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近畿農政局

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平成30年度「和食シンポジウム」概要

 


近畿農政局は、平成30年11月27日(火曜日)、大阪市において、平成30年度「和食シンポジウム~11月24日は和食の日、守ろう・つなげよう・ひろめよう~」を開催しました。  
このシンポジウムは、「和食」への理解を深めてもらうことを目的に開催し、管内の消費者、企業、行政、教育関係者、栄養士の方など約100名の方々にご参加いただきました。

 
 以下にシンポジウムの概要をご紹介します。

基調講演
 ・ MIHO MUSEUM館長   熊倉 功夫 氏 
       「和食とは何か-創造と継承-」

パネルディスカッション

 コーディネーター
     同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科教授   小切間 美保 氏

 パネリスト
 ・ MIHO MUSEUM館長   熊倉功夫 氏 

 ・ 京料理「萬重」三代目若主人
     全国料理業芽生会連合会
     副理事長/京都料理芽生会会長   田村 圭吾 氏 

 ・ 大阪市立大学非常勤講師   山下 満智子氏 

 ・ イオンリテール株式会社
     近畿カンパニー商品統括部統括部長   奥村 太郎 氏  

基調講演

MIHO MUSEUM館長 熊倉功夫 氏 

「和食とは何か-創造と継承-」


世界無形文化遺産に登録されると、和食を継承する運動をすることが義務として課せられ、6年に一度運動が継承されているかユネスコからチェックがある。そのモニタリングと、和食を普及させて行くための運動体として一般社団法人和食文化国民会議を登録された翌年に設置した。
和食会議の一番大きな運動として、旨味、出汁の継承がある。出汁の文化は家庭では難しいので、11月24日和食の日に全国の小中学校や保育所の給食でだし汁をだしてもらう取組を翌年から始めた。今年は全国で概算で8500校が参加し、全国の4分の1くらいの学校で取り組んでもらえている。これを全校で実施し、先生から旨味の説明をしてもらって、子供達が旨味を記憶し、家で「学校でだし汁を飲んできたよ」と話してもらえるような状態を作って行きたい。
登録された際に「和食とは何か」「何が登録されたのか」との質問が多く、概念がつかみにくいということで「和食の心とかたち」という資料を作成した。すき焼等は和食かというような和食の定義ではなく、「和食は、地域の新鮮で多彩な食材を大切にし、四季おりおりの自然の恵みに対する感謝の心とこれを大切にする精神に支えられ、地域や家族をつなぐ日本人の生活文化です。」と精神論を記載した。大事なことは四季おりおりの自然の恵みに対する感謝の心で、自然の尊重というのがユネスコに登録した文章の冒頭に書き込んだことである。


熊倉先生の基調講演
日本人と西洋人の考えている自然は違い、西洋人の考えている自然は人間と対立するもので、山があればその山を征服するというように、いかに自然を管理、コントロールをするかという思想が基本にある。逆に日本人は大きな災害があってもそれを受け入れ、同時に自然の恵みで生きているということを意識している。八百万の神といい、一草、一木にまで神がいるというのが日本人の自然観である。お花見は神様が季節と共に里に下りてきて農耕を司るのを迎えてのお祭りで、お正月のおせち料理も神様を迎えての我々のもてなしである。日本での年中行事に伴うごちそうというのは全部神様とご縁があり、いつも神様から幸せや気をいただくというのが生活の中に生きている。これを自然の恵みに対する感謝の心と表現し、もったいないという心がそれを支えていると私たちは考えた。

和食は、米飯を主食とし、ご飯に合った多様な汁・菜・漬物によって構成される献立を基本としている。しかし、今、若者が発酵食品の漬物を食べない。また、ご飯とお菜や汁を一緒に食べるというのが日本の食文化であるが、今は一皿ずつ食べ尽くす食べ方になり、主食と主菜、副菜という関係がわからなくなってきている。和食を普及するだけでなく食べ方を伝えていくことが大事ではないかと思う。<br /><br />今の和食は全部、長い歴史の中で大きな変化を遂げて出来てきた。日本独特のオリジナルのものはなく、大陸から来たものがいつの間にか日本化して日本食になってきた。奈良時代の終わりに中国文化が日本に入ってきて、唐の大文明を摂取しながら日本人の生活が展開していった。鎌倉時代には、中国から石臼が入って来て、小麦や大豆を粉にすることができるようになることで麺や、豆腐、湯葉など精進料理や新しい中国文化が入ってきた。また、明治維新によって肉の文化が入って来た。こういうようにだんだん変わっていった結果、和洋折衷というのができた。カレーライス、とんかつ等ができ、日本の豊かな食文化が誕生した。日本の食は近代に向けて大きく変化をしており、古いまま残せというのは無理であり、変化をとげたからこそ新たな食文化が生まれたことを考えねばいけない。もうひとつ、近代の食文化では食卓が大きく変化した、100年前は一人一人箱のお膳の中に飯と汁と小皿が入っている箱膳であったのが、90年くらい前にちゃぶ台になり、今はダイニングテーブルである。この変化が日本の食文化を大きく変えた。

およそ900年前の病草紙(やまいのそうし)という絵巻物の食事風景では一枚の板のような御膳にご飯と汁と三つ小皿が描かれていて、一汁三菜は900年前にあったと言える。貴族の場合は立派な一本足のお膳で、たくさん料理を出したいときはお膳の数を増やす。これが二の膳付きというおもてなし料理の簡単な形で、さらに増えて立派な御膳が最大七つ並ぶ本膳料理というものになる。400年前に革命が起き、茶の湯という日本独特の文化の中で食べきるという特徴をもつ新しい料理の形式ができた。本膳料理は食べ残す料理だったが、食べきる料理として何一つ残らないぐらいの料理と質が新たに生まれた。最初の配膳で一品だけ料理が出、次に煮物で、できたてのものがその都度運ばれてくる、時系列をもったサービスで、次に人数分の焼き物が一つ盛りにして出され、これで一汁三菜になる。次の料理はお菜ではなく「強い肴(しいざかな)」になる。ご飯と一緒に食べるのがお菜、酒と一緒に食べるのは肴で、ここからは酒宴に入る。酒と一緒に飲むものを吸い物といい、吸い物で酒を飲んでもう一つ肴が出て食事は終わり、最後に湯と香物、お菓子が出てくる。順番にできたての食事が運ばれてきて、そこに作り手から食べ手に対してメッセージが込められるという特徴を持った料理が300年前に完成した。この茶の湯料理の行き方と料亭でのお造りから始まり、煮物、焼き物・・・と様々な技法、それらを併せて近代に湯木貞一と北大路魯山人の二人の天才があらわれて日本料理を近代化した。<br /><br />ここで考えていきたいのは、一番贅沢で完成度が高い料理と言われる懐石が一汁三菜、つまり家庭料理だったことである。日本料理の根源は家庭料理で、北大路魯山人は、どんな料理屋の料理より家庭の料理の方が優れていると言っている。料理屋の料理は、自分の創作性あるいは自分の技量を発揮するために作っているが、家庭料理は作り手が食べ手の顔を思い浮かべながら作り、作り手と食べ手の間にコミュニケーションがある。これが家庭料理の強みである。

和食を単に保護継承していくだけではうまくいかない、和食はこれからも変わっていくが、変わって行くときに、どこが変わり、どこが変わらないのかを見て行かなければいけない。理想の日本食の中に変わらざるものがある。一つは食材で米と魚、もう一つはお茶と漆といった物を日本の食文化の根底に据えていかなければならない。食材が和食というものを和食たらしめる大きな要素である。風土に合っていることが一番大事なことで、温暖なモーンスーン気候で照葉樹林帯の風土から作られてきた食材が和食を支えている。今、その食材が外国から大量に輸入されており、日本の自給率は今年38%と聞いている。海外の食材への依存が和食文化を危機にさらしている。和食を守ることは国産品を大事にし、地産地消で自分の身の周りのものを食べるということ。また、和食のゆずれないものに伝統的な料理文化。例えばカレーうどんの特徴は何かといえば出汁。この出汁の文化、旨味の文化をいつも意識している必要がある。

和食が登録された年から京都大学の病院が中心になって4億5千万の巨大な研究費が使われて和食の医学的なエビデンスが追求される大型プロジェクトが行われた。その研究の中で東北大学の都築 毅先生という方が和食がいかに体に良いかを立証した。1975年から80年頃の食生活が大変体に良い。それまでの和食は栄養不足で栄養バランスが悪かったが、1970年代の終わりから日本型食生活と言われる理想的な食文化ができたということである。今、このバランスが崩壊しつつある。そして「もてなし」は日本の大事な文化で、客と亭主の双方がたがいにもてなしあうのが日本のもてなしである。料理屋では今日のお客さんこういう人だからこんな掛け物を掛けて、こんな花を生けてと考える。でも今のお客さんはそういう物を見てくれない。するとサービスする側も工夫しなくなる。しつらえとかマナーとか日本の食文化の根幹に関わる問題が急速に増えつつある。</p>
<p>和食はどんどん変わって行く、日々変わる中で新しい和食が生まれる。その中で変わって変わらざるものの一つは国産の物や身の周りの物を食べること。そして旨味というものを中心とした食文化を大切にすること。それから、栄養バランスを一汁三菜、ご飯とお菜とお味噌汁を一緒に食べるという食べ方を伝えていく。そしてもてなし。人をもてなすとはどういうことか、美味しい物をごちそうするというもてなし方の中にある「食べ手と作り手のコミュニケーション」これが大事だと思う。和食のこれからの方向性というのは、非常に大変だし希望に膨らむ部分もあるが、その中でますます和食を発展させていきたいと思っている。


  

だしの試飲

「だしの試飲」

 

  だしの試飲の様子

だしの試飲の様子2


京料理「萬重」三代目若主人
全国料理業芽生会連合会
副理事長/京都料理芽生会会長  田村 圭吾 氏 


京料理萬重の3代目若主人で、全国料理芽生会連合会の若手の料理人の副理事長、京都の芽生会の会長、京都市教育委員の日本料理に学ぶ食育カリキュラム推進会議委員、日本料理アカデミーの地域食育委員会の副委員長、それから野菜ソムリエ京都の顧問をしている。
料理屋の仕事はただ単に料理を作って美味しく食べさすという事だけじゃなく、その背景やいろんな文化的要素とかそういうものを全部網羅したものである。
日本料理の発展と普及のため設立された日本料理アカデミーでは、平成16年から10年以上食育活動をし、平成21年には農林水産大臣の優秀賞、局長賞をいただいている。

田村圭吾 氏 のお話

昆布探検隊という事業では、首都圏の親子と京都の料理人と食品企業、新聞社と共に北海道の産地を訪問し、生産現場の見学、学習、調理実習などして第1産業の大切さを学んでいただいた。都会の親子には「第1産業の大切さ」を感じて感謝の気持ちを養ってもらい、現地の子供達には、京都の料理人や東京の友達が「君たちのお父さんはすごいね、それがなかったら僕たち料理できないんだよ」と言うことによって、地域の産業に誇りを持ってもらうという事を8年間続けた。交流が深まり、修学旅行で高校生が店を訪れてくれて出汁のひき方を教え、出汁、お吸い物を飲んでもらったら、昆布漁師の息子だという18歳の高校生が「すごく迷ってた。けどこれを見てやっぱり漁師継ごうと思う」と言ってくれた。

その他に海外の方の受け入れや海外に出向いて和食の普及にも務めてきた。食育に関しては三大柱として味覚教育、食材教育、料理教育を実施している。食に対して興味・関心を持ってもらい、おもてなしや他人への気遣い(マナー、エチケット等)や感謝の気持ちを知ってもらう。日本人がいただきますというように、西洋の方もご飯を食べる前にお祈りをするが、西洋の方は神様が与えてくれたものをいただいたんだから食べて当然という考えである。我々がいただきますというのは肉や魚や野菜に対してで、命をいただくことによって私たちは生きている。あなたの命をいただきますということで、その物に対する感謝と尊敬の念をいだいている。

僕は、いつも子供達に、もしあなたが自分のことを全くわからない、性格もわからない、何を考えてるのかわからない、そんな人と親友になれますかと聞く。大学卒業後カナダに留学したときに、多くの日本人の留学生が日本の文化、習慣を聞いてもわからないと外国の方からよく怒られた。自分の国のこと、自分の街のこと、自分の地域のことを知らないことは、恥ずかしいことなので、そういうこともしっかり勉強してねと言っている。知ることによって自分たちの食生活とか、地産地消とかに繋がるんじゃないかと思っている。農水省が「レッツ和食プロジェクト」というのをやっているのはすごくありがたい試みで応援していきたいと思う。

最後に、「歴史を忘れた民族は滅びる」というが、今本当に日本人はそうなっていってると思う。明治維新150年、西洋の文化ばかり追いかけていって自国の文化を忘れてしまっているんじゃないか。<br />日本食を通じて、子供たちが食及び食を取り巻く環境の大切さを認識し、自ら生きる力を身につけることができるように、その手助けを行なうと同時に、日本の食文化の発展に寄与していきたい。



大阪市立大学非常勤講師  山下 満智子 氏


私は大阪ガスの研究所で家庭料理が作られなくなっている中で、今後どうなっていくのかというような研究をしていました。

現在は、定年退職して、非常勤講師として大阪市立大学、同志社女子大学、京都教育大学、京都大学などの学生に調理実習や調理科学の授業など、少し和食に軸足を置いた、食の次世代教育をさせていただいています。

2年ほど続けて、カリフォルニア州立大学の学生に和食のワークショップを行いました。出汁を引き、椀だねを作り、出汁の味付けをして、季節の吸い口も考えて、煮物椀を自分達で作る。そして塗り物の本物の蓋つきのお椀で、味わい方を学ぶという授業です。

山下満智子氏のお話

日本人の学生にもぜひこういう授業をしたいと思うのですが、実際には、食関係を専攻する学生でないとなかなか難しい。日本人の多くが共有してきた生活文化や美意識は、食を通じて身につけるのが一番身近だと思います。しかしながら、食生活の変化で、家庭内でそれが途絶えてしまっている。例えば、出された料理の一品を見たら、お月見だなとか、冬至だからというような生活文化を伝える食の教育は、家庭ではなかなかできなくなっています。
料理屋さんで出される料理や和菓子の季節感を感じる力も下がっていると聞いています。大阪ガスの研究所時代に、東北大学の川島隆太先生と共同で、調理と脳の活性化実験というのを行いました。大脳の前頭前野といわれる部分が、料理をすることで活性化するという実験結果が出ました。調理中の脳の活動を見てみると、簡単な調理でもすごく脳を使っており、献立を考えたり、ガスコンロで炒めたり、盛り付けたり、そういう活動を通じて私たちはいろんな脳の活性化を行っていることがわかりました。
何でも食べたいものが簡単に買えるような時代になりましたが、ご飯を炊いたりお味噌汁を作ったり、和食を次世代に継承する中で、家庭で料理を続けていくこと、和食の文化と共に和食を作るスキルを伝えていくことが、とても大切ではないかと考えています。


イオンリテール株式会社
近畿カンパニー商品統括部 統括部長  奥村 太郎 氏 


イオンとしては10年前くらいから食育に取り組んでおり、今は、グリーンアイということで添加物を極力減らすフリーフロムやオーガニック、フェアトレードで農薬を減らしたバナナ、グリーンアイナチュラルとして抗生物質・抗菌剤を使用しないタスマニアビーフ、海洋の自然環境や水産資源を守って獲られた水産物である「MSC認証」「ASC認証」等、食育・健康・子供達の健康のためにという商品を販売している。
持続可能な漁業の取り組みということでMSCは獲ってよい漁獲量や魚の大きさ、他の生物がかかりにくい漁具を使用し自然資源の持続と環境の負担を考慮した魚、ASCは決められた餌を使用した養殖魚の認証である。
これから魚が減っていくので今までなかった魚も食べて見ようといろんな料理方法も進めていて、ウナギが少ないということで代替えでがば焼きを作っている。

奥村太郎 氏 のお話

グリーンフロムでは、お子様には添加物の少ない商品を食べさせたいということで気にされる添加物109種類に配慮した商品シリーズを提供している。一例で、マヨネーズでは、添加物を減らして、醸造酒、食塩、砂糖のみでも従来の物と味はほとんど変わらない。
オーガニックについては、海外では当たり前に販売しているので、イオンでも取り組みをすすめており、本年度中に全国240店舗で販売していこうと思っている。

全国でやっている地産地消の産直コーナーでは、オーガニックと同時に近郊の農家で採れた野菜をまごごろ農家というネーミングをつけて販売している。また、「食の匠」として地域の本当においしいものを全国で売ろうと種子島の安納芋などを販売している。
簡単食品ということから骨も取ってある調理済みの魚を全部で20種類くらい扱っている。レッツ和ごはんプロジェクトの販促物として作った新しいポップ「食べよう、伝えよう」をつけて売っていこうと思っている。

11月に和食コーナーを作り、和食フェアということで旬の大根をおいしい調味料で味付けをしてお客様にお出して販売した。旬、その時期の美味しい物、社会行事等を伝えていくために、和食を旬の食材と調味料を組ませて販売していく。
近畿圏は野菜を摂らない地域で、野菜を和食で食べてもらおうという取組を食育の一部でやっている。
和食文化継承のために京都女子大学の学生の方とコラボをし、旬の野菜で和食をメインにしたもの、またきちんと栄養が取れるものをチラシで表現して、お客様にわかりやすいように伝えている。

最後に、働く女性プロジェクトを立ち上げており、大阪は48.5%の方が共働きなので、簡単調理でおいしいものを作っている。その中では前煮キット、彩り野菜の甘酢鶏セット、ゴーヤチャンプルーキットなどを売っており、生の野菜と半調理した調味のセットなどが売れ行きがよい。一手間かけて和食が食べれるものをデビューさせていき、流通の立場としてレッツ和ごはんプロジェクトを盛り上げていきたいと思う。



パネルディスカッション

パネリストによる意見交換


 

<同志社女子大学生活科学部食物栄養科学科教授小切間美保氏>
和食文化の継承をすすめるためにというテーマで、まず、「和食」というものをどのように捉えたらよいかということについてコメントいただきたい。

<MIHO MUSEUM館長熊倉功夫氏>
ご飯を食べることが和食の基本。お米の消費量がどんどん下がって来て、3年ほど前に1万人規模で全国の調査をしたところ、20代の独身の男性で1ヶ月間の間で一粒もご飯を食べていない方が18.4%もいるという結果が出た。ご飯離れというのがかなり進んできてる。ご飯のおいしさ、ご飯が我々の食卓のそばにいつもあるということが、これからどうしていったらできるかと考えている。

<同志社女子大学小切間美保氏>
以前に私の研究室で、スーパーマーケットで買い物を終えた方400人以上に「今日の夕食何ですか」というアンケートをした。焼き魚が主菜のトップで意外に和食を意識はされてるのかなと思った。田村様は、日本人の和食離れを心配されているとのこと、何か実感されることはあるか?

   パネルディスカッションの様子
 

<京料理「萬重」三代目若主人 田村 圭吾 氏>
たぶん二極化されてると思う。うちの若い人にまかないを作らせると洋食のものが多く、和食離れだとすぐわかる。若い子たちに出仕事で「軽食を買ってきて」と言うとほとんどの子がパンを買ってくる。
料理屋が和食=懐石というイメージをつけて、和食=難しいものとイメージがつき、本来なら食材、水、出汁、調味料をパッと入れて炊くとできあがるのが和食のいいところだったのを逆に難しくしてしまった。流通関係の方とかは商業ベース優先のところがあって、画一化された物を安くつくるのには大量生産がいいが、地域性を大切にしていただきたい。

<大阪市立大学非常勤講師 山下 満智子 氏>
お正月あけにお雑煮のお味噌、すましを聞くと食べなかったと言う子が5%くらいいる。おせちは?と聞くとそれも食べなかったと言う。「白いご飯も苦手。飲み込めない。」と言うので、どうするかと聞いたらパンを食べると。ふりかけなどで、味がついていたら食べられると。おかずと一緒に食べるから味がついていないと言うとすごくびっくりしている。食べ方も変わってきた。和食嫌いじゃないと言いながら、ごはんを基に和食があることをわかってないのがすごく心配。

<イオンリテール株式会社近畿カンパニー商品統括部統括部長 奥村太郎氏>
今ひろがっているのはパスタだとかパスタソースで、売り場が昔とどんどん変わっている。皆さん忙しくなってきて、働く女性が増えて、買い物される時間が夕刻に移動し、調理できる和食のキット等や真空パックの添加物をほとんど入れない暖めるだけの和食系は増えている。健康な商品は伸び続けて、地産地消の地場の顔が見える野菜とオーガニックがのびている。

<同志社女子大学 小切間 美保 氏>
和食を広めるためには、「簡単」というのが大事なポイントになってくるのかと思われるがいかがか

<大阪市立大学 山下 満智子 氏>
京都大学農学部附属の木津農場で、全国の学生を夏休みに4泊5日で受け入れ、学生が調理実習をして夕食と朝ご飯を作るということをしている。1日目の夕食の中華料理は酢豚、2日目の夕食のイタリアンはパスタで、比較的簡単に作れた。一方3日目の和食はすごく時間がかかってしまった。レシピや説明では、どういうものなのかイメージが出来なかったようだ。
この調理実習では、最終の調理実習は、外の薪竃で、ごはんを2升炊く。ごはんの良い香りが充満して、みんなが引き込まれるようにやってきた。本物のだしを味わうとか、竃でご飯を炊いてみるなどの経験をすることで和食やご飯に対する気持ちが変わるように思う。大学生は小学生と違って情報でずいぶん変わるので、社会に出る前に、食の専攻だけでなくすべての学生がそういう体験を選べるようなシステムも必要ではないか。会社の若い社員にも同じことができるかもしれない。

<同志社女子大学 小切間 美保 氏>
ある企業では新入社員に農業体験を取り入れた食育に取組まれているところもあると聞いている。体験が足りなさすぎることもあるのか。日本アカデミーさんは小学校で食育をされているので、そのあたり感じられることがあるか。

<京料理「萬重」三代目若主人 田村 圭吾 氏>
日本は四季がはっきりあり、山からの恵み、川からの恵み、海からの恵みで自然に生きていけたので日本人は自然に対する恵みに感謝する気持ち、概念がすごく強い。今、あまりにもシステマチックにしすぎて、自然とのふれあい、どういうふうにして物がとれているのかを子ども達が経験してない。地域によって食べるものも違う。地域の文化性というのがわかると子ども達も食べようとする。京都で大根炊きという風習の有るところは地域で大根とかを食べていく。そういうものを組み合わせながら、行政も、大手メーカーさんも、取り組んでいただけると関心が変わってくる。いろんな取組の中に出来たら文化的要素を入れていっていただきたい。

<MIHO MUSEUM館長熊倉功夫氏>
報告聞いててショックだったのが、関西が野菜を食べないという統計だが、これはどういうわけか。

<イオンリテール株式会社 奥村 太郎 氏>
僕は東北にも長くいたが、東北は煮ものが多い。大阪は煮物がない。それが関係しているのではないか。どうやって皆さんに野菜を食べてもらうか考えて、今、サラダに豆を振りかけて野菜の摂取量を上げると言う取組をしている。

<大阪市立大学 山下 満智子 氏>
4~50年前は炊いた物というのがあって、それはその日に食べきるのではなくて、次の日も火をいれて、次の日も次の日も食べる。その頃は大阪や京都でも野菜を沢山食べていたと思う。

<MIHO MUSEUM館長 熊倉 功夫 氏>
そんなことを聞くと和食の保護継承の運動を地域別にやらないといけないのかという気がする。ミホミュージアムでは自然農法で作られた素材で一汁三菜を出している。ちょっと味を濃いめにして、おかわり自由。具だくさんの味噌汁にしていて大変評判が良い。我々が普段やっていた料理を食べていただくと改めておいしいと言うことを感じる。
子ども達の味を作るということも大事だと思うが、味は脳で判断する。味蕾はキャッチするだけで、舌の上でキャッチした情報が脳に記憶されて味がわかる。味蕾が沢山有るから味がわかるという物ではない。ある程度、論理的に整理できる高校、大学生あたりがキチンと味という物を覚えていく、あるいは出会いをするということが非常に大事なことじゃないかと思う。
何が食べたいと子どもに聞くのはやめた方が良い。そもそも食の体験が少ないのに、その中で好きな物だけ食べさせたら、確実に味音痴になる。大人と同じ物を食べさせるということが大事。

<京料理「萬重」三代目若主人 田村 圭吾 氏>
昔は養殖やハウス栽培とかがあまりなかったので、旬を追いかけて日本人は食べてきた。そうすると知らない間に多品目の物を食べていた。昔は食も限られていたので、きらいであってもその時期に出てきたら食べないと仕方がないところがあった。農産物でも、こだわってこの時期にはこれがとれるから食べよう。そういう習慣が有ったから食べようというのを推奨していくのがいいのではないか。行政、企業も文化性というのを加味していかないと本当の意味での和食にならない。

<MIHO MUSEUM館長 熊倉 功夫 氏>
昔、関東で大根が取れないということで、豊作だった愛知か岐阜かの大根を東京の青果市場に売ろうとしたらそんな大根は東京人は食べないといわれたという。そんな大根というのは青首大根で東京の人間は練馬大根とか三浦大根とかその土地の大根しか食べなかった。今、日本中全部青首大根。土地の持っている独自性というものも、文化、食育の中で教えて行く必要があるという気がする。

<イオンリテール株式会社 奥村 太郎 氏>
イオンでは店舗ごとに10人から15人のチアーズクラブを作って、食育関係、地域の自然、リデュース、リユース、リサイクル等に取組んで、全国大会で発表している。私個人は水産の先生をして、魚を新入社員千人くらいに教えている。「骨がここにある」から教えないと魚がさばけない人が多いので、どんどん教えて感動してもらって、どんどん魚を食べてもらおうとやってきた。今日。話を聞いてチアーズクラブでもっと食に関する教育をしたいと思った。

<大阪市立大学 山下 満智子 氏>
働くお母さんも多いので、和食の離乳食も、レッツ和食で是非取りくんでいただきたい。手作りだけでなくレトルトでも和食の味をぜひ伝えたい

<京料理「萬重」三代目若主人 田村 圭吾 氏>
乳製品、油脂類の強いものは保存がしやすく、和の物は、だしがはいっているので腐りやすい。ちいさいときから、ご飯におつゆをかけて食べて自然と和食に親しんだのが、今、スタート地点から洋になっている。是非うまく開発をしてほしい。和食で重要なうま味の成分は母乳にも含まれている。幼稚園とか乳幼児のお母さんの教室をさせてもらって、子ども達がわーっと泣いてもだしを飲ませたらぴたっと泣き止む。何十人と見てきたが、泣き止まない子はひとりもいなかった。

<同志社女子大学 小切間 美保 氏>
京都で京のおばんざい給食を30年近く実施している保育園があります。以前、見学に行ったときに「お大根とお揚げの炊いたん」とかを小さい子どもがおいしそうに食べているのを見て、子どもって洋食でなくてもいんだと自信がわいた。ちゃんとお出汁をきかせて、食べさせると子どもはちゃんと反応するというのを体験している

<京料理「萬重」三代目若主人 田村 圭吾 氏>
京都は給食も各学校で調理員さんがいて和食の献立も入れて作っている。合理化もいいが、普段の生活からちゃんとした和食にふれていくというのをもう一度取り戻していかないといけない。

<同志社女子大学 小切間 美保 氏>
経済レベルを維持するため日本が頑張る必要もわかるが、もっと大事なもの、「命のありかた」「自然との共生」も優先していかないといけないと感じる。そのためには各年代が和食の調理を通して自然を実感する。子どもたちも自然の中を走り回ると言うことがないぶん、調理で食材に触れることで自然を体験することが出来るのではないかと考えるがいかがか。

<大阪市立大学 山下満 智子 氏>
高齢社会の日本、お母さんは忙しいからレッツ和食でも良いと思う。私たち高齢者世代は、おばあさん、おじいさんとしてゆったり暮らして、だしもとり、おいしい野菜を孫に食べさせる。出来る人が出来るように和食を作って、それを次世代に分かち合えるような活動を料理好きなシニアでしていきたいと思う。

<MIHO MUSEUM館長 熊倉 功夫 氏>
行政の役割は大事だと思う。和食がユネスコに登録された後、京都府は和食を京都府の重要無形文化財にした。京都市は京都市民をつなぐ食文化に「京のおばんざい」をした。
それは結果として今の取組の根拠になってくる。実は関西料理は大阪料理。外国から来る人に本当の大阪料理を食べさせるというようなことを行政は推進するべきではないかと思う。

<同志社女子大学 小切間 美保 氏>
今日のパネルデスカッツョンではそれぞれの先生方から深いお言葉をいただいた。グローバルな時代だからこそ、和食文化をしっかりと理解する必要がある。そのためには、五感で感じる食育が大切。本当に心からおいしい、楽しい、美しいと思う気持ちを育てることが、和食を進め、次の時代へつないでいくということになるのではないかと思う。今日のシンポジウムで、そのために出来ることには色々な形があるとわかった。日本人は「食」をとても大切にする国民なので,「和食」がなくなってしまったり、滅びてしまうことはないと考える。

 



お問合せ先

経営・事業支援部地域食品課

担当者:久保田、藤澤義彦
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