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近畿農政局

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巨椋池の農業

1.古代の「農」

  利水技術の発達していない古代において、農業はかつて巨椋池が広がっていたような低地の湿地帯から発達していったと考えられています。巨椋池沿岸の人々は、農牧や湖岸の魚貝の採集をして暮らし、時には丸木舟でもって湖岸を往来したのでしょう。発掘された遺跡からは、交易によってもたらされたであろう広範な地域の土器などが大量に発見されています。土地は肥沃であり、湖の漁猟や水上交易も可能なこの地は、古代人にとって魅力的なところだったと思われます。奈良時代における栗隈(くりくま)の大溝の開削など、大規模な治水・利水工事の伝承も残されています。広い地域に関係する工事だっただけに、強い指導力と動員力が必要だったに違いありません。

  巨椋池周辺は、平安貴族たちとの関係が深く、平等院をはじめ、宇治上神社、三室戸寺など由緒ある寺社が多く残っています。宇治の五ケ庄は藤原家五摂家の筆頭、近衛家の膝下の荘園として伝領されたところでもあります。


弥生時代の市田斉当坊ムラ(想像図)
弥生時代の市田斉当坊ムラ(想像図)

2.中世の「農」

  近代以前の巨椋池とその周辺では、さまざまな営みの中でも農業が主体となっていました。水田や畑作のほか、水辺ならではの植物や魚貝類などの自然の恵みによって、人々の生活は豊かに潤されていたことでしょう。小倉村では、宇治橋上流から水を引き入れており、平等院のそばに水車から揚水していました。鎌倉時代にはすでにこうした水路が整備されていたと推測する見方もあります。また、南岸の伊勢田村や巨椋池南岸の村々では、木津川から水を引いていました。

  鎌倉・室町、そして戦国期にかけて、わが国の農業技術は著しい進歩を遂げました。人びとの生活も今日につながる旧村落を核としながらも、旧来の荘園の枠をこえたまとまりを形づくるようになります。この経緯を明らかにする地域の歴史資料は少ないのですが、これだけの生産力の向上を可能にするためには、山林伐採や土木工事など地域の再開発事業が不可欠だったに違いありません。こうした情勢に伴って、巨椋池にも大きな変化のあったことが推測されます。周辺地域の開発と河川流路の変更、巨椋池の常水面の安定、そしてそれらを受けて太閤堤の完成が促されたものと思われます。



巨椋池の漁具
巨椋池の漁具

 



3.近世の「農」

  かつての巨椋池における稲作は、大雨で増水してすぐ冠水状態となるようなところで行なわれており、平常の水位になるのに半月から1ヶ月も要しました。冠水した場合、田植え後の稲苗は、その経過日数や生育の程度により被害に差が生じますが、最悪の場合、稲が全部腐ってしまい収穫が皆無となることもありました。

 

  一方、巨椋池周辺の全ての村が漁業を行なっていたわけではなく、許可されていたのは、古くから漁業を営む弾正町(京都市伏見区)・小倉村(宇治市小倉町)・東一口村(久御山町東一口)のわずか三ヵ町村だけでした。


  農業と漁業では、好都合とされる条件が正反対というほど違っています。池の水が増水すると、田は水没し、水路は壊され、農地は荒らされてしまいます。しかし、漁師にとっては、水面の水かさが増す増水時の方が魚の量も増え、収入が増します。逆に、水が少なくて米のできがよい年は漁労の方が悪く、こうした対立が、常に両者の感情を逆なでしました。

 
  また、水際の土地についての対立もありました。河口や池の水際は栄養が豊富で、魚の生息に絶好の条件を備えています。そのため、漁師は他の村の湖岸にも漁具を設置して漁を行ないます。これが、漁業権を持たない沿岸農民の反発を引き起こしました。逆に、農民が漁具を仕掛けて漁を行なうこともあったため、漁師側に訴えられることもたびたびありました。池の魚類の量は限られており、漁師やその家族の生活を支えるのに十分な量ではなかったのでしょう。それは農民たちも十分承知するところでしたが、よほど農民の生活も行き詰まっていたものと思われます。


  江戸時代の中頃からは、土砂の堆積のため、宇治川の川底が極端に浅いものとなってしまったことが原因となって、湛水や洪水の被害がより一層深刻になり、収穫がほとんど期待できなくなってしまいました。この混乱は、各地で地震や異常気象による冷害、洪水などが頻発した天保期(1830~1844年)になると、より一層激しさを増します。凶作は慢性化し、米価は高騰、生活必需品にも事欠くありさまとなり、とうとう下層民の中には餓死するものもあらわれました。宇治ではその数が200人を超えたといいます。

  天保5年(1834年)の秋、鴨川や桂川でも、素人漁を禁止する触れが出され、以降毎年繰り返し法令が出されることとなります。飢えをしのぐために、川魚の密漁に走った人がいかに多くいたかを示しています。


大池(巨椋池)で漁業を行なうことを許された三カ町村
大池(巨椋池)で漁業を行なうことを許された三カ町村





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