令和2年度フードバンク活動の促進に向けた情報交換会
東海農政局は、フードバンク活動団体と⾷品関連事業者等のマッチング、受贈者が贈与品をスムーズに受け取れるよう物流⾯での課題解決のほか、関係者間(運送事業者、フードバンク活動団体、環境及び福祉部局も含めた⾏政・地⽅公共団体並びに福祉関係団体)の情報交換と連携体制構築のために「令和2年度フードバンク活動の促進に向けた情報交換会」を開催しました。
講演の様子 中京大学現代社会学部教授 講演の様子 愛知工業大学経営学部教授
ソーシャルディスタンスを保っての情報交換会の様子
日時
令和2年12月4日(金曜日)13時30分から16時30分
場所
名古屋能楽堂 会議室(名古屋市中区)
出席者
フードバンク活動団体
- フードバンクのわみ
- NPO法人東三河フードバンク
- フードバンクかすがい
- 認定NPO法人セカンドハーベスト名古屋
- NPO法人フードバンク愛知
- 一般社団法人日本非常食推進機構
- NPO法人たすけ愛おおがきフードバンクぎふ
- 三好丘緑フードバンク支援センター
食品関連事業者
- 井村屋(株)
- マルサンアイ(株)
- 愛知県生活協同組合連合会
- (株)Mizkan
- フジパン(株)
- 三菱食品(株)
- 小林生麺(株)
子ども食堂
- ほんわか食堂
- NPO法人 太陽の家
福祉関係団体
- 社会福祉法人愛知県社会福祉協議会
運送事業者
- (株)ジェイトップ
- ダイセーエブリー二十四(株)
- 第一貨物(株)
社会奉仕団体
- 名古屋名東ロータリークラブ
講演、コーディネーター及びアドバイザー
- 中京大学現代社会学部教授
- 愛知工業大学経営学部教授
地方公共団体
- 岐阜県農政部農産物流通課
- 愛知県環境局資源循環推進課
- 愛知県福祉局福祉部地域福祉課
- 愛知県農業水産局食育消費流通課
環境省
- 中部地方環境事務所資源循環課
農林水産省
- 食料産業局バイオマス循環資源課食品産業環境対策室
- 東海農政局次長、食品企業課長及び食品企業課
概要
- あいさつ東海農政局 次長
- フードバンクの現状について 農林水産省 食料産業局 バイオマス循環資源課
- 講演「子ども食堂をめぐる情勢について-フードバンク化する子ども食堂-」中京大学現代社会学部教授教授
- 講演「多様化するフードバンクの役割-ポストコロナ社会における展望-」愛知工業大学経営学部教授
- フードバンクの取組紹介
- 参加者による情報交換会
情報交換会での発言概要
フードバンクのコロナ禍での状況や対策について
(コーディネーター)
コロナ禍におけるフードバンク活動の変化と今後の状況及びプラットフォーム化の2つに絞って意見を伺いたい。まず、フードバンクのコロナ禍での状況や対策を教えてほしい。
(フードバンク活動団体)
3人で活動しており、受け取り時間がスーパー閉店後に限られるため、人の手配に苦慮。
(コーディネーター)
受け取り時間の調整はフードバンクだけでなくスーパー等でも難しい。時間指定があるとリードタイムが延びる。
(フードバンク団体)
ボランティアは高齢者が多く、活動に参加できないボランティアも増加、密回避のための参加人数の制限など行い活動。 引取り量を減らすとともに団体支援を抑え、個人支援を中心に対応。緊急事態宣言発令以降は、個人支援が2~3倍に増加し、対応に苦慮。今はコロナと共存しながら活動していく必要があり、感染防止対策をしっかり行い活動。7~8月は入荷が減ったが、最近は回復傾向。食品メーカーは製造者責任があると慎重にならざるを得ず、寄付に結びつかないため、日本でも善きサマリア人の法を制定してほしい。食品ロスはフードバンクで減るわけではないと思うが、我々は食品ロスを有効に使って行きたい。
(農林水産省)
善きサマリア人の法については、省内を含め関係省庁会議でもかなり議論が上がっている。環境省でもドギーバッグを推進しており議論されているが、業者側の責任を最終的に拭いきれないところがあり難しい問題。
(コーディネーター)
善きサマリア人の法は、アメリカでは1950年代にカリフォルニア州で最初に制定された後、80年代までに全州に広がった医療行為の免責事項があり、議論を重ねて1996年に食品の法ができた経緯がある。日本には医療の免責事項もなく、いきなり食品に適用することはどうかという議論がある。もう一つは、企業の寄付活動は偽善(か否か)、という話があるとしたら、法律を制定したとしても寄付が増えない可能性もある。法律の制定とその費用対効果を考えると国民的に議論が必要。韓国には食品寄付活性化法がある。免責よりも活性化する方法もあるのではないかと個人的に思うが、もちろん免責法も大事。それだけで解決しないかもしれないということ。
(コーディネーター)
子ども食堂におけるコロナ対策や現状について教えてほしい。
(子ども食堂)
子ども食堂は公共施設を使用しているところが多く、施設の封鎖や、ボランティアのリスク、子ども食堂の良さである密の状態がリスクとなることから、緊急事態宣言下では開催できなかった。その後は規模を限定しながら再開しているが、地域によっては再開できていないところもある。子ども食堂ができない時に子供との繋がりを絶やさないために、食品や弁当を配ることを新たに始め、活動を再開。子ども食堂は、大量調理に使う食材が重宝したが、フードパントリー では家庭に配布するので個包装のものが使いやすい。今まで集めていた食品とは全く違う食品を集める必要が発生し、提供者を新たに開拓する必要が発生。子ども食堂は全員ボランティアで、事務所も倉庫もない状態。子ども食堂を開催する場合、前日前々日に食品をいただき自宅の冷蔵庫に保管して使うことができたが、食品配布では1回の300人分を保管することができない。食品を保管する場所に困っている。大量の食品を集めるには地元だけでなく首都圏など広域に声をかける必要があり、物流送料の問題も出てきた。この問題は子ども食堂でなんとかできる問題ではなくなってきた。協力、お力添えをいただけたらと思う。
(コーディネーター)
子ども食堂の話を含め配布方法など物流面の問題について、具体的に話をお願いします。
(フードバンク団体)
コロナになってから愛知県内の全ロータリー会員(5,000名)に一斉配信で食料支援をお願いし、大量の支援が集まっている。稲沢市にある会員企業の工場の一角を借りて倉庫にし、会員から寄付された支援品の物流の拠点としている。ロータリークラブ所有の大型冷凍冷蔵庫は、その稲沢の拠点と(名古屋市内にある)子ども食堂に置いている。食料は支援者に直接に拠点まで運んでもらい、送料を負担してもらっている。子ども食堂への搬入は、拠点もしくは子ども食堂に直接取りに来てもらうことを最優先にお願いしているが、距離的に難しい場合は、私が寄付の仕分けに行く際に私の車に積み名古屋市内の子ども食堂を回る仕組みを取っている。拠点までは問題ないが、子ども食堂への配布で困っている状態。子ども食堂の中で身動きがとりやすい方に、時給とガソリン代を払って輸送の手伝いを手配。
(コーディネーター)
企業や組織の壁を越えて地域で繋がることが大切だと思うが、物流会社から、コロナ禍で難しい状況の中での取り組みを聞かせてほしい。
(運送事業者)
フードバンクと出会い、今年から取り組みを始めた。東海三県に拠点が5か所あり、コンビニやスーパーの配送網の空車を利用し、食品を提供するメーカーから、我々の拠点を経由してフードバンクまでの輸送を担っている。弱い部分は鮮度が短いもの。リードタイムを短くしたいが、現状は引取りに一定の期間(例えば2、3日猶予の条件)を頂き空車とマッチングして配車を行っている。輸送コストの課題はあるが、将来的にはリードタイムをできる限り短くしたい。
(コーディネーター)
トラックの配車記録は取っているのか。また、デジタル化されているのか。
(運送事業者)
運転記録は作成しているが、予約は電話で行っておりデジタル化はしていない。
(コーディネーター)
企業とのマッチングの仕組みを作っていくうえで、物流の部分は課題になるところ。大変いい事例で、将来期待できる。食品関連事業者の方でコロナ禍での食品の寄付について状況を教えてほしい。昔はフードバンクに寄付することは口外しないでくれというメーカーが結構あった。何かあったときの問題があり、こういう閉塞感を打破すべきと思う。
(食品関連事業者)
昔はフードバンクへの寄付はイメージ的にいいものではなかったが、今はSDGsで企業活動として行っており、各メーカー様も今がチャンスと捉えられてはいる。今は逆に悪いイメージで捉えてはいけないと思っている。
(コーディネーター)
確実に社会や時代が変わってきた実感はある。この時代に企業が生き残っていくひとつの戦略、事業の在り方である。貢献する意味合いが強まってくると思う。お困りごとや質問はありませんか。
(フードバンク団体)
フードバンクの輸送は有償ですか、無償ですか。
(運送事業者)
有償です。通常料金ではなく、フードバンクと協定を結んでいる。東海三県、三重の伊勢から名古屋までも、名古屋市内も、岐阜から名古屋までも寄付をしてくださる企業様にわかりやすいワンプライスの同一料金で提供させて頂いている。近距離の場合はボランティアやスタッフが運べば大丈夫だと思うが、遠いところは弊社を活用いただくことで半額以下(高速料金以下)になる場合もある。
情報共有プラットフォームの構築について
(コーディネーター)
2つめのテーマである情報共有プラットフォームの構築について議論したい。東京ではすでにWebサイトのシステムがある。子ども食堂のネットワークはどうなっているか。
(子ども食堂)
当方は、病院職員で名古屋市南区を拠点に子ども食堂や学習支援を行っている。コロナの影響で院内開催ができなくなり、今は困窮世帯に絞り食材配布をしていて、近隣のこども食堂への配布も手伝っている。今までも困窮世帯は多かったが、さらに増えてコロナ前と同量頂いても足りない現状。保管場所として、院内は使用できず、病院所有の施設を借りているが場所に制限がある。食料はフードバンクから配送してもらったり、取りに行ったりしているが、物資の所在地によるところが大きく、フードバンクは名古屋市北部や北名古屋市にある。当方は、名古屋市南部なので、輸送面で大変なところもある。数量も含めて協力をお願いしたい。
(コーディネーター)
プラットフォームと言うと、寄付したい側とされる側のマッチングが頭に浮かぶが、まずは子ども食堂同士の横の繋がりがあって、そのうえで寄付したい方と結ばれていくプロセスが大事。 物流をどうするかを考えてプラットフォーム化することが大切と感じた。
(フードバンク団体)
食品関連事業者にアプローチをかけたが、一次配送は運賃を負担してくれるが、その先は出ないことが多い。食品関連事業者は食品を寄付しているので、その先は運送会社が負担すべきという考えがある。ある調査では、 企業の73パーセントが食品寄付に関心があると言われておりSDGsの部署をもつ企業は本業に紐付けた貢献がしたいと思っている。我々は、農水省の食育事業に採択され、スーパーに発注できるようになった。国から助成金をもらい、企業に還元できる流れができ、大きくステップアップできた。食品関連事業者に100パーセント損金算入出来るというメリットを伝えることで(寄付の)営業ができる。食品関連事業者にどんな提案が出来るかがポイント。インフラ整備は寄付金で賄っており、大型冷凍庫を各団体に貸与。このような活動により食品関連事業者から大量の寄付があり、リフトも倉庫も作業員もそろっていて、非常に大きな強みである。地方で活動する団体は、年間の運営費が4~500万円かかるため、大量の食料を送るなど団体を助けようと水平展開を行っているところ。 寄付企業ともWin-Winの関係ができている。現在は半期で200トン超の取扱量。配布については、LINE、Facebook、FAX、電話でやっている。 ネットでのマッチングを考えているが、マッチングサイトの問題点は、どう作りどう運用するのか、ここがうまくいっていない。我々が短期間でここまで大きく伸びたのは、相手先のキーマンを掴み、我々を周知し、必要なものをアピールできたのが大きかった。 全国的に我々のような新しいフードバンクができている動きがあり、これを繋いで、全国20カ所に三温度(常温、冷蔵、冷凍)帯に対応して、保存食品を配っていけるようなインフラプラットフォームを構築中。運送業者も好意的なところがあり、社長自ら運んでくれたり、無償にしてくれたりと支援が広がっている。 複数の全国的な物流会社が連携して、日本中から愛知に運べるネットワークが来年3月にはできる予定。 既存のものは東京に集中しており、東京発の情報発信にならざるを得ない。現在(10月)800トンの配布能力があり、来年3月には1,200トンになるが、寄付は200トン。食品さえあれば3,000トン可能。引き続きご支援をいただきたい。
(コーディネーター)ポイントはインフラ整備と商品管理とみている。寄付する側が一番気にするところである。三温度帯の管理はどうしているのか。
(フードバンク団体)
メインの倉庫は、常温倉庫の中に冷凍冷蔵庫を置いたもの。今後は、冷凍冷蔵庫を子ども食堂やフードバンクに配布して態勢を整えたい。冷凍食品は、手間がかからず、企業側も出したがっているため、今後増える。しかし、問題は商品を安く買っている業者があり、寄贈に結びつかない。 冷凍冷蔵倉庫を、食品を受けて頂く団体に貸与する用意もあるが、物が集まらない中、一度稼働すると電気代がかかりすぎるので、稼働できない。物が揃えばやりたい。食品関連事業者から冷凍冷蔵品の話があり、ほとんどがPB商品であり期待している。
(コーディネーター)
PB商品の再流通はハードルが高いと思っていた。PB商品を寄付することで企業の資質を見せたいということか。
(フードバンク団体)
そのとおりと思う。大学でPB商品を配ると告知したら、すぐ2社から問い合わせが入った。社会貢献活動のPRとして魅力があるのではないか。 活動の中では衛生管理基準を重視。子ども食堂やフードバンクはただお裾分けしている状態で衛生管理基準を考えていない団体が多い。農林水産省が出している安全性基準はハードルが高いので、行政が、かみ砕いた基準を作成して頂きたい。子ども食堂においては、社会福祉協議会等と一緒に取り組んでいきたい。
(コーディネーター)
PBは販路が限られるので、需給調整が難しいといわれているので、参考になった。既にマッチングアプリをお持ちのフードバンク団体様お願いします。
(フードバンク団体)
我々は防災備蓄品の完全なマッチングのみで、商品を見ないこともある。官庁、自治体、企業から、社会福祉協議会、子ども食堂、フードバンクへ一次配送できるシステムを作った。利用者が増えるほど最終的な使われ方が見えない場合があるのが怖いところ。子ども食堂は、食事を提供することから衛生管理の講習を受けていただいた方が良いのではないか。フードバンクは全国的に大きく3、4つに集約されつつあるとみている。それぞれに基準が出来上がりつつあると思うので、国が主導して基準を決めた方が、安心感がある。 寄付してくれる企業にも、名前が出るのは困るというところもあるが、衛生面での事故を恐れてのことと思う。防災備蓄食という性格上、残りの賞味期間がまちまちで、どうしても使い切れないものが出てしまうため、新しい活用方法を提案。 例えば京都府の栄養士会が考案した、防災食品をアレンジした料理を令和3年1月から三重県の大学食堂で提供予定。学生に食べてもらうことで、防災意識の啓発と食品ロス削減の提案にもつながる。 企業にはSDGsのチラシを配り、防災備蓄食を国内で全量を使うよう動いてもらい、最終的に国内で使えなかったものは海外に送る提案も作っている。 農水省は昨年度から防災備蓄食の提供が始まっている。中央官庁の防災備蓄食はほぼ廃棄されている。法により縛りがあり仕方ないが提供に向けて、互いに努力をしたい。
(コーディネーター)
法による縛りとは。
(農林水産省)
物品管理法によりできなかったが、財務省とも協議し、「不用決定したのちに、売り払いを行い、売れなかったものは価値がないもの(廃棄物品)となり、有効活用できる者へ無償提供できる」と解釈を変えることができ、昨年は4団体に寄贈。消費者庁、環境省等身近なところから農水省の取り組みを参考にして広げたいと考えている。
(コーディネーター)
他の省庁の反応は前向きでしたか。
(農林水産省)
進めたいが、進め方と法律の解釈がわからないというところが多かった。
(フードバンク団体)
他にも関連法があるが、物品管理法で償却するという方法がとれれば良いが、どの時点で価値をなくすのかの基準が決まっていない。各省庁が決める必要があり、運用の一部改正が出来る法律だから検討して欲しい。
(コーディネーター)
社会を良い方向に動かしていくことになれば良い。最後にアドバイザーから一言お願いします。
(アドバイザー)
ありがとうございました。子ども食堂側に課題が多いと指摘されたことは、承知しており、目の前の現実を何とかしたいと思っている人もいるので、衛生面、法的な問題は、みなさんのご協力を仰ぎながら努力していきたい。
(コーディネーター)
長い時間ありがとうございました。愛知県、東海圏は日本で一番フードバンクが熱い地域だと思うので引き続きよろしくお願いします。
お問合せ先
経営・事業支援部食品企業課
担当者:食品産業環境指導官
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