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農林水産省

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第2節 農業の構造改革の推進


担い手の減少、高齢化が進行する中、我が国農業を持続可能なものとするためには、農地利用の最適化や担い手の育成・確保等を推進し、効率的で生産性の高い農業経営に取り組んでいく必要があります。近年では、農地の集積・集約化(*1)を通じた規模拡大や経営の法人化等の動きが見られます。

(1)農地中間管理機構の活用等による農地の集積・集約化

(農地面積は緩やかに減少、荒廃農地面積は横ばい)

平成30(2018)年における我が国の農地面積は、荒廃農地(*2)からの再生等による増加があったものの、耕地の荒廃、宅地等への転用、自然災害等による減少を受け、前年に比べて2万4千ha減少の442万haとなりました(図表2-2-1)。作付(栽培)延べ面積も減少傾向が続いており、この結果、近年の耕地利用率は92%となっています。

また、荒廃農地の面積は、前年と同水準の28万3千haとなりました。このうち、再生利用が可能なもの(遊休農地(*3))は9万2千ha、再生利用が困難と見込まれるものは19万haとなっています(*4)。地域における定期的な話合いを通じ、リタイアを考えている高齢者の農地を担い手に集積すること等で荒廃農地の発生を未然に防ぐとともに、再生利用の取組を支援すること等により荒廃農地の解消を進めることが重要です。

図表2-2-1 農地面積、作付(栽培)延べ面積、耕地利用率

データ(エクセル:83KB / CSV:2KB

*1~3 用語の解説3(1)を参照

*4 農林水産省「平成29年の荒廃農地面積について」

(農地中間管理機構による農地の集積・集約化の取組を加速させる必要)

図表2-2-2 農地バンクを活用して分散錯圃を解消した事例(福井県越前市)
図表2-2-3 担い手への農地集積率

担い手の減少、高齢化が続く中で、我が国農業を持続可能なものにしていくためには、担い手への農地の集積・集約化を進め、より効率的な農業経営を進めていく必要があります。平成26(2014)年に発足した農地中間管理機構(以下「農地バンク」という。)は、地域内に分散・錯綜(さくそう)する農地を借り受け、条件整備等を行い、再配分して担い手への集約化を実現する農地中間管理事業を行っています。

農地バンクの活用により、実際に、地域の話合いが進むにしたがって、農地の再配分を行い、分散錯圃(さくほ)を解消した事例や、担い手が不足している地区において、地域との連携の下に県外から企業を誘致した事例等、全国で優良な事例が出てきています(図表2-2-2)。

このような取組の結果、担い手への農地集積率は再び上昇に転じ、平成29(2017)年度末時点では55.2%になりました(図表2-2-3)。これを地域別に見ると、農業経営体(*1)の多くが担い手である北海道では集積率が9割を超えるほか、水田率や基盤整備率が高く、集落営農(*2)の取組が盛んである東北、北陸では集積率が高い傾向にあることが分かります。一方で、大都市圏を抱える地域(関東、東海、近畿)や中山間地を多く抱える地域(近畿、中国四国)の集積率は総じて低い傾向にあります(図表2-2-4)。令和5(2023)年度までに担い手への農地集積率を8割にするという目標の達成のためには、取組を一層加速させていく必要があります。

図表2-2-4 地域別の担い手への農地集積率(平成29(2017)年度)

*1 用語の解説2(1)を参照

*2 用語の解説3(1)を参照

(法施行後5年を迎える農地中間管理事業の課題を解消するため、法案を国会に提出)

一方で、農地中間管理事業の推進に関する法律が施行後5年を迎える中で、課題も明らかになってきており、具体的には次の4点が挙げられます。

図表2-2-5 都府県における農地バンクの転貸実績

まず1点目は、農地の集積・集約化の気運が以前からあった平場の水田地帯における集落営農での事業の活用が一巡し、今後は新たに地域の話合いから始めなければならない地域が多いことです(図表2-2-5)。このため、地域の話合いを再活性化することが課題となっています。

2点目は、農地バンクが農地を借り受け、転貸する場合に、市町村が作成する計画と農地バンクが作成する計画の2つが必要となるなど、手続が煩雑であるという意見があり、事務手続の簡素化を図ることが課題となっています(図表2-2-6)。

3点目は、農地バンクは地域とのつながりが相対的に弱いため、農協等が担う農地利用集積円滑化団体等の農地のコーディネーター役と一体的に推進する体制を構築する必要があるということです。

4点目は、担い手の減少、高齢化等の状況を踏まえ、担い手の活動の広域化に対応した認定農業者制度(*1)の見直しや、新規就農者の更なる確保等に取り組む必要があるということです。

これらの課題を解消し、担い手による農地利用の更なる集積・集約化を加速化させるため、農地バンクと市町村、農協、農業委員会、土地改良区等の関係機関とが連携を強め、一体となって農地集約のための地域の話合いを推進していくことを内容とする「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。

あわせて、担い手の不足等により、これまで集積が進みにくかった中山間地域についても地域ぐるみでの農地の集積・集約を進めていくこととしています。

図表2-2-6 農地バンクの借受け・転貸の手続フロー図

*1 用語の解説3(1)を参照

事例:中山間地域の果樹地帯で担い手への農地の集積・集約化が進展(愛媛県)

愛媛県松山市
再生した果樹団地の様子

再生した果樹団地の様子

愛媛県松山市(まつやまし)北部の中山間地に位置する小山田坊田坊主野(おやまだぼうだぼうずの)パイロットファーム地区は、うんしゅうみかんやキウイフルーツの栽培が盛んな果樹地帯ですが、近年過疎化が進行し、担い手の確保と遊休農地の解消が急務となっていました。

平成28(2016)年、農業大学校や農協の協力により同地区で新規就農を希望する若い人材が現れたことを契機に、遊休農地の解消と、不在村地主を含む全地権者から農地バンクへの農地の貸付けが進められました。農地の利用調整の結果、面的にまとまりのある形で新規就農者や今回の集積を契機に法人化した経営体等の担い手に貸付けが行われ、果樹団地の再生が実現しました。さらに、農協が遊休農地を活用し、就農希望者の研修の場を設ける取組も行われています。同地区ではその後も担い手への集積が進み、平成31(2019)年4月には地区内で耕作可能な農地である10.8haの全てを担い手に集積することとしています。

(農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律が施行)

平成30(2018)年11月に改正された農業経営基盤強化促進法では、相続未登記であっても、相続人の1人が簡易な手続で、農地バンクに最長20年間貸付可能な制度が創設されました。今後もこの制度を活用して、全農地の2割を占める相続未登記農地等の円滑な貸借が行われることが期待されています。

また、農作物の栽培の効率化・高度化を図るために農業用ハウス等の底面を全面コンクリート張りにする場合には農地転用の許可が必要でしたが、同時に改正された農地法では、一定の要件を満たす場合は、農地転用に該当しないとする規定が追加されました。

事例:相続未登記農地に関する新制度を全国で初めて活用(鹿児島県)

鹿児島県喜界町
再生した果樹団地の様子

公示された未登記農地

鹿児島県喜界町(きかいちょう)では、相続未登記農地が多く、国営かんがい排水事業の着手に向けた課題となっていました。今般把握された貸付意向のある相続未登記農地では、登記名義人は既に亡くなっており、相続人の1人が事実上の管理者として固定資産税を納付していました。さらに、制度上探索すべき範囲(登記名義人の配偶者と子供)には相続人がいないことが判明したため、平成31(2019)年1月、全国で初めて本制度を活用した公示が行われました。

当該農地については、6か月間の公示期間を経て農地バンクが権利を取得し、借受希望者へ貸し付ける予定です。同町では、引き続き国営かんがい排水事業の着手に向けて、更に新制度を活用し、農地の集積・集約化を図っていく方針です。

(2)担い手の育成・確保と人材力の強化

(増加する法人経営体)

平成30(2018)年における販売農家(*1)の基幹的農業従事者数(*2)は、前年に比べ3.8%減少の145万1千人となり、平均年齢は67歳となりました。また、農業経営体数は、前年に比べ3.0%減少の122万1千経営体となりました(図表2-2-7)。一方、組織経営体(*3)数は、前年に比べ600経営体(1.7%)増加の3万6千経営体で、特に法人経営体(*4)数は、前年に比べ900経営体(4.1%)増加の2万3千経営体となっています。農業経営体数が一貫して減少していく中、従業員を集めやすい、経営継続がしやすいなどの利点があることから、大規模農家や集落営農組織を中心に、法人経営体数は年々増加しています。

法人経営体に関しては、都道府県段階に設置した農業経営相談所を通じた相談対応、専門家派遣等によるサポートが実施されています。

図表2-2-7 農業経営体数と組織経営体数

*1 用語の解説1、2(2)を参照

*2 用語の解説1、2(4)を参照

*3 用語の解説1、2(1)を参照

*4 法人の組織経営体のうち販売目的のものであり、一戸一法人は含まない。

(経営耕地面積が10ha以上の層の面積シェアは年々増加)

経営耕地面積が10ha以上の層の面積シェアを見ると、年々増加し、平成30(2018)年には52.7%となっています(図表2-2-8)。また、意欲ある担い手がその活動領域を継続的に拡大している動きもあり、平成29(2017)年では複数市町村で農地を利用する農地所有適格法人数は1,955に上っています(図表2-2-9)。

このように、担い手への農地集積が進む中、農業経営体数の減少や高齢化の進展、分散錯圃(さくほ)の状態のため、担い手が受けられる範囲を超えた農地が出てくる地域もあります。このような課題を解決するためには、基盤整備を実施し、農地の集約化を図ることで担い手が使いやすくすると同時に、高齢者が生きがいとして農業を続ける農地や、小規模でも経営が成り立つ新規作目を導入する農地等、地域の農地利用について全体的な話合いを進めることが重要です。

図表2-2-8 経営耕地面積規模別カバー率(構成比)
図表2-2-9 複数市町村で農地を利用する農地所有適格法人数(平成29(2017)年)

事例:円滑に担い手への農地の集積・集約を進めるための体制づくり(新潟県)

長崎県雲仙市
法人化に向けた会議の様子

法人化に向けた会議の様子

新潟県長岡市(ながおかし)の槇山町(まきやままち)地区は、狭小な農地が多い水田地帯にあり、地区内に担い手はいるものの、当事者間で直接農地の貸借に関する取引を進めていたため、農地が分散し、営農する上で非効率な状態が続いていました。

この状態を打破するため、市職員、農協職員が中心となり、まず担い手間での協議を進め、集約後の地域の姿について意識の共有を図りました。次に、農地の賃料や契約方法について地域で統一するなど、地権者との円滑な農地の貸借を実現するための取決めについて協議を進めました。これらの取組を通じ、平成29(2017)年12月に農地バンクを活用した担い手への農地の集積・集約化が実現しました。さらに、畦畔(けいはん)除去による団地化を通じた作業効率の向上や、コシヒカリ偏重から業務用多収性品種の作付けによる作期分散と収益力向上を図っています。

同地区では、今後とも担い手への農地の集積・集約化を継続するため、地域の話合いの場として、担い手、地権者等で構成される「槇山町(まきやままち)農地集積組合」を設立しました。将来、担い手の高齢化等により離農や規模縮小があった際には、同組合が中心となって、農地利用の最適化を進めることとしています。

(リース方式による参入数は堅調に増加)

平成21(2009)年に全面自由化されたリース方式(*1)による農業参入法人数については、平成29(2017)年には3,030となり、自由化前の5倍のペースで増加しています(*2)。参入した企業の業務形態別の割合を見ると、農業・畜産業が24%、食品関連産業が21%、建設業が11%、特定非営利活動が9%となっています。

*1 農地の全てを効率的に利用するなどの基本的な要件を満たす企業が、法人形態や業務内容等にかかわらず農地を借り受けて農業に参入する方式

*2 農林水産省調べ

(農地所有適格法人の常時従事要件が緩和される法案を国会に提出)

平成28(2016)年4月に改正された農地法では、農地所有適格法人の要件について、農業関係者以外の議決権要件を50%未満にまで拡大するとともに、農作業従事役員の要件を1人以上に緩和しましたが、平成29(2017)年の活用実績はそれぞれ1.1%、1.7%と、低調となっています(*1)。

他方、農業者の経営発展に伴い、経営ノウハウの共有や資金調達の円滑化の観点から、グループ会社間の役員を兼務した場合の農業への常時従事要件を緩和してほしいといった要望があります。このような農業経営上の新たなニーズに対応するため、農地を所有できる法人が役員をグループ会社で兼務する場合における常時従事要件の緩和等を内容とする「農地中間管理事業の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。

*1 農林水産省調べ

(集落営農組織での新しい動き)

図表2-2-10 集落営農組織数

担い手が少ない地域においては、地域における農業経営の受皿として、集落営農の組織化・法人化を推進してきました。平成31(2019)年2月時点では、集落営農組織全体に占める法人組織の割合は35.5%になりましたが、依然として3分の2は法人化されていません(図表2-2-10)。また、401組織が解散しており、オペレーター不足が深刻であるとの声も聞かれます。

このような中で、集落営農組織では、生き残りをかけて様々な新しい動きが見られるようになってきました。例えば、複数の集落営農が共同して法人を設立するといった取組や、経営の経験が豊かな担い手を外部から招致するといった動きがあります。

また、担い手不足のより深刻な中山間地域において生き残りを図るためには、畑地化も含めた基盤整備の活用、新規作物等の導入等、総合的な支援が重要です。

事例:集落営農法人と酒造会社との連携により、酒米生産から醸造まで地域で一貫した日本酒づくりが実現(山口県)

山口県萩市・阿武町
萩酒米みがき協同組合の皆さん

萩(はぎ)酒米みがき協同組合の
皆さん

山口県萩市(はぎし)・阿武町(あぶちょう)の集落営農法人は、平成27(2015)年から地元酒造会社向けに酒造好適米である「山田錦(やまだにしき)」の生産を開始しました。当初は日本酒を醸造するために必要な、米の周辺部を削る「とう精」を行える施設が周辺になかったため、地元酒造会社はこの作業を県外の工場に委託していました。また、地区内の個々の集落営農では、「山田錦(やまだにしき)」の生産量が少ないことも課題となっていました。

平成29(2017)年4月、酒米を生産する集落営農法人と地元の酒造会社とが連携して萩(はぎ)酒米みがき協同組合を立ち上げ、同組合のとう精工場を設立しました。これにより、酒米生産からとう精、醸造を地域内で一貫して行えるようになりました。

この取組により生産された、酒米生産者から醸造会社まで「顔の見える」日本酒は、今後、ブランド化を通じた収益の拡大が期待されています。また、地域における「山田錦(やまだにしき)」の更なる生産拡大のほか、冬季のとう精作業や酒造会社で杜氏として従事することにより、集落営農構成員の所得の安定確保が図られています。

(認定農業者数は横ばいで推移)

認定農業者制度は農業者が作成した経営発展に向けた計画を市町村が認定するもので、認定を受けた農業者(認定農業者)には、計画の実現に向け、農地の集積・集約化や経営所得安定対策、低利融資等の支援措置が講じられています。

認定農業者数は、平成29(2017)年度末時点で24万1千経営体となっており、近年はほぼ横ばいで推移しています。認定農業者のうち法人は一貫して増加しており、平成29(2017)年度末では前年度に比べて6.6%増加の2万4千経営体となりました。一方、認定農業者のうち個人は、65歳以上の認定農業者が7万2千経営体となっており、前年度と比べて6.2%増加していることから、高齢化が進んでいることが分かります。

(49歳以下の新規就農者数は4年連続で2万人超)

平成29(2017)年の49歳以下の新規就農者は2万760人となり、4年連続で2万人を超える結果となりました(図表2-2-11)。また、49歳以下の新規参入者(*1)は2,710人で、調査を開始した平成19(2007)年以降最も多くなっています。

新規就農者全体としては5万5,670人と前年に比べ4,480人(7.4%)減少しました。これは雇用情勢が堅調に推移する中で他産業からの就農者が減少したこと等が影響したと考えられます。

図表2-2-11 新規就農者数

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データ(エクセル:29KB / CSV:2KB

*1 用語の解説2(5)を参照

(青年就農者に対する支援)

農林水産省では、青年の新規就農を促進するため、平成24(2012)年度から、原則45歳未満の者に対し、就農準備段階(準備型、最大150万円を最長2年間)や経営開始時(経営開始型、最大150万円を最長5年間)を支援する資金を交付する農業次世代人材投資事業を実施しています。平成29(2017)年度は、準備型で2,342人、経営開始型で12,672人がこの事業を活用しました。

また、経営開始型について、本事業を創設した平成24(2012)年度から平成29(2017)年度までの交付人数は累計で18,235人となっています。平成29(2017)年10月時点で、交付終了者のうちその後も就農を継続しているのは、4,644人中4,479人(96.4%)となっています。

(より若い年代で進展する雇用就農)

近年、組織経営体数の増加等の結果、雇用によって労働力の確保を進める動きが見られるようになりました。平成17(2005)年の常雇い(*1)数は12万9千人でしたが、10年後の平成27(2015)年には22万人と、1.7倍に増加しています(図表2-2-12)。同様に全経営体に占める常雇いがいる経営体の割合を見ると、1.4%から3.9%に上昇しています。

さらに、平成30(2018)年の常雇い数は24万人、常雇いがいる経営体の割合は5.3%で共に前年並となりましたが、49歳以下の常雇い数の割合は51.1%で前年に比べ0.9ポイント上昇しており、より若い年代での雇入れが進んでいることが分かります(図表2-2-13)。

図表2-2-12 常雇い数と全経営体数に占める常雇いがいる経営体の割合
図表2-2-13 49歳以下の常雇い数

*1 用語の解説1、2(4)を参照

(農業経営者が一番の課題に挙げているのは労働力不足)

我が国の人口減少、高齢化が進行する中で、多くの産業で労働力の不足が叫ばれていますが、農業分野においても労働力の不足は深刻なものとなっています。農業関連の職業の有効求人倍率は年々上昇傾向で、全職業の平均と比べ高い水準で推移していることが分かります(図表2-2-14)。また、平成29(2017)年に農林水産省が行った49歳以下の農業経営者へのアンケートにおいて、現在の経営における課題を尋ねたところ、「労働力の不足」が全回答の中で最も高い結果となりました(*1)。

また、農の雇用事業(*2)を活用している経営者に対して行ったアンケートでは、雇用者(正社員)を確保するための求人方法について調査しており、平成30(2018)年と平成27(2015)年の結果を比較すると、求人情報サイトや自社のホームページといったインターネットを用いたものが増加していることが分かります(図表2-2-15)。インターネットを活用した求人広告は、費用が掛かるものもありますが、若い年代を中心に訴求効果が高く、また、簡便に全国に求人広告が出せるという利点があります。他産業との人材の取合いが激しくなっている中、より多くの人材を確保するため求人方法も変化していることがうかがえます。

図表2-2-14 農業の有効求人倍率
図表2-2-15 雇用者(正社員)の求人先

*1 平成29年度食料・農業・農村白書14ページを参照

*2 農業法人等が新規就農者を雇用して実施する実践研修等を支援する事業

事例:趣向を凝らした採用方法と働きやすい勤務条件の整備によって雇用の確保に成功(北海道)

北海道上士幌町
牧場ツアーの様子

牧場ツアーの様子

2万頭を超える肉牛・乳牛を飼養するなど全国でも有数の大規模経営を行っている北海道上士幌町(かみしほろちょう)の株式会社ノベルズは、多彩な求人活動と社員が働きやすい環境づくりの推進により、多くの社員を雇用することに成功しています。

同社のWebサイトでは、若手社員や移住してきた社員のインタビュー、写真や動画による生産現場の紹介等を見ることができます。冬期以外は毎月開催しているという2泊3日の牧場ツアーでは、実際に畜産の仕事や北海道での暮らしを体験してもらうことで、未経験者や道外出身者の採用につなげています。

また、保育料の補助や、就学前の子供を持つ社員への子育て休暇の付与等、子育て世代の社員が安心して働けるよう配慮しており、妊娠・出産を理由とした退職はほとんどありません。

同社は、社員自らが労働時間と休日数を選択できる制度を令和元(2019)年度中にも導入する計画を推進しており、更なる労働環境の改善を進めています。

(繁忙期の労働力不足を支援する取組)

農業は気候や季節に左右され、かつ、生き物を扱う産業であることから、他産業とは異なる特殊性を有しています。例えば、作物ごとに作業適期があることや、作物や家畜の成長過程等に応じて作業内容が決まるため、特定の時期に多くの労働力を必要とする作業ピークが生じることがありますが、全国的な労働力不足を受け、必要なときに必要な人員を集めることが困難になってきています。

このため、作業ピークの異なる産地や業種間等において、互いの経営体の繁忙期と閑散期を組み合わせて支援する取組が各地で始まっています。平成29(2017)年、山形県金山町(かねやままち)で夏はズッキーニ等の果菜類、秋はキャベツ等の重量野菜を中心に生産している株式会社エヌシップは、冬期における労働力の有効活用のため、埼玉県深谷市(ふかやし)でキャベツやブロッコリー等の露地野菜を生産している株式会社つばさグリーンファームの作業受託を開始しました。また、翌年夏には株式会社つばさグリーンファームの社員が冷涼な気候の同町を訪れて株式会社エヌシップの作業を受託するなど、労働の季節性の変化に着目し、労働力を融通し合っています。

事例:必要なときに必要なだけの労働力を供給できる仕組みの構築(大分県)

大分県大分市
キャベツを収穫中の支援者の皆さん

キャベツを収穫中の
支援者の皆さん

JA全農おおいたは株式会社菜果野(なかや)アグリと連携し、組合員に対する労働力支援を行っています。支援要請のあった組合員に対し、大分市(おおいたし)や別府市(べっぷし)等の県内都市部から集まった支援者を送り出すというこの取組は、平成30(2018)年には延べ1万8千人の支援にまで拡大しました。

労働力を安定して確保するためには、年間を通じて一定量の仕事を用意し、支援者をつなぎとめておかなくてはなりません。そこで農閑期である冬にキャベツを作目として取り入れたところ、一定の作業量を創出できると同時に生産者の所得上昇にもつながる結果となりました。

JA全農おおいたの花木(はなき)園芸部直販課長は、「准組合員を始めとした関係人口=幅広い支援者は地域の消費者でもある。生産の支援をすることと、国産農産物を購入して食べることの両方で地域の農業を支えてほしい」と話し、今後は支援者の中から新規就農者を育成することにも取り組んでいくこととしています。

事例:独自に開発したクラウド型システムやCCSノートを活用し、経営者と従業員で意識を共有(神奈川県)

神奈川県藤沢市
井出代表(右)と従業員の皆さん

井出(いで)代表(右)と従業員の皆さん

神奈川県藤沢市(ふじさわし)でトマトを生産している株式会社井出(いで)トマト農園(のうえん)の井出寿利(いでひさとし)代表取締役は、経営規模の拡大に伴い雇用を増加させていくにつれ、従業員一人一人に目が届きにくくなった結果、意識のずれを感じることが増えるようになりました。そこで、作業の行程や内容、時間等を確認、記録できるクラウド型システムを開発し、従業員全員に配布したところ、一人一人が自身の作業を見つめ直す契機となり、単収の増加と人件費の削減につながる結果となりました。

会社として目指す方向を明記したCorporate Culture Standard(コーポレートカルチャースタンダード)(CCS)ノートを作成し、これも全従業員に配布しています。このノートの記載内容は、福利厚生や人事評価等、細則にも及びます。改訂作業は定期的に行われ、その都度従業員から出た意見を採用して作り上げています。

井出(いで)代表は、「逐一指示をしなくても従業員が自主的に作業に取り組むようになったことから、空いた時間を従業員一人一人との面談や、経営者としての仕事や勉強に充てることができるようになった」と、取組の効果を実感しています。

事例:女性も男性も気持ちよく働ける職場づくり(茨城県)

茨城県水戸市
三浦代表(左下)と従業員の皆さん

三浦(みうら)代表(左下)と
従業員の皆さん

茨城県水戸市(みとし)でトマト生産を行う株式会社ドロップでは、従業員15人中13人が女性であり、彼女たちが働きやすい職場づくりが進められています。

同社では、育児・介護休暇や夏季休暇の設定、フレックスタイム制の導入等、就業規則を整備しています。また、男女別の化粧室、事務所内の休憩所、更衣室、シャワー、洗濯機等の設備も充実させており、快適な環境で仕事ができるように配慮しています。

三浦綾佳(みうらあやか)代表取締役は、出産を機に働き方を見つめ直した結果、子育てしながらでも柔軟に活躍できる職場として農業を選び、同社を立ち上げました。三浦(みうら)代表は、「農業では労働力不足が進行しているが、勤務形態をフルタイムに固執するのではなく、短時間に区切るなど多様な働き方の選択肢を提示していくことで対応できるのではないか」と考えています。

(農業経営に関する相談窓口の充実)

労働力確保を始めとした農業経営に関する相談を包括的にできる農業経営相談所が平成30(2018)年度から各都道府県段階に設置されており、平成30(2018)年度末時点で47か所の相談所が経営者からの相談に対応しています。

(青年層の就農促進のため、農業の魅力をアピール)

農業には、親元就農だけでなく、起業による新規参入、農業法人への就職といった方法や、冬季は趣味を充実させ、夏季は農業に専念するなど、多様な働き方があります。このような農業の魅力や働き方を知ってもらうためのイベントを平成30(2018)年度から開始しました。農業に興味があるものの、迷っている学生や社会人等を対象に「脱サラ就農」、「あえての農業法人就職」、「農業女子の集い」等、親しみやすいテーマを設定し、先輩たちの生の声を聴くことで農業を仕事にするきっかけづくりをしています。また、農業を知ってもらう取組に併せて、実際の生産現場を体験する農業インターンシップや、農業法人等が一堂に会する就農相談会「新・農業人フェア」により、就農をよりイメージしやすくする機会を充実させています。平成30(2018)年度の農業インターンシップには630人が参加、「新・農業人フェア」には5,410人が来場しました。

事例:インターンシップの活用によるミスマッチの解消(香川県)

香川県三木町
広野牧場の皆さん

広野牧場(ひろのぼくじょう)の皆さん

香川県三木町(みきちょう)で乳用牛300頭を飼養する有限会社広野牧場(ひろのぼくじょう)は、酪農業に関心のある学生や社会人等を中心に、年間40人以上のインターンを受け入れています。牛へのえさやりや搾乳、子牛の出産の立会い等、牧場での実際の仕事を体験することにより、職業としての酪農業を身近に感じられる好機会となっています。

同社では、新入社員の採用においてもインターンシップを活用しており、採用希望者には必ず3日以上のインターンシップを行ってもらうこととしています。この取組は入社後のミスマッチの解消に寄与しており、過去3年間の離職者は1人のみとなっています。また、採用希望者のインターンシップにおける姿勢や適性等について社員全員で評価し、合否を決定しています。これにより、「自分たちが採用した」という責任感が生まれ、社員同士で協力しながら大事に育てるという気運につながっています。

(農業分野における外国人労働者数は年々増加)

図表2-2-16 農業分野における外国人労働者数

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近年の深刻な労働力不足を背景に、これまで、生産性向上のための対策や国内での人材確保対策に取り組んできました。しかし、農村地域では人口減少が全国を超えるペースで進行しており、高齢化率も都市を上回る水準で推移しています。試算では、平成29(2017)年時点で約7万人の雇用就農者が不足しています(*1)。一方、平成30(2018)年10月末時点での農業分野における外国人労働者数は3万1千人となっており、このうち2万8千人が外国人技能実習生となっています(図表2-2-16)。平成26(2014)年と比べると、外国人労働者数は1.8倍、外国人技能実習生は1.9倍に増加しています。このような中、即戦力の外国人材を受け入れることは農業の生産基盤を維持・発展する上で不可欠となっています。

*1 農業労働力支援協議会「新たな外国人材の受入れ制度に関する基本的考え方」

(新たな在留資格「特定技能」による外国人材の受入れを開始)

図表2-2-17 農業分野における特定技能制度

平成30(2018)年12月に公布された「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」では、外国人材の新たな在留資格である「特定技能」が創設されました。農業を含む14の特定産業分野が受入対象分野となっており、「農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」、その運用要領等に基づき、制度が開始されます(図表2-2-17)。

農業分野においては、耕種農業全般、畜産農業全般のほか、日本人が通常従事することとなる関連業務(例えば、農畜産物の製造・加工、運搬、販売の作業等)についても付随的に従事することが可能となっています。また、農業の特性に鑑み、かつ、豪雪地域等年間を通じた農業生産が維持できない農村地域の事情を考慮し、外国人が従事可能な関連業務の範囲について柔軟に対応することとしています。なお、本制度で受け入れる外国人材については、一定の専門性・技能及び日本語能力を有しているかを確認するため、農林水産省が定める試験に合格する必要がありますが、農業分野の技能実習2号修了者は、これらの試験が免除されます。雇用形態については、農業分野では直接雇用のほか、労働者派遣形態での雇用も可能となっています。

(国家戦略特区において農業支援外国人材の受入れが開始)

先行して取組が始まっている国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業では、平成30(2018)年度末時点で愛知県、新潟市(にいがたし)、京都府、沖縄県が実施区域として認定を受けています。平成30(2018)年10月、全国で初めて愛知県において農業支援外国人材の受入れが始まりました。なお、本事業は、農業が特定産業分野に位置付けられたことに鑑み、段階的に特定技能制度に移行する方向で検討されています。

(農業技能実習事業協議会を設置し、不正行為等の防止に向けた対応を実施)

技能実習制度に関しては、平成29(2017)年11月に施行された技能実習法(*1)に基づき運用されており、農業分野においては、農業の実情を踏まえた技能実習の適正な実施と技能実習生の人権保護のため、平成30(2018)年6月に農業技能実習事業協議会が設置されました。同協議会では、優良事例の収集や、不正行為等の情報共有及びその防止に向けた対応等を行っています。

*1 正式名称は「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」

(農業分野を支える人材を育成する農業大学校と農業高校)

農業経営に関する知識、生産技術の習得等、実践的な教育を行う農業大学校の卒業生は、将来の地域の中心的なリーダーとなって活躍することが期待されています。平成29(2017)年の卒業生1,785人のうち、卒業後すぐに就農した者は987人で卒業生全体の55.3%となりました(図表2-2-18)。就農の形態別に見ると、雇用就農の割合が自営就農に比べて大きく伸びていることが分かります。また、出身別では農家出身の学生の就農率は横ばいが続いていますが、農家出身ではない学生の就農率は平成23(2011)年度から平成29(2017)年度において32.8%から46.2%に上昇しています。

このことは、法人経営体の増加等に伴い農業分野の求人が増加していることを背景に、農家出身ではない学生の雇用による就農が進展していることを示唆しています。また、農業大学校は、農家の子弟が親元就農を前提に学ぶ場から雇用就農希望者や農家出身ではない者も学ぶ場へと、その役割の幅を広げてきている傾向がうかがえます。

図表2-2-18 農業大学校卒業生の就農率

全国の農業高校も農業を支える人材の裾野を広げていますが、卒業後、直ちに就農する割合は低い水準にとどまっています。生徒たちに農業を将来の職業の選択肢の一つとして考えてもらうには、在学中から農業の楽しさや、やりがいを感じる機会を提供することが重要です。このため、地域の特産品を利用した6次産業化(*1)の学習や、農業用ドローンの操縦実習等、特色のあるカリキュラムを導入する動きもあります。

農業大学校、農業高校の卒業生は就農以外にも農業関連の業種で活躍しており、農業大学校、農業高校は幅広く農業分野を支える人材を育成する場として期待されています。

*1 用語の解説3(1)を参照

コラム:未来の畜産女子がニュージーランドへ

プロジェクトに参加した生徒たち

プロジェクトに参加した生徒たち

平成30(2018)年8月、公益社団法人国際農業者交流協会が実施した「未来の畜産女子育成プロジェクト」を活用し、未来の畜産女子として期待される女子農業高校生20人がニュージーランドへ旅立ちました。ニュージーランドは、世界でも有数の酪農先進国です。彼女たちは10日間の滞在期間中、先進的な設備を持つ畜産農家等を訪問し、意見交換しながら、農業や食、環境に関する日本とニュージーランドの違いについて学びました。また、リーダーとして活躍する女性農業者たちとの意見交換では、畜産業における女性活躍の可能性と重要性について改めて確認し、未来の経営者としてのイメージを膨らませました。

研修に参加した生徒たちは、「畜産アンバサダー」としてニュージーランドで得た知識や経験、女性の活躍促進の重要性を同世代の若者たちに広めるため、学校内外での発表会等を行っています。

事例:農業高校の生徒が自分たちで交渉して輸出を実現(青森県)

青森県平川市
研修に参加した生徒たち(左)と現地の食品会社の従業員(右)

研修に参加した生徒たち(左)と
現地の食品会社の従業員(右)

青森県平川市(ひらかわし)の柏木(かしわぎ)農業高等学校では、平成27(2015)年度から台湾でのりんごとりんご加工品の流通等を学ぶ目的で海外研修を行っています。平成29(2017)年度の研修は平成30(2018)年3月に行われ、同校食品科学科の1年生5人が参加しました。日本全国から選りすぐりの食品を取り扱う会社を訪問した際、持参した同校で製造したジャムを生徒たち自身で売りこんだことがきっかけで、平成30(2018)年6月から、りんごジャム他5種類のジャムの注文があり、平成31(2019)年3月までに、約500個が台湾へ輸出されました。

加工品を輸出するには、相手国の求めに応じ、検疫条件への対応やラベルの作成、通関手続といった準備が必要です。生徒たちにとっては初めてのことばかりでしたが、専門業者の助けを借りながら輸出が実現しました。

同校の遠藤剛(えんどうつよし)校長は、今回の経験を通じ、生徒たちが農業や加工品作りのエキスパートになるだけではなく、表示や知的財産、販売等に関する知識を習得し、グローバルに活躍できる人材に育つことを期待しています。

(農業経営力を育成する農業経営塾が道府県で展開)

就農後は、生産に関わる技術はもとより、マネジメント力や課題解決力等、経営に関する能力が必要となります。平成29(2017)年に農林水産省が行った49歳以下の農業経営者へのアンケートでも、「農業経営で大切なこと」として、「経営分析能力」が「栽培・飼養技術」を抑えて回答率が最も高くなる結果となりました(*1)。

地域の農業者が経営に関する能力を学ぶ場として、道府県農業大学校等が運営主体となり、農業経営塾が展開されています。農業経営塾では、経営管理やマーケティング等に関する座学や演習等が行われており、受講を通じ、経営感覚の優れた担い手の育成が期待されています。

*1 平成29年度食料・農業・農村白書12ページを参照

(3)女性農業者の活躍

(若手女性農業者が経営方針の決定に積極的に参画)

販売農家の世帯員のうち女性の農業従事者(*1)数は、平成22(2010)年から平成27(2015)年の5年間で、57万3千人減少しました(図表2-2-19)。このほとんどは高齢者のリタイアによるもので、70歳以上が40万2千人減少しています。また、農業従事日数別に見ると、年間60日未満及び60から149日ではほとんど全ての年齢階層で女性の農業従事者が減少しました。しかしながら、年間150日以上では40歳代以下で増加しています。

*1 用語の解説1、2(4)を参照

図表2-2-19 女性の従事日数別農業従事者数の年齢別増減人数(平成22(2010)年-平成27(2015)年)

また、女性が経営に参画している販売農家は、62万6千戸と全体の47.1%を占めています(図表2-2-20)。さらに、65歳未満で年間150日以上農業に従事している女性がいる販売農家は20万6千戸で、このうち女性が経営に参画している販売農家は15万戸と72.7%を占めています。

図表2-2-20 販売農家における女性の経営参画状況(平成27(2015)年)

事例:若き女性農業経営者が、おしゃれでもうかる農業に挑戦(富山県)

富山県入善町
海道瑞穂さん(中央)とご家族

海道瑞穂(かいどうみずほ)さん(中央)
とご家族

海道瑞穂(かいどうみずほ)さんは、富山県入善町(にゅうぜんまち)の株式会社アグリたきもとで代表取締役をしています。平成18(2006)年にデザインの専門学校を卒業後、20歳で実家に就農し、法人化に伴い24歳で代表取締役となりました。現在、役員3人、従業員4人の7人と、水稲、大豆、入善(にゅうぜん)ジャンボ西瓜(すいか)、ねぎ、ブルーベリー等を生産しています。

周囲で離農者が増え始め、同じ地域に農業法人が少なかったこと、丁寧な管理作業を行い成績が良いこと等から、徐々に信頼され農地を任せられるようになり、平成30(2018)年度の経営面積は110haまで拡大しています。また、農業をおしゃれにしたいという目標を持ち、倉庫の内外装をピンク色にする、お米を1本300gのボトルに入れて贈答用として販売するなどの取組をしています。

海道(かいどう)さんは「元ギャルの私でもやれているのだから」と語り、周囲の女性農業者に影響を与えています。実際に同町では、若い女性が農業法人の代表を務めるようになり、40代女性が農業機械に乗るようになるなど、農業に関わる女性に変化がありました。

事例:都市の専業主婦から一転、移住し女性農業経営者に(三重県)

三重県名張市
井上早織さん

井上早織(いのうえさおり)さん

三重県名張市(なばりし)の井上早織(いのうえさおり)さんは、平成23(2011)年に株式会社アグリーを設立し、自社の直営農場で現在年間40tの小松菜、水菜を中心とした葉物野菜を水耕にて栽培しています。

井上(いのうえ)さんは、大阪府大阪市(おおさかし)で専業主婦をしていましたが、平成23(2011)年に夫婦で農業を営むため移住しました。縁もゆかりもない土地で農業を始めるには高いハードルがありましたが、井上(いのうえ)さんの想いと真剣さに周囲の人たちも次第に応援するようになり、45歳目前で認定新規就農者として市に認定されました。そして、平成30(2018)年9月からは認定農業者として新たなスタートを切っています。

農業について何も知らなかったからこそ固定概念にとらわれない挑戦を行い、溶液の配合等の栽培方法も独自に試行錯誤を繰り返し、収量の安定化や品質の向上を実現しました。起業から7年が経過し、これまで7人の農業研修生を受け入れるなど、自身の経験を次世代にも伝えています。

井上(いのうえ)さんは、「移住者だからこそ感じる名張市(なばりし)の豊かさを多くの人に伝えるとともに、農業の可能性を引き出す新たな事業にもますます注力したい」と話しています。

(平成28年の法改正以降、指導的地位に占める女性の割合は増加)

平成28(2016)年4月に改正された農業委員会等に関する法律と農業協同組合法では、農業委員や農協役員について、年齢や性別に著しい偏りが生じないように配慮しなければならない旨の規定が置かれました。これを受け、平成30(2018)年の農業委員、農協役員に占める女性の割合は、それぞれ11.8%、8.0%と増加しています(図表2-2-21)。

図表2-2-21 農業委員と農協役員に占める女性の割合

コラム:JA組織における女性の活躍

JA全国女性組織協議会は、農村女性の社会的・経済的地位の向上を図り、JA運動の担い手として運営に参画していくとともに、協同活動によって豊かで住みよい地域づくりを目指すことを目的に設立されました。平成30(2018)年12月時点で、641組織、53万人で構成されています。同協議会は、食や農業に関することを中心に、農産物の生産や加工、食や農業に関する学習、伝統食の継承、子供や消費者に農業や食の大切さを教えたり親子で体験したりする様々な活動に取り組んでいます。また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)(*)を意識した女性組織メンバーの5つの具体的活動を令和元(2019)年度からのJA女性組織3カ年計画に掲げ、取り組んでいくこととしています。

JA女性組織新3カ年計画のパンフレット表紙

JA女性組織新3カ年計画の
パンフレット表紙

資料:JA全国女性組織協議会

地域で輝くための5つの具体的活動

* 用語の解説3(1)を参照

(女性農業者の働きやすい労働環境の整備を推進)

出産・育児等とキャリア形成の両立を志向する女性にとって、農業が一つの選択肢となり得ることを積極的に発信するとともに、男性・女性ともに家事・育児等と農業への従事が両立できるような労働環境を整備することが重要です。家族経営においても、労働時間や休日、仕事や家事の役割分担について、家族で話し合い、ワーク・ライフ・バランスを実現できる環境を整えることが重要であり、家族経営協定の締結も有効な手段の一つです。

* 用語の解説3(1)を参照

事例:地域の子供たちが憧れる、いきいきと輝く女性農業者を目指す(長野県)

長野県原村
齋藤志穂さん

齋藤志穂(さいとうしほ)さん

齋藤志穂(さいとうしほ)さんは、医療系大学を卒業後、理学療法士として働いていましたが、子育てはのんびり田舎でしたいと平成22(2010)年に出身地の長野県原村(はらむら)にUターン就農し、花きの栽培を始めました。

家族経営協定を結び、共同経営者として覚悟を決めて就農した齋藤(さいとう)さんにとって、地元では農業に携わる女性を「妻が夫の仕事を手伝っている」とみなされる雰囲気を残念に思っていました。共同経営者として認知されるよう、営業や商談に積極的に参加したり、花の購入者は女性が多いことから、女性の視点を経営判断に活かしたりするなどの努力をしています。また、農業に関わる女性が自分らしさを大切にしながらいきいきと輝けるようにと、平成29(2017)年に原村(はらむら)地区で初の若手女性農業者グループを設立しました。

子育て中の女性のパート従業員3人を雇っており、女性が子育てしながらも働きやすくなるように、希望の日時で働くことのできるシフト制を導入するほか、重労働を軽減するため土詰め機やコンベアを導入するなど労働環境の改善に取り組んでいます。

(農業女子PJは5周年、メンバーによる自主的な活動を支援)

女性農業者の力を積極的に活かすため、平成25(2013)年に発足した農業女子プロジェクトが、平成30(2018)年11月で5周年を迎えました。これまで、企業と連携した商品・サービスの開発、全国の農業女子との情報交換等に取り組み、平成30(2018)年度末時点で、740名のメンバー、34社の企業が参加しています。また、次世代の農業女子を育てるため、平成28(2016)年に結成された「チーム“はぐくみ”」には、平成30(2018)年度に近畿大学、東京家政大学、桜美林大学、山形大学が新たに加わり、教育機関は7校となりました。また、平成30(2018)年度は、メンバーの関心の高い事項に関する自主的な勉強会の活動がスタートしました。

平成30(2018)年11月に開催された第7回農業女子PJ推進会議

平成30(2018)年11月に開催
された第7回農業女子PJ推進会議

このような継続した取組の中で、農業女子メンバーの活躍の場が広がっています。地域で活動するグループの設立や、統一ブランドで自ら生産した農産物を香港でプロモーションする試み等が行われました。また、農山漁村女性が主要テーマとして取り上げられた「国連女性の地位委員会」(平成30(2018)年3月開催)のサイドイベントで農業女子メンバーが自らの体験の発表も行いました。

さらに、農業女子プロジェクトの「女性農業者の存在感を高める」、「女性農業者の意識の改革、経営力の発展」、「若い女性の職業の選択肢に「農業」を加える」の3つの目標に基づく活動は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の「ジェンダー平等を実現しよう」、「働きがいも、経済成長も」、「質の高い教育をみんなに」等の目標に合致することから、今後はメンバーが日頃からSDGsを自分事として捉え活動できるよう推進することとしています。

事例:女性農業者のつながりの重要性について国連本部でスピーチ(山形県)

山形県天童市
国連本部でスピーチをする結城さん(右から2番目)

国連本部でスピーチをする
結城(ゆうき)さん(右から2番目)

結城(ゆうき)こずえさんは、民間企業に勤務していましたが、仕事と家庭との両立に悩み、平成26(2014)年に退職し、地元の山形県天童市(てんどうし)で就農しました。現在は、果物の加工品を製造・販売する会社「Yamagata goodies(ヤマガタグッディーズ)」を経営しています。

平成28(2016)年には、若い女性農業者同士がつながる機会を作るため、天童市(てんどうし)農業協同組合にフレッシュミズ部会を結成し、部会長として活動しています。また、同年、農業女子プロジェクトに参加したことを機に、得意の英語を活かして香港で自家産のドライフルーツの試食販売を行いました。

このような活動と前職での経験がきっかけとなり、平成30(2018)年3月に開催された「第62回国連女性の地位委員会」のサイドイベントで、自身のこれまでの取組を英語で発表しました。女性によるネットワークの大切さについて発表したところ、「家族で農場を経営するという目標ができた」とケニア人女性から嬉しい感想をもらうことができました。また、平成31(2019)年2月には、県内の女性農業者が意見交換や共に学ぶ場を持つとともに、相互の連携を図るための「やまがた農業女子ネットワーク」を設立しました。

(4)農業金融

(農業向けの新規貸付額は増加傾向)

農業は、天候等により減収や品質低下の影響を受けやすい、収益性が低く投資回収までの期間が長いといった特性があります。このため、農業向けの融資においては、農協、信用農業協同組合連合会、農林中央金庫(以下「農協系統金融機関」という。)と地方銀行等の一般金融機関が短期の運転資金や中期の施設資金を中心に、株式会社日本政策金融公庫(にっぽんせいさくきんゆうこうこ)(以下「公庫」という。)がこれらを補完する形で長期・大型の施設資金を中心に、農業者への資金供給の役割を担っています。

近年、農業経営の規模拡大や人手不足等を背景とした省力設備の導入等による資金需要の高まりから、農業向けの新規貸付額が増加傾向となっています(図表2-2-22)。農業向けの新規貸付額の伸びを見ると、一般金融機関は5年間で2.2倍、農協系統金融機関は2年間(*1)で1.5倍、公庫は5年間で2.0倍に増加しています。

図表2-2-22 農業向けの新規貸付額

*1 農協系統金融機関においては、農業向けの新規融資額を平成27(2015)年度から調査している。

(一般金融機関と公庫との連携・協調融資の取組が重要)

農業者の多様なニーズに適切に対応していくためには、一般金融機関と公庫が連携し、協調融資の取組強化をすることが重要となっています。このため、公庫は、一般金融機関との間で情報交換を行うほか、農業融資についてのノウハウの提供を行っています。平成29(2017)年度の公庫と一般金融機関との協調融資の実績は前年度に比べ2.6%(46億円)増加の1,808億円となりました(*1)。

*1 株式会社日本政策金融公庫調べ

(5)経営所得安定対策

(担い手に対する経営所得安定対策を実施)

経営所得安定対策は、米、麦、大豆等の重要な農産物を生産する農業の担い手(認定農業者、集落営農、認定新規就農者)に対し、経営の安定に資するよう、諸外国との生産条件の格差から生ずる不利を補正する交付金(以下「ゲタ対策(*1)」という。)や農業収入の減少が経営に及ぼす影響を緩和するための交付金(以下「ナラシ対策(*2)」という。)を交付するものです(図表2-2-23)。

平成30(2018)年度の加入申請状況を見ると、ゲタ対策は加入申請件数が前年度に比べ1千件減少の4万4千件、作付計画面積は前年度に比べ1千ha増加の50万2千haとなりました。また、ナラシ対策は加入申請件数が前年度に比べ5千件減少の10万1千件、申請面積は前年度に比べ9千ha増加の100万haとなりました。

図表2-2-23 経営所得安定対策の仕組み

*1 対象作物は、麦、大豆、てんさい、でん粉原料用ばれいしょ、そば、なたね

*2 対象作物は、米、麦、大豆、てんさい、でん粉原料用ばれいしょ

(6)農業保険(収入保険・農業共済)の実施

(平成31年1月から新たな収入保険と見直し後の農業共済が開始)

農業は自然環境からの影響を受けて作柄が変動しやすいため、従来より、法律に基づいて、自然災害等による被害の程度を外見で確認できる品目を対象として、収量減少等を補償する農業共済が措置されています。これに加えて、農業の成長産業化を図るためには、収益性の高い作物の導入や新たな販路の開拓にチャレンジする取組等、自由な経営判断に基づく経営発展の取組に対して、品目の枠にとらわれず、総合的に対応するセーフティネットが必要です。

このため、平成30(2018)年4月に改正された農業保険法の下、農業経営全体を対象とした新たなセーフティネットとして、青色申告を行っている農業者を対象に「収入保険」が導入され、平成31(2019)年1月から運用を開始しました。この収入保険は、保険料の掛金率が1%程度で、基準収入の8割以上の収入が補償され、米、畑作物、野菜、果樹、花、たばこ、茶、しいたけ、はちみつ等、原則として全ての農産物を対象に、自然災害だけでなく、価格低下など農業経営上のリスクを幅広く補償します(図表2-2-24)。

また、従来の農業共済についても、農業者へのサービスの向上及び効率的な事業執行による農業者の負担軽減の観点から、共済掛金率を危険段階別に設定する方式の義務化、米、麦を対象とした農作物共済の当然加入制の廃止、一筆方式(ほ場ごとに被害状況を確認する方式)を令和3(2021)年産までで廃止するなどの見直しを行い、平成31(2019)年1月(農作物共済にあっては令和元(2019)年産)から運用を開始しています。

農業者は、自らの経営安定を図るため、発生し得る自然災害や価格変動等のリスクに対して、農業保険に加入することで「備えあれば憂いなし」の農業経営の体制を築いていくことが重要です。農林水産省は、農業保険の実施主体である農業共済団体を始め、都道府県、市町村、農協等と連携し、「災害に強い施設園芸づくり月間」を設定して、園芸施設共済と収入保険の加入促進を重点的に取り組むこととしたほか、全都道府県における農業者への説明会や分かりやすいポスター・動画による普及推進等、農業保険の積極的な加入促進に取り組んでいます。

図表2-2-24 収入保険の概要


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