6.国を富ますとは【第2章【農】の発生】

「農」という仕事は、太陽エネルギーの変換であることはすでに述べました。人間や動物は、常にエネルギーを補給していないと生きてはいけません。国や社会も同じです。産業とは、エネルギーの生産、加工、流通であると言い換えても間違いではありません。昔は石油や電気がなかったのですから当然ですが、人類はほとんど太陽エネルギーだけで生活をまかなってきたのです。
日本の家や建物はほとんどが木造でした。屋根もワラやススキ、ヒノキの樹皮などで作りました。机や物入れ、おわん、はし、おけ、クシ、篭(カゴ)・・・日常品のほとんどは木でできていました。紙や障子も草や木の繊維でできています。着物も「農」がつくりました。麻、木綿、絹、あるいはゲタ、ゾウリ、蓑(みの)などをつくるのも農家の仕事でした。藍(あい)、紅(べに)、ウコンといった染料も、草や花などから採れました。
太陽とあまり関係がないものといえば、貴金属、鉄や真鍮(しんちゅう)などの鉱物、屋根瓦や陶磁器などの粘土材、石垣やお墓など地中から掘り出してきたものです。また、塩は海水から作っていました。しかし、これらはいずれも、製品にするには大量の木や炭が必要でした。したがって、江戸時代までのほとんどの産業は、これらを加工したり、装飾を加えたり、交換したり、売ったり買ったりするものであったことになります(床屋、芝居などは例外)。
ところが、このエネルギーには限りがあります。面積の制約です。太陽の光は均一ですから、光の量(エネルギー)は面積に比例します。つまり、面積の狭い国では太陽の変換されるエネルギーも少ない。生産されるモノや食べ物が少ないと商業も工業も発達しません。ということは、国を富ます、つまり産業を発展させたり、人口を増やしたりするには太陽エネルギーを変換するスペース(= 領地= 農地)を広げる以外にないということになるのです。
しかし、日本の国土は細長い島国であり、2、3千m級の高い山々が背骨のように貫いています。山が約70%を占め、農地にできる平野部となると極端に少なかったのです。



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