令和元年度フードバンク活動の促進に向けた情報交換会
東海農政局では、フードバンク活動団体と食品関連事業者等のマッチングに加え、物流面での課題解決に向け、輸送事業者、フードバンク活動団体、地方公共団体及び福祉関係団体の連携体制構築を目的に、「令和元年度フードバンク活動の促進に向けた情報交換会」を開催しました。
情報交換会の様子
日時
令和元年10月31日(木曜日)13時30分から17時10分
場所
東海農政局 第1会議室(名古屋市中区)
出席者
フードバンク活動団体
- 認定NPO法人セカンドハーベスト名古屋
- フードバンク多文化みえ
- NPOフードバンクかすがい
- NPO法人たすけ愛(おおがきフードバンクぎふ)
- フードシェアリングジャパン
- のわみ相談所
食品関連事業者
- 春日井製菓(株)
- 井村屋(株)
- 名古屋製酪(株)
- マルサンアイ(株)
- (株)平松食品
- コーミ(株)
- 三菱食品(株)
- 小林生麺(株)
- (資)八丁味噌
- (株)名古屋食糧
- フジパン(株)
- (株)ミツカンパートナーズ
- トヨタ生活協同組合
- 敷島製パン
福祉関係団体
- 社会福祉法人昭徳会
- 小幡緑地冒険遊び場の会つなしょ
輸送事業者
- 高浜共立運輸(株)
- 名豊興運(株)
- ダイセーエブリー二十四(株)
- トランコム(株)
- トランコムDS(株)
講演及びコーディネーター
- 愛知工業大学経営学部教授
地方公共団体
- 岐阜県農政部農産物流通課
- 三重県環境生活部廃棄物・リサイクル課廃棄物政策班
- 名古屋市環境局ごみ減量部減量推進室
農林水産省
- 食料産業局バイオマス循環資源課食品産業環境対策室
- 東海農政局経営・事業支援部担当地方参事官、食品企業課長及び食品企業課
概要
- あいさつ東海農政局 経営・事業支援部担当 地方参事官
- フードバンクの現状について 農林水産省 食料産業局 バイオマス循環資源課
- 講演「日本のフードバンクにおける物流システムの検討-法制後の社会実装を考える-」愛知工業大学経営学部教授
- フードバンクを活用する食品関連事業者からの取組事例紹介春日井製菓(株)
- フードバンク活動団体による活動事例の報告認定NPO法人セカンドハーベスト名古屋及びフードバンク多文化みえ
- 参加者による情報交換会
情報交換会での発言概要
物流の課題について
(コーディネーター)
最初に物流の課題から入りたい。事前アンケートでは、賞味期限が近いものをフードバンクに寄付する側から、自社の商品がどのように扱われているかを懸念する回答があった。保管を含めた安全性の担保について、お伺いする。
(フードバンク活動団体)
食品を扱っているため安全が最重要。安全に届けるため、トレーサビリティや食品のチェックを実施。フードドライブでは、トリプルチェックを実施。企業から食品をいただく際は必要以上に引き受けない。過去には年間600トンを扱ったこともあったが、現在は安全にさばける量(450トン)を取り扱っている。今求めているのは、量より質。安全で栄養価のある食材を集めることが大切。
(食品関連事業者)
当社の商品は賞味期限の長い加工食品で、3分の1ルールの期限内の商品は営業努力で販売。これを超えて賞味期限が半年ぐらい残ったものをフードバンクに提供している。賞味期限の残存期間が長いので安全面での問題はない。また、期限内であっても劣化した商品は廃棄している。どういった経路で流通しても当社の商品なので、安全面は担保している。
(コーディネーター)
消費期限を設定している商品や賞味期限の短い商品の場合はどうか。
(食品関連事業者)
フードバンクによって、取り扱う食品についての期限の扱いが違う。 賞味期限は、メーカーの基準でおいしく食べられる期間。食べられるかは個人の判断。いろいろな団体があり、安全に届けることができるのか不安がある。メーカーとして安心して寄付できる団体であるかの判断に迷う。
(コーディネーター)
賞味期限が切れた商品を本当に寄付してはいけないのかもはっきりしていない。食品ロスの定義として、どこまでを食品ロスというのか。再生利用可能なものにしていくのかの議論が必要。 他に困っていることはないか。
(フードバンク活動団体)
外国人は、賞味期限と消費期限の区別が分からない。食べられると思っている期限はラベルに表示されている日。
(コーディネーター)
元々期限表示は、製造年月日表示であった。「ショウミ」、「ショウヒ」の発音も含め用語が紛らわしい。(事例報告の中で)食品を手で持っていくことに価値があると言っていたことについて何かあるか。
(フードバンク活動団体)
基本的に当方が持って行くことはない。子ども食堂の方が取りに来るか、個人にはゆうパックで送り届ける活動がベース。
(福祉関係団体)
現在、当市には児童養護施設が13ヶ所あり、2歳から18歳の子どもたち約600人が生活している。その6~7割が親など大人からの虐待を受けており、施設を18歳で卒業(退所)後、親の支援を受けて生活するのは難しいのが現状。施設に居るうちは(衣食住を)税金でまかなえるが、卒業後は、自活することになる。最近の子は携帯電話にお金をかけるので、食費は最後になってしまう。現在は、フードバンクから1ヶ月に1回食材をいただいて、段ボール1箱に詰めて持って行ける。以前は、自分たちのポケットマネーから食材を買って持って行き、これで一週間がんばりなさいと言うこともあった。フードバンクからの食材1箱がその子の命をつなぐことになっている。
(コーディネーター)
届ける行為が一つの接点となっている。寄付する側からフードバンクへの物流はどうか。税制優遇で運ぶことも対象となるがどうか。
(食品関連事業者) 元々物流費のことは考えていなかった。量が少ない時は工場長等が持って行っていた。 数量が増えた今は宅配便やチャーター便で、1回の配送で2~3万円掛かる。商品の 廃棄でも費用は掛かるので、物流費がネックになることはない。税制優遇は知らなかった。
(コーディネーター)
今後は税制優遇を活用するのか。通常の商品との混載はどうか。
(食品関連事業者) 税制優遇は活用する。混載は賞味期限の異なる商品が混ざってしまう可能性があり、考えていない。
(コーディネーター)
混載した場合の税制優遇については、今後の課題となるのではないか。
(フードバンク活動団体)
行政が行うフードドライブや病院の備蓄食品(の寄付)は、フードバンクが引取りに行くことが必要。行政は物流のことを考えてほしい。
(コーディネーター)
支援を求めている方がメーカーや問屋に直接取りに来てもらうことは、会社としては難しいのか。間にフードバンクが入ったほうが安心なのか。
(食品関連事業者)
問屋を通して小売りに流すので直接個人には売らない。寄付も同じ。支援を必要としている方が直接メーカーに取りに来ても専門の部署がないため難しい。組織を作って対応する場合、会社に利益をもたらすかが判断の基準。社会貢献だけでは難しい。
(コーディネーター)
寄付を受ける側が物流費を払うような実情はあるのか。
(フードバンク活動団体)
毎月11日に見切り商品を大手スーパーに引取りに行くが、物流費は持ち出し。
(食品関連事業者)
組織として動いているので、組織としてコンセンサスを得て、どの部署が展開していくのかの整理が課題。いろいろなやり方やスタイルがどんどん出て来て仕組みができれば、ハードルも低くなると思う。どこに関与するのが一番効果的に動けるのか、また社会貢献からも前に出て行けるのかの整理が必要。
(コーディネーター)
SDGsの流れは、会社の組織として推進するにあたり、何か影響があるのか。
(食品関連事業者)
SDGsではないが、HACCP認証などは流通業者に安全性をアピールできるが、フードバンクでも認証制度があると会社のイメージアップにつながり上部を説得しやすい。
(フードバンク活動団体)
SDGsの動きで、何か取り組まなくてはいけないと様子を探りに来る方がここ1年で増加している。
(コーディネーター)
SDGs12.3に書いてあるだけでは弱い。海外では取り組むことで融資や格付けのレイティングが上がる。特に金融系ではESG投資の文脈でそういう見方をし始めている。
(フードバンク活動団体)
年間160社とお付き合いしているが、8割ぐらいは名前を伏せてほしいという企業。 名前を出していいという企業は少ない。全国展開しているスーパーは、多くの食品ロスが出ていることを消費者に知られることを避けたいため、最初は公にしたくないと言っていたが、最近は取引先企業として公表することに同意している。
(食品関連事業者)
ここに出席するにあたり役員会にかけ、(出席を)やめたほうがよいとの意見が過半数あったが、社長の正しいことをしているなら出席してよいとの判断で出席している。 当社の社員食堂では、ヘルシー食を食べると1回20円をアフリカの貧しい子に寄付することにしている。ホームページに掲載しており、就職活動の学生が共感しましたと言ってくれる。今後、フードバンク活動も学生の志望動機になっていくかもしれない。
(食品関連事業者)
私の部門は会社のサプライチェーンのマネジメントを物流も含めて統括する部門で、SDGsのワーキンググループを立ち上げるなどの取組の一環として、あるフードバンクと契約を締結する予定で春先から進めてきた。 営業の方で(3分の1ルール)の許容(期限)切れ商品を販売するのは苦しい。フードバンクとの連携も営業部門でなく、全部私の部門で引き取ることにした。物流もメーカー同士で協同して当たれば効率的に取り組んでいけるのではないか。 全国展開している賞味期限切れ商品はフローズン商品やPB商品もある。食品偽装の問題もあった関係で一旦、本社に集めて近傍の産廃業者で廃棄しているため、手間とコストが掛かっている。物流の税制優遇は知らなかったが、税制優遇がなかったら取り組まないということではない。
(フードバンク活動団体)
現在、物流に車3台で対応しているが限りがあるので、食品メーカーが税制優遇をもっと利用して届けてほしい。 また、東海3県で小さなフードバンクを育てていき、フードバンクネットによる地産地消を進めていきたい。地方では食品のマッチングが難しいので、フードバンク間の物流が必要。物流会社への税制優遇も考えてほしい。
(農林水産省)
税制なので、所管は財務省。フードバンクの税制優遇は今までもあったが、昨年12月に国税庁が廃棄処理に係る費用を例示した。新しくできたのではなく例示を示したのが非常に大きな一歩。物流会社でも税制優遇が受けられるよう、省庁をまたぐことなので農水省からも意見を出して行きたい。
(フードバンク活動団体)
令和2年度概算要求のフードバンク活動支援の交付金を活用したいが、県の窓口がどこか分からず苦労している。
(東海農政局)
具体的な要望があれば動くと思われるので、もう一押ししていただきたい。
(コーディネーター)
子ども食堂への助成は、東海のある県の厚労部局が先駆けてやっている。なかなか難しい判断ではなかったのか。押せば動くイメージを持っている。声を上げることが大事である。
教育について
(コーディネーター)
次に子ども食堂という教育面に触れたい。物流の寄付とかは税制優遇があるが、寄付文化を日本らしく作っていく時に、結果的に子ども食堂が日本で2千何百ヶ所もできて、その4割がフードバンクと関わっている。なぜ食堂なのか。
(フードバンク活動団体)
当県では子ども食堂は月1回(の開催)。集まって来てくれた子どもたちの様子を見ながら家庭環境等の問題点を探っている。教員OBがいるため、教育委員会とつながっており、(問題点を)学校の先生とかにつなげていく。当方は、お菓子などを出す。カレーを食べた後、お菓子があるから出席率が上がる。 困っていることは、倉庫を作りたいが、お金が掛かることなので難しいことである。
(コーディネーター)
教育面への関わりを企業が考えるのは、多分世界的にもやられていることで、教育支援というのはボランティアには非常に大事なポイント。会社の組織内で話を進める時、ただ漠然とフードバンクに渡すという話にとどめることなく、プラスして、教育面のところも入れることによって、より一層理解も得られフードバンク活動は活性化する。
(福祉関係団体)
子どもの居場所作りを行っている。いろいろな子どもたちが来る。配布するチラシに は貧困や虐待とは書いていない。そういうことを書いたら子どもは来なくなってしまう。フードバンクの食材の中のお菓子をハッピーカードの景品にしている。今日あったこ となどいろいろなことをカードに書いてもらい、お菓子を対価として渡す。絶対1回は 書き直させ、子どもの仕事は勉強だということ、タダでもらえることは世の中にはない ことを教えるためにハッピーカードを使っている。 先日、あるビール会社の工場見学に行ったとハッピーカードに書いてくれたので、おやつにゼリーを渡したら、それが何とその会社(の製品)だったというつながりがあった。 子どもたちがどうしてタダでもらえるのかと聞いてくる。そのときにフードバンクがあるんだよと福祉教育の一つにもなっている。 子ども食堂は受け取るだけではなく、受け取ったもので、このようになったとか、逆にマーケティングの場にもなるのではないか。子ども食堂がもらってばかりではダメ。 寄付していただいたら、それを返していく。それを何で返すというと、企業が求めていることに子ども食堂が応えていく必要があるのではないかと思うし、マーケティングの場にもなる。
(コーディネーター)
マルセル・モースの贈与論のように返礼の義務をまさに体現している。日本で贈与効果を教育の場でやっているということは非常に心強く思うし、こういう取組が広がると、受け取る側の姿勢の問題を課題にしてよいのではないか。
(食品関連事業者)
フードバンク活動団体の数は105では全然足りない。なぜ増えていかないのかと考えると、立ち上げる人、志のある方がどうやっていったらよいか分からない。例えばコンビニを始めるにはノウハウやツールがあるように、フードバンクにもこういう環境があって統一規格みたいなものができればよいのではないか。安く立ち上げられ、もっと地域に増えて行きやすい環境が整備されれば、いろんな支援があり、いろんな業界が加わってくる。より地域に密着したフードバンクができるのではないか。
(コーディネーター)
業務多様化の中で類型化、標準化していくことは重要。
まとめ
(コーディネーター)
フードバンク活動は、保管も含めた安全性の担保が重要。 また、物流に関しては廃棄するにも費用が掛かることからそこが問題になることはない等の意見もあった。 寄付するには組織のあり方をどう整理して社会貢献していくのか等の前向きな意見もあり、すぐにはできないが少しビジョンが見えてきたように思う。また、教育面の話をしていくことが、フードバンク活動の促進につながればと思う。
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経営・事業支援部食品企業課
担当者:食品リサイクル担当
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