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関東農政局

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イベント概要

平成29年7月26日

平成29年度関東農政局「食育月間セミナー」(概要)


テーマ   「食・農・地域を知り、伝えよう日本の食文化」

日   時   平成29年6月28日(水曜日) 13時10分~15時30分

場   所   さいたま新都心合同庁舎1号館講堂 (さいたま市中央区新都心1-1)

参加者   361名


開会あいさつ(石田局長)


【講演】
長野県短期大学生活科学科教授 中澤 弥子氏    プロフィール(PDF : 30KB) 
テーマ 「伝えよう 育てよう 日本の豊かな食文化 ~日本国内外での農や食の体験活動の事例から~」

中澤弥子氏
  「和食」のユネスコ無形文化遺産の登録について、正式な申請書のタイトルは、「和食;日本人の伝統的な食文化-正月を例として-」と言います。   無形文化遺産は、ユネスコが取り組む遺産保護事業の1つで、芸能や伝統工芸技術など形の無い文化が対象です。登録された「和食」は、日本人がこれまでに築いてきた、自然を尊重する独特の食に関する社会的な慣習です。和食という言葉は一般的には料理という意味で使われますが、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」は、食の生産から加工、準備や消費に至るまでの、技能や知識、実践、伝統に係る包括的で食全体にまつわる和食文化のことです。 「和食」と言うとどうしても、和食・洋食・中華など料理として使われることもあるので、「和食」が無形文化遺産に登録されたばかりの頃は、よく「カレーも含まれるのか?」や「コロッケ、ハンバーグはどうですか?」と質問をお受けしたのですが、「和食」は社会的な慣習のことなのです。  また、和食文化があると言うだけではなくて、世代を超えて受け継がれ、地域やコミュニティの結びつきを強めていることが認められ、世界の多様な文化の一つとして評価されたのです。
   私は、長野県の農山村で食文化の調査研究を行ったり、学生達と一緒に野菜栽培や農家民泊、幼稚園児との郷土料理作りや箱膳体験を行ったりなど、料理作りだけではなく、日頃から、食事をするときの細かいマナーや心遣いを体験する活動を行っています。そのような活動がご縁で、私は文化庁の文化交流使事業に参加し、国際文化の親交を図る文化交流使として、海外に日本の食文化を紹介する機会を得ることができました。平成26年に派遣され、大学の夏休みを主に利用してヨーロッパ7か国で2か月間、ワークショップや講演会、日本料理を作るデモンストレーションを行い、主に長野県での様子を実例として日本の食文化を紹介するとともに、学校給食や食教育などの取り組みを視察しました。その文化交流使での経験も交えて、「和食」について紹介致します。
   
  「和食」の特徴としては、1.多様で新鮮な食材と素材の味わいを活用している。2.バランスが良く、健康的な食生活となっている。3.自然の美しさや季節の移ろいを表現している。4.正月など年中行事との密接な関わりがあり、地域や家族をつなぐものとなっているなどが挙げられます。
  「田植え」の時には水神様にお祈りを捧げ、秋祭りでは収穫に感謝をします。また、「お歳取り」と言って毎年12月31日に、家族でその年一番のご馳走を食べるといった家族や地域を結ぶ風習があります。田植えの時の食事は、大きな丸いきな粉のおむすびと、寒干し大根の丸のままの煮物で、きな粉のおむすびは、秋に黄色や黄金色に稲穂が実るようにと願いを込め、寒干し大根はスポンジのように水分を吸収する、つまり、水に困らないようにと願いを込めています。そして、これらのものを共に「いただきます」。もちろん現在の田植えは機械化され、共同作業も以前より縮小し、このような共食は少なくなっていますが、このような自然に感謝し、共食を大切にしてきた食文化を大切にしようという地域の想いがあり、活動が継続されています。
  また、海外の方にお節料理や、お赤飯のいわれを話す機会を得て、いかに和食に、先人達の健康への祈りが込められているかを改めて実感しました。「エビは腰が曲がるまで長生きができるように」、「黒豆はマメに働くことができるように」、「田づくりは田の肥料となるように」など、海外の方に紹介しますと大変驚かれました。このようなことが、日本の食の中にはたくさんあり、日々私たちは見聞きしているのではないかと思います。また、和食の「地域性が豊かである」という特徴についても雑煮を例として紹介しました。日本各地には、いろいろな雑煮の種類があります。このような和食の地域性は、海外の方にとって非常に魅力的であるようでした。

  文化交流使の活動の際に、日本と異なる食への考え方を感じた経験について紹介します。フランスのアルザス地方でホームステイを行ったのですが、スーパーに買い物に行くと、スーパーには商品の棚が2種類並んであり、片方は有機食品、もう片方は一般の商品が並べられ、消費者が選択できるよう販売されていました。もちろん有機食品だけの店もあり、日本よりも農業や有機の物を大事にしているように感じました。
  また、ヨーロッパではその動物が食材になるまでに、どのような育てられ方をするのかを大変気にしています。例えばフランスでは、卵に「0」・「1」・「2」・「3」という数字で区別があり、0は放し飼いにされている鶏が有機のエサをもらっている卵、1は放し飼いで、有機のエサでない鶏の卵、2は囲いの中の地面で飼育された鶏の卵、3は囲いの中で飼育されている卵です。

  ドイツのベルリンにある工科大学の食堂を視察しましたが、食堂の机イスの配置で「壁に向かって食べる」という席がなく、必ず誰かと向かい合って食事をする配置でした。天井からつるされたオブジェや壁にカーテンがあって音を吸収するようにしているなど、食べる環境を大切に整えていました。また、モニター画面を見ながら注文しますが、各料理にマークがついていて、有機野菜のマーク、近海で採れた魚のマークなどがありました。特に、必ず丸い赤色か、黄色か、緑色のマークがついていて、私は、栄養に関する三色食品群のマークかと思ったのですが、それは環境負荷のマークで、赤は環境に一番負荷をかけている、黄色は2番目、緑色は最も環境負荷をかけていないということで、マークが環境負荷に応じた目安となっているということでした。例えば、同じ野菜であっても、燃料コストがかかっている季節外れの野菜は黄色になり、1kgの肉を生産するのに、穀物をその数倍使うので、肉類は赤色のマークになるということでした。日本では栄養や健康など人にとってどうかというマークが記されていることが多いと思いますが、ドイツでは、環境が軸となり、環境にとってのマークが示され、選択する機会が与えられているという点に感心しました。

  イタリアでは、小学校で学校農園を作る取り組みが盛んに行われていました。イタリア国内のほとんどの州で学校農園を始める動きが始まっているということでした。各小学校では農園を管理するため、特別に人を雇うわけではなく、その小学校に通っている児童の祖父母など保護者に協力を求め、特に祖父母が先生となって「種から種まで」どのように栽培するのか、また、植物が成育するのかを教えているそうです。収穫した野菜などは給食に使うのではなく、児童の保護者に販売しているとのことでした。また、自国の食文化を大事にしていると感じたこととしては、視察した小学校では、給食の献立が第一の皿、次ぎに第二の皿、そして、最後にデザートまたは果物の順に提供されており、イタリアの伝統的な献立構成で給食を実施していました。給食で残ったパンは、その日のうちに、無料で配るという取り組みをしているそうです。   
  視察したヨーロッパ7カ国の給食は、どこの国でも食堂で学校給食を食べていました。優れた取り組みをしていたイギリスの小学校の学校給食と食育について紹介すると、給食はカフェテリア方式で、おいしい給食が提供されていました。また、プレスクールに通う3歳から、学校で料理をする機会が設けられており、小麦粉を入れたり、卵を割ったり、牛乳を測るなど簡単な料理を作り試食していました。料理を全て算数や理科、社会などいろいろな教科につなげる教育の取り組みを行っていて、例えば、みかんやにんじんを切って分けるのは分数の勉強に繋げるなど、「食べる」ための行動をいろいろな教科や内容に繋げていました。
  なお、ヨーロッパ各国で講演の後に、アンケート調査を行ったのですが、とにかく日本食は人気でした。試食会を行った時には、ほとんどの方から、「おいしかった」、「楽しんだ」とも言ってもらい、日本食に関する私の講演と実習を楽しんでいただきました。講演にわざわざいらっしゃったわけなので、「和食」にもともと関心が高い方達であることは当然なのですが、「和食」の本質的なところを理解していらっしゃる回答が多かったように思います。ヨーロッパ各国で「和食」が「人気でおいしい」、「健康的だ」、「見た目も美しいし素晴らしい」と高い評価を得ていることを実感し、このように素晴らしい「和食」を日本でもしっかり若い世代に伝えないともったいないと思いました。

  さて、平成22年度に行われた日本の児童・生徒の食生活の実態調査結果では、代表的な日本食が好きな料理だけでなく、嫌いな料理にも多数挙がっていました。和食は大人になるとおいしく感じてくるのかもしれませんが、和食を子供たちに上手においしく伝える工夫が必要だと思います。
  また、料理を伝えるだけでなく、和食のマナーである感謝の気持ちや相手を気遣う思いやりも、伝えることが重要だと思います。その例として、長野県で行われていた「箱膳」に関する食習慣について説明します。1.家族全員揃ってから食事を始めること(食事といわれたら、火事よりも急いで集まるということわざがある)、2.「お取り回し」と言って、大皿に盛り付けた料理から取り分けて食べる場合は、「お先に」と声を掛け、全員が取り分けられるように、自分の必要な量だけ取り、次の人が取りやすいよう必要に応じて並べ直すこと、3.「いただきます」、「おいしい」などと感謝の言葉を口に出すこと、4.最後に、お茶碗に白湯を注ぎ、漬け物でお茶碗を「清めて」、白湯を飲み干し、洗い物を楽にすることなどが、和食のマナーとして大事にされてきました。この食習慣について、今年1~4月にイタリアで展示し、多くの方に関心を持ってもらいました。
  農業体験については豊泉さんから詳しいお話をうかがうことができると思いますので、私が長野県内で地域の方々と行っている交流について少しお話ししますと、体験では、ただ農作物を作るのではなく、ニガウリが熟れた後、どうなるか、種の周りが甘いのはなぜか、虫や鳥との関係や、野菜の種類によって芽や葉や花にはどんな違いがあるか等、いろいろな視点で学んでいます。農家民泊も体験し、農家の皆さんや自然とのふれあいを楽しんでいます。
  最後に、「和食」は、日本人の伝統的な食文化ではありますが、食文化は常に変化と創造によって形成されている文化です。「和食」も変化し新たに創造され続けるところもあるでしょう。変化と創造についても意識しながら、「和食の何を伝えるか」、今後も食文化の伝承に携わって行きたいと思います。

【事例紹介1】
森の食農学校スマイル農園 農園主 豊泉 裕氏   プロフィール(PDF : 26KB)
テーマ 「農業の時代がやってきた!~旬の野菜を食べよう~」

豊泉裕氏
  今日のテーマは「農業の時代がやってきた!」ですが、そんな想いで、スマイル農園の看板も作りました。画面の看板は娘が3歳時に書いてもらいました。私が小学生の時の農家のイメージは、非常に良くありませんでした。仕事も長い、汚い、父や母も仕事をやり過ぎている感覚があり、娘が嫁に行っても家に遊びに来て欲しいとの想いで、看板を無理矢理書いてもらいました。
  今では農業が注目され、このようなところで事例紹介できるということは、農家が注目され大事にされてきたのだと思います。
  私は今50歳ですが28歳で就農しました。その頃、大田市場からの勧めで、地域の若手の中で葉物中心の私と、果菜類中心の方、洋菜類中心の方と3人が集まり、近所のスーパーで地場野菜コーナーを始めました。今では皆さんの近所のコンビニなど、どこでも地場野菜コーナーがありますが、当時は立川駅前でも地場野菜コーナーはデパートの地下に1軒しかなく、しかも出荷者は1人だけでした。当初は3人とも市場出荷のみで、自分達で値段を決められないことが悩みでした。個々の契約だったので自分たち同士で値段の調整をしました。その後、メンバーも増え都内の13店舗と個々に契約をして、年間5千万円位売り上げています。
  体験農園は自分の区画で自由に作付け等をする市民農園とは違い、農家が作付けを計画して入園者に野菜を作っていただき、作った野菜を作った方に売るという契約になっています。私の体験農園では畑で講習会を年11回行い、野菜の作り方などを教えます。
  畑作りを始めるときに区画の整理をします。その時、一人ではできない状況があり、隣の区画からメジャーを持ってくれる人が来て、また、その隣の隣からも来てお手伝いが始まりました。これには驚きました。始まって5分くらいでコミュニティが生まれていました。体験農園では、春作から夏、秋、冬と45品目の野菜を作っています。五感を感じながらの作業により、立派に育った野菜は格別においしいです。

  収穫農園は、時間が無いなどの理由で体験農園が難しい方を中心に、50組位の会員がいて約25品目の野菜を作っています。収穫の時期になると、こちらからメールでお知らせします。A品を作るために一生懸命やっていますが、規格外の野菜が出来るときもあります。気候や土壌の具合などが原因で病気が発生し、特に露地野菜はA品をつくるのは難しいということを、収穫の際に体験していただきたいと思っています。
   7年くらい前から商工会議所とともに、農園内を歩く農ウォーキングを始めました。畑の端から端まで1時間半かけて農園の中を歩くなど、非常に良い経験をしてもらっています。ハウスの中は、本当は、皆さんを入れたくないのです。それは、靴で菌を運んできたり、野菜に興味をもって触ったりすると折れたりするからです。しかし、農業を理解してもらうことが大事なので、畑に来ていただき何かを感じてもらいたいと思っています。
  幼稚園児も受け入れていて、種まきや苗を植えることから始めます。まず、園児に野菜の絵を描いてもらいますが、だいこんの絵を描かせると葉っぱが書かれていません。丸があったり、四角があったり、寝ていたりします。これはだいこんがカット野菜とか、スーパーに並んでいるイメージがあるからです。収穫体験が終わるとだいこんが立っていて葉っぱが生い茂っている絵を描きます。園児がじゃがいもを植えて、きれいな白や紫の花を見に来ます。その後、一緒に収穫しますが、1~2cmの小さいものは素揚げにして、おやつにしています。このように野菜に興味を持つような授業をしています。
  
   8年前に食育関連施設スマイルキッチンをオープンしました。体験農園で種をまいて育て、食べることまでを完結できます。きっかけは、知人が収穫体験をして豚汁を作りたいと言ってきましたが、作る場所がなく、たまたまハウスが空いていたので、ハウスで豚汁を作りました。翌年は手打ちうどん作り、翌々年は餅をつきました。そうするうちに近所の児童会、自治会、子供会からも要望があり、敷地内に東京都と立川市の支援でスマイルキッチンを建てたところです。当初は料理教室を主に行っていましたが、最近は多くのウェブサイト情報があり、料理教室の継続が難しくなりました。今は自分たちで収穫や、農ウォーキングなどをしてきて、皆で料理を作るのが主流です。親子料理教室を開催したり、野菜を使ってベジブーケの作成もします。
  立川市のシルバー大学では60歳以上の団塊の世代を対象に、年3回の園芸コースの野菜栽培指導を担当しています。
  農園体験をしながら、農業を理解していただきたいと思います。農業は気候への対処が難しく、また、形が悪かったり、虫に食べられたり、いろいろなことが起こります。野菜は暑い、寒い、雨がいっぱい降るなど文句も言わずに、気候が悪い中でもそれなりに育ちます。一生懸命育ってきた野菜を食べるのではなくて、いただくという感謝の気持ちを忘れないでください。
  都心と違い畑は雨を吸ってくれます。私たち農家は立川市と防災協定を結んでいます。何か災害があったときには畑に逃げることができ、食べ物がない場合は農作物などを食べても良いという内容になっています。
  
  今、スーパーに行けばいつでも野菜が買えますが、それでは旬の野菜が分からない。本当は旬の野菜は無駄なく、夏には夏の、秋には秋のそれぞれ適した時期に育って、それを食べると栄養もあり、その季節を乗り越える力がつくということで、是非、旬の野菜を覚えて食べてもらいたいと思います。
  最後に、私の体験農園には、おいしい野菜を食べたい、人に自慢したい、土作りが好きだ、自分は昔農家だったからできるなどいろいろな想いで来てもらっています。それが、いつの日からか、ゴルフに行こう、みんなでランチに行こう、今度バス旅行に行こうなど、交流が広がりました。多くの人たちとコミュニケーションができて、非常にうれしく思っています。私の話が野菜を食べるきっかけになればと思っています。

【事例紹介2】 
日本料理教室 A Taste of Culture 主宰 安藤 エリザベス氏    プロフィール(PDF : 27KB)
テーマ 「和食と私」
 
安藤エリザベス氏
  ニューヨークで生まれ育った私ですが、来日してからもう50年になります。日本に来たきっかけは「偶然」でした。当時、ミシガン大学で医学を学び始めておりました。実は、家族は皆医者でしたが、私には向いていないのではと悩み、将来について、いろいろと考えていました。ちょうどその頃、学内で日本に1年間社会学を勉強する留学生を募集をしていたので、応募し、採用されました。
  
  最初の訪問地が四国の田舎でした。そこで地元のうどんや梅干しなど、おいしい日本食に出会い、主人とも出会いました。そして縁あって結婚して、東京に移り住みました。昼間は会社に勤め、夜間に日本料理教室に通うことにしました。故柳原敏雄先生を始め、宗家三代の長きにわたり、「近茶流」の本格的日本料理を学びました。柳原敏雄先生のおかげで、食の背景にある文化やストーリーにもひかれ、日本の食文化「和食」の魅力を伝えるというライフワークを見つける事ができ、現在に至っております。
 活動は国内外で雑誌、新聞、料理本などの執筆、料理教室、講演など。これらを通して、日本独特の食材、調味料、料理法などの魅力を伝えることをしております。主に在日外国人、海外からの訪問者を対象にする為、普段は英語で行っております。本日のような機会はあまりありませんので、良いチャンスと思い、私が普段行っている料理習慣についてお話しさせていただきたいと思います。参考になれば幸いです。

  私にとっての和食は、毎日の生活の味方です。特に忙しい時、昔ながらの5色5味5法と言う方法がとても役に立ちます(5色は白・黄・赤・青・黒、5味は甘・酸・辛・苦・鹹【かん】塩辛い、5法は生・煮る・焼く・揚げる・蒸す)。季節と自然を活かすことについてはもちろんですが、「はしり」そして逆に「名残り」、「旬」を中心に「はしり」と「名残り」の両方を楽しむということが和食の1つだと思います。
  海の幸、山の幸は、同じ栄養素を持っていても獲る場所によって特徴が異なります。その特徴をうまく使って両方を取り入れること、行事を大切にすること、例えば「お節」です。一番気持ちが良いのは勿体ない精神です。使い尽くす工夫、それがうまくできるということはとても嬉しいことです。

  基本は「出汁」です。一般的に出汁といえば昆布とかつお節で取る、合わせ出汁ですが、出汁はとるものではなく引くものと柳原先生によく言われました。味を引き出すということから出汁という名前が生まれたそうです。昆布やかつお節は風味が増し、味が複雑になりますが、そのタイミングが大切です。まず、昆布を水になじませる。すぐには火にかけないで、「いいお友達になり、わかり合ったところで、ちょっと火にかける」ということです。火にかけ数分して沸く前までに止めます。出汁を取るときには、その料理に合う出汁を使いますが、他の料理にも使えるようにある程度可能性は残しておきます。昆布の一番良いところのうま味成分だけを引き出してからかつお節を入れます。そのまま濾せば美味しい出汁が取れます。出汁殻でも料理はできますから、可能性を残しておくため一番良いところで止めます。

  私がよく使うのは乾物です。忙しくて買い物に行けなくても乾物から必ず一品作ることができます。そして、そこから出汁もとれます。
  一番典型的なのはご飯があり、汁があり、お漬け物があるということです。ご飯にかけるふりかけは出汁殻でよく作ります。炊き込みご飯は私の一番の味方で、具材はある物を使っています。余り物でも、炊き込みにすれば豪華に見えるし、たくさん炊くと翌日のお弁当にもなります。5色5味5法で何か足りない物があれば、例えば、青物を多めに入れたり、黄色い物を入れたりの調節ができます。とうもろこしの芯からも美味しい出汁がとれるので、とうもろこしの実を生のまま切り取って、芯と昆布と一緒に出汁を取ります。芯の味を引き出すには時間がかかり、昆布は少し沸いて1~2分位で昆布は美味しくなくなりますが、芯からは甘く美味しい味がでてきます。それに塩とお酒を少々入れ、他には何もいりません。そこに研いだお米ととうもろこしを入れて、普通の水加減で炊きます。皆さんにお勧めです。
  おにぎり・おむすびは、昔からあった形で作りやすく、運びやすく、好みに合わせられ、ある物をうまく料理できます。夏はゆかりご飯です。梅仕事を終えたところでシソの葉を乾燥させてゆかりを作ります。ご飯が傷まないようにする昔の人の知恵です。
  漬け物の良さは即席で20分もあればできることです。私は保存袋を使い、刻んだものを入れ、塩で揉みます。それも肩を揉むような加減が丁度よく、最初から強く揉むと痛んでしまいます。ちょっと汁があがってきたら昆布を入れます。昆布を最初に入れると袋に穴が開いてしまいます。その後、鷹の爪を入れても、ゆずを入れても良いです。
  梅仕事です。梅仕事はコミュニティになります。近所の人たちに分けてあげたり、家で食べてもらったり、大変楽しいものです。
  私が工夫したのは、たくあん漬けです。私は、たくあんを桂むきのように開いて、中に大葉を入れ、巻き戻して切ります。おいしいのです。
  私の家のぬか床は、四国の曾祖母から受け継いだもので、200年の歴史があると思っています。ぬか床は時間、時期、旬の全てを体で感じるものなので素晴らしいものだと思います。

  材料を無駄なく使い尽くす工夫として、練り味噌があります。旬のものを入れるのはもちろんですが、ねぎとセロリの切れはしをムダにしないようよく刻んで、風味のなくなった味噌などにそれらを入れて田楽にすることをお勧めします。一品が簡単に作れますし、なめ味噌も良いです。私の家にはいつでも4種類以上の味噌があり、それぞれ楽しんでいます。ふき味噌に使うふきのとうは近所の線路端にあるものを自然の恵みとしていただいています。旬のものをその時期に全てのところを使う「尽くし」料理は「一物全食」です。筍は部分によって食感や味わいも違うため、それをうまく使って料理を楽しめることを海外で説明しています。

  私がいつも作っている「万能醤油」です。これさえあればこの時期、そうめんのつゆや冷や奴にかけても良いです。醤油はすぐに風味がなくなりますから、それにいりこ、しいたけのヘタ(笠は勿体ないのでヘタで十分)、かつお節の厚削りがあればなお良いのですが、これを鍋で砂糖、醤油、酒を入れ煮詰めれば万能醤油ができます。二番出汁もおいしく取れ、具材も使えます。

【意見交換】 

(中澤氏)お二人に事例報告をしていただきましたが、補足されたい事項はありますか。
(豊泉氏)体験農園を始めた頃は、人が畑に入ることで土が硬くなったり、子供が勝手に動き回ったり大変でした。また、畑に悪戯されることもありましたが、最近は体験農園も知れ渡ったことから減ってきました。ただ、未だフェンスで囲まれた樹林地に、カブトムシを採りに子供だけでなく大人も入ってくるので困っています。
  生産者は情報発信や宣伝が下手だと思うので、これからは、その部分をうまく伝えたいと考えています。
(安藤氏)和食は盛付けなど見た目の良さと、器もそれぞれに違いがあり面白いです。私は料理からその器に興味を持ち、実際にろくろを回したこともあります。皆さんも、興味のあることから始めれば良いのではないでしょうか。子供に好き嫌いがあるのであれば、好きなもので献立を考えさせ、食材を使い尽くし、残ったものが少ない人が勝ちというゲームをしても面白いです。楽しく、おいしく、体に良いものを食べていただきたいと思います。

(中澤氏)スロバキアではスープの器に入った味噌汁をスプーンで飲む機会がありましたが、同じものでも味は違って感じ、器や盛付けは本当に大事だと気づきました。
  ヨーロッパで日本食を作る時は、食材の入手が大変でした。軟水と硬水の違いからか、おいしそうなだいこんが見つからず、油揚げも冷凍のものがベルリンにありましたが、他のところでは簡単には手に入りませんでした。イギリスの地方では国産の味噌が手に入りませんでした。日本では和食を作るのに必要な良質の食品がお手頃な価格で容易に手に入ります。当たり前のことのようですが、とても有り難いことだと実感しました。それで、私は食材に感謝の言葉を話しかけながら調理をし、食べる時もなるべくおいしいと口に出して言うようにしています。


(発言者)最近、無農薬野菜ということが良く言われますが、私はそれだと野菜はできないと思っています。キャベツは穴だらけになり、ブロッコリーには多くの青虫が付きます。私は無農薬で野菜を作ってみたいと思っていますので、作っている方がいらっしゃいましたら作り方を教えてください。無農薬栽培を見学しに八ヶ岳方面に行きました。気候が冷涼だと虫が付きにくいそうですが、東京や埼玉で無農薬野菜は作れますか。
(豊泉氏)皆さんが住みやすいところは虫も住みやすいところです。話のあった高原は冷涼で虫が住みにくいと思います。関東圏内では虫も付くと思います。
(中澤氏)長野は寒いのでゴキブリが居ないと言われています。やはり、地域に合わせたベストな方法を考えながら、農作物を作っていく必要があるのではないでしょうか。ヨーロッパでは有機農産物を大事にする姿勢を感じますが、基本として農業自体を大切に思うことが重要だと思っています。
(発言者)長野県民は長寿と言うことですが、テレビや新聞においてその理由は保健所が減塩を啓発し、地元野菜を食べていることだと聞きました。子供達に対しては和食の給食を実施し、その親に料理教室を行うような対策はしているのでしょうか。長野県の事情を教えていただければと思います。
(中澤氏)ちょうど、長野県の栄養教諭にアンケート調査を行う機会をいただいたところですが、先生の中には味噌汁をベースとした和食給食を作り、地元の野菜を使った郷土料理を毎日のように出しているという回答があり、全体的にも意識の高い給食を提供していると思います。
  また、一昨日、千曲市の学校給食センターを視察する機会がありましたが、長野では「和えもの」を多く出しているのではないかという話でした。「和えもの」や温野菜など、季節に応じて野菜をおいしく提供する調理を考えていると話されていました。全国平均に比べ、長野県の学校給食はおそらく野菜を多く使っていて、具だくさんの汁物などを出していると思われます。塩分を薄くしても、出汁の味でおいしく食べられるよう工夫されていました。また、週5回の給食のうち4回から5回、地元の米を使った米飯給食を実施しているということも伺いました。また、長野県は男性の平均寿命が長いのですが、農業体験などで地域の方と交流させていただいていて、野菜のおいしさを良く知っている方が多いと感じています。また、農作業などの運動も大事なのだと思います。減塩については何でも薄味にするのではなく、塩づかいが上手だと感じています。長野は冬が長いので、夏場に取れたものを乾燥や塩漬け保存して食べるのですが、塩加減が少し残るくらいに塩抜きします。大根漬けは塩を効かせないとパリパリとした食感が出せないといい、必要量を良く知って使っておられます。それが子供たち世代に十分に伝わっていないのではないかという課題もありますが、全体的に見れば伝える活動も行われているとほうだと思います。

(発言者)私が普段から気にかけていることについて、安藤さんにお答えいただき感心して聞かせていただきました。例えば昆布出汁の取り方など、いつも適当にやっていたと反省しています。物に対する心の込め方など勉強いたしました。
  また、先ほど農薬に関するお話がありましたが、今ちょうどシソの葉が大きくなって食べ頃になってきました。シソ巻きを作ろうと見てみるとバッタに食われていましたが、穴の少ない葉を使いました。キャベツを植えたこともあり、青虫がいっぱい付きましたが消毒はしませんでした。上の2~3枚を取れば中は大丈夫です。青虫もバッタもむやみに殺したりはしません。どうしても農薬を使わなければいけないときは減農薬を心がけています。

(発言者)先ほどの発言の中で畑を防災拠点にして良い。またその際、作物を食べても良いとのことでしたが、それは立川市の政策でしょうか。それとも豊泉さんのお考えでしょうか。
(豊泉氏)防災都市立川を目指すということで、農業委員会と立川市が防災協定を結び災害時の避難場所となっています。そして、もしもの時は作物を食べて良い協定で、食べた分を後で市に請求することになっています。
(中澤氏)私の出身である熊本県阿蘇地方では、地震により水路が切れてしまい、まだ今年も米の作付けができないところが多くあります。これまでの歴史の中で、水路から来る水により米が作られていたことを実感しました。立川 市のように地域の農業が元気であれば防災にも役立つということになりますので、農業や食文化を今後も大切に伝えていければと思います。
以上

印刷はこちら
   概要版(PDF : 418KB)
資料

   講演「伝えよう 育てよう 日本の豊かな食文化~日本国内外での農や食の体験活動の事例から~」中澤 弥子氏(PDF : 1,162KB)
   事例紹介1「農業の時代がやってきた!~旬の野菜を食べよう~」豊泉 裕氏(PDF : 11,474KB)
   事例紹介2「和食と私」安藤エリザベス氏(PDF : 3,910KB)
アンケート  
   アンケート結果(PDF : 218KB)

お問合せ先

経営・事業支援部地域食品課

担当者:食育推進班
ダイヤルイン:048-740-5279
FAX番号:048-740-0081

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