中山間地における農地集積の一例
姫路市夢前町宮置地区
姫路市夢前町宮置地区では農地中間管理事業を活用した農地の大区画化が始まろうとしています。
昭和45年頃にほ場整備が行われていましたが、施設の老朽化、また、高齢化により用水路の維持管理(溝掃除)、畦畔法面等の草刈り等が困難になり、パイプラインなどの水利施設の整備が課題となっていました。
施設整備をするにも地権者への負担を求めるのが厳しく、地区内の農業法人が負担することも厳しい状況であったことから、地元負担が軽減出来る農地中間管理事業を活用したほ場整備を行うこととしました。
しかし、地域住民の合意への道のりは厳しく、苦労の連続があったようです。
ほ場整備面積:約22ha ほ場1枚の平均面積1.8ha(約130枚の農地を26枚に整備)
事業期間:平成31年度~令和5年度(平成31年度:実施設計、令和2年度~令和4年度:区画整理工、令和5年度:換地)
兵庫県拠点では、取り組み開始から地域の合意に至るまでの経緯を地区の自治会長と農業法人の代表からお話を伺いましたのでご紹介します。
伺ったお話については、地区での取り組みとして時系列で取りまとめて表にしています。
気になる取り組みについては、下記表中の詳細欄(紹介1~13)をクリックしてご覧下さい。
※紹介1~紹介13につきましては、順次更新させていただきます。
宮置地区の概要
宮置地区は、東西が山林に囲まれ、夢前川が地区の中心を南下する、姫路市夢前町置塩村に位置する中間農業地域で、地区内には中村集落と町村集落がある。
同地区の北東の山頂には、播磨地方で最大級の山城跡といわれる国指定史跡の置塩城跡があり、かつて町村集落は小塩町(おしおちょう)と呼ばれ、城下町として栄えた時代もあった地域でもある。
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(姫路市夢前町宮置地区) |
同地区の世帯数、農家数等は下表のとおりで、地区内にある(有)夢前夢工房が農地を集積していることもあり、農業経営体数は減少、土地持ち非農家が増加する傾向にある。
農業経営体数 | 農家等 | 農業従事者等 | 一般世帯 | ||||||||||
計 | 法人 | 非法人 | 総農家 | 土地持ち 非農家 |
農業 従事者数 |
農業就業 人口 |
基幹的農業 従事者数 |
世帯数 | 世帯員数 | ||||
家族経営 | 組織経営 | 計 | 販売農家 | 自給的農家 | |||||||||
平成17年 | 経営体 24 |
経営体 1 |
経営体 23 |
経営体 - |
戸 32 |
戸 23 |
戸 9 |
戸 38 |
人 51 |
人 23 |
人 4 |
世帯 290 |
人 1,028 |
平成22年 | 18 | 1 | 17 | - | 25 | 17 | 8 | 44 | 32 | 21 | 4 | 316 | 1,047 |
平成27年 | 10 | 1 | 9 | - | 14 | 9 | 5 | 52 | 19 | 10 | 7 | 318 | 994 |
姫路市夢前町宮置地区における大区画化等への取り組み経緯
年月 | 取り組み内容 | 詳細 |
平成20年4月 | 農地・水・環境保全向上対策の試験運用を開始。 | |
町村集落の自治会役員会を年1回程度しか開催していなかったものを毎月開催。 宮置地区は2つの集落(町村、中村)があり、合同の自治会役員会を年2回開催。 |
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平成21年4月 | 農地・水・環境保全向上対策の取り組み申請。 | 紹介1 |
農地・水の団体(宮置資源保全隊)が、小学校の食育や環境教育と関わる組織(一校区一家族の会)と連携開始。 | 紹介2 | |
平成23年12月 | 「宮置げんき活動」という地域活性化の活動に地域住民の意見を反映させるため、地域住民全員へのアンケートを実施。 結果を人・農地プランの取り組みに生かす。 |
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平成24年4月 | 人・農地プランの話し合いを実施し、農地集積、担い手育成等について議論。 | 紹介3 |
平成24年5月 | 有限会社 夢前夢工房 代表は、今後一層の高齢化に備え、水路、農道の草刈り軽減のため、防草シートの施工実験を開始。 | |
平成25年5月 | 水路の補修等を実施(地域住民への地域改善見える化を実施)。 | |
平成26年3月 | 老朽化した水路の改修や農道等の草刈り軽減についての話し合いを実施。 | 紹介4 |
平成26年4月 | 水管理が軽減されるパイプライン化の検討を役員会で開始。 | |
平成27年3月 | 行政へ水路改修(パイプライン化)の相談。 | |
平成27年4月 | 有限会社 夢前夢工房 代表が農地を預かる条件として、農地は管理するが、水管理、草刈りは一切しないと宣言。 宣言するとともに有限会社 夢前夢工房 代表は、集落が管理する農地の草刈りゼロ化を目指す。 |
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平成27年5月 | 行政から、パイプライン化には大区画化や高収益作物への転換が必要であるとの指導を受ける。 | 紹介5 |
平成27年11月 | JA兵庫西が高収益作物として、たまねぎ栽培を奨励しており、「たまねぎ」栽培を取り組む。 | |
中村地区から、鳥獣被害の対策として、獣害柵を施工。(平成30年度に全域の施工完了) |
紹介6 | |
平成28年4月 | 有限会社 夢前夢工房 代表が、防草シートと芝(ムカデ芝)による「草刈りゼロ化」実証実験を開始。 | |
平成28年8月 | 自治会役員を中心に、水路のパイプラインやフォアスを取り組んでいる先進地(新温泉町、豊岡市)を視察。 フォアス:農研機構と株式会社バディが共同開発した地下水位制御システム(作物に応じて土壌の水分コントロールができるシステム) |
紹介7 |
平成28年9月 | 農地中間管理事業への100%集約に向け、今までは年2回の開催であった地区合同の役員会を9月より21回開催。 | 紹介8 |
平成29年4月~ | 地区合同の自治会役員会において、集積や大区画化に向けての問題点等を洗い出し、問答集を作成。 | |
平成29年7月 平成29年9月 平成29年12月 |
全農家への説明会(3回)には、自治会役員が役割を分担し実施。 説明会等で出された意見等の回答については行政に確認し、自治会役員が意見等を出した農家へ戸別訪問し説明。 農地中間管理機構への農地集積により、農家負担が軽減され、パイプラインやフォアス等の工事が可能との説明をし、全農家から農地中間管理機構への100%農地集積の承諾(合意形成)を得る。 |
紹介9 |
農地の貸し付けに係る承諾印において、未相続地の対応に苦労(相続人不明者に関する情報等の聞き取り等)した。 役員が相続人不明者の対応を実施。 |
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平成29年12月 | 農地中間管理機構である「みどり公社」と地主との農地中間管理権の設定期間を16年とした契約が成立。 | |
平成30年1月 | 土地改良区設立準備。 | |
平成31年2月 | 人・農地プランの改定。(中心となる経営体9戸) |
紹介10 |
平成31年3月 | 自治会集会において、有限会社 夢前夢工房 代表が農地集積等の現状と将来構想や工事の計画を説明。 | 紹介11 |
ほ場整備後の展望。 | 紹介12 | |
地域をひとつに纏めることに対して、他の地域に伝えたいこと。(法人、JA、自治会長) | 紹介13 |
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