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農林水産省

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第4節 農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮


農村は、農業の持続的な発展の基盤であり、農業の持つ多面的機能の発揮の場となっています。

(農業・農村の有する多面的機能の効果は、国民全体が享受)

農業・農村は、食料を供給する機能だけでなく、農業生産活動を通じ、国土の保全や水源の涵養(かんよう)、生物多様性の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等、様々な機能を有しており、このような多面的機能の効果は、農村地域の住民だけでなく国民全体が享受しています。歴史や伝統ある棚田・疎水等については、地域の協働力を育みながら、美しい農村景観を形成しており、地域資源として保全・復元し、次世代に継承していくことが重要です。

また、農業、林業及び水産業は、農山漁村地域において、それぞれの基盤である農地、森林、海域の間で相互に関係を持ちながら、水や大気、物質の循環等に貢献しつつ、多面的機能を発揮しています。

(日本型直接支払制度により、多面的機能の維持・発揮に向けた活動を支援)

図表3-4-1 日本型直接支払制度の全体像

農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮のために行われる地域の共同活動や農業生産活動等への支援を目的として、日本型直接支払制度が平成26(2014)年度に導入され、平成27(2015)年度からは、「農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律(*1)」に基づく制度として、支援が行われています(図表3-4-1)。

*1 平成27(2015)年4月施行

(多面的機能支払は、非農業者等の参画が拡大するとともに多様な効果を発現)

多面的機能支払は、多面的機能の維持・発揮を目的として平成19(2007)年度に農地・水・環境保全向上対策として始まり、日本型直接支払制度の一つとして実施されています。平成30(2018)年度には、平成26(2014)年度からの5年間の取組の最終評価を行いました。

農地維持支払に取り組む認定農用地面積は平成29(2017)年度で227万haと、同制度の対象となり得る全国の農地面積(*1)の54%となり、平成25(2013)年度の147万haから1.5倍に増加しました。

活動組織の構成員数234万人・団体のうち、非農業者や農業関係以外の団体は71万人・団体と3割を占めており、地域ぐるみでの地域資源の適切な保全管理が拡大しました。また、広域活動組織の数は、平成25(2013)年の551組織から平成29(2017)年の853組織へと302組織増加しており、体制強化も進んでいます。

保全活動に取り組む地域の団体に多面的機能支払の成果を聞いたアンケート調査では、遊休農地(*2)の解消・発生防止や農業用施設の適切な保全管理といった様々な効果が見られました(図表3-4-2)。

図表3-4-2 多面的機能支払の効果に関する評価

一方で、活動組織の代表の高齢化、書類作成等の事務の負担といった課題が全国的に見られることも明らかになりました。

このため、農林水産省では、後継者確保や事務負担の軽減に向けて、既存の活動組織による近隣の農用地の取込みや活動組織の合併等による広域的な体制づくりを進めています。

また、多面的機能支払に取り組む全国の地域の参考とするため、特色ある発展を実現した活動組織を取り上げ、どのような取組を行ってきたのかを経時的な一連のプロセスとして整理した「多面的機能支払交付金プロセス事例集」を公表しています。

*1 農業振興地域の農用地区域内の農地面積、採草放牧地面積の合計。平成28(2016)年度において418万ha

*2 用語の解説3(1)を参照

事例:土地改良区、町会等が参加した地域ぐるみの活動(石川県)

石川県羽咋市、宝達志水町、中能登町
小学校と連携した生き物調査

小学校と連携した
生き物調査

石川県羽咋市(はくいし)、宝達志水町(ほうだつしみずちょう)、中能登町(なかのとまち)の一部の58町会で構成される「邑知潟水土里(おうちがたみどり)ネットワーク」は、地域の土地改良区が事務局となって日本型直接支払制度を活用し、多様な活動を行っています。

毎年春に町会代表による施設点検を行い、その結果を踏まえて年度の修繕計画・予算を作成し、町会総出で水路の泥上げ、農道等への砂利の補充、防草シートの敷設、ため池の補修等を実施しています。

また、水路・農道等の管理を行う町会への自走式草刈機の貸出し、鳥獣害防止用の電気柵の設置、小学校等と連携した子供の稲刈り体験・生き物調査、老人会によるホクリクサンショウウオの保護等も行っています。

交付金の申請、書類の整備等のために職員を1人雇うことにより、各団体の事務作業は軽減され、市町、農業団体、町会、土地改良区のみならず、子供会、PTA、老人会、女性グループ、青年団等の地域の連携が深まりました。

草刈り等の担い手の負担が軽減したことや、地域の話合いが活発になったことにより、地域の認定農業者への農地集積率は平成24(2012)年度の54.1%から、平成29(2017)年度の66.3%に上昇しています。

(中山間地域等直接支払の取組により、耕作放棄地の発生抑制等の効果を発現)

図表3-4-3 中山間地域等直接支払の取組の実施集落・未実施集落における耕作放棄地率の増加

中山間地域等直接支払は、不利な営農条件下での農業生産活動の継続を目的として平成12(2000)年度に始まり、現在は日本型直接支払制度の一つとして実施されています。

具体的には、交付金を受ける集落等の単位ごとに、必須事項としての耕作放棄の防止活動や水路・農道等の管理活動等、選択事項としての機械・農作業の共同化や高付加価値型農業の実践等の活動内容や、その達成目標を定めた協定を定め、参加した農業者が実施しています。

平成29(2017)年度における中山間地域等直接支払の協定の数は2万5,868協定となり、交付面積は、前年度に比べ2千ha(0.3%)増加の66万3千haとなりました。

農林水産省は、平成30(2018)年6月に、平成27(2015)年度から令和元(2019)年度までの第4期対策の中間年評価の結果を公表しました。

活動に対する集落等の自己評価では、9割以上の協定が目標以上の達成が見込まれる「優良」、又は目標の達成が見込まれる「適当」となりました。

耕作放棄の発生防止では、中山間地域等直接支払制度の活用を契機とした集落等での話合いにより農地保全に対する意識が高まるといった効果も認められ、農林業センサスを活用した効果分析では、中山間地域等直接支払を活用した農地を含む集落は、活用していない集落に比べ、耕作放棄地の増加率が低く、農地面積の減少を抑制していることがうかがえます(図表3-4-3)。

また、地域おこし協力隊の受入れや都市との交流を通じた農業の担い手・移住者の増加等、人材の確保や移住・定住を進める動きも見られます。

一方、達成の度合いが低い協定も1割弱見られ、今後、市町村が、話合いの充実、共同活動の充実等に向けて必要な指導・助言を行っていくこととしています

(環境保全型農業直接支払の取組による温室効果ガスの削減量は年間15万tと評価)

環境保全型農業直接支払は、多面的機能支払と同様に平成19(2007)年度に農地・水・環境保全向上対策として始まり、現在は日本型直接支払制度の一つとして実施されています。

環境保全型農業直接支払に取り組む農業者団体等は、化学肥料・化学合成農薬の使用を慣行レベルから原則5割以上低減させるとともに、地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動を実施しています。具体的には、全国共通の取組であるカバークロップ(緑肥)の作付け、堆肥の施用、有機農業のほか、地域の環境や農業の実態等を勘案した上で、地域を限定して取り組むことができる地域特認取組(*1)があり、平成29(2017)年度における環境保全型農業直接支払の実施市町村数は899、実施件数は3,822件、実施面積は8万9,082haとなりました。

農林水産省は、平成30(2018)年9月に、平成27(2015)年度から令和元(2019)年度までの対策期間の中間年評価の結果を公表しました。

中間年評価において、地球温暖化防止効果が見込まれる有機農業、カバークロップ等の取組について評価した結果、温室効果ガス(*2)削減量(*3)の合計は、年間で15万631tとなりました(図表3-4-4)。

また、生物多様性保全効果が見込まれる有機農業、冬期湛水(たんすい)管理等の取組について評価した結果、高い生物多様性が確認されました(図表3-4-5)。

一方で、環境保全型農業直接支払の未実施市町村が今後取り組むために解決すべき課題は、農業者に関する課題としては、組織化の推進や事務手続の負担軽減等、行政に関する課題としては、事務手続に割く人員の確保、農業者への理解の醸成等とされました。

図表3-4-4 環境保全型農業直接支払の取組による地球温暖化防止効果の調査結果
図表3-4-5 環境保全型農業直接支払の取組による生物多様性保全効果の調査結果

*1 都道府県知事が特に必要と認める、草生栽培、冬期湛水管理、リビングマルチ、総合的病害虫・雑草管理(IPM:Integrated Pest Management)の実践等の取組。なお、IPMとは、病害虫の発生状況に応じて、天敵(生物的防除)や粘着板(物理的防除)等の防除方法を適切に組み合わせ、環境への負荷を低減しつつ、病害虫の発生を抑制する防除体系

*2 用語の解説3(1)を参照

*3 二酸化炭素に換算した量

(世界農業遺産、日本農業遺産の認定地域において、伝統的な農林水産業を継承)

世界農業遺産、日本農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化、ランドスケープ(*1)、シースケープ(*2)、農業生物多様性(*3)等が相互に関連して一体となった農林水産業システムを認定する制度です。

世界農業遺産には、平成30(2018)年12月時点で、世界で21か国57地域、我が国では11地域が認定されています。また、日本農業遺産には、平成31(2019)年2月に新たに7地域が認定され、計15地域が認定されています(図表3-4-6)。

認定地域では、地域の自信と誇りを醸成し、農業遺産の維持・保全に向けた取組が行われています。また、認定を機にブランド化、国内外からの観光客の増加、移住・定住者の増加に向けた取組が活発に行われ、一定の効果が上がっています。

図表3-4-6 平成30(2018)年度に新たに認定された日本農業遺産地域

*1 土地の上に農林水産業の営みを展開し、それが呈する一つの地域的まとまり

*2 里海であり、沿岸海域で行われる漁業や養殖業等によって形成されているもの

*3 食料及び農業と関わりのある生物多様性及び遺伝資源が豊富であること



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