このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

平成30年度食料・農業・農村白書 掲載事例深掘インタビュー「基盤整備が、農業所得も子供の数も増加させたそのワケは?」

メイン画像

長崎県島原市三会原地区の皆さんにお話を伺いました

平成30年度食料・農業・農村白書に掲載された優良事例先の一つである、長崎県島原市三会原地区。
基盤整備を契機として、所得が大幅に増大するとともに、担い手数や小学校児童数も増加し、大きな注目を浴びています。
今回は三会原地区へお邪魔して、行政関係、農業団体、若手農業者の皆さんにお話を伺いました。

〇 基盤整備後、地区の農家の農業所得が増加したとのことですが、詳しく教えていただけますか。

(若手農業者平さん)
畑が集積されて面積が増えたこと等により、大型の機械を用いることができるようになって、作業が効率化しました。
1枚の畑に係る作業時間は、畑が広くても狭くても大きく変わらないので、畑がまとめられて枚数が減った分、全体の作業時間を減らすことができました。作業時間が減ったため、以前よりももう1作多くできるようになりました。それまでは年に2作だった人が3作に、3作だった人が4作になり、1作増えた分、収入が増えたのです。
これにより市場に出荷する量も増え、年間を通じて安定的な供給が期待できる産地として市場内での信用が高まり、強い産地となり、卸売単価も上昇しました。

ほ場の画像 基盤整備後の畑と有明海

〇 担い手が増えた最も大きな理由は何でしょうか。

(三会原土地改良区林田理事長)
基盤整備をする前は、ほ場が小さく分かれていて、人間の労力に頼る部分が大きく、大変でした。基盤整備により機械化が進み、作業が重労働ではなくなってきたため、若い人が入ってきてくれたと思います。収入がないと若い人も残ってくれないので、収入も大事な要素です。
基盤整備前後の航空写真
三会原第2地区航空写真(左が基盤整備前、右が基盤整備後)


〇 本地区では長崎県や島原市の他の地区と比べて小学校の児童が増えています。これはどうしてだとお考えでしょうか。

(若手農業者平さん)
若い世代が沢山いるので、お嫁さんも入ってきやすい。若いお嫁さんがめずらしいことじゃなくて、お嫁さん同士の仲間もできる。若い世代の農家が多いことは子供の多さにもつながっていると思います。


(三会原土地改良区堀川副理事長)
基盤整備前はどうしても労力がかかるので、子供も1人、2人くらいでやめておこうかなという感じでした。基盤整備で機械化が進んだ結果、祖父母世代に少し余裕ができ、孫の面倒を見てもらえるようになったことも、子供が増えた大きな原因のひとつだと思います。

三会小学校長貫分校出身者の写真
近年特に児童数が増えている三会小学校長貫分校出身の3人
(左から平さん・土地改良区職員の坂本さん・山口さん)


〇 高齢の農家の離農が進んでいるとのことですが、どのような状況でしょうか。

(若手農業者平さん)
現在は農地がむしろ不足していて、基盤整備がなされていない狭くて水の来ない農地も借りています。しかし、今後、離農者が増えて農地が余れば、そのような農地は耕作放棄地になりやすいのではと心配です。
しょうがと作付けした畑地しょうがを作付けした畑と普賢岳

〇 地区の雰囲気はどうでしょうか。活気づいてきているのではないでしょうか。

(若手農業者平さん)
三会原地区は活気づいています。農家が儲かれば、飲食店が活気づくし、資材購入など投資も大きい。農家の地域経済の起爆剤としての役割は大きいです。

〇 今後の目標などあれば教えて下さい。

(若手農業者平さん)
今の島原市は、多くの野菜を出荷しているのに知名度がありません。「長崎県産」ではなく、「島原産」として売りたい。「夕張メロン」のような超有名ブランドが島原市には全然ない。作るのはうまいが売るのは下手という状況です。
ブランド化を通して、島原市で農業をすることをもっともっと誇りに思えるようにしていきたいです。

三会原地区の元気な若手農家さんに就農のきっかけを伺いました!

三会原地区若手農家の写真 今回取材に応じてくださった、三会原地区で活躍する若手農家の皆さん
左から田浦さん・森さん・山口さん・平さん。森さんのショウガ畑を背に


(平さん)
三会原地区の農家の次男で、四年制大学を出て、博多でサラリーマンをしていて、就農はしたくなかったんです。就農したきっかけは、当時、35歳以下くらいで作る「4Hクラブ」という団体があって、小さな三会原地区だけで50人以上いて、彼らが博多に研修旅行に来て、僕も呼ばれたことです。その時に、こういう団体が若者の遊びみたいに大人として来ているのを見て、「うらやましいな」と思って、サラリーマンを辞めて戻ってきたんです。
皆、今まで先輩方が、(その時々の)農業の良い悪いを抜きにして、ずっと続けてきたのを見てきて、その流れで残っている。仲間がいて、その流れがずっと続いているというのが就農した一番の理由です。
他の皆も県外から来てくれているけど、すんなり入れるのは仲間がいるためだと思います。若い世代が沢山いるので、嫁さんたちも入ってきやすい。若い嫁さんがめずらしいことじゃなくて、嫁さん同士の仲間もできる。うちの嫁さんも同世代が町内に10人以上いるんです。だから仲間内で会ができる。そういうことが大きいと思う。
作り方も、「キツイ」も「良い」も、作付け計画も、全てについて相談できる仲間がいる。自分ひとりだったらきつい。
自分たちの世代が多いことが子供の多さにもつながっているし、さらに仲間同士の輪が繋がって今も広がっているのではないかと思います。

(田浦さん)
鹿児島県出身で、農業とは全く関係のない暮らしをしていたので、農業と言えば高齢の人がやっているというイメージでした。三会原地区出身の妻とここに来た時に、若い人がやっていて、基盤整備してきれいな畑があって、やっていけるんじゃないかと思って、就農しました。

(山口さん)
親が三会原地区の農家だったものの、あまり農業を継ごうとは思っていませんでした。でも地元の農業高校に行ったところ、農家の跡取りが多くいて、影響されて農業をするようになりました。高校時代も農業の手伝いをしていましたが、狭い畑ばかりだったことを思うと、今の農業は大きな機械があるので楽だと思います。今の機械を昔の畑に持っていけるかと考えれば絶対無理なので、本当に良くなったと思います。

(森さん)
佐賀県の出身ですが、祖父が三会原地区で農業をしていました。進学校から大学に進学して、就職の際に、いろいろな企業を見ましたが、これからAIなど様々なものが発達していく中で、30年後も50年後も自分が働く場があるか分からないという思いがありました。将来も生活できる仕事を考えた時に、第一次産業、農業で、自分でものを作って自分で食べれるというのは、自給自足じゃないけれども、ずっと生活できるなと思いました。祖父に跡取りがいないこともあって大学を卒業してから三会原地区に来ました。
この地区である程度収入が上がっているのは聞いていましたが、実際に来てみると基盤整備がなされていて、雨が降らないから作物が枯れるなどということもなく、蛇口をひねるだけで水が出るという素晴らしい環境が整っているのを見て、これなら農業に携わってずっとやっていけるなと思って就農しました。

参考情報

1. 三会原地区の農業の位置づけ

・島原半島は長崎県の農地面積の4分の1、農業産出額の5割(750億円)を担う、県下有数の農業地帯。
島原半島の中でも、三会原地区は早くから基盤整備を実施。昭和46年度から53年度にかけて、雨水に頼る農業からの脱却を目指し、8km先の水源から導水するパイプラインやポンプ場等を整備。
昭和の基盤整備では区画整備は行っていないため、農地は小さいままであったが、豊富な水と先人たちの営農努力により、はくさい、にんじん、しょうが等の野菜の産地となっている。
事業看板画像
昭和40~50年代に行われた事業の看板
記念碑画像 昭和40~50年代の事業の記念碑の碑文

2. 三会原地区における近年の基盤整備とその後の発展の概要

・昭和の基盤整備から30年余りを経た平成14年度から、合計約300haの農地を4つに分割して、かんがい施設の更新と区画整備を行っている。
区画整備で畑が大きくなり、道も広がった結果、更なる省力化と収益力向上を実現した三会原地区では、若手が就農しその家族が増えるという好循環が生まれており、非常に活力のある地区となっている。
平成の基盤整備の概要については、平成30年度食料・農業・農村白書のほか、島原市作成の動画にも紹介されている(農家の山口さんのインタビューや保育園児童が1.5倍になった点等の紹介あり)。
https://www.youtube.com/watch?v=B1COFROyi3E

3. 若手農業者の皆さん

・平和徳さん・・・35歳。就農13年目。農地4ha(畑)
田浦宏幸さん・・・34歳。就農7年目。農地2.5ha(畑)、ハウス30a
山口大貴さん・・・28歳。就農9年目。農地3ha(畑)、ハウス40a
森健太郎さん・・・26歳。就農3年目。農地4.5ha(畑)


御礼

ご多用のところ、本調査にご協力くださった皆様に心より感謝申し上げます。
農業者平和徳氏、田浦宏幸氏、山口大貴氏、森健太郎氏
三会原土地改良区林田理事長、堀川副理事長、石田事務局長、坂本技術員
島原市産業部農林水産課坪田課長、伊藤班長、森瀬係長
長崎県農村整備課吉田参事、篠塚主任
同島原振興局農村整備課田中課長、山口専門幹、樋口係長


お問合せ先

大臣官房広報評価課情報分析室

担当者:武藤、大槻
代表:03-3502-8111(内線3260)
ダイヤルイン:03-3501-3883
FAX番号:03-6744-1526