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近畿農政局

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平成29年度 第2回「食育シンポジウム」概要


  平成29年10月20日(金曜日)にキャンパスプラザ京都(京都市)において、平成29年度第2回「食育シンポジウム(安心な食生活を送るために私たちにできることー農業体験に出かけようー)」を開催しました。
  このシンポジウムは、様々な農業体験等をご紹介し、関係者が連携・協働した活動内容を考えることで、農業体験等の取組を進めることを目的に開催し、118名の方にご参加いただきました。

 以下にシンポジウムの概要をご紹介します。

講演
 ・NPO法人 こども環境活動支援協会 理事  小川 雅由 氏
 ・関西大学第一高等学校・中学校 入試広報主任  大西 隆 氏
 ・京都府立桂高等学校 教諭  松田 俊彦 氏
      京の伝統野菜を守る研究班の生徒達による発表

意見交換
      講師とシンポジウム会場参加者による意見交換

講演

小川 雅由 氏( NPO法人 こども環境活動支援協会 理事)

「食・農・環境の学び場としての都市近郊農地」

 

NPOこども環境活動支援協会は、平成104月に西宮市の呼びかけにより、市民・事業者・行政の協働で設立され、現在は特定非営利活動法人(NPO法人)として認証を取得している。市民・事業者・行政が連携することでより良い社会を生み出すよう、理事・会員にも様々な企業、行政関係者、大学関係者等が所属しており、ボランティア団体ではなく仕事として事業を行っている。

持続可能な社会の推進を目標に、幼稚園、小・中・高・大学など様々な世代の子供たち、地域の方や企業、保育士、教員などを対象とした環境教育を行っており、それぞれの分野で農業体験活動を実施している。

       小川雅由氏の講演の様子
 

西宮市には山・川・海があり、これらを使って様々な子供たちの自然体験を促進しているが、重点的には、西宮市内の甲山(かぶとやま)と社家郷山(しゃけごうやま)の2つのエリアで、キャンプ場を指定管理者として運営し、鷲林寺(じゅうりんじ)農地と神呪寺(かんのんじ)農地の2カ所に専任の職員をおいて活動している。単独で活動するのではなく、都市型里山創出や子育て支援、食農教育、人材育成など様々なキーワードで市民、事業者、行政、大学などをつなぎながら事業を組んでいくことを柱にしている。市民の農体験活動の衰退と農業者の減少の両方を同時にクリアする方法はないかとの問題意識から、私たちがつなぎ手になりながら、幼児からシニアの方々までいろんな方が学べるような活動に発展させている。 

具体的には、森林の整備などを取り入れながら、食べることや農業とつなげる食品メーカーの「食と農と環境の体験教室」、人材育成を目的とした生協の「農とくらしをつなぐサポーター養成講座」、農家・事業者との協働での「甲山農業塾」、企業による小学校への甲山産苗の無料配布などを実施している。甲山農業塾での米作りはお正月のおもち、麦作りはピザをつくるのを目標に、作るところから食べるところまでの一環としたプログラムを実施している。 

西宮市には農業者が生活するような里地里山はないが、都市型里山として、甲山と神呪寺農地などの甲山グリーンエリアにおいて里山整とキャンプ場での野外炊飯等を連携させた事業を行っている。 

具体的には、保育所に地場産の苗を販売し、苗の植えつけ指導や食に関する説明を行う活動、キャンプ場で森林整備した木材を薪として活用、落ち葉やチップによるカブトムシの飼育、落ち葉を農地に投入し堆肥として活用するなどの資源循環を進める活動、地域のことや里山の仕組みを知りそれを広げていくボランティア育成セミナ-、次世代を育む「学びの農」の実践地としての大学生の農体験のコースなどを実施している。 

鉄道事業者では、新人研修の場に農地や野外活動ができるキャンプ場を使い、野外炊飯でご飯作りから作業分担をすることによるチームづくりをすすめている。食品メーカーの内定者の研修では、田植えや収穫体験を通して、生物多様性や食べ物の大切さについて学ぶプログラムも実施している。 

廃棄物処理の会社では、ゴミの現状と資源循環の観点から、森の整備をし、田んぼで子供達が学べるように、主に小学生を対象としたこども農業塾を主催している。社員の新人教育と併せて実施することにより、新入社員も子供たちと関わりをもちつつ、農地も守り、自らも成長できるようなプログラムを実施している。 

また、大学生のインターンシップ等を受け入れて色々な体験をしてもらったり、地域のコミュニティの団体と私たちが一緒になって小学校5年生の田植え体験、稲刈りなどを行うなど、年間を通じてサポートする取組も行っている 

もう一つ大きな軸として、都市型里山を活用した保育士、教員、子育て世帯を対象とした活動を西宮市、生協、保険会社、福祉団体と協働で実施している。34歳位の子供たちにキャンプ場で火をつけるところから親と一緒にやらせ、火の怖さ、自分たちで作るという楽しみ、食べるところまでを経験していただいている。絆プロジェクトという社会貢献活動と併せて、子供たちや家族と一緒に焼き芋を作るという取組をしている保険会社もある。 

西宮市で火を焚いていい所は私たちのキャンプ場2つだけである。マッチを使わずに火をおこすと子供たちの目も輝き、人間が火を使うことによって成長してきたことがよくわかり、教育効果は非常に高い。 

子供を育てるためには、まず保育士や教員の研修が必要である。リサイクルや資源の循環を言葉ではよく言うが、先生たちは実際に山に行って木を切ったこともない方が多い。実際に山に入って常緑樹を切り、樹木のリサイクルをしている会社に行くなど、循環の様子を体験していただき、学校現場でも使っていただけるような研修を進めている。 

これからの時代の中で若い人たちがいかに自立して自活して生きていく力を持つのかが重要である。そのためにこれまで民間企業の研究所、近畿農政局、兵庫県、漁連、JA、森林組合、生協などと一緒に「第1次産業を基盤とした次世代の総合的な生活力を育む学びの社会デザイン研究 」を行ってきた。農林水産業関係者と大学と企業のワークショップや1次産業研究会の企業研修の中で意義付けを発表してもらうような機会を作るなどもしてきた。 

日本社会は、これから初めての急激な人口減少を迎える。マスコミでは社会の生産力が落ちていくなどのマイナスの要因が叫ばれているが、もう一度地域や人々の暮らしのつながりがどのようになっていけばよいのかを考えれば、もしかしたら、20世紀より豊かな暮らしの社会が実現できるかもしれない。そのときに一人一人の市民、国民がどのような力をつけたら良いかということも展望のなかに入れていくと、ずいぶん発想が変わるのではないか。 

これから私たちがどういうことで、どんな分野を広げていくのか、それを農地にからめて整理してみると、総合的な人間力を育む力が農作業にはあると思われる。 

自らを律し、協働と創造との楽しさを理解して、未来に希望をもって自立した生き方を模索できる若者を社会が作らないといけない。そのためには、幼児期の保育、教育を通じての社会体験、生活体験、自然体験の3つの基礎体験が必要である。年間を通じて様々な工程がある農作業を通じて、協働する力、自活する力、コミュニケーション力、自然と対話する力を培っていけるのではないかと考える。 

一番大事な原点は生物多様性と自然の摂理と考えている。廃棄物の問題でいろんな研修を海外の方々に行うが、葉っぱや生き物が最終的に土に帰って行くという循環の発想が弱い。生態系のピラミッドや循環からはみ出したものがゴミになるが、自然の仕組みに対する理解が必要と思われる。地場産の苗をつくる、落ち葉堆肥をつくる、自然エネルギーの導入や生態系ものさしの導入など、農地を生かした総合的な学びの仕組みを概念化することにより、農地での活動がこんなに世界で広がりを持つということを訴えることができたらと考える。 

文部科学省が教育改革を進めようということで、新しい学習指導要領では、教科を学ぶ時代から、教科を通じてどういう力が身につくのか、社会に参画してどのようなことができる人材になっていくのかということを想定した教科学習に移る。その教育改革の柱として持続可能な開発のための教育(ESD)の視点を大事にするというのがある。学習指導要領の中のESDの考え方を踏まえた「生きる力」は(1)生きて働く「知識・技能」の取得、(2)未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成(3)学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性」の滋養で、こういった人間性を育てることが柱になっている。 

これからの新しい価値観形成の時代において、「生きる力」という言葉が出てきたのは偶然ではないだろう。底辺に乳幼児期から大人にいたるまでの発達段階に応じた教育の視点をもち、子供たちの集団がいろんな年齢の人たちとの交流もしながら社会性を身につけるといったことを通じて、社会の多様性に対応できる人間力が形成されていくような道筋も必要ではないか。全体像を絵にしながら、または基本的な方向性を持ちながら、11つの農体験の機会をつくって行くことが、地域で次の人材を育てることにつながると考えている。

 

大西 隆 氏(関西大学第一高等学校・中学校 入試広報主任)

「『ほんまもん』で考えさせる~食べることは生きること~」

 

関西大学第一高等学校・中学校は、大阪府吹田市にある学生数3万人の関西大学に併設された中学、高校あわせて約2千名の創立104年目を迎える中高一貫校である。

食育に目を向けたきっかけは、入試のない中学校3年間をどう有意義にすごさせるかを検討した際に、学習の基本になり、様々な教科に横断したテーマとなりうるということで、環境学習をテーマに決定したことにある。 

中学3年の研修旅行については、元々沖縄本島に行っていたが、きれいな珊瑚を見せたいと思い下見をした結果、本島の珊瑚はほぼ死滅していたため、2006年度から石垣島に行くようになった。

中学2年の自然教室は長野県へ行っていたが、日程が合わなくなり、日本全国の民泊を視察して場所を検討した。 

      大西 隆 氏の講演の様子
     

中学1年生の担任をしていた時には、「私たちの水はどこから?」ということを調べることにより、バスで琵琶湖から瀬田川、宇治川、淀川をめぐり、バスの中で生徒たちが調べたことを報告する校外学習を行った。 

その翌年は兵庫県洲本市成ヶ島(なるがしま)で「大阪湾」の漂着ゴミの学習をおこなった。注射器やゴルフボールなどの漂着物を目のあたりにし、我々はペットボトルを忘れても取りに帰らないが、地球にとってはいつまでも残っていることになり、それが大雨などで流されて島にたどり着くことがわかった。「見えるもんはまだ良いが、見えない化学物質はどうするのか」ということで、奈良県立大学の先生に講演していただいた。「大阪湾再生シンポジウム」に参加し、生徒によるポスターセッションをさせてもらった。 

これらの学習で、私たちにはきれいな「水」と「土」が欠かせないということに気付き、これが「食育」、「農業体験」へ進むきっかけになった。 

検討の結果、自然教室は、和歌山県 旧 日置川町(現 白浜町)で行うことに決定した。決め手は「ワシらは、先生らより高いコメを食べてるんやで」という現地の兼業農家の方によるお話だった。農業は大変なんだという言葉が胸に響き、その話をぜひ生徒にしてほしいと思った。調べてみると、高速道路の延伸計画、少子高齢化や過疎化、原発誘致問題、市町村合併など学習素材が山盛りの地域であった。

また、海・山・川が全てそろっている町なので、農地は食料の生産だけではなく他にも様々な働きがあるんだということがいえる場所だと考えた。また、何もない風景でなんとも「ほんわか」した、都会の人工音と電子音に囲まれた生徒たちにはぴったりな場所ではないかと思った。 

その一方で、技術・家庭科の授業数が不足したため、近くで環境学習できる地域を探していたところ、大阪府豊能郡能勢町神山地区の「耕作放棄地」の紹介をいただいた。ここで生産者と話して、「きれいな「水」と「土」は、確かに必要なものだけど我々もそれを守る義務がある。農家の人や田畑を管理している人、漁業をやっている人だけが守るものではなく、我々一人一人が守らないといけないんだ」と感じたことから、200911月に「能勢プロジェクト」を行うことになった。 

遠足のかわりに「能勢プロジェクト」を実施することになったこともあり、当初、生徒たちは「イヤイヤ」バスに乗り込んだ。現地での作業は主に「電気柵」づくりであったが、250人の中学3年生が約3時間で2.7kmの電気柵を完成させることができた。現地の人がそのマンパワーに驚き、心から「ありがとう」といってくれた。その瞬間に生徒たちの顔つきがころっと変わった。 

201011月に3泊4日の自然教室を実施した。次年度の研修旅行の事前学習として関西空港で飛行機の騒音を調べたあと、白浜温泉に泊まり、そこから2泊民泊を行った。 

民泊先では「田植え」や「稲刈り」はできない農閑期であったが、生徒たちにはありのままを見てほしい、「ほんまもん」で考えさせたいと思っていた。生徒たちはこんにゃくいもからコンニャクを作ったところ、グレーではなくピンク色のコンニャクができて驚いていた。日置川町にあるもので、「ほんまもん」で体験させてくれた。 

翌年に大水害がおこり、生徒たちは、民泊先へお見舞いのお便りを送ることにした。いつも提出期限を守らない子供たちがこの時にはぴたっと期限を守り、71通の手紙を送った。それを聞いた関西大学第一高等学校生徒会が、文化祭の売り上げから義援金を送ることになり、さらに、中学校のPTAも反応し、急遽、バザーをし、売り上げを義援金で送ることになった。 

1月に義援金を持参し、南紀州交流公社から感謝状をいただいた。能勢で心からありがとうをもらったのと同じで、これが民泊の良さではないかと感じた。生徒たちは修学旅行で泊まった旅館の名前は覚えていないが、民泊で泊まったおじいちゃん、おばちゃんの名前は覚えている。 

その後、JR紀伊日置駅(紀勢本線)のホームと待合室を関西大学第一中学生が製作した絵と日置川小唄の歌詞の木彫りで飾ったり、民泊の受け入れ団体のマイクロバスを生徒が手書きの絵画でデコレーションするなど、交流が深まっていった。 

受け入れ団体の機関誌に掲載された保護者からのメールを紹介すると、「出発の朝まで嫌がっていた娘が、帰宅後は楽しくて、感動したと嬉しそうに話してくれた。よそのお宅で家ではできない体験をしたことで、反抗的な娘が気持ちを素直に表すようになった。頑固で気むずかしい最近の娘にほとほと手を焼いていた親としては、一筋の光が見えたような気がする。(概要)」ということで、この娘さんは、あまり外に出て行くタイプではなかったのが、民泊をきっかけに積極的に物事に取り組むようになった。食育で土・水の大切さを勉強させることも大事であるが、このような展開があるとは思いもよらなかった。 

また、2014年には、民泊先のおばあちゃんが倒れて、言葉が不自由なおじいちゃんのかわりに生徒たちが救急車を呼び、一命をとりとめるということがあった。食育を通じて、過疎化や高齢化など様々な問題に直面することで、生徒たちには良い勉強となった。 

能勢プロジェクトは、毎年3回、各学年で1回ずつ実施することになり、「獣害」への理解や耕作放棄地の復活、農道の整備に発展した。農地は草刈りし、肥料をまいて、田植えができ、電気柵もできた。 

一貫教育的な入試のない「ゆとり」をどうアピールするのか、本校の生徒に求められる生きる力は何なのかを考えると、事前に学ぶ・調べる、現地ではしっかり見る・聞く・食べる・獲る、事後は考える・まとめる・発表することが大切と考える。 

直近の課題としては、ますます深刻化する少子高齢化・過疎化で今までの活動が維持できるのかということがある。日置川は受け入れ家庭の減少により民泊地域を拡大する必要が出てくるかもしれず、あまり広域になると対応が困難になる。能勢は無償で「耕作放棄地」を借用しているので、いつまで使えるかが課題である。いずれも現地のご厚意に甘えているのが現実である。 

一つのキーワードとして、少しでも「地域の役に立つ」取り組みであれば続けさせてもらえるのではないかと考える。現実の問題を「中学生なりに」とらえ、解決策を提案できたら良いのではないか。例えば、現地の特産物を使った商品開発やビジネスプランの提案など、ポスターセッションのようなこともできればと考えている。 

最後に、地域と学校はWin-Win関係でないといけない。どちらかがしてあげるのでは長続きしない。そのためには、「ほんまもん」を見せて、「土」と「水」が大切だと思うだけではなく、「土」と「水」を守るんだと、考えて行動する「考動」できる子供を育てることが大切と考えている。   

松田 俊彦 氏(京都府立桂高等学校 教諭)
京の伝統野菜を守る研究班の生徒達による発表

「食や農業を通じて夢を実現する取組」

本校の「京の伝統野菜を守る研究班」が実施している「九条ネギ」や「桂うり」など、失われつつある京野菜を守る活動は、色々なメディアに取り上げてもらっている。

京都には、独特の会席料理や精進料理、庶民の「おばんざい」などの食文化があることで京野菜が今まで残ってきた。京都は、周囲を山に囲まれ川があり、寒暖差が大きい気候であることもその要因となっている。

京の伝統野菜は、現在37品目定められているが、途絶えたものもある。生徒に「伝統野菜なのに生産地がイタリア産と書いてあるのはなぜ?」、「種も含めて京都で育った京野菜はあるの?」と言われたことをきっかけに「固定種を探そう」、「その農家の現状を聞いてみよう」ということで9年前に「京の伝統野菜を守る研究班」を立ち上げた。

1年間でどのような取組を行ってきたかということを発表する日本学校農業クラブ全国大会での生徒の発表をまず聞いてもらいたい。

     松田俊彦氏の講演
    

京都府立桂高等学校  京の伝統野菜を守る研究班  生徒4名の発表

「京都には、農家が先祖代々受け継いだ固定種があります。味にこだわり、種子選抜を行ったことで美味しいが病気に弱く、栽培にも手間がかかります。食生活や流通の変化で栽培し続けるのにも限界があります。

そこで当研究班は、京の伝統野菜にスポットライトを当てることにしました。京の伝統野菜を提供するカフェを期間限定で、「京都府立桂高等学校」、「京都府立すばる高等学校」、「同志社香里高等学校」の高校生だけの企画・運営とし、仕入れ、メニュー開発、価格なども議論を重ね、中止の危機にも直面しながら20161月に京野菜カフェ「ぬくもり庵」を開店しました。この反響は大きく、京都府知事や京都市長にご来店いただきました。売上金は京野菜の振興に寄付し、知事から感謝状もいただきました。また、京都府からの依頼でイタリア料理店のシェフの協力の下、京野菜の九条ふとまるネギを使った料理教室も開催しました。その時のアンケートでは、98%が家庭料理に京野菜を活用したいと答え、京野菜の魅力や利用法が伝われば消費者が購入することを確信したところです。

      京の伝統野菜を守る研究班の生徒達による発表
    

京野菜の加工品の代表は京漬物ですが、近年京漬物の需要が減少する中、京野菜の新たな需要創出のため「ピクルス」に着目しました。酢を使うことで減塩効果も期待できます。しかし、独特の酸味から苦手な方も多いのが課題です。研究班は、多くの消費者に好まれる味を探すため、大阪の食品会社の協力を得て商品開発に取組みました。2016年秋、この季節では冬野菜しか提供できないことから、青味大根、すぐき菜、九条ネギや金時ニンジンを組み合わせて商品開発しました。京野菜は独特の風味を持っており、その特性を失わないよう議論を重ね試作品を作り、出汁や薬味で調製し、京野菜独特の風味を持った和風ピクルス4種が完成しました。20172月に販売を開始すると短期間で売り切れる商品となり、桂うり、もぎなす、賀茂なす、鷹ヶ峯唐辛子、鹿ヶ谷カボチャの5種類の夏野菜を使ったピクルスの販売も決定しました。加工担当者からはカボチャはピクルスにするのは難しいとのことでしたが、たんぱくな鹿ヶ谷カボチャを完熟する前に収穫し、加工する方法を提案して試作を行った結果、それぞれの野菜に合ったピクルスが完成しました。

すると、東京で食品会社が開催する展示会でそのピクルスを出展して欲しいと依頼があり、高校生として唯一参加しました。展示会に参加したバイヤーからは、「今までにない食感が良かった」と最も高い評価を得ることができました。私たちは、需要が減少した野菜でも新たな食文化と融合させることで、需要が生み出せると確信しました。また、高級スーパーマーケットチェーンにおいてピクルスの販売が決定し、他の小売店からも問い合わせが多くきています。

研究班は、京野菜の機能性成分など新たな価値を生み出し、それを生かした加工品開発と商品化を行うため、様々な関連機関が参加する「京野菜機能性net」に高校生として唯一参加しています。このことで地元病院からは透析患者向けに「京野菜の機能性」について講演依頼を受け実施しました。また、今年度から京野菜を使った病院食を提供するプロジェクトを立ち上げ、機能性野菜としての可能性を示すことができました。

    

私たちの取組は、地元新聞だけでなく全国放映されるテレビ番組でも取り上げられ、全国に京野菜の魅力や可能性を伝えることができました。

今年度の成果は、(1)高校生カフェや料理教室という新たな情報発信ができたこと、(2)多様な加工法に取り組むことで新たな需要と食文化を創出することができたこと、(3)京野菜が機能性野菜として新たな価値を示すことが出来たことです。

伝統とは、その精神を継承しながら時代の変化に即し、多様化するニーズに応えることで受け継がれて行くものです。私たちは、これからも京の伝統野菜を需要がある野菜として市場に提供し、京都に新たな食文化を構築することで守り続けようと思います。」以上生徒による発表。

      野菜の食べ比べ
    

京野菜は、色々種類があり、元々は料理上手な方にその需要があった。農家は、直接販売する「振り売り」を行っていたが、これは地産地消の代表的なものである。

伝統野菜を稀少野菜ではなく、需要野菜に変えていこうというのが研究班の取組である。まず種子を採取しなければならないのだが、種子を採取すると土地の使い勝手が悪いので農家は種子を買うことが多い。当校では、伝統野菜の種子の採取・保存、商品開発、振り売り、食育活動、大学と機能性分析などを行っている。また、コンテストに出場し、多方面に情報発信を行っている。

一例であるが、NHKのドキュメンタリー番組で、「京の伝統野菜を守る研究班」が行う京野菜の栽培、種子の保存、販売、商品開発、メニュー開発などの取組を全国放映していただいた。

番組では、番組側の出場者に本校農場で収穫した京野菜をリヤカーに乗せて野菜を路上販売する「振り売り」に同行してもらい、生徒と一緒に野菜の販売を行ってもらった。また、「桂うり」や「桂うりと鹿ヶ谷カボチャを使ったムースケーキ」、「桂うりのかき氷」の試食をしてもらった。この桂うりはメロンの香りがするものの、甘みがないため、スイーツに向いていることから生徒が商品の提案をしている。

研究班の生徒たちは、京野菜農家に金時ニンジンや青味大根などの作り方を学んでいる。種子を譲っていただける農家も少ない中、若い子が京野菜の生産・販売・種の保存などに携わり、何度も農家に足を運んで京野菜を守ってくれることを理解してもらえたことで貴重な種子を譲り受けることができた。

商品開発に協力いただいている京都市内の老舗和菓子店の店長からは「高校生が一生懸命やっていて、ちゃんとしたものを作らないと彼女たちにも失礼だと思っている」とコメントをいただいた。

研究班の3年生の生徒は、後輩に「京野菜の種子を頂いた農家の思いを忘れてはいけない」と伝えている。

京野菜を守り続けている生徒の中には、管理栄養士の資格を取り、小学校の給食で京野菜を組み合わせることができたらと考えている者もいる。高校生が自分たちの子どもの世代のことを考え始めている。実際、栄養士になって活躍している卒業生もいる。

食育という面で見ると、幼稚園での食育講座、小学校での野菜の栽培指導、大学での講義、高校の家庭科クラブで交流活動を実施したり、病院と共同研究を行ったりなど、食育活動を行っている。

このように本校の「京の伝統野菜を守る研究班」は様々な取組を実施しており、地域貢献にもつながるものとなっている。


意見交換

講師とシンポジウム会場参加者による意見交換


 

司会者>
農業体験等の取組を進め、多くの方に参加してもらう為には受入れ側や体験に参加する側の立場からどのような事が必要かについてご意見・ご提案をお願いしたい。

NPO法人 こども環境活動支援協会  小川 氏>
各地域の置かれた環境が違うため、その地域にあった農業体験を行うことが必要。耕作放棄地が広がるところもあれば、都市近郊ですぐにでも農地転用ができるところもあり、農業体験を行う上で農地利用にかかる経費負担も随分と異なる。都市住民を対象とした農業体験の重要性について、教育機関とか行政、地域企業などが共通認識を持つことが必要。そのためには全国共通となる食農教育への支援をボランラリーな関わりにのみ頼るのではなく、長期的な視点に立って予算措置を伴った施策方針を定めていくなど、まずは枠組み作りが必要。 

   意見交換の様子1
 

<関西大学第一高等学校・中学校 大西 氏>
「ほんまもん」を体験することが大切。イベントは関心が高い方が来てくれるが、それ以上広がらない。役所の仕事と同時進行で教育の力を使ってもらいたい。生徒・児童・園児たちが、農業体験をすることによって、今まで食べなかった野菜を生で食べて美味しいと思うというような教育を毎年行えば、体験した子供たちが大人になったとき、その経験が次の世代に伝わると思う。教育の力を上手に巻き込みながら長い目で見て体験の取組を行っていくことが重要。

<京都府立桂高等学校 松田 氏>
本校の生徒は入学時に完全無農薬で野菜を作りたいというが、作ってみるとほぼ全部虫に食べられてしまう。小学生の体験を受け入れているが、種をまいて収穫だけを体験させるのではなく、その間の作業を体験させる事が重要。また、素材の本当の味を知るということが重要で、早い段階で本当の味を経験することが豊な食文化を育てたり、豊かな感情を持つ子供の成長につながると思う。

<京都府立桂高等学校 京の伝統野菜を守る研究班の生徒>
私は、鷹ヶ峯唐辛子を食べて初めて唐辛子が美味しいと思った。高校に入る前は野菜が嫌いでキャベツとトマトときゅうりしか食べられなかった私が、この学校に入学したことから、どの野菜も美味しく感じ、伝統の魅力にもひかれて、その味を多くの方に知ってもらいたいと思うようになった。私のような経験をすることが必要だと思う。

<旅行会社>
弊社も全国的に食と農と観光を考えるということで、地域の皆さんと受け入れの体制を整備するという事業を農水省と一緒に進めている。最近の旅行現場でも観光とは違う形で地域で色々体験するようになってきている。地域には面白い体験プランが多数あるので、いかに出発地に伝えるかが我々の仕事でもあるが、資料や画像、映像等、目で訴える物があれば伝えやすい。この取組を進めるためには、地域での窓口の体制が重要であり、関係者と連携しながら活動していきたい。

<丹後地域の高校教諭>
農業体験で「ほんまもん」に触れて子供たちの心が育っていくという話であったが、過疎地域では「ほんまもん」の中にありながら、子供たちがその良さを認識できていない。その中で、都市部の方が食育という農業体験を通して、農業の素晴らしさを認識することは本当に素晴らしい。消費者が確かな価値判断を持つことで少々価格が上がっても農業は発展する。消費者の意識が上がれば、生産者は夢や誇りを持って仕事に従事することができ、やがてその子弟が夢を語れ、消費者も生産者も共に農業の良さを再認識できるようになるのではないか。消費者の方に現状の中で確かな目を養い、「ほんまもん」を考えていただきたい。

<司会>
農業体験等の取組は、受入れる側と体験に参加する側がそろって初めて成立するもので、双方共に解決していく課題がある。受け入れる方にはより多くの方々が参加したいと思うような体験内容を考えていただき、参加する方には、積極的に参加していただければと考える。近畿農政局も農林業体験等の機会の提供となる取組を進めていきたい。今回のシンポジウムに参加したことが農業体験等に取組むきっかけとなり、一人でも多くの方に農業体験等に興味を持っていただき、農業体験等のよりよい環境作りにつながれば幸いである。    

お問合せ先

消費・安全部消費生活課
担当者:食育班
ダイヤルイン:075-414-9771
FAX:075-417-2149