3.富の発生【第2章「農」の発生】
このお米を実らせる稲は、南方(中国やインド)から来たといわれています。現在のところ日本最古の水田とされるのは九州の菜畑遺跡(唐津市)。紀元前300年頃の遺跡らしく、今から約2300年も前に日本に伝わってきたことになります。
稲の正式な学名はオリザ・サティバ(Oryza sativa)。「オリザ」というネーミング(名称)は最近よく見かけるようになりましたが、すでに昭和の初期、有名な童話作家の宮沢賢治が米のことをオリザと呼んでいます(『グスコーブドリの伝説』)。米は、小麦、トウモロコシとともに世界の三大穀物に挙げられます。世界の農地面積を100とすると、小麦が30強、米が20前後、トウモロコシが20弱といったところです。
いま、穀物という言葉が出てきました。穀物とは、小麦、米、トウモロコシ、他の麦(大麦など)です。そばの実や豆を加えることもあります。また、日本の神社などでよく見かける「五穀豊穣(ごこくほうじょう)」の五穀(五つの穀物)とは、米、麦、豆、粟(あわ)、きび(またはひえ)のことです。
これらは、いずれも種子です。草のタネですから、まけば芽が生えて、半年ほどで同じ実が成ります。しかも、穀物は大量に収穫できます。例えば、米一粒から生えた稲は、約1500粒の米を実らせるといわれています。小さいので持ち運びが楽です。栄養価が高い。そして、乾燥させれば長く保存できる。つまり、食料としては、これ以上望みようがないくらい理想的です。そして、その実を貯蔵できるということが、人類のそれまでの営みに一大革命をもたらしました。――― <富>という概念(考え方やイメージ)の発生です。
縄文式狩猟生活では、獲物を蓄えておくということはなかなか難しいことでした。肉や魚はすぐに腐るし、果物や野菜類もあまり日持ちしません。ただ、クリ、クルミ、ドングリなどの木の実は食べていたらしく、それを貯蔵した穴も見つかっています。しかし、富(蓄え)らしきものは、ほとんどなかったということになります。
ところが、このオリザ・サティバの実、つまり、米は貯蔵できます。大きな倉庫をいくつも造れば、何百人分の食料でも確保しておけます。お米を給料代わりにすれば、大勢の人間を雇って仕事をさせることも可能です。
・・・さあ、稲作の出現によって社会はどんな風に変化していったのでしょうか?
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