クローズアップ研究者 楠戸 建
農林水産政策研究所 研究員(農業・農村領域)
専門: 応用計量経済学、環境経済学、欠測のあるデータの分析
これまでの研究はどのようなものですか?
より良い政策決定や意志決定を行うために、確固とした根拠に基づいて意志決定を行うこと(エビデンスに基づく政策決定)が強く求められています。この実現のためには、意志決定の根拠として拠って立つ論理を明確にし、これに即してデータ等の証拠を可能な限り収集することが必要であり、そのために様々な手法を用いて研究がなされています。
この中で、新たな政策や、これまで市場に存在しなかった新しい財・サービス(例えば、環境保全型農産物)などを市場に導入する際に、その導入がどのように評価され、受け入れられるかを考えるには、既存のデータからだけでは十分に検証できないことが多く、アンケートなどを用いて事前に情報を得る必要があります。
一方で、アンケート調査などを行う場合には、調査対象者が限られた時間と情報の中で回答を行うことから、様々な偏り(バイアス)がその評価に影響を与えうるとも指摘されています。より良い意志決定を行うために、根拠として利用可能なデータを収集するという目的からすれば、アンケート調査によって得られるデータを根拠として利用可能なものに近づけることも有効な方策と考えられます。この点から、アンケート調査の各段階で生じる「欠測データ」が政策の事前評価や、新たな財の潜在市場規模など、知りたい情報の推論に関してどのようにバイアスを与えているかという課題について、例えば、どのような人がアンケートに回答する傾向があるのかなど、欠測が発生するメカニズムを理解し、それを考慮した上で分析を行うことで、バイアスを補正し、得られる情報をより意志決定の根拠として利用可能なものに近づけるという研究を行ってきました。
今後の抱負はなんですか?
上でも挙げたとおり、より良い政策決定を行うためには、これまでの政策の結果を含めた既存データの分析に加え、アンケートや介入実験などを行うことで、次の政策決定に役立つデータを収集していくことが必要とされています。さらにその政策決定がなされたのちには、その政策から得られた情報を生かしながら、さらに次の政策決定をより良いものにしていく・・・といったサイクルを積み重ねていくことが重要だと考えております。このようなサイクルを、関係するすべての方々のお力添えを頂きつつ、我が国、ひいては世界の農林水産業の持続的な発展に向けて進めていくための寄与ができる研究者を目指して、研究を進めて参る所存です。
岡山県出身。2019年3月九州大学大学院生物資源環境科学府博士後期課程修了(博士(農学))。福岡県農業大学校非常勤講師、東京農工大学特任助教を経て、2020年4月より現職。 |
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