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関東農政局

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4.性能設計とその長所・短所

性能設計による発注

  ISO規格と日本の設計法との最も大きな違いは、ISO規格が「性能設計」を採用している点です。「性能設計」とは、構造物などに求められる性能のみが要求され、その性能と信頼性を満たす設計を行なう手法です。

  したがって、例えば、材料に関して言えば、「仕様設計」では、コンクリート、レンガ、鉄鋼、アルミニウムといった具体的な材料を指定しますが、「性能設計」における規定では、「通常の火災で、加熱開始後20分間燃焼しないもの、変形しないもの、有毒ガスが発生しないものを用いること」となり、これを満たせばよいということになります。したがって、発注に際しては、

  • 工事の発注者は、構造物の大まかな姿と求められる「性能」を提示する。
  • 民間の事業者は、その性能を満たす構造物を提案し、具体的な設計図や材料の数値表を提示して入札する。
  • 発注者は、その構造物が要求された性能を満たしているかどうかを、設計、施工、完成、実際の使用時において検査する(「性能照査」)。

という流れになります。

  例えば、コンクリート開水路の性能には、大きくは構造(水理を含む)と水の利用に分けられますが、例えば、構造に関する要求性能としては次のようになります。

安全性能:想定される荷重に対して構造物が断面破壊しないこと

安定性能:転倒、滑動、沈下等に対して安定していること

使用性能:ひび割れによる耐久性、水密性が損なわれないこと

耐久性能:中性化、鋼材腐食、凍害、アルカリ骨材反応等により耐久性が失われないこと

  こうした要求性能を提示して、民間の事業者に発注することになります。 

それぞれのメリット・デメリット

  「仕様設計」と「性能設計」、それぞれの設計方法は、長所短所を持っています。

  これまでの「仕様設計」はマニュアルどおりにやれば失敗はなく、作業も早くなるなど、大量生産に適していました。反面、画一的になり、新技術・新工法への対応が困難です。

  一方「性能設計」では、工法は自由裁量となるため高い技術力が要求されますが、地域特性や自然環境を踏まえた設計が可能となり、新しい材料の導入や新技術の開発とともに公平な競争が確保され、コストも削減される可能性が出てきます。そして、発注者も機能や安全性の選択が行えるという利点もあります。

  しかし、現在は工事の完成後に発注者に引き渡せば、瑕疵(かし:請負者の過失などによる損傷)がない限り構造物からは手が切れますが、性能設計による工事では「●●年後に、どの程度の水準まで性能を保証する」ということになり、運用期間の品質を保証しなければならなくなるなど民間の事業者の責任やリスクも格段に大きくなります。

お問合せ先

農村振興部設計課

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FAX番号:048-600-0624