このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

第3節 農泊の推進


農泊とは、農山漁村において我が国ならではの伝統的な生活体験と非農家を含む農山漁村の人々との交流を楽しみ、農家民宿や古民家等を活用した宿泊施設に滞在して、観光客にその土地の魅力を味わってもらう農山漁村滞在型旅行です。増加が続く訪日外国人旅行者を農山漁村に呼び込んで交流を図るとともに、地域の所得向上に活かすことが重要です。また、教育旅行等の都市農村交流においても、その持続可能な経営の実現に向け、農泊との連携が進んでいます。

(地方部への分散を背景に、インバウンド需要は堅調に拡大)

平成30(2018)年の訪日外国人旅行者については、台風第21号による関西国際空港の閉鎖や北海道胆振東部(いぶりとうぶ)地震により、9月中は前年同期に比べ伸びが低下したものの、年間では堅調に増加し、旅行者数3,119万人(*1)となり、過去最高を記録しました。また、旅行消費額は4兆5,189億円(*2)、地方部における延べ宿泊者数は3,636万人泊(*3)となり、いずれも過去最高を記録しました。

旅行消費額のうち、飲食費は9,783億円(*4)、買物代のうち食料品(菓子類、酒類、生鮮農産物等)は3,314億円(*5)となっています。このような日本食・食文化の需要を農山漁村に呼び込み、訪日外国人の更なる増加と農林水産物・食品の輸出増大につなげるといった好循環を構築していくことが重要です。

外国人延べ宿泊者数に占める地方部の割合は4割を超えています(図表3-3-1)。過去5年間の延べ宿泊者数の増加率を都道府県別に見ると、青森県、山形県、山梨県、岡山県、香川県、佐賀県で4倍以上となっています(図表3-3-2)。

図表3-3-1 外国人延べ宿泊者数と宿泊地に占める地方部の割合

データ(エクセル:27KB / CSV:2KB

図表3-3-2 都道府県別に見た外国人延べ宿泊者数の増加状況(過去5年間)

観光庁の調査(*6)によると、例年訪日外国人旅行者の7%前後が農山漁村体験等を行ったと回答しており、訪日外国人旅行者数全体の伸びや目的地の地方部への分散とともに、農山漁村での体験を行う訪日外国人旅行者が増えていることがうかがえます。

このような中で、農山漁村体験への訪日外国人旅行者の誘致を円滑にしようとする動きも見られ、例えば、訪日外国人旅行者向けに、観光農園を紹介するとともに体験の予約等を行えるWebサイトも開設されています。

*1 日本政府観光局(JNTO)「2018年訪日外客数(総数)」

*2、4 観光庁「訪日外国人消費動向調査(平成30年年間値(確報))」

*3 観光庁「宿泊旅行統計調査(平成30年年間値(速報))」

*5 観光庁「訪日外国人消費動向調査(平成30年年間値(速報))」を基に農林水産省で推計

*6 観光庁「訪日外国人消費動向調査」

事例:訪日外国人旅行者が3割を占めるいちごの観光農園(福岡県)

福岡県筑紫野市
いちご狩りを楽しむ訪日外国人旅行者

いちご狩りを楽しむ
訪日外国人旅行者

福岡県筑紫野市(ちくしのし)の石橋徳昭(いしばしのりあき)さんは、民間企業を退職後の平成18(2006)年、水田を転作し、「筑紫野(ちくしの)いちご農園」を開園しました。

当初はハウス3棟で、直売所への出荷が中心でしたが、2年目からは観光農園としました。いちごは高設栽培し、1棟で複数の品種を栽培したり、車椅子の来園者のために通路を広くしたりと、営業職であった経験から、顧客満足を重視した経営を行っています。平成30(2018)年には、ハウス24棟といちごを利用した洋菓子の店舗を併設し、九州有数の規模となっています。

同園では、平成25(2013)年から訪日外国人旅行者が増え始めました。口コミや海外の旅行会社等による紹介もあり、平成30(2018)年の来園者の3割は、香港、タイ等海外からの旅行者となっています。

その円滑な誘致のため、同園は、園内やホームページで外国語による案内を行っているほか、観光農園の検索・予約を多言語で行えるWebサイト(*)にも登録しており、来園者の中には、このようなWebサイトから予約する人もいます。

いちごをお土産として求める訪日外国人もいるため、石橋さんは、検疫が簡易又は不要な国・地域を中心に提供していきたいと考えています。

* 株式会社JTB「Japan Fruits」

(農泊をビジネスとして実施できる体制の整備)

図表3-3-3 従来の都市農村交流と今後の農泊のねらい

都市と農村の交流の推進は、都市住民の農業・農村への関心を高めるとともに、農村で暮らす人々にとっても、地域の魅力の再発見を促し、生きがいと活性化をもたらす大きな役割を果たしています。

一方で、都市農村交流においては、サービス等の価格設定が低く持続的でない場合が多いことや、訪問時期が土曜日・日曜日や修学旅行シーズンである秋冬に限られること、小規模であるために効率化が難しく、結果的に公費に依存する場合もあること等の課題があります。また、その運営体制の多くが任意組織であるため、責任の所在が不明確であるとともに、複数年にわたって資金を活用することができず、長期的な視点での運営が難しい面もあります。このような課題の結果、事業の後継者が現れず、高齢化とともに受入疲れする地域もあります(図表3-3-3)。

このような中で、農山漁村滞在型旅行を持続的なビジネスとして実施し、農山漁村の活性化を目指す農泊が推進されており、農泊ビジネスの現場体制の構築、古民家等を活用した滞在施設や農林漁業・農山漁村体験施設の整備等を実施しています。農林水産省では、平成30(2018)年度までに、農山漁村振興交付金の農泊推進対策により、全国で352地域を採択し、農泊の取組を支援しています(図表3-3-4)。

図表3-3-4 農泊推進対策の採択状況
農泊ポータルサイト

農泊ポータルサイト

また、増加する訪日外国人旅行者は、訪問時期が土曜日・日曜日や我が国の祝祭日に集中せず、1人当たりの消費支出が国内観光客に比べて高いことから、農泊を行う地域においては、その誘致を重要視しています。

農泊については、地方創生や観光立国の関連施策にも位置付けられ、令和2(2020)年までに、農泊を持続的なビジネスとして実施できる体制を持った地域を500地域創出することを目標としています。

また、農泊を、我が国での観光に興味を持つ海外の人に知ってもらうため、平成29(2017)年度には海外のタレント等を起用した情報発信等の支援を行いました。平成30(2018)年度には、国内向けには、農泊地域の情報を一元的に集約し、発信する「農泊ポータルサイト」、農泊地域と料理人のマッチングサイト「サトchef(シェフ)」の開設を支援しました。また、海外向けには、台湾、香港、欧米、豪州に対象地域を絞り、現地Webメディア等、各地域に効果的な媒体による情報発信を行いました。

事例:地域一体となったプロモーションによる訪日外国人旅行者の取り込み(熊本県)

人吉市と球磨郡9町村

※人吉市(ひとよしし)と球磨郡(くまぐん)9町村

「農家民宿とよのあかり」で料理体験をする訪日外国人旅行者

「農家民宿とよのあかり」で
料理体験をする訪日外国人旅行者

「人吉球磨(ひとよしくま)グリーンツーリズム推進協議会」は、人吉球磨(ひとよしくま)地域10市町村の団体や行政、個人で構成されています。同協議会は取組開始から10年を経過し、新たに訪日外国人旅行者等を対象とした農泊の実施とそのビジネス化に取り組んでいます。

具体的には、外部専門家を招聘(しょうへい)して研修等を行うとともに、滞在プランや体験プログラムの開発に取り組みました。この結果、平成29(2017)年度には2軒の農家民宿が新規開業し、10の体験プログラムが新たに開発されました。また、旅行会社によるプロモーションも展開されています。

平成29(2017)年に開業したうちの一軒である「農家民宿とよのあかり」の山並勝志(やまなみかつし)さん夫妻は、農薬を使わずに育てた野菜やハーブの料理を提供しています。また、一緒に家庭料理を作ったり周辺地域を案内したりと、宿泊者との交流も積極的に行っています。このようなおもてなしが、宿泊者の半分以上を占める訪日外国人旅行者の評判を呼んでいます。

(SAVOR JAPAN認定地域は全国で21地域に)

我が国を訪れて本場の日本食を体験したいという外国人のニーズは高まっており、農村の食は農泊の主要コンテンツの一つです。地域の食と、それを生み出す農林水産業を核に訪日外国人旅行者を中心とした観光客を誘致する取組である「SAVOR JAPAN(セイバージャパン)(農泊 食文化海外発信地域)」として認定された地域は、全国で21地域となりました(図表3-3-5)。

図表3-3-5 「SAVOR JAPAN」認定地域一覧

(子供の農山漁村体験の充実)

都市農村交流の一環である子供の農山漁村体験は、地方の自然、歴史、文化等の魅力について学び、理解を深めることで、生命と自然を尊重する精神や環境保全に寄与する態度を養い、人と人とのつながりの大切さを認識し、農林漁業の意義を理解することにより、子供の生きる力を育むことができます。また、農山漁村体験を通じて、都市部の児童生徒が小中高の各段階において、将来の地方へのUIJターンの基礎を形成することも期待できるため、一定期間農山漁村に滞在し、体験活動を行うことが重要です。このため、子供の農山漁村体験の取組を一層推進することとし、これに必要な施策を関係省庁で連携して実施しています。

事例:教育旅行を中心とした地域ぐるみの取組(栃木県)

栃木県大田原市
田植体験の様子

田植体験の様子

栃木県大田原市(おおたわらし)の株式会社大田原(おおたわら)ツーリズムは、平成24(2012)年、民間企業から社長を迎え、市と地元企業18社が出資して設立されました。併せて発足した地元協議会と、地域ぐるみのグリーンツーリズム事業を展開しています。

主に団体教育旅行を受け入れ、1年目には農業体験や農家民宿等のプログラムを120以上開発しました。他県から来た中学校の教諭は、「農家に泊まり、生活を共にすることで生徒の社会性を向上させる目的と合致する」と訪れた理由を話しました。

平成27(2015)年には、教育旅行を継続しつつ、持続的な経営の実現に向け、収益率の高い企業向けのプログラムを開発しました。また、古民家の再生を検討するなど、インバウンドを含む国内外の誘客にも取り組んでいます。

農家民宿で交流したベトナムの大学生は、「日本人はまじめで冷たいという印象だったが、とても心温かく、実の子のように接してくれた」と話しました。

平成24(2012)年度から平成28(2016)年度の間に、農家民宿は0軒から約160軒に、交流人数は189人から8,351人に、1軒の農家当たりの売上げは50万円から100万円ほどになりました。

社長の藤井大介(ふじいだいすけ)さんは、「これからも感動を大切にして、大田原(おおたわら)に来る人と地元農家に喜んでもらえる企画を考えていきたい」と話します。



ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先からダウンロードしてください。

Get Adobe Reader