このページの本文へ移動

近畿農政局

メニュー

令和元年度「和食セミナー」概要

近畿農政局は、令和元年11月14日(木曜日)、大阪市西区のハグミュージアムにおいて、令和元年度「和食セミナー」を開催しました。このセミナーは、和食文化の理解増進に加えて、官民協働プロジェクトである「Let’s!和ごはんプロジェクト」を紹介し、「和食」を身近・手軽に食べる機会を増やしてもらえることを目的に開催し、約80名の方々にご参加いただきました。


 
以下にセミナーの概要を紹介します。 

◯基調講演
   ・講  師:奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏

   ・テーマ:「和食文化の魅力をさぐる」 

◯「Let’s!和ごはんプロジェクト」の取組事例紹介
  ~プロジェクトメンバー  大阪ガス株式会社からの報告~ 

◯パネルディスカッション
  ・テーマ「家庭における和食の保護・継承について」
  ・コーディネーター:奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳    氏
  ・パネリスト:京都教育大学教授         湯川  夏子      氏
                   :大阪ガス株式会社         大石  ひとみ   氏
                   :NPO法人うま味インフォメーションセンター理事

                                                      二宮  くみ子  氏 

◯基調講演

奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏


「和食文化の魅力をさぐる」

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されました。まず、最初にその内容をおさらいしたいと思います。タイトルは「和食;日本人の伝統的な食文化」でございます。大きく分けて4つ、一つは和食は多様で新鮮な食材とその持ち味を尊重したものである、それから、栄養バランスに優れていて健康的な食生活がおくれますよ、自然の美しさや季節の移ろいを表現していますよ、正月などの年中行事との密接な関わりがありますよ、ということです。
これらが素晴らしいから登録されたということではないのです。これらの視点は、世界の料理の中に和食にしかない、だからこれを残していきなさい、継いでいきなさいというのがポイントです。これらが無くなると、こんな素晴らしいものが地球から消えますよ、日本人頑張って下さいというのがメッセージです。
さて、和食とは何か。いろんな論議がありますが、私は自分が生まれ育った故郷の料理が和食だと思います。それぞれの地域の食生活というものは、気候風土や地理的な自然環境の中で大きな影響を受け育まれていると思います。私たちの国土日本は海に囲まれています。しかも国土の70%近くが山です。平たいところはありません。しかも北は亜寒帯で、温帯が続いて、南は亜熱帯です。地形や気温、気象的条件が変化に富んでいるというのが日本の大きな地理的特徴であり、魅力であります。しかも季節に明確な四季があり、それぞれの風情を持っている、我々が四季を日常的に感じて生活しているというのが日本の大きな特徴です。しかも日本の文学の中で最も短いものに俳句があります。俳句のポイントは季語です。季節の表現です。私たちは繊細で豊かな生活をしています。私たちは、四季折々の風情の中で、無意識のうちに生活して、日本人特有の感性を育んでいるのです。
そして、自然環境としては非常にきれいな水に恵まれています。しかも、その水の質というものが軟水で、私たちが日常享受しております炊飯とか、だし、日本料理、和食そのものにマッチしています。自然環境によって食材が決まるとすれば、我々の日本型食生活の食材というものは、主食は米です。周りが海に囲まれているので魚貝類、山の中で野菜を作って、なぜかしら日本人は昔から大豆を中心に豆類もよく食べています。それに海藻も食べています。日本料理というものは、"だし"をベースにした、おいしい水と癖のないご飯、旬の野菜と魚介類を食材に四季折々の生活の中で継承されてきたものです。

的場奈良女子大学名誉教授
最近、健康と食べ物の問題がよく論議されますが、日本人が昔からよく食べていた食材の中に、健康を増進する成分が含まれています。ご飯をベース(主食)にした食生活は、食材の種類も多くなり、多種類の健康増進となる成分を摂るのに優れているという意味で、米に力(パワー)があると思います。それと魚介類にはご存じのとおり、DHA、EPAですね、野菜は抗酸化ビタミン、ポリフェノールや食物繊維などが含まれています。また、昔から日本人が好んで食べている大豆にはイソフラボン、大豆たんぱく質という健康増進効果がある成分もあるし、海藻類には食物繊維、ミネラルが豊富です。昔から日本人は緑茶を飲んでおり、その中にはカテキンがリッチです。このように、昔からの日本型食生活の食材には、欧米型の食生活には見られない健康を増進するポテンシャルがあったということを認識すべきです。この伝統的な食材だけでは不十分で、これらを土台に肉や乳製品や卵が加わって非常にバランスの良い栄養状態の食生活が大切です。和食には、健康増進のバックグラウンドになる機能成分があることを知って欲しいのであります。
次に野菜の話をいたします。野菜は和食のお惣菜などの食材に必要不可欠です。野菜はもともと国内で自生していた蕗や独活など20種類のものを除けば、ほとんどが海外から入ってきたものです。海外から入ってきたものを日本の地形、気候、食文化に合わせて栽培し、品種改良もしてきました。地域の野菜というのはその地域の気候や土、風、温度の影響を受けます。地形の多様な山間部、温度が多様なところで栽培していますので同じ種類の作物でも、それぞれの地域で収穫された野菜の風味が変わるはずです。しかも、その地域の人は好みで選択しているわけですから、個性的な野菜が絶対にあるはずです。伝統野菜、地方野菜の魅力を確り見直そうということは、大変に意味のあることです。
和食のベースになっていたものはやはり“だし”です。“だし”は昆布を中心に鰹節、干瓢、椎茸、最近ではあごだし、飛魚を焼いたもの、などがあります。では、“だし”というのは日本だけのものでしょうか。海外には“フォン”、“ブイヨン”、“湯”(たん)など“だし風のスープ”があります。ところが海外のこれらは、生の動物から抽出し、油分が多く、食材の風味を競い合う。多彩なスパイスを使った上で、濃厚な料理になってしまいます。ところが、日本の“だし”は乾燥した植物、例えば昆布です。魚介類、例えば鰹節です。こういったものから抽出した“だし”は癖のない風味がベースになっています。“だし”を取ることは、結構手がかかると皆さんお思いかも知れませんが、インスタントですよ。水に放り込めば終わりです。“ブイヨン”は寸胴鍋に入れて朝から晩まで、動物のガラなどを煮込まないといけません。圧倒的に“日本のだし”の方がインスタントなのです。ここに大きな誤解があります。
和食の“だし”は、癖がないので食材の風味を活かすことができます。少量の塩、醤油だけで料理の風味を変えることができるのです。“だし”をベースにする日本料理は食材そのものの風味がよくわかる。食べたときに「これ何だったのかがわかる」ということが大きな魅力です。最近はいろいろな“だし商品”が市販されています。パックだし、顆粒だしなど便利ですので、さらに風味に変化が欲しいのであれば一掴みの鰹節を入れてみる、昆布を一欠片入れてみると風味が変わり、個性的な味になります。逆にこれら簡便な“市販だし”があったから、手軽に“だし”を取ることができ、和食が維持・継承されてきたのかも知れませんね。
これから将来、家庭や地域での「和食のバトンタッチ」は大事だと思います。時には家族で“だし”を引いて、1ヶ月に一回でもいいので、台所から“だし”の香りが漂う「我が家のハレの日」があれば楽しいと思います。

 

◯「Let’s!和ごはんプロジェクト」の取組事例報告 

大阪ガス株式会社  大石  ひとみ  氏


 

大阪ガスでは、次世代教育を応援したいということで様々な取組を展開しており、食育はそのひとつです。食育以外には、エネルギー環境教育、火育、防災教育などに取組んでいます。本日は「Let’s!和ごはんプロジェクト」の取組事例報告ということで2017年に開始した「和食だし体験講座」についてご紹介します。小学校の家庭科の授業での内容ですので子どもさんの目線で見ていただけたらと思います。
始めに子どもたちに和食とは何かなと聞きます、子どもたちからは思い思いの答えが返ってきます。お寿司とか天ぷら、お味噌汁という答えもあります。和食とは日本人が昔から食べてきたもので、ごはんとお汁が基本です。そういった和食が日本で育まれた理由は、海の幸、山の幸に恵まれ、四季があり水がきれいといった日本の特徴にあることを説明しています。また、ユネスコの無形文化遺産に登録されて、その良さを海外から認めてもらっているよということを説明します。
子どもたちには、実際のだしを2種類味わってもらいます。「半分ずつ五感をつかって味わってください」、「2つのだしの違いは何でしょうか」、「かつお節と昆布のだしです」、「残りの半分のだしを一緒に混ぜて飲んでみてください」、「これで3種類のだしを味わっていただいたことになります。さてどのだしが一番美味しく感じられましたか」(1種類ずつ、挙手)子どもたちの場合は一番目も二番目もあるんですよ。意外と合わせだしよりも昆布がおいしかったとか鰹節がおいしかったとか様々な意見に分かれます。その時々でかつお節が多かったり、昆布が多かったり、半分くらいは合わせだしが美味しいと言ってくれます。すべて間違いではないですし、すべて正解だと思います。
大石氏
味覚というのは幼少の頃に形成されると言われているとおり、食べ慣れた味がおいしく感じられ、食べ慣れていない味はおいしくないというのはあると思います。できるだけ早い段階で健康的な食生活に囲まれるというところが望ましいわけです。
小学校では実際にだしをとって調理をします。青菜のおひたし、味噌汁、だしガラのふりかけを作ったりしています。コラボしている大学生さんには、小学校で実際に授業を実践してもらうことがあります。食育に関して熱心に取り組んでいる学生さんに関わっていただけることで、お互いによい機会になっています。
最後に、Let’s!和ごはんプロジェクトで、取り組ませていただいた事例をご紹介させていただきます。こちらはデコいなり寿司です。子どもたちは楽しみながら調理をしていました。保護者の方からは「美味しくて、健康のためによくて、手軽に作れる工夫をしたい」というような感想をいただきました。ところで、子どもさんの料理に興味を持ち始めた始めた年齢なのですが、3歳ごろが多く、大人が考える以上に早くから料理に興味を持つようです。
Let’s!和ごはんプロジェクトでは、先生方を対象として講習会、味噌玉を作って鍋で炊飯をする防災クッキング、エコ・クッキング、幼稚園、保育園での和食だし体験講座を実施しております。
和食だし体験講座を地域の皆様と展開させていただいておりますことに関して評価をいただいたということで、ますます和食文化のよさや食の大切さや料理の楽しさというものを皆さんとともにお伝えしていきたいと願っております。



◯パネルディスカッション
  ・テーマ「家庭における和食の保護・継承について」
  ・コーディネーター:奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳    氏
  ・パネリスト:京都教育大学教授        湯川  夏子    氏
                   :大阪ガス株式会社        大石  ひとみ  氏
                   :NPO法人うま味インフォメーションセンター理事
                                                      二宮  くみ子  氏


 

(奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏)
それでは、パネルディスカッションを始めます。

それぞれの専門の立場から、お二人の先生、まずは実際に大学生を相手に授業をし、教育のシステムを作っておられる、京都教育大学の湯川先生からコメントをいただき、話を拡げるきっかけにしたいと思います。湯川先生お願いします。 

 

 (京都教育大学教授  湯川  夏子  氏)
私は京都教育大学で小学校の教員になる学生や、中学校、高校の家庭科の教員になるための指導をしている立場です。その立場で大学生の食育ということと、高齢者に対する料理療法というものをしております。

大学生に和食のイメージを調査したところ、和食のイメージが非常によいのです。健康によい、美味しい、季節感がある、まさにユネスコの無形文化遺産に言われていたとおりのイメージをもっています。
もうひとつすごく大事なことで作ってみたい、この意見が非常に高かったです。しかしながら、学生はなかなか自炊をしていませんし、作り方を知らない、むずかしい、時間がかかる、というイメージがあるということです。和食は本当は好きだけれども、作るのは難しいと思っている実態があります。私ども家庭科の教員養成、小学校の教員養成のところでは食育としてできるだけ調理実習をしたい。特に和食が簡単に調理できることをもっと知ってもらいたい。
昆布、鰹のだしを引いていただき、合わせだしや吸い物の飲み比べをします。学生には、これは小学校と全く同じ授業をしていますけれども、すまし汁を作ってもらいます。そうすると、まあいい匂いと幸せが、教室中に広がります。美味しい、ほっこりしたという感じになります。ここのポイントは本物の味を知るということ、だしって香りがしてこんなに幸せな気持ちになれると思うことが一番大切だと思います。そして美味しいだけではなくて意外に簡単だった、これで自分もマスターして子ども達に伝えていきたいというふうに感想が出てきます。
 湯川京都教育大学教授
こういうかたちで実習をしているのですが、食育をどういうことを伝えたいか、私の発想ではなく、学生の発想ですが、簡単にできるレシピをネットから探してきて、レンジでチンの茶碗蒸しのレシピなどを紹介しています。結構、美味しく出来ます。そういった形をきっかけにして料理ができたらなというふうに思っています。
さてもうひとつ、料理療法という言葉を知っておられるでしょうか。料理を作ることで認知症の予防やケアにつながるという研究をしているのですが、認知症の人でもでも料理ができる、料理を作ることで非常に元気になる、ということなのです。
懐かしい料理を作ることによって、その香りと記憶が非常に結びついていることもあり、手で覚えていることもあって、自分が自信をもって活躍していた頃のことは非常に思い出話になって蘇ります。自信の回復にもつながっていきます。そして今役割がある、まだまだ生きるんだよ、何か役に立てる、そういうことに有用感を持つことにつながってまいります。懐かしい料理を作ることによって認知症のケアと予防に役立っていきます。
ここにお集まりの方々は地域で料理を教えている方もたくさんいらっしゃると思います。家庭だけではなくて、学校や地域で家族の思い出と共に故郷の料理を一緒に作る、家庭でも高齢者もまだまだ元気で作れるということで一緒に作る活動をしていただけたらなと思っています。和食については私から以上です。 

 

(奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏)
次は二宮先生にお願いしたいと思います。二宮先生はうま味のサイエンスそのものに関する学問的な研究を活発に行っておられる日本のリーダーです。私が皆さまにお伝えしたいのは、世界に日本料理を広げるというグローバルな発展に関しても大変貢献されていらっしゃいます。このような先生が、本日は和食に関する話をしていただけるのは大変素晴らしいことだと思います。それではよろしくお願いいたします。

 

(NPO法人うま味インフォメーションセンター理事  二宮  くみ子  氏)
ご紹介をありがとうございました、うま味インフォメーションセンターの二宮です。

今日は和食、家庭における和食の保護・継承についてということで、和食におけるうま味の役割というところを紹介させていただきたいと思います。まず一番大事なことは、和食はうま味を中心に構成された料理であるということです。つまり、うま味がなければ和食は成立しない。その中でだしがすごく多様性を持っていて、汁物だけではなくいろいろな料理にだしが使われている。そして今日、フォーカスをしたいのは、汁物が非常に大事だというこということを紹介したいと思います。
汁物が大事ということで日本人にとっては全く違和感のない汁物ですが外国人にとっては非常に違和感がある。日本人は麺類(パスタ)も汁の中に突っ込んでしまうと言っています。そばとかうどんのことを言っているのですが本当に私が今欧米をまわって、汁物大事でしょうといっても、汁物を取る習慣がない人がほとんどです。
食欲のスイッチを入れてくれるのが汁物の役割です。舌でうま味を感じたその瞬間にその情報が舌から脳に送られるのですが、食べ物が胃に到着する前に脳から消化管に迷走神経を介して情報が送られて、食べ物を消化吸収する準備が始まります。ですからうま味のある汁物を最初に摂ることによってスムーズに消化吸収を行おうというのが、大きな狙いになっています。
二宮理事
私ども味の素(株)でも出前授業をやっております。2007年にスタートした頃に私もプログラム立ち上げに関わらせていただいたのですが、だし、うま味の大切さというものと次世代を担う子ども達に、だしとかうま味、味覚について正しく学んでいただくという食育のプログラムを展開しており、うま味がどんな味というものを体験していただいています。このような授業の際に、鰹だしや昆布のだしの香りが教室に充満するわけです。子ども達が教室に入ってきたときに、ああいい匂いがするな。今日はなんだろう、何の授業と楽しみにしてもらえる。まだまだ和食を広めていく可能性があると私は実感しております。これがいやな匂いにならないようにしていきたいなあと思っています。
外国人にだしを飲ませると最初は嫌がります。それからだしが入っている味噌汁とだしが入っていない味噌汁を飲んでも味の違いがわからないという外国人がほとんどです。それがスタート地点なんですけれども。私たちはそれをちゃんと区別することができるわけですから、是非とも和食文化を受け継いでいく子ども達の教育を大事にしていきたいと思っています。
最後に、味の嗜好性の性と年代差について日本能率協会が2018年に調査した結果をご紹介します。男性と女性で、20代から70代までのいずれの場合にも和風だしが効いた味を好むという結果が出ております。他にもいろいろな味を調査しているのですがいずれも一番に上がってくるのが和風だしの効いた味です。全国平均を見ると2005年から2018年までずっとトップが和風だしの効いた味ということで、やはり根底にあるのは和風のものを食べたいということです。私たちの嗜好は母乳を飲んでいる赤ちゃんの頃から形成がはじまっています。母乳にはお母さんの食べ物の香りが移ります。ですから和風の食事を摂ったお母さんの母乳は和風の風味がついているということで、こういうことからも次世代の子ども達にきちんと和食の良さを伝えていくこと、そして和食はいいな、和食を食べてみたい、作ってみたいというふうに繋がればと思っております。どうもありがとうございました。 

 

(奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏)
今日のテーマは、家庭における和食の保護・継承するにはどうするべきか、小学校で大学でしっかり教えていらっしゃる、しかし世の中、和食離れ、和食を作らないという時代になる中で、和食文化について小中学校、大学で習ったことをどうやって家庭のなかでどう定着していくかということが大変大事なことだと思います。どう伝えていくのか。それともうひとつ若い人は湯川先生もおしゃってましたが、和食は料理するのは大変や面倒くさい、手間がかかるという話があるんですが、どう思いますか。大石さん、どうですか。 

 

(大阪ガス株式会社  大石  ひとみ  氏)
和食に関しましては幅が広いと思います。日本古来の伝統的な食材を使った郷土料理で手間暇かけたばら寿司とか、祭りにでてくるなれ寿司とかお魚を使った手の込んだ料理というのは非常にハードルが高いんじゃないかと思います。逆にそういう料理こそ次世代に繋いでいただきたい料理でもあると考えます。日常的な家庭の和食はそんなに手間のかかるものではありませんが、それ以前の話として料理が嫌いとおっしゃる方が確かに多いんです。「15分で食べてしまう料理を、わざわざ1時間もかけて作るなんて、時間がもったいない気がする。」といった話を聞いたことがあります。

和食って、だしさえちゃんととれれば、ほうれん草のおひたしとか、ちょっとお揚げさんを入れたりだとかでどんどんメニューが広がります。味噌汁は最高のスープといわれています。ハードルを下げて簡単に作れる和食を改めて見直せばとても価値があるものと認識しております。 

 

(奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏)
料理を作るということは。これはひとつのポイントのような気がする、和食離れなのか料理するのが嫌なのか、しかし料理が嫌いだったら何を食べるのか。湯川先生、若い学生さん達はどのように思っていますか。 

 

(京都教育大学教授  湯川  夏子  氏)
もう時間をそこに使わないという感じで、コンビニで食べるって言うのですが、実際に調理を家でする機会がなかったりすると面倒くさいとなるんですが、実際に料理をしてみると意外に簡単だった。調理実習でやってみたら意外に簡単だったと感じるようです。自分で味見していけばいいと言うと、ああそうか、何グラムと計らなくていいんだと思うようです。正しいものを求める情報過多になってしまっているところがあって、シンプルに楽しむ、自分の体験から楽しむといったところから伝えていったらいい気がしました。 

 

(奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏)
少し話題を変えますが、今海外の人は和食ブームですね。でもそれは健康的であるとか、いろいろなことがありますけれども二宮さんからみて、世界を周っておられて海外の人はなぜ和食を受け入れているのでしょうかね。 

 

(NPO法人うま味インフォメーションセンター理事  二宮  くみ子  氏)
海外の方たちが和食を受け入れている大きな理由がヘルシーであるというところが大きいです。海外の和食店に行ったときに「これは和食じゃないよ」といったものとかが減ってきています。特に和食を食べる外国人が増えてきたこともありますし、日本人の料理人の方たちが海外を回って和食の講座を持ったり、調理のデモをすることでレベルが相当上がってきているのは確かです。口内調理というのを私たちはやるわけですけれども、それができない外国人がほとんどだったのですね。ご飯だけ残ってしまって、醤油をかけて食べてしまおうかという外国人が多かったのが、ちゃんとご飯とおかずを順番に食べる、あるいは丼物でも、上だけ食べるのではなくて、ご飯といっしょに食べている外国人が増えてきたということは相当和食に対する理解が深まっていると思います。 

 

(奈良女子大学名誉教授  的場  輝佳  氏)
日本人には日本人が持っている生活環境がある、長い歴史の中で培われたものがいろいろあります。それは和食ですね。若い人も含めてその環境から離れられないと思うんです。それをなんとか育てていきたいなと思います。広げていく活動はひとつではないと思います。農家の人は農家の人の活動をされているわけで、それがモザイクのように集まったときに立派な絵になると思うので皆さんそれぞれ頑張ってほしいなと思います。地道に継続的に繰り返すということ、継続こそ何かをつかむ可能性があると思います。今日、新聞を読んでおりますと子供食堂の話がありました。家庭で充分な食事を提供していない人たちに食事を提供するというもので、やっぱり豊かであるといえども、世界では飢餓の国がいっぱいあるわけです。グローバルに目を向けて日本人のもっている和食の良さをもう一回再認識してなんとか伝えていきたいなと思います。本日は我々の立場からのメッセージなのですが、これからもさらに頑張っていきたいと思っています。会場にお越しの皆様も自分たちの地域であり、コミュニティであり、家庭であり、皆様のそれぞれの立場で頑張っていくときっと幸せになるのかなあと思っております。

時間になりましたのでパネルディスカッションは終了したいと思います。
ありがとうございました。
パネルディスカッション



◯「Let's!和ごはんプロジェクト」メンバー企業等の展示状況(順不同)

味の素 江崎グリコ
味の素株式会社

江崎グリコ株式会社

大阪ガス
大阪ガス株式会社

和食文化国民会議
一般社団法人和食文化国民会議

近畿農政局
近畿農政局

 

 

お問合せ先

経営・事業支援部地域食品・連携課

担当者:奥・藤澤
ダイヤルイン:075-414-9025
FAX番号:075-414-7345