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農林水産省

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第6節 食品産業の動向


食品産業は、農林水産業と消費者の間に位置し、食品の生産、流通、消費の各段階において品質と安全性を保ちつつ食品を安定的に供給するとともに、消費者ニーズを生産者に伝達する役割を担っています。我が国の食品製造業は、高い品質やブランド力等の強みを持つ一方で、他の製造業と比べ、労働生産性や全売上げに占める海外における売上げの割合が低いこと等の課題を抱えています。このような課題について認識を共有し、今後のビジョンや対応の方向を検討するために有識者会議が開催され、平成30(2018)年4月にその結果を取りまとめた「食品産業戦略」が策定されました。この中では、2020年代に向けて我が国の各食品製造業者が挑むべき3つの目標を提示するとともに、この目標達成に向け、具体的に取り組むべき事項や成功事例を紹介しています。

(1)食品産業の現状と課題

(国内生産額は近年増加傾向で推移、平成29年は前年並)

図表1-6-1 食品産業の国内生産額

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食品産業(*1)の国内生産額は近年増加傾向で推移していましたが、平成29(2017)年は前年並の99兆円となりました(図表1-6-1)。なお、全経済活動に占める割合は前年並の9.7%となりました(*2)。

また、平成28(2016)年の全製造業に占める食料品・飲料製造業の割合を見ると、事業所数15.0%、従業者数16.1%、製造品出荷額11.5%、付加価値額12.4%となっており、事業所数と従業者数は製造業の中で1位、製造品出荷額と付加価値額は自動車等の輸送用機械器具製造業に次ぐ2位となっています(図表1-6-2)。

図表1-6-2 食料品・飲料製造業の位置付け(平成28(2016)年)

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図表1-6-3 製造品出荷額のうち食品製造業が1位の都道府県(平成29(2017)年)

また、食品産業は国内の農林水産業と密接に関係しており、国内で生産されている食用農林水産物の7割が食品産業を仕向先としています(*3)。また、平成29(2017)年の製造品出荷額を見ると、9道県において全製造業に占める食品製造業の割合が1位となっており、中でも北海道、鹿児島県、沖縄県では3割を超えるなど、地域経済における地場産業として重要な役割を担っています(図表1-6-3)。

*1 食品製造業、関連流通業、外食産業の合計

*2 農林水産省「平成29年農業・食料関連産業の経済計算(概算)」

*3 農林水産省「平成23年(2011年)農林漁業及び関連産業を中心とした産業連関表」

(2020年代において目指すべき目標である食品製造業の「トリプル・スリー」)

食品製造業者や関連事業者等の関係者と政府が、食品産業の抱える課題について認識を共有し、今後のビジョンや対応方向を検討するため、平成29(2017)年5月から9回にわたって、有識者を集めた食品産業戦略会議が開催されました。農林水産省では、この会議の結果を「食品産業戦略(食品産業の2020年代ビジョン)」として取りまとめ、平成30(2018)年4月に公表しました。同戦略では、我が国の産業における食品産業の位置付けや、食品製造業の労働生産性の低さ等の課題が整理され、他方で、和食や日本独自の食品への関心の高まり等、将来性を期待できる「機会」があることが確認されました。また、これらを踏まえて、各食品製造業者が2020年代において目指すべき目標として、需要を引き出す新たな価値の創造による付加価値額の3割増加、海外市場の開拓による海外売上高の3割増加、労働生産性の3割向上が掲げられ、この目標を日本の食品製造業の「トリプル・スリー」として取り組むことが提言されました(図表1-6-4)。

図表1-6-4 食品産業戦略の方向性

(食品産業の付加価値の向上に向けた取組)

食品産業戦略では、第一の戦略として、需要を引き出す新たな価値を創造することで付加価値額を3割増加させることが目標として掲げられています。消費者の支持を得て、付加価値の高い商品やサービスを提供するためには、新たな市場を見いだし、その魅力を消費者に伝えることが必要です。また、食品産業は流行が不連続であるため、従前の技術や流行からの積上げだけでは魅力ある商品やサービスを生み出すことが難しいなどの課題があります。

このような課題の解決に向けては、新たな技術による商品開発、市場動向や需要に応じた商品開発、新たな切り口での既存商品の魅力の掘り起こし等を進めていく必要があります。また、企画・開発力の向上に向けて、多様で能力あふれる人材を確保し、様々な経験や専門性を商品開発に活かすことのできる環境を整備することも重要です。栄養管理を行った食事の宅配サービスを運営する株式会社ファンデリーでは、注文の際に栄養士のオペレーターが相談を受け、顧客の症状等に合った商品の提案・販売を行っています。この取組は、従来、医療機関等での食事指導や献立作成が主であった管理栄養士・栄養士の新たな働き方となっています。

(食品産業の海外売上高の増加に向けた取組)

図表1-6-5 食品関係企業が事業を強化していきたい地域(複数回答)

食品産業戦略における第二の戦略として、近年、増加傾向にある我が国の農林水産物・食品の輸出と併せて、適切な権利保護を図りつつ海外での生産を展開することで、我が国からの輸出製品と海外生産した製品による海外売上高を3割増加させる目標が掲げられています。

我が国の食品産業は、多様な食材、調理法や季節性といった独特な食文化に育まれた歴史や伝統を背景に他国にない商品を生み出しており、このような強みを活かして国内で製造した商品を海外に売り込むだけでなく、国内向けの商品を土台に海外において現地市場の好みに応じて調整し提供することで海外市場を開拓することができます。

株式会社日本政策金融公庫(にっぽんせいさくきんゆうこうこ)が食品関係企業に対して行ったアンケート調査では、3割の企業が我が国からの輸出を、1割の企業が海外展開を強化していきたいと回答し、食品産業における海外事業の強化に向けた積極姿勢が見られます(図表1-6-5)。また、海外展開を強化したいと回答した企業に対して、その課題について尋ねた設問では、6割の企業が「現地の法律や商習慣情報の不足」、「海外展開を任せられる人材の確保・育成」と回答しています。

(食品産業の労働生産性の向上に向けた取組)

図表1-6-6 製造業の業種別の労働生産性(平成28(2016)年)

食品産業戦略では第三の戦略として、国内の生産拠点において自動化等による効率性の向上や費用の削減を進め、労働生産性を3割向上させる目標が掲げられています。

食品製造業の労働生産性(*1)を見ると、製造業全体の8割程度となっており、他の製造業と比べても低い状況にあります(図表1-6-6)。その背景としては、形状が不安定な食品はロボットの扱いには不向きであること、食品製造業は原材料から最終製品に至るまでの工程を完全に均質化することが難しいこと、品目によって生産形態が様々であること等から、機械の導入や自動化が進んでいないこと等が挙げられます。一方で、包装後の箱詰めやこん包、出荷等、機械やロボットの導入にそれほど障壁のない工程もあります。

農林水産省では、食品産業の生産性向上に向けて、課題を抱える食品メーカーとその課題を解決できる事業者が出会う機会を提供することを目的として、食品産業生産性向上フォーラムを全国9か所で開催しました。同フォーラムでは、千人を超える食品事業者等の関係者が参加し、食品製造業の生産性の向上に関する専門家の講演、実際に生産性向上に取り組む事業者の事例紹介、生産性向上の支援を行う事業者等のプレゼンテーション、講演者や支援業者との交流等が行われ、意見交換をきっかけに取引に進展した事例もあります。製造ラインにロボットを導入した食品メーカーでは、導入前に10名で行っていた缶詰の開缶後の具材投入作業から缶排出までの一連の作業を無人化することで、生産性の向上を実現しています。

フルーツゼリーの製造ラインに導入されたロボット

フルーツゼリーの製造ラインに導入されたロボット

図表1-6-7 産業別の欠員率

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食品産業の働き方改革早わかりハンドブックとチェックリスト

食品産業の働き方改革早わかりハンドブックと
チェックリスト

さらに、農林水産省では、中小企業等経営強化法(*2)の経営力向上計画に係る税制・金融等の支援措置を通じ、計画認定を受けた中小食品事業者等が行う生産性向上のための設備投資を後押ししており、平成30(2018)年度は3,988件の計画認定を行いました。

また、産業別の欠員率を見ると他の産業に比べ、食料品製造業、卸売・小売業、飲食店・宿泊業等の食品産業は割合が高くなっており、人材不足が深刻な状況となっています(図表1-6-7)。

多様で能力あふれる人材を確保するためには、働き方改革を進め、様々なライフスタイルの人が働きやすい職場づくりをすることが必要であり、農林水産省では、食品事業者が働き方改革を進めていく上でのヒントやきっかけ作りに役立つ事例を紹介したハンドブックを各種会議、セミナー等を通じて普及しました。ハンドブックでは、チェックリストにより、働き方改革を進める上で基本となる、労働時間、休暇の取得、ハラスメントの有無等の項目について取組状況を確認でき、まだ取り組めていない取組項目ごとにヒントや取組事例を参考とすることができるようになっています。また、食品事業者を対象に、働き方改革に関する専門家による講演や先進事例の紹介、生産性向上に関する支援策の紹介、経営についての個別相談を内容とした「食品産業のための「稼ぐ力」 応援セミナー」を全国11か所で開催しました。

*1 労働生産性とは従業者1人当たりの付加価値額

*2 平成28(2016)年7月法改正施行

(グローバル・フードバリューチェーン構築の推進)

農林水産省では、我が国の食産業(*1)の海外展開と成長、民間投資と経済協力との連携による途上国の経済成長、食のインフラ輸出と日本食品の輸出環境の整備を目的として、グローバル・フードバリューチェーン(*2)推進官民協議会を開催し、海外の農業・貿易投資環境に関する情報を共有するとともに、官民連携で相手国への働き掛け等を行う二国間政策対話や官民フォーラムの開催等により、海外展開を強化したい企業を支援する取組を進めています。平成30(2018)年度には、4月にベトナム農業・農村開発省との間で大臣間対話を実施し、農産物・食品の品質に関する規格・認証の活用に向けた協力を行うことで合意したほか、7か国との間で対話を実施しました(図表1-6-8)。今後、農林水産省では、このような政府間の協力や民間投資の具体的な成果の実現を目指し、効果的な取組を実施することとしています。

図表1-6-8 平成30(2018)年度に実施されたグローバル・フードバリューチェーン構築に係る二国間政策対話等

*1 食産業とは、農林水産物の生産から製造・加工、流通、消費に係る幅広い産業を指し、花き、種苗、農業関連資材、農業機械・食品機械等関連する産業も含む

*2 用語の解説3(1)を参照

(2)食品流通の効率化や高度化

(食料品流通の合理化等を図るため、卸売市場法等が改正)

我が国における農林水産物・食品の流通構造を見ると、集荷・分荷、価格形成、代金決済等の機能を有する卸売市場を介して取引を行う形態が主流となっています。一方で米国の流通構造を見ると、大手の食品小売業者が卸機能を有し、生産者を束ねる集出荷業者と直接取引を行う形態が主流となっており、卸売業者は、主に外食業者や地元小売業者への流通を担っています(図表1-6-9)。

図表1-6-9 日本と米国の流通構造

また、近年、農林水産物・食品流通の統合・全国化が進む一方で、大規模な流通ルート以外にも小規模生産者や有機農産物等の多様な消費者ニーズに対応するための流通経路として、ファーマーズマーケットや生鮮食料品分野でのインターネット通販等の多様な販売チャネルの構築に向けた動きも進んでいます。

このような状況の変化に対応して、生産者の所得向上と消費者ニーズへの的確な対応を図るためには、卸売市場について、取引の実態に応じて創意工夫を活かした取組を促進するとともに、食品流通全体について、効率化や情報通信技術の導入、品質・衛生管理の高度化等の流通の合理化と、その取引の適正化を図ることが必要です。

このため、卸売市場を含めた食品流通の合理化と公正な取引環境の確保を一体的に促進する観点から、平成30(2018)年6月に「卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律」が公布されました。

卸売市場法の改正により、公正な取引の場として共通の取引ルールを遵守している卸売市場が農林水産大臣又は都道府県知事の認定を受け、名称使用が認められるとともに、施設整備への支援を受けられるようになりました。また、直荷引き、商物分離、第三者販売等について、卸売市場ごとにルールを設定することが可能となったことから、品揃(しなぞろ)えの充実や販路拡大、輸送時間の短縮による鮮度保持・物流の効率化につながる産地直送、農産物の過不足を補うことが可能となる市場間ネットワークの構築等、新たなビジネスモデルの展開が期待されています(図表1-6-10)。

図表1-6-10 卸売市場法改正により期待されるビジネスモデルの例

食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律(*1)では、食品等の流通の合理化に向けた様々な事業者の創意工夫を活かした事業展開に対して、融資、債務保証等の支援措置を講ずる計画認定制度が創設されました。また、食品等の取引の適正化のため、独占禁止法や下請法の関連法に違反していないかなどについて、相談ダイヤルと相談サイトを開設し、相談内容に応じて調査を行い、食品流通事業者等に対して調査結果に基づく指導や助言等の必要な措置を講ずることとしました。

*1 食品流通構造改革促進法を一部改正し、名称変更

(農業競争力強化支援法に基づき、農産物流通等の合理化に向けた事業再編を支援)

農林水産省は、平成29(2017)年8月に施行された農業競争力強化支援法に基づき、飲食料品の卸売・小売・製造事業を行う事業者による、農産物流通等の合理化の実現に資する事業再編の取組を促進しています。平成30(2018)年度には、施設の再編による製造・出荷体制の効率化、設備投資による高付加価値商品の開発・販売等に向けた事業再編計画を飲食料品の製造業で5件、卸売事業で3件、新たに認定し支援を実施しています。

(3)環境問題等の社会的な課題への対応

(我が国の食品ロスの発生量は年間643万t)

図表1-6-11 産業別の欠員率
我が国の食品ロスの状況

我が国の食品ロスの状況

食品ロスとは、廃棄された食品のうち、売れ残りや規格外品、返品、食べ残し、直接廃棄等の、本来食べられるにも関わらず廃棄されている食品のことをいいます。我が国の食品ロスの発生量は、年間643万tと推計されます。これを国民1人当たりに換算すると年間51kgとなり、我が国の1人当たりの米の年間消費量54kgに相当する量です。また、1日当たりに換算すると139gとなり、これは茶碗(ちゃわん)1杯のごはんの量に相当します。

食品ロスの発生場所の内訳を見ると、一般家庭における発生が最も多く291万t、次いで食品製造業137万t、外食産業133万t、食品小売業66万t、食品卸売業16万tとなっています(図表1-6-11)。

食品ロスについては、国連の持続可能な開発目標(SDGs)(*1)において令和12(2030)年までに小売・消費レベルにおける1人当たりの食料の廃棄を半減させる目標が掲げられているなど、国際的な関心が高まっています。

SDGsを踏まえ、平成30(2018)年6月に閣議決定された「第4次循環型社会形成推進基本計画」では、家庭から発生する食品ロスを令和12(2030)年までに平成12(2000)年度と比べ半減させる目標が設定されており、事業者から発生する食品ロスについても食品リサイクル法(*2)の基本方針の見直しの中で目標を設定することとしています。

食品リサイクル法の基本方針では、食品廃棄物等の発生抑制に優先的に取り組んだ上で、飼料化や肥料化等の再生利用を推進することとしています。この方針に基づき、食品関連事業者、消費者、地方公共団体等の様々な関係者が連携した、フードチェーン全体での食品ロス削減国民運動が展開されており、国はこれらの取組を支援しています。

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 正式名称は「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」

(食品ロスの削減に向けて商慣習の見直しや製造、包装技術の開発等を実施)

食品業界における食品ロスの一つの要因である商慣習の見直し(*1)については、大手の総合スーパー、コンビニエンスストアにおいて進められている一方で、多くの食料品スーパー等で見直しが進んでいないことや、より厳しい納品期限を設定する小売店があること等が課題となっています。このため、農林水産省は、経済産業省との連名で卸売業者と小売業者の業界団体に対し、納品期限の緩和に向けた取組の推進を要請しています。また、製造業・卸売業・小売業の話合いの場である「食品ロス削減のための商慣習検討ワーキングチーム」では、納品期限緩和の対象品目の拡大に向けて、カップ麺や袋麺、レトルト食品等について、店舗での売上げや廃棄への影響等の検証が行われています。そのほかにも食品業界では、賞味期限の延長に向けた製造技術や包装技術の開発、余剰生産や店頭廃棄を減らすためのメーカーと小売店との発注情報の共有、ショッピングサイトやイベントにおける納品期限切れ商品の販売等の取組が実施されています。

*1 商慣習に基づく小売業者の加工食品の納品期限について、製造日から賞味期間の3分の1に相当する日数を経過した日(いわゆる3分の1ルール)から2分の1を経過した日にまで緩和するというもの

(全国各地で広がりつつあるフードバンク活動)

生産、流通、消費等の過程で発生する未利用食品を食品企業や生産現場等からの寄附を受けて、必要としている人や施設等に提供するフードバンク活動が全国各地で広がりつつあります。まだ十分に食べられる食品を有効に活用することにより、食品ロスの削減を図るとともに、食品の支援を必要としている人々へつなぐ架け橋として、今後、その更なる発展が期待されています。

一方、フードバンク活動に対する社会的な理解が十分でないことに加え、食品の衛生的な取扱いやトレーサビリティの観点から、フードバンク活動を行う団体側の体制を懸念する声があり、食品関連事業者等が安心して食品の提供を行える環境が十分に整っていないことが課題となっています。このような中、農林水産省では、フードバンク活動の食品の品質確保、衛生管理、情報管理等の適切な運営を行うための手引きを作成し、食品の提供者である食品関連事業者等からの信頼性向上を図っています。また、平成30(2018)年9月には、衛生管理について記した表や管理すべき項目の作成例を加える形でこの手引きを改正しました。さらに、食品を提供する側である企業と、食品を受け取る側であるフードバンク活動を行う団体のマッチングを図るための情報交換会を全国で開催しています。

事例:独自のモデルでフードバンクへの商品提供を促進(広島県ほか)

広島県
商品の受渡しの様子

商品の受渡しの様子

株式会社ハローズでは、まだ食べられる商品の廃棄に対する従業員からの「もったいない」の声をきっかけに、平成27(2015)年に、二重包装破れやラベル汚れ等により賞味期限・消費期限内ではあるものの、通常の販売ができない商品を各地のフードバンクへ提供する取組を始めました。

取組を始めた当初は、全店舗から自社の物流センターへ集め、商品をフードバンクに提供していましたが、提供量の増加に伴い、引取りに来るフードバンクの負担が大きくなっていました。

店舗近隣のフードバンクや支援団体が直接店舗に引取りに来る独自の仕組みである「ハローズモデル」の運用を開始し、商品の受渡しの際の負担軽減や、賞味期限・消費期限が近い商品や生鮮品の提供を実現しています。また、この取組は、第6回食品産業もったいない大賞で農林水産省食料産業局長賞を受賞しました。

同社では、今後、「ハローズモデル」での社会貢献の輪を広げ、地域社会の生活文化向上に向けて、関係者と連携し、社会貢献への取組を継続することとしています。

(外食や小売店と協力して食品ロス削減に取り組む地方公共団体が増加)

図表1-6-12 小売店の店頭用啓発資材
図表1-6-13 食べ残しゼロを推進する呼びかけの例

農林水産省では、食品ロス削減に向けた消費者理解を促進するため、小売事業者等が利用可能なポスター等を作成し、平成30(2018)年10月を啓発月間として啓発活動を実施しました(図表1-6-12)。そのほかにも、恵方巻き等の一時的に需要が急増する季節商品の廃棄に関して、小売事業者に対して、貴重な食料資源の有効活用という観点を踏まえた上で需要に見合った販売を行うよう働き掛けました。

また、近年、外食や小売店と協力して食品ロス削減に取り組む地方公共団体が増加しており、地方公共団体間のネットワークである「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」への参加者が平成31(2019)年1月15日時点で385団体となるなど、地域から「もったいない」を見直す動きが広がっています。特に、宴会時に「食べきりタイム」を設け、食品ロスを減らす「30・10運動」(*1)は長野県松本市(まつもとし)で始まり、福井県、静岡県、福岡県福岡市(ふくおかし)、佐賀県佐賀市(さがし)等、多数の地方公共団体に広がっています(図表1-6-13)。さらに、全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会と共同で、飲食店舗における食品提供、食材の使い切りの工夫等を例示した「飲食店等の食品ロス削減のための好事例集」を作成しました。

*1 「30・10(サンマルイチマル)運動」は、宴会において乾杯後30分間と終了前10分間は席で料理をしっかり食べる運動のこと

(我が国では年間903万tのプラスチックが廃棄)

図表1-6-14 食品産業で使われる主なプラスチック製品

プラスチックは、軽量で破損しにくいことや、加工・着色が容易であること、水分や酸素を通しにくく食品を効果的に保護できること等から、農林水産・食品産業において幅広く活用されています(図表1-6-14)。

我が国におけるプラスチックの製造、排出の状況を見ると、平成29(2017)年では、1,012万tの樹脂製品が消費されており、それらの製品が使用され903万tのプラスチックが廃棄されている状況となっています(図表1-6-15)。また、排出されたプラスチックの処理状況を見ると、サーマルリサイクル(*1)を含めると、総排出量の86%に当たる775万tが有効利用されている一方で、128万tについては有効利用ができておらず、焼却や埋立てにより処理されている状況にあります。

*1 廃棄物について単なる焼却処理を行うのではなく、焼却の際に発生する熱エネルギーを回収し利用すること

図表1-6-15 プラスチックのマテリアルフロー図(平成29(2017)年)

(プラスチック容器の軽量化・薄肉化やリサイクルが容易な容器包装への転換を推進)

近年、我が国を含む世界各国から多量の廃プラスチックを輸入し再生利用してきた中国が環境問題の顕在化等を理由に、平成29(2017)年12月末に輸入禁止措置を講じたことから、国内での資源循環体制の整備が喫緊の課題となっています。

さらに、海岸での漂着ごみやマイクロプラスチック(*1)等の海洋プラスチック問題については、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の中で「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」ことが掲げられるなど世界的な動きが出ており、内閣総理大臣は我が国が議長を務める令和元(2019)年のG20大阪サミットでこの問題を取り上げ、国際的対策を主導する意向を示しています。

このような動きを踏まえて、国内においても環境省の中央環境審議会における「プラスチック資源循環戦略」の策定に向けた検討等、プラスチック問題に関する検討が進められています。農林水産・食品産業は容器包装等、消費者に極めて身近な多くのプラスチック製品を利活用していることから、積極的に対応していく必要があり、各事業者においては使用量削減に向けた容器の軽量化・薄肉化(Reduce)、リサイクルが容易な容器包装への転換(Recycle)等の取組が実施されています。

例えば、飲料業界では、環境に配慮したペットボトルの自主設計ガイドラインを作成し、キャップ、ボトル、ラベルを分別排出やリサイクルが容易な容器包装に統一したことにより、85%程度の高いリサイクル率を達成しています。

農林水産省では、業界の取組の方向性を多方面から検討する有識者懇談会である「地球にやさしいプラスチックの資源循環推進会議」を開催するほか、農林水産・食品産業の業界団体・企業からプラスチック資源循環に資する自主的取組を「プラスチック資源循環アクション宣言」として広く募集し、応募のあった3R(*2)の推進や環境美化活動の取組について情報発信することで、国民一人一人のプラスチック資源循環への理解を深め、取組を促進する機運を醸成しています。

*1 サイズが5mm以下の微細なプラスチックごみのことで、近年、生態系に及ぼす影響が懸念されている。

*2 ごみを減らすリデュース(Reduce)、使える物を繰り返し使うリユース(Reuse)、ごみを資源として再び利用するリサイクル(Recycle)を合わせた総称

コラム:SDGs×食品産業

持続可能な開発目標(SDGs)は、環境、社会、経済の3つの側面のバランスがとれた社会の実現に向けた17のゴールと、その課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から成る世界共通の目標です。

世界的に深刻化する環境問題や社会問題等については、国や国際機関だけでは対処しきれず、SDGsの達成に向けては公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。なかでも、企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。近年では、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への配慮について企業の取組を積極的に評価するESG金融が注目され、投資家を起点にSDGsの取組を積極的に評価する動きも広がっています。

食品産業は、様々な栄養素を含む食品を安定供給することでSDGsが目指す社会に貢献できる産業で、SDGsへの積極的な参画が期待されています。このような中、我が国の食品事業者においては、健康課題の解決に貢献する商品の開発、環境負荷の低減、持続可能な原料調達、従業員が安心して働ける職場づくり等、SDGsの達成に向けた取組を実施する企業が増えています。

農林水産省では平成30(2018)年12月にWebサイト「SDGs×食品産業」を開設し、これらの取組について実例を交えて分かりやすく紹介しています。

SDGs×食品産業で紹介している企業の取組の例


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