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近畿農政局

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「近畿地域食育実践者等の交流会」概要
~未来へ「食」と「農」を伝えよう~

平成27年2月28日にKKRホテル大阪(大阪市中央区)において、「近畿地域食育実践者等の交流会~未来へ「食」と「農」を伝えよう~」を開催しました。

交流会では、近畿の各地域で体験型の食育を実践する方々をはじめとして、100名の皆様に参加いただき、平成26年度に行った活動事例の報告やそれぞれの活動に関する情報交換が行われました。

 以下に交流会の概要をご紹介します。 

    食べることは暮らすこと事例から見えてきた確かなこと
 

  小学校と地域ボランティアが連携した取組事例

高原 透 氏(大津市立田上小学校校長)(滋賀県)

  • 五感に響く食・農体験 

高原透氏

  • 本校の教育目標は、「郷土を愛し」と言う言葉と、「心豊な子ども」という言葉をポイントとしている。子どもたちには、田上、大好きと言う言葉を徹底しており、自分の学校、自分の住んでいる地域に愛着を持ってほしいとの願いを持っている。
  • 食育に関しては、食べ物の働きや栄養について興味・関心をもたせる。正しい食事の仕方を通して、友だちとの関わりを大切にし、思いやりの心を育てる。また、栽培、収穫や調理活動などを通して、協調性や社会性を養い、健康の大切さを知り、望ましい食習慣を身につけ、自ら見つけた生活上の問題を自分たちの力で、解決していこうとする実践的な態度を育てることに取り組んでいる。
  • 地域の連携として、畑で植えた菜の花を利用して、4年生が菜の花漬けを行っている。田上地域では、菜の花漬けを黄金漬けと言ってボランティアの方と連携して取り組んでいる。また、大豆についても、5年生が植えて、菜の花漬けと平行してみそ造りを行っている。
  • 出前授業は、滋賀短期大学の学生による授業で参画してもらい交流を図っている。他にも企業、生産者団体等との交流を行っている。
  • どこの学校でも悩んでいることと思うが、ボランティアの高齢化、後をついでくれる若い人がいない。このままでは、菜の花漬けもみそ造りもできなくなる心配がある。この活動は、地域の人と触れ合うことができるよい機会で、他にもいろいろな人と触れ合うことができる。
  • 子どもたちは、いろいろな人と触れ合うことで人間性が高まってきている。ぜひとも続けて行きたいので、保護者に応援を頼んで、ノウハウを身に付けてもらい活動を今後も進めて行きたい。  

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大学と小学校が連携した取組事例

國崎 大恩 氏(滋賀短期大学生活学科特任講師)(滋賀県)

みらいく師範塾実践校と五感に響く食・農体験実践校とのコラボレーション 

國崎大恩氏
  • みらいく師範塾の実践校である滋賀短期大学と五感に響く食・農体験の実践校である田上小学校とのコラボレーションに関する取組を中心に発表が行われた。この取組は、滋賀短期大学が学生の食育指導者としての資質能力を高めることを目指す一方、田上小学校が子どもたちの食や農に対する理解や感謝の念を深めることを目指すという、それぞれの目的を同一の取組において達成することを目指すという特徴をもっている。
  • 具体的には、栄養教諭をめざす学生が、小学校から要望のあった食育のテーマを実践することとなり、1年生3クラス80名に対して12月と2月の2回授業を行った。12月の授業は「風邪にまけないために」をテーマに、2月の授業は「あたたまるたべもの」をテーマに授業を展開した。
  • 本取組において、学生たちは小学校での授業経験を大学の学びに活かし、さらに次の小学校での授業を組み立てるために大学での学びを活用していくという学びの循環によって食育指導者としての資質能力を高めることができた。一方、小学校の子どもたちは、小学校の先生ではない外部の若い先生から学ぶことで、普段とは異なる観点から食と農に対して関心を抱くことができたのではないだろうか。こうしたことはコラボレーションのひとつの強みとして考えられる。
  • 食と農は、まさにグローカリゼーション※の問題として考えていく必要があるのではないか。つまり、いまや食と農は世界的規模で考えないといけない問題であると同時に、きわめて地域的な問題でもあるということである。都市部と農村の間だけでなく、都市部同士・農村同士であっても、それぞれの地域で食と農に関する問題は異なってくる。したがって、未来につなげる食育実践のために、食と農に関する課題を世界的視野で捉えつつ、食育を実際に行う地域の状況を起点に食育の実践を構想していかなければならないのである。
  • こうした意味でも、みらいく師範塾実践校と五感に響く食・農体験実践校とのコラボレーションには多くの可能性を見出すことができる。学生たちは子どもの様子を捉え教材研究を行い授業を行わなければならない。それは教材研究というグローバルな視点と子どもの様子というローカルな視点の融合によって、授業を行うということでもある。また、田上小学校の子どもにとっては、自分たちの身近な経験というローカルな視点と学生たちが提供する授業内容というグローパルな視点の融合によって、授業に取り組むということである。
  • 以上のことから、みらいく師範塾実践校と五感に響く食・農体験実践校が連携・協働し、多様な実践を行っていくことで、未来につなぐよりよい食育実践の形ができてくるのではないかと思う。
  •  ※グローバリゼーションがローカリゼーション(現地化)と複雑に絡まり合いながら、相互に影響を及ぼしつつ同時に進行する現象ないし過程のこと。 

     

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流通、小売り等の事業者による取組事例 

山田 多美子 氏(生活クラブ生活協同組合都市生活顧問)(兵庫県)

食育プロジェクト「おうちでごはん」 

山田多美子氏
  • 私たちは、2013年に中期計画を持ち、食育プロジェクト「おうちでごはん」というテーマを掲げた。この活動に中には、食育セミナー&ランチ、食育ひろば(乳幼児を連れた親を対象にした活動)、小学生を対象にしたキッズクッキングの3つの活動を行っている。
  • 今の子育て世代は、非常に忙しいので、確かな食を選んで短時間に作れる料理を教えて行くことに重点を置いている。内食(家庭で調理をして食べる)することで節約にもつながることを伝える。このように食べものと食べ方の2つの視点は、私たち生協の食育活動の柱となっている。
  • 調理技術を伝えるところでは、和食、出汁の取り方、本物の味は、日本人として知っていこうということで、かつおと昆布の出汁を取って、その味を覚えてもらうことを中心に行っている。魚のさばき方は、魚にはうろこがあり、頭があり、骨があるということを認識することが大切という視点で行う。ランチの中から2品程度の実演を行い、作るときのポイントを伝える。
  • 食を選ぶ力をつける食育セミナーとして、食品添加物の役割、あるいはどのような食品にどんな添加物が使われているかということをテーマにしたり、栄養バランスや栄養は食からしっかり摂ろうということを伝えている。
  • 私たちは、生産者とも深い関係を構築しているので、肉や醤油の生産者によるセミナーも行っている。こうした中で、命の大切さや日本の食文化等を教えてもらっている。
  • これまで2年間実施して、参加者延べ1500人で、就学前の子どもを連れた親子から60代までの多世代にわたっていることが生協の特徴である。生活クラブ都市生活は、日本の生産者を買い支えていくという意識をもった消費者を、増やして行くことを念頭において食育活動を行っている。 

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  食育実践者による取組事例 

荒井 康士 氏(araifoodプランニング代表)(京都府)

美味しさ再発見 和食とお出汁、子供たちに伝えたい事 

荒井康士氏
  • 歳時記のお祭りの巻き寿司の作り方を兵庫県のママ友サークルのお母さん40人に対して、巻き寿司の中身の作り方から巻き方までを教えた。また、地域の歳時記になぜ巻き寿司を作るのかの話をしながら進めている。
  • 作る時は、子どもがいるので集中して調理をすることができないが、子どもと一緒につくることが大切であると思う。親と子どもの会話を踏まえながら作って行く流れをお伝えしている。 子どもがいるお母さんを対象に食育お料理教室では、歳時記やお寿司、細工の歴史などのいわれなどを勉強しながら、調理実習で、ごはんの炊き方、すし飯の合わせ方、包丁の握り方から細工の仕方などを教えている。
  • 丹波自然公園で食育キャンプを行っており、50人の児童で、3食自炊のキャンプをしている。カレーライスを作ったり、夜食を作ったり、お昼ごはんも朝ごはんも、3食、子どもたちが自分で全部作っている。出来合いのものではなく、食べるキャンプを毎年行っている。
  • この狙いは、今、家庭では何でもものが揃う。また、お母さんがすべて揃えてしまうような風潮になってきているので、生きていく上で自分の人間力、子どもの頃から枠にとらわれずに物事を遂行することを目標に食育を行っている。
  • 初めの頃は、子どもが動かない、誰かがやってくれるんだろうというような感じでいるが、周りが動き出すと、自分も何かしなければいけないと危機感を持って取り組む。自分のために作るのではなくて、人に食べてもらう、もてなしの気持ちが芽生える。
  • 小学校の食育講座では、南高梅を収穫して梅干を小学校1年生に漬けてもらったり、和食の基本のお出汁を学ぶとか、昆布の産地と作り方、かつお節の産地と作り方、最終的には調理実習でお吸い物を作る取り組みを行った。
  • 私は、病気を機に料理人から食の根本を考えるようになって、今があるが、今後も農業の大切さを自ら実践して伝えいく。 

 

 

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生駒 雅司 氏(Mint.LLc代表)(兵庫県)

食べる喜び!食べて頂く喜び!そして、思いやりの心を伝えたい! 

生駒雅司氏
  • 私は、一級調理師で専門調理技能士の資格を持っており、料理教室であったり、地域のコミュニティで番組を持ったりして活動を行っている。主な事業は、農水産業の支援ということでアドバイザー、セミナー、食育DVD、また、色んな形の料理教室をやっている。
  •  料理教室も「女子力アップ料理教室」や「酒と料理の男子部」、「イクメン親子クッキング」では、子育てのお父さんを対象に行っている。また、子育て支援用の料理教室も行っている。料理教室は、場所を選ばず料理を選ばずに行っている。田んぼの真ん中で料理教室などを行ったりしているが、そこでは菜の花を使って焼きそばを作ったりパスタを作ったりしている。
  • 料理教室には、ポイントが3つある。一つは、3Sで「シンプル、スピード、スタイリッシュ」、短時間で、簡単で、きれいに料理しよう。二つ目は、「料理には失敗はない、あるのは個性だけ!」と伝えることで、レシピに頼らず、ある程度は指導を行うが最終的には自分たちの個性を大事することを伝えている。三つ目は、私の料理教室は、つまみ食いありで、途中で食べて味の変化を感じてもらう。
  • セミナーは、大学、企業、消費者向けの食育講義を行っており、アニメ的食育論、非現実的なアニメから食育を学ぶことは、大学生に受けている。企業向けは、食育で社会貢献とはをテーマとして、企業がどのような食育ができるかということを話している。生産者向け食育は、食育の三本柱から生産者が出来る食育の話をしている。食育を切実に感じている子育て世代向けには、食事の大事な話やお箸や伝統食を伝えている。
  • ただ経験だけで話しているのではなく、資格を取得し行っている。最近では、内閣府公益社団法人日本調理師会認定の日本食育指導員講師を取得し活動している。我々の会社で一番多い活動は、食育活動に関する相談窓口で色々な方が相談に来られる。 
  • 私たちの会社が伝えたいことは、食べる喜び、食べていただく喜びを料理教室で話させてもらっている。そして、思いやりの心を伝えたいということで、みなさんに話している。私は、食育エバンジェリスト(食育伝道師)ということで、理想は、国民すべてが食育講師になれば食育が広がるのではないかと思っている。 

 

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 パネル展示等による活動紹介及び会員間の交流 

 

「未来につなぐ食育プロジェクト」に取り組む保育園、小学校、大学、事業者等が一年間の活動をまとめたパネルの展示、会員が取り組む食育のパンフレットなどの展示を行い、参加者同士で交流を深めました。

パネル展示1

参加者交流1

パネル展示2

パネル展示3

   

 

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総評

藤本 勇二 氏(武庫川女子大学講師)

食べることは暮らすこと事例から見えてきた確かなこと  

藤本勇二氏
  • 今日の交流会でのキーワードは、「つなぐ」ということである。
  • 食や農、食育を通して子どもたちを地域の一員としてコミュニティを作れる子どもたちに育てていくことが、私たちは必要ではないかと思っている。文部科学省も同じ問題意識で今年度からスーパー食育スクールを始めている。全国の小学校、中学校、高校が地域と学校を結ぶ架け橋として食育を位置づけようという画期的な取組で、もちろん食育をやることで学力がついたこと等を大学の研究者がデータを出して報告している。
  • 食育をやることで健康になった、地域の愛着が生まれたことをエビデンス(根拠)で語ろうという試みでもある。何となく食育をやるとよくなることがみなさんの実感であり、体感でもある。それだけでは広がらないので、何がよくなったのかをエビデンス(根拠)で語ろうがこの取組である。もう一つは、食育が地域と学校をつなぐ架け橋となる取組である。この成果が、3月にでることとなる。
  • 今の子どもたちは、消費者として生まれて、消費者として生きている。ままならないことに付き合っていきたいと思うし、生きること暮らすことというのは、等価交換とは違うものが返ってくる。子どもたちには、体験やその実感を味わせることが大切。
  • 学校現場にある食育を進める上で3つの誤解がある。食育って栄養バランスのこと?(内容の誤解)、食育は、教えなければならない。(方法の誤解)、食育は栄養教諭の仕事だ。(担い手の誤解)の3つの誤解を解いていかない限り食育が学校全体、地域や家庭に広がっていかない。
  • 子どもたちに気づかせないと暮らしは変わらない。ワークショップの中で大事になる手法は、みなさんが伝えられること、ままならないことに付き合っていることを伝えることだと思う。農作業には、農作物の成長、天候もある。これは、ままならないことだ。また、料理人もボタン押すだけで料理ができるわけではない。造作していく作業の調理等があり、ままならないことにきっちりと付き合っている。
  • 食育、食農教育はとても大きなものだと思う。子どもの言葉に耳を傾けながら自信をもって、生活者としての言葉を語ってほしい。「食べるということは、ただ事でないこと」「来し方、行く末に思いをいたす」「子どもの誠実さに寄り添う」「子育てで協働」「プロの大人がそれぞれの立ち位置を活かす」など、交流会に参加されたみなさんの立ち位置を大事にして、地域でそれぞれをつなぐようにして広げてほしい。 

 

 総評  

  • 大津市立田上小学校は、菜の花の生育によって、学校の行事を決めて取り組んでいる。このような取組ができるのは、地域に根ざした活動を行う学校であるので、子育てにいろいろな人が関わって学ぶ体験活動を行う優れた事例だ。また、菜の花漬けを守るために学校は、家庭や地域に働きかける。学校が、最後の砦になる。この取組は世代をつなぐものと感じた。
  • 滋賀短期大学は、小学校とのコラボレーションによる実際の授業で学生がプログラムを発動させることで、子どもを通して将来の担い手を育成する。教員としての担い手を育成することにつながると思う。また、農業体験では、栽培したトマトでトマトソースやスイーツ作りを行っている。これは大学の強みを生かしており、強みを生かすことでつなぐことができると感じた。
  • 生活クラブ生活協同組合都市生活は、「おうちでごはん」で、素材を生かして手軽に作れる商品の充実を言われた。事例報告の中でも丁寧に技術を通して、その向こう側にある人の生き様や食文化の豊かさを伝えており、私たちにとっても大事な役目であると思った。また、キッズクッキングを通して行った取組が、子どもたちの5年後を見据えた未来につなぐ取組だと感じた。
  • araifoodプランニングは、荒井さんの立ち姿、生き方が食育だ。私は、ゲストティーチャーの魅力というのは、ゲストティーチャーの立ち姿であると思う。農家の方が、農機具を持って畑にいるだけでも教材になる。料理人の方が、割烹着を着て話してくれるだけ教材になる。つまりその人が持っている世界観が子どもに乗り移る。巻き寿司についても、親と子のコミュニケーションを作っている。おいしい、楽しいは、大事な言葉で、これは、食の楽しさをつなぐものだ。
  • Mint.LLcは、食育は事業になることを話された。食育にはニーズがあるということと、こだわりを持っているということで、場所を選ばずに取り組んでいる。そして、食べること、食べてもらうことの喜びを伝えている。また、アイディアがすごい、女子力アップ料理教室、酒と料理の男子部、アニメ的食育論など見事な事業を作る着眼点である。そして、大学生、企業や子育て世代をつないでいると思う。ここは、食でつなぐと感じた。
  • ここに来ているみなさんが、つなぎ手であり、つなぎ手である元気を持ち続けて、また、新しいつなぎ手を作ってつなげて行く可能性を見出せば、子どもたちを幸せにするためのよい手立てになると思う。 

 

 

お問合せ先

消費・安全部 消費生活課
担当者:食育担当
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