の低減が所得の向上に結びついていることを確認し、親が実践してきた経営に自信を持てるようになりました。

同町内では30歳代でも経営主になっていない酪農家が多い中、芳賀さんは父親が65歳を迎えたのを機に25歳で経産牛40頭の酪農経営者となりました。男性であれば言われることのない「凄いね」、「偉いね」という言葉の悔しさをバネに、自分が格好いい女性農業者になることで地域に仲間が増えることを夢みて芳賀さんは経営者として歩み出しました。

平成28(2016)年7月の全国酪農青年女性酪農発表大会で、就農から現在までの歩みを発表した芳賀さんは、最優秀賞を受賞しています。

* 農業経営上の課題の解決方法やより良い技術を検討する活動をはじめ、消費者や他クラブとの交流、地域ボランティア等を実施する組織。メンバーの中心は20歳代から30歳代前半。

(女性農業者の飛躍を後押しする農業女子プロジェクトとWAP100)

農業女子プロジェクトは、女性農業者の知恵と企業の技術を結びつけ、新たな商品やサービスの開発等を進める取組であり、女性農業者の存在感の向上と農業を志す若手女性の増加を目指しています。平成29(2017)年度末時点で、農業女子プロジェクトのメンバー(以下「農業女子メンバー」という。)は662人、参画企業は34社、教育機関は4校(*1)となりました。

農業女子メンバーの有志は、平成29(2017)年の9月27日から10月31日までの間、「秋の農業女子フェアin香港」を開催しました。同年1月(*2)に続く2度目の海外イベントとなり、農業女子メンバーによる百貨店等での試食イベントのほか、新たに、料理教室と連携したレセプションパーティの開催、日本料理店と連携した特別メニューの提供等が行われました。

「秋の農業女子フェアin香港」のチラシ

「秋の農業女子フェアin香港」のチラシ

高等学校や大学等の教育機関と農業女子メンバーが連携した取組を行う「チーム“はぐくみ”」では、蒲田(かまた)女子高等学校、東京農業大学、産業能率大学において、農業女子メンバーが講師となった高校・大学での授業、生徒や学生を生産現場に招いた農業インターンシップや農産物の加工・販売の体験等が行われました。平成30(2018)年3月に近畿大学が参加したことで「チーム“はぐくみ”」のパートナー校は4校となりました。

また、公益社団法人日本農業法人協会では、女性活躍に向けて先進的な取組を実践している農業経営体を「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選(WAP(*3)100)」に認定する活動を行っています。3年目となる平成29(2017)年度は42経営体が認定され、この3年間の累計は102経営体となりました。

*1 農林水産省調べ

*2 平成29(2017)年1月11日から18日までの間、香港における複数の店頭で農業女子メンバー自らが試食販売を実施

*3 「農業経営(体)における女性の積極的な参画」の英訳である「Women's Active Participation in Agricultural Management」の頭文字

事例:農業法人で実現された女性従業員が働きやすい職場環境(香川県)

香川県観音寺市
従業員による収穫作業の様子

従業員による収穫作業の様子

香川県観音寺市(かんおんじし)の尾池美和(おいけみわ)さんは、夫と九条ねぎ・青ねぎの生産を行っていました。平成24(2012)年に農業経営の法人化を図り株式会社Sun so(サンソウ)を設立しました。

同社の取締役となった尾池さんは、従業員の長期雇用に向けて、パート従業員の土日祝休み、退社時間の選択制、残業なしの労働条件を取り入れるとともに、社会保険や産休・育休・介護休業制度を完備しました。

また、女性パート8人を含む従業員12人全てが作業を平均的に効率よくこなせるようにするため、チーム制の導入やビデオ撮影による作業の見える化・マニュアル化を進めました。この結果、子供の病気等で急な休みが必要になった場合に作業の代替ができるようになりました。

さらに、新たな集出荷場を整備し、清潔で快適な作業しやすい職場環境づくりにも取り組んでいます。

同社の取組は、農業女子プロジェクトアワード2016オブ・ザ・イヤーと平成28(2016)年度のWAP100に選ばれました。

(女性農業者の良きパートナーである、女性の普及指導員等が活躍)

農業を周りで支える仕事においても女性が活躍しています。

都道府県職員の普及指導員は、主に普及指導センターに駐在し、試験研究機関等で開発された品種・技術の普及、営農情報の提供、農業者向け施策の活用支援等の業務を行っています。平成27(2015)年度末時点における全国の普及指導員6,568人のうち女性は1,730人で割合は26.3%となっています。特に、栃木県や埼玉県では、県が採用した直近5年間(*1)の農業職職員のうち半数以上が女性となっており、普及指導員として活躍する若手の女性が増加しています。

女性営農指導員による技術指導の様子(とぴあ浜松農業協同組合)

女性営農指導員による技術指導の
様子(とぴあ浜松農業協同組合)

農業協同組合職員の営農指導員は、管内の本支所や営農指導センター等に駐在し、地域の主要作物を中心とした巡回指導、共同選果・共同販売の管理等の業務を行っています。中には積極的に女性の採用を進める動きも見られ、静岡県のとぴあ浜松(はままつ)農業協同組合では、近年、営農部門を希望する有能な女性新規採用職員を積極的に同部門に配置した結果、営農指導員に占める女性の割合は平成25(2013)年4月時点の23.5%から平成29(2017)年4月時点では31.4%にまで高まっています。

また、酪農では、家畜の人工授精等を行う家畜人工授精師や、酪農家が休日を確保できるよう酪農家に代わって乳牛の世話や牛舎の掃除等を行う酪農ヘルパーとして活躍する女性がいます。北海道を代表する家畜人工授精師免許の交付地である十勝(とかち)総合振興局内で免許交付を受けた家畜人工授精師を見ると、近年、女性の割合は2割から3割程度で推移しています。農業を周りで支える彼女たちは、経営を発展させ活躍の場を広げていこうとする女性農業者にとって、気持ちを打ち明けやすく、考え方に共感してくれる良きパートナーであり、この役割をしっかりと果たしていけるよう彼女たちの働きやすい環境づくりが重要です。

*1 平成25(2013)年4月採用から、平成29(2017)年4月採用までの5年間

事例:女性の家畜人工授精師等にこだわりを持つ女性農業者(北海道)

北海道野付郡別海町
乳牛に牧草を与える小林晴香さん

乳牛に牧草を与える小林晴香さん

北海道別海町(べつかいちょう)の酪農家の長女小林晴香(こばやしはるか)さんは、弟の企業就職を機に、平成20(2008)年に27歳で実家の酪農の後継者として就農しました。両親とともに搾乳牛80頭、採草地90haの経営を行う小林さんは、女性の家畜人工授精師と酪農ヘルパーにこだわりを持っています。女性は、牛への接し方も優しいので安心できるとのことです。

小林さんは、女子学生等の体験受入れを通じ酪農の魅力を伝える活動を行っているほか、平成28(2016)年9月には、同町で酪農を楽しむ姿を発信し全国から農業女子を集めたいとして、女性の酪農関係者をメンバーとする活動組織「別海町酪農女子同盟Stron♡gyu(ストロンギュウ)」を立ち上げました。以前、酪農家に就職した町外出身女性が仕事に悩み町を離れてしまった例があり、小林さんは、活動組織を作ることで、このような女性に働き方の選択肢があることを伝える役割も果たしたいと考えています。

事例:女性酪農ヘルパーが語る仕事の魅力(北海道)

北海道野付郡別海町
乳牛に囲まれる渡辺有紀さん

乳牛に囲まれる渡辺有紀さん

北海道別海町(べつかいちょう)の渡辺有紀(わたなべゆき)さんは、北海道の酪農にひかれ、平成27(2015)年4月に千葉県から移住し、中春別(なかしゅんべつ)農業協同組合の酪農ヘルパー利用組合で酪農ヘルパーとして働き始めました。

ヘルパーの仕事は、搾乳、牛舎の清掃、餌やりの作業を、午後3時から7時までと翌朝5時から9時までを1セットとして担当し、その後、酪農家に牛の状態等を報告して終了となります。休日であっても酪農家の都合で急に仕事を頼まれるなど大変な面もありますが、ヘルパーとしていろいろな酪農家からノウハウを勉強できるのは、将来、酪農家を目指す自分にはプラスと渡辺さんは考えています。同僚は、酪農家を目指す人、酪農家の従業員を目指す人、ヘルパーを続ける人等様々です。

渡辺さんは、ヘルパーを通じ地域とのつながりができることで離農跡地の声がけをいただいたり、ご縁があれば酪農家と結婚し就農という道もあり、このようなヘルパーの魅力を広く発信していきたい、と語っています。

(6)農業金融

(農業向け融資は、公庫、一般金融機関、農協系統のいずれも増加傾向)

農業は、果樹作や畜産を中心として生産サイクルが長く投資回収に長期間を要する、天候等の外的要因により収益が不安定であるといった特性があります。このため、農業向けの融資においては、農業協同組合、信用農業協同組合連合会、農林中央金庫(以下「農協系統金融機関」という。)や地方銀行等の一般金融機関が短期の運転資金や中期の施設資金を中心に、株式会社日本政策金融公庫(以下「公庫」という。)がこれらを補完する形で長期・大型の施設資金を中心に、資金供給の役割を担っています。

近年、農業経営の規模拡大や人手不足等を背景とした省力設備の導入等による資金需要の高まりから、農業向け融資は増加傾向にあります(図表2-1-19)。農業向け融資の新規貸付額の伸びを融資機関別に見ると、一般金融機関は5年間で1.7倍(*1)、農協系統金融機関は1年間(*2)で1.4倍、公庫は5年間で1.5倍に増加しています。

農業者の多様な資金ニーズに適切に対応していくためには、一般金融機関と公庫との連携・協調融資の取組強化が重要となっています。このため、公庫は、一般金融機関との間で情報交換を行うほか、農業融資についてのノウハウの提供を行っています。平成28(2016)年度の公庫と一般金融機関の協調融資による新規貸付額は前年度に比べ19.8%(291億円)増加の1,762億円(*3)となっています。

次世代を担う競争力ある担い手の確保・育成を図るためには、個々の農業者の経営能力や将来性を見極め、資金面から支援を行っていくことが必要となっています。このため公庫は、平成28(2016)年2月から、担保や保証人に依存せず、個々の農業者の経営能力や投資内容の事業性に重点を置く、事業性評価融資の取扱いを行っており、平成28(2016)年度末時点での、融資実績は200億円(*4)となっています。また、地方の一般金融機関においても、地域活性化等の観点から、農業向けの事業性評価融資に取り組む動きが見られます。

図表2-1-19 農業向けの新規融資額

*1 農業・林業向けの新規設備資金

*2 農協系統金融機関においては、農業向けの新規融資額を平成27(2015)年度から調査している。

*3 株式会社日本政策金融公庫ニュースリリース(平成29(2017)年5月公表)。農林漁業分野における実績値

*4 株式会社日本政策金融公庫「平成29年9月中間期の取組み及び決算の概要」

事例:農業向け融資の拡大により、地域農業の発展を目指す銀行(滋賀県)

事業性評価融資を受けて設備投資を行った澤井(さわい)牧場の牛舎(竜王町(りゅうおうちょう))

事業性評価融資を受けて
設備投資を行った澤井(さわい)牧場の牛舎
(竜王町(りゅうおうちょう))

株式会社滋賀銀行では、近年、農林業向け融資に積極的に取り組み、平成26(2014)年3月末から平成29(2017)年3月末にかけて農林業向け融資残高は2倍以上に拡大しています。

農業向け融資の特殊性がある中で、担保保証に必要以上に依存せず企業の成長可能性等を評価する事業性評価融資、不動産以外の流動資産や売掛債権を担保とする流動資産担保融資といった手法も積極的に取り入れています。また、独自の取組として、融資後の健全経営の継続を目的に、経営の格付けを行った上で、格付け作業の過程で把握した強みと弱みを企業診断資料として融資先に提示し、課題やリスクに早めに対処できるよう意思疎通を図っています。

平成29(2017)年4月からは特定のGAP認証を取得した農業者向けに金利を割り引く新たな融資も始めており、同行では、資金面での支援と経営ノウハウやネットワークを活かしたアドバイスを通じて、地域農業の発展に貢献したいと考えています。

(7)経営所得安定対策

(米穀、麦、大豆等の重要な農産物を対象とした担い手に対する経営所得安定対策)

経営所得安定対策は、米穀、麦、大豆等の重要な農産物を生産する農業の担い手(*1)に対し、経営の安定に資するよう、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正する交付金の交付(以下「ゲタ対策(*2)」という。)と、農業収入の減少が経営に及ぼす影響を緩和するための交付金の交付(以下「ナラシ対策(*3)」という。)を実施するものです(図表2-1-20)。

平成29(2017)年度の加入申請状況を見ると、ゲタ対策は加入申請件数が前年度に比べ1千件減少の4万5千件、作付計画面積が同3千ha減少の49万9千haとなりました。また、ナラシ対策は加入申請件数が前年産に比べ4千件減少の10万6千件、申請面積が同1千ha増加の99万1千haとなりました。

図表2-1-20 経営所得安定対策の仕組み

*1 認定農業者、集落営農、認定新規就農者

*2 対象作物は、麦、大豆、てんさい、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたね

*3 対象作物は、米、麦、大豆、てんさい、でん粉原料用ばれいしょ

(8)収入保険

(平成31年1月、農業経営者ごとの収入減少を補てんする収入保険がスタート)

農業災害補償法等の改正により、平成31(2019)年1月に、農業経営者(*1)ごとの収入減少を補てんする収入保険が始まることとなりました(*2)。補てんの仕組みは、まず、農業経営者ごとに、過去5年間の平均収入を基本として、保険期間の営農計画も考慮して基準収入が設定されます。そして、保険期間の収入が基準収入の9割(補償限度)を下回った場合に、下回った額の9割(支払率)を上限として、「掛捨ての保険方式(保険金)」と「掛捨てとならない積立方式(特約補てん金)」の組合せで補てんが行われます(図表2-1-21)。収入保険は、品目の枠にとらわれず、収入全体を対象とした総合的なセーフティネットとしての機能を持つことから、収益性の高い新規作物の生産や新たな販路の開拓等、農業経営者の挑戦を後押しするものとなります。

初年度の加入申請は平成30(2018)年の秋からを予定しており、制度の対象となる青色申告を行う農業経営者数の拡大と収入保険への理解を促進するため、平成29(2017)年度は、農林水産省と農業共済団体が連携して全国各地で説明会を開催し、農業者への制度の周知を図りました。

図表2-1-21 収入保険の補てん方式

*1 収入把握の正確性を期す観点から、日々の取引を残高まで記帳する義務があり、在庫等と帳簿が照合できる青色申告を行っている者を対象

*2 収入保険の実施主体の設立については、第2章第6節(3)を参照

コラム:優遇措置が付与され、経営上の利点もある青色申告

青色申告による節税効果の比較(事業収入600万円の場合)

農家の1月から12月までの年間所得に課される所得税については、翌年3月15日までに、税務署に確定申告を行い、納税額を確定し納付する必要があります。確定申告のため、農業による課税対象となる所得を計算するに当たっては、収入や経費に関する日々の取引の状況を記帳し、領収書等の証拠書類を保管する必要があります。

青色申告とは、一定水準以上の記帳をし、正しい申告を行う者について、課税対象となる所得から最大65万円を控除できるなどの優遇措置が受けられる制度です。一定水準以上の記帳を行うために、貸借対照表等を作成することは、自らの経営を客観的に把握する機会が得られる、金融機関の信用を得られやすくなるといった経営上の利点もあります。

平成27(2015)年の販売農家133万戸のうち青色申告を行っているものは42万戸となっており、農林水産省では収入保険の幅広い活用の観点からも青色申告の普及を推進しています。



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