1.ユーザーと専門家をつなぐもの
阪神大震災で問題となった認識のズレ
平成7年に起こった阪神大震災は、都市災害の怖さを再認識させるとともに、私たちに大きな教訓を与えるものでした。とりわけ、その後の設計思想の流れを変える契機となったのが、建物の耐震設計に関する問題でした。「耐震」という意味のとらえかたに建築主(ユーザー)と設計施工者(建築専門家)の間で大きなズレがあることが明らかになったのです。
例えば、設計施工者が「大地震でも大丈夫です」と言った時、ユーザーは、「わずかなひび割れも発生せず財産価値も低下しない」と考えている一方で、建築専門家は、「建物がある程度の損傷を受けても倒壊しない」という意味で考えているような認識の相違がみられ、それが社会的混乱を招くことになりました。
こうしたユーザーと建築専門家のズレは、発注の段階におけるコミュニケーション不足から生じていることは言うまでもありません。
コミュニケーションが法令!?
しかし、建物を発注するとき、せん断力とかたわみ率といった数値を指定してくるユーザーはほとんどいないでしょう。多くのユーザーは建築に関する専門的な知識はなく、「震度7くらいの地震でも耐えるように」とか「外装は手入れの楽な材質で」とか大まかな要求しか出せません。
一方、建築の専門家も震度7の地震でこの建物がどういう挙動をとるかは正確には分かりません。同じ震度でも揺れ方は違うし、完成後何年で地震に遭遇するかによっても異なってきます。ユーザーにとっては大きな買い物ですから、いい加減なことを言うわけにもいきません。
そこで両者の仲立ちをしていたのが「法令」という国が定めた基準値です。ユーザーは「国が決めているのだから安心だろう」。専門家も「国の基準は守っているので安全であろう」ということで両者とも安心します。いわば、発注時のコミュニケーションにおいては、この「法令」が暗黙の了解として大きな役割を果たしてきたことになります。
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