山形地域からの便り(令和2年度)
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地域の食文化を未来へつなぐ、「鮭川村サーモンロードの会」の取組 -山形県・鮭川村- (2021年1月6日掲載)
山形県鮭川村には、鮭の腹を開いて内臓を取り除き、たっぷりと塩をすり込み、ひと月半ほど寒風にさらした冬の保存食「鮭の新切り(ようのじんぎり)」があり、切り身にして炙って食べたり、鍋に入れたり、まぜご飯にしたりと様々な食べ方で、古くから地域住民の間で親しまれていました。
各家庭の軒下に鮭が吊された様子は、かつては地域の冬の風物詩として馴染み深い光景でした。しかし、人々の食生活の変化とともに、現在では見られる機会が減りつつあります。
鮭川村サーモンロードの会は、道沿いの家々に鮭が吊された様子「サーモンロード」が復活することを願い、鮭の新切りの食文化を後世に継承するため、平成11年に有志3名で発足し、食育活動を始めました。
現在は11名のメンバーで活動しており、年齢構成は大半が70代と高齢化が進んでいるものの、30代・40代といった若い世代も一員として活躍しています。
活動は、約20年前の発足当時から鮭川村食生活改善推進協議会と連携し、地域の子どもを対象に、毎年11月下旬に鮭の新切り作り体験と、2月上旬に鍋やマリネなど鮭の新切りを使った調理体験教室を開催してきました。こうした活動は、対象者を村内外の親子に拡げ、現在に至るまで継続して行われています。
今年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、例年どおり鮭の新切り作り体験を開催できるのか懸念が広がる中、「継続することが何よりも重要。中止だけはしたくない。」という思いのもと、規模を縮小することで、開催を実現させました。
今後について、参加者から喜ばれることがメンバーにとって大きな励みとなっており、来年以降も元気に活動を続けていきたいとの意気込みを持っています。
また、新たな取り組みとして、廃棄している鮭を有効利用した商品の開発・販売を始め、さらなる活動の周知につなげたいとの意向を持っています。
- お問合せ先:鮭川村産業振興課
- 住所:山形県最上郡鮭川村大字佐渡2003番の7
- 電話:0233-55-2111
(情報収集)山形県拠点 電話:023-622-7271
![]() 鮭の新切り作り体験 の様子 |
![]() 軒下で鮭の新切りを 寒風にさらしている様子 |
![]() 寒風にさらす際には 風が当たるように 腹を竹串で開く |
![]() 鮭の新切りを 使った料理の一例 (写真は新切り汁) |
(写真提供:鮭川村地域おこし協力隊) |
「山形ラ・フランス」が地理的表示(GI)に登録されました -山形県・県全域- (2020年10月5日掲載)
2020年8月19日、「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」に基づき、山形県内で栽培されている「山形ラ・フランス」が地理的表示(GI)として登録(農林水産大臣登録番号第99号)されました。
西洋なし品種の一つである「ラ・フランス」は、「1864年、フランスのクロード・ブランシュ氏が発見」した品種で、山形県には約100年前の大正初期(1910年代)に導入されたといわれています。
県内では、1980年代から試行錯誤しながら産地追熟(収穫後の果実を一定期間保管し、おいしく食べられる状態まで成熟させること)の取組が一部農協で始められ、1990年からは、山形県経済農業協同組合連合会(現在のJA全農山形)が産地追熟の徹底のために出荷の基準日(出荷解禁日)を設定して、主要農協で取り組むようになりました。
2013年からは、出荷の基準日を、産地追熟した果実を消費者が購入できるシーズン最初の日(販売開始基準日)と改め、最初の出荷はそれに合わせて行うことを、農協だけでなく、県内の市場や出荷団体等も含む、県全体の取組に拡大しました。
2014年度には、農協や市場、市町村等で組織する山形県「ラ・フランス」振興協議会を設立し、最新の技術を反映した栽培カレンダーを作成するなどして、現在も「山形ラ・フランス」のより一層の品質向上を目指しています。
「山形ラ・フランス」は、秋を彩る果物として、その上品な甘さや香りが大変人気で、市場から消費者まで広く認知されており、高い評価を得ています。
2020年産の「販売開始基準日」は10月29日(木曜日)となりました。
ぜひ、「山形ラ・フランス」をお召し上がりください。
- お問合せ先:山形県「ラ・フランス」振興協議会事務局(山形県農林水産部園芸農業推進課内)
- 住所:山形県山形市松波二丁目8番1号
- 電話:023-630-2249
- WEBページ:https://www.pref.yamagata.jp/la-france/ [外部リンク]
(情報収集)山形県拠点 電話:023-622-7271
![]() 大切に栽培されている ラ・フランス (天童市内の樹園地) |
![]() 色や形が不揃いでも、 上品なおいしさ |
![]() 令和2年8月19日 「山形ラ・フランス」で GI登録 |
![]() 昨年のラ・フランス 販売会の様子 |
(写真:「昨年のラ・フランス販売会の様子」は山形県「ラ・フランス」振興協議会から提供。それ以外は山形県拠点職員撮影) |
地域とつながり、収穫から加工、そして販路の拡大へ(農福連携) -山形県・山形市- (2020年7月7日掲載)
山形市の東部、市街をパノラマで一望でき、晴れた日には月山、朝日連峰の雄大な姿を遠望できる蔵王の麓の畑で、知的障害を持つ方の就労支援を目的とした『特定非営利活動法人山形自立支援創造事業舎「みちのく屋台こんにゃく道場」』が有機農業による唐辛子の栽培を行っています。
山形自立支援創造事業舎は、より実践的な就労支援、自立支援ならびに生活へのサポートなどに関する事業を行い、障害者やその家族に対する福祉の増進に寄与することを目的に2009年に設立しました。
主な事業は、地域住民密着型の就労支援として地元農家の協力を得て、障害のある利用者が農産物の栽培から収穫、加工、販売と日々就労訓練に取り組んでいます。
唐辛子栽培のきっかけは、「地産地消の意識が高まる中、調味料についても地場産にこだわれないかと思い、病害虫に強く作りやすく、二次加工に使用しやすいことから、赤、青、黄色3種類の唐辛子栽培を3年前から始めた。」と代表の齋藤淳さんは話します。
現在は、西蔵王を始め市内数カ所の農場を借りて年間3.6トンの唐辛子を生産、加工しており、なかでも一味唐辛子「やまんばとうがらしシリーズ」は、2019年度「やまがたふるさと食品コンクール」に入賞するなど売れ行きが好調で、唐辛子の作付面積を倍増して販路拡大を図っています。また、市役所食堂カレーやぬれ煎餅、地元の洋菓子店とのコラボによる新商品の発売などで、地元紙やテレビで活動が取り上げられ注目を集めるとともに、高い評価を得ております。
今後の取り組みについて、「農福連携の取り組みは、自然の中で自分の手で農産物を育て、収穫、加工、販売するという一連の作業を行うことが他の職種では味わえないやりがいとなっています。そして、障害福祉における賃金の向上や障害者の心身状況の改善などに向け、今後もより一層推進していきたい。」と話していただきました。
- お問合せ先:NPO法人山形自立支援創造事業舎(みちのく屋台こんにゃく道場)
- 住所:山形県山形市末広町2‐6
- 電話:023‐673‐9494
- WEBページ:http://michinoku-yatai.jp
(情報収集)山形県拠点 電話:023-622-7231
![]() 【唐辛子畑の風景】 山形市西蔵王 |
![]() 【唐辛子苗の誘引作業】 夏の作業は暑くて大変 |
![]() 【代表と支援農業者、 利用者のみなさん】 地元菓子店等とのコラボ商品 を携えて(右が齋藤代表) |
![]() 【3種類のやまんば唐辛子】 左から青(ぴりり)、 黄(ドッカーン)、 赤(はあはあ~) |
(写真:山形県拠点職員撮影) |
遊佐町で国内のサケ資源を守る「枡川鮭漁業生産組合」の取組 -山形県・遊佐町- (2020年4月6日掲載)
山形県最北の遊佐町で、サケの人工ふ化事業(漁業)に取組んでいる「枡川(ますかわ)鮭漁業生産組合」の活動をご紹介します。
遊佐町の月光川(がっこうがわ)流域は本州有数のサケが遡上する流域で、秋になると日本海に注ぐ吹浦港の河口から、月光川を経て各支流へ産卵のためにサケが遡上します。組合が遡上するサケを捕獲する滝渕川(たきぶちがわ)は、月光川の支流のひとつです。
「枡川鮭漁業生産組合」は、大正5年の組合設立と同時期にふ化事業を開始後、ふ化場施設の更新等により捕獲数及び放流数を徐々に増やし、現在では一千万個の卵が採取されます。人工ふ化した稚魚を翌年まで飼養し3~5cmに成長させた後、毎年3月に地域の河川に放流します。
放流されたサケの稚魚は、日本海を北上し北太平洋・ベーリング海で成長を続け、秋サケとして遊佐町に回帰する途中、一部は北海道オホーツク海西部の沿岸で定置網により捕獲されます。その中の数千本に1本のサケは、口先から目までの間隔が短く、目が近くに寄って見えるもので、漁業者からは「メジカ」と呼ばれており、身に脂がのり赤みが強く希少性があることから、市場では高値で取り引きされています。
以前、「メジカ」の母川について調査した結果、月光川を含む本州の日本海側から放流されたサケであることが判明し、日本海側で行っている人工ふ化による放流事業の重要性を北海道の漁業関係者が知ることとなりました。
それ以来、北海道の漁業関係者と組合を含めた地域の交流が始まることとなり、平成25年には、サケのふ化・放流事業の振興を目的とする「遊佐町メジカ地域振興協議会」が設立され、メンバーには遊佐町、枡川鮭漁業生産組合、北海道の漁業関係者に加え、山形県の漁業組合も参加する規模にまで拡大しました。また、北海道の最先端であるサケの人工ふ化技術の習得に努めるなど、漁業者間の交流を通じた人工ふ化・稚魚の飼養技術の向上がサケの資源確保に繋がっています。
現在、組合では11名の構成員が、9月のサケ遡上から採卵、ふ化した稚魚の飼養、そして翌年3月の放流までの6ヶ月間を漁業に従事しています。この期間は非常に忙しく休みが取れない等の課題はありますが、「組合員の仲が良く、職場が心のよりどころになっている」、「出稼ぎが不要で家族と1年を通じて生活が出来る」、「サケのふ化事業に感謝し、引き続き組合活動を継続していきたい」等の魅力を教えていただきました。
- お問合せ先:枡川鮭漁業生産組合
- 住所:山形県飽海郡遊佐町直世字山居62-25(ふ化場)
- 電話:0234-72-5257
(情報収集)山形県拠点 電話:023-622-7271
![]() 水揚げされた鮭 |
![]() ふ化場施設内の様子 |
![]() ふ化場全体の様子 |
![]() 意見交換会の様子 |
(写真:山形県拠点職員撮影) |