このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

(1)スマート農業の推進状況と活用可能性 イ 誰もが取り組みやすい農業の実現


農業・食品産業の現場では、人手に頼らざるを得ない作業、きつくて危険な作業、熟練者でなければできない作業も多く残されており、若者や女性の参入の妨げになっています。特に、経営主が65歳以上の販売農家75万戸のうち半数では後継者がおらず(*1)、近い将来、熟練者の「匠の技」が継承されずに失われていくおそれがあります。

一方、この10年間で、法人経営体数は2倍以上に増加し約2万経営体に、これらの法人経営体での常雇い(*2)数も2倍の10万人に達する(*3)など、新たに農業に従事する者が増加してきており、経験の浅い農業者の営農を補う新たな技術が求められています。

農業機械を真っすぐに走らせ高精度で作業を行うためには、高い技術力が必要となりますが、操舵(そうだ)アシストシステムによる直進キープ機能付きのトラクターや田植機の販売が開始されています。さらに、平成30(2018)年12月には、自動運転アシスト機能付きコンバインの販売が開始されました。

自動操舵(そうだ)・アシストシステムの導入により、大区画ほ場において長い直線を自動で正確に走行させることができ、経験の浅いオペレーターでも熟練者と同等又はそれ以上の精度・速度での作業が可能となるなど、誰もが取り組みやすい農業の実現が期待されます。

また、ICT等を活用し、従来マニュアル化が困難とされてきた熟練者の栽培技術や判断等の「匠の技」をデータ化し形式知化することで、新規就農者が短期間でノウハウを習得するための学習システムが実用化されています。さらに、新規就農支援として形式知化した栽培ノウハウを提供しつつ、農地の取得から農産物の販売まで総合的にサポートするサービスを行う民間企業も出てきています。

近年、IT企業等により栽培や経営管理に関するアプリの開発が進められており、地図データを利用して農地を管理する機能、スマートフォンを使って農作業を記録・蓄積する機能、会社経営等に活用されている財務会計の機能等、様々な機能を持つアプリが販売されています。

農作業日誌・経営管理等のアプリを利用することにより、紙媒体の農作業日誌に比べ入力作業が効率化されるとともに、記録したデータの集計を行えることから、自らの農業経営を詳細に振り返ることができます。さらに、AIを導入してデータ解析を行うことにより、生育や収穫量の管理、収支の分析等、農業者は今までにない視点で自身の経営を顧みることができるようになり、経営改善につながることが期待されています。

*1 農林水産省「2015年農林業センサス」

*2 用語の解説1、2(4)を参照

*3 農林水産省「農林業センサス」、「2005年農林業センサス」(組替集計)

篤農家の熟練技術・判断の継承 ~三重南紀農業協同組合(三重県)~

学習システムの概念図

学習システムの概念図

三重南紀(みえなんき)農業協同組合では、三重県紀州(きしゅう)地域農業改良普及センター、NECソリューションイノベータ株式会社と連携して、NEC農業技術学習支援システムを活用した栽培技術支援プラットフォームを構築しました。

これまで産地を支えてきた熟練者が高齢化し、離農する人も増える中で、若手農業者に技術が伝えられることなく失われていくことが懸念されていましたが、極早生(ごくわせ)うんしゅうみかんの摘果方法やマルチ栽培におけるかん水タイミング等、熟練者の栽培技術やノウハウをデータ化し、タブレット端末等を用いてクイズ形式で学習することで、未熟練者でも短期間で平均的な管理技術を身につけることが可能になりました。さらに、他の技術についても熟練者5人と若手農業者3人の協力を得てデータを収集し、作業方法の差異を分析するなど、学習コンテンツの充実に向けて検証を重ねています。

クラウド上でのバックオフィス業務の一元管理により経営改善 ~阿部梨園(栃木県)~

栃木県宇都宮市(うつのみやし)でなしの生産を行う阿部梨園(あべなしえん)では、自己流で無駄や機会損失が発生していた家族経営から脱することが課題でした。そこで「家業から事業へ」というスローガンの下、タブレットレジによる販売データの集計、作業日誌のデジタル化、会計や労務のクラウドサービスの導入等を始めとする500件以上の小さな改善を行い、経営基盤の強化を実現しました。

タブレットレジ

タブレットレジ

IT導入の効果としては、タブレットレジ「Air(エア)レジ」の導入により取得した各商品の詳細な販売データを基に、販売価格の適正化や販売目標の設定等が可能になったことが挙げられます。その上、注文動向を時系列で把握・予測できることから注文管理だけでなく在庫管理や資材管理の精度向上が図られました。さらに、同園が取り入れたクラウド会計サービス「会計freee(フリー)」では、銀行口座やクレジットカードから決済データを自動取得でき、設定したルールに従って取得したデータを自動で仕訳することが可能なことから、会計処理に要する労力が従来の6分の1程度に軽減されました。

代表の阿部英生(あべひでお)さんは、「様々な改善の中でも、日々の作業データを記録することで、今まで関心の薄かった作業時間等の数字が見えるようになり、過去の実績との比較により計画的な作業や作業手順の改善等につながった」と語っています。

経営体質の強化は多くの農業者にとって共通課題であり、そこに伸びしろがあると考え、そのノウハウを「阿部梨園(あべなしえん)の知恵袋」としてWebサイトで公開しています。

農場間ベンチマーキングによる経営改善 ~株式会社五十嵐ファーム(山形県)~

ベンチマーキングシステムの概略図

ベンチマーキングシステムの概略図

養豚業では繁殖・育成・肥育の各段階で数多くのノウハウが必要であり、複数の要因が絡み合って生産成績が決まります。国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という。)では、全国の養豚農家から収集した販売額やコストに関わる30項目にわたるデータを同じものさしで評価し、それぞれの農場の生産成績や経営指標を他農場と比較して解析した結果を還元するベンチマーキングシステム「PigINFO(ピッグインフォ)」を開発しました。このシステムは現在、全国187の農場で利用されています。

山形県鶴岡市(つるおかし)で母豚106頭の一貫生産を行う株式会社五十嵐(いがらし)ファームでは、ベンチマーキングの解析結果を基に成績優秀農場と自農場を比較することで、自農場の経営の弱点が飼料費にあることに着目し、自家配合飼料への変更等に的を絞った改善を行いました。その結果、肉豚1頭当たりの飼料費を5年間で35%削減するなど経営成績全体の底上げにつながりました。代表の五十嵐一春(いがらしかずはる)さんは、「大きく経営を切り替え、好成績を残すことができるようになったのは、経営における問題点を正確に把握した上で対策に取り組むことができた結果であり、このような各農家が提供したデータを基に全体での位置付けをフィードバックし改善につなげるという仕組みは、様々な分野で応用可能ではないか」と語っています。



ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader