このページの本文へ移動

植物防疫所

メニュー

ウリミバエの解説(印刷版)(PDF : 318KB)

ウリミバエの解説

本虫は、主にうり科植物の果実に甚大な被害を与える重要な害虫であり、東アジア、東南アジア等に生息している。我が国では南西諸島に分布していたが、関係機関が連携し、22年の歳月と約204億円の防除費用をかけ、1993年に根絶を達成した(本誌第42号を参照)。
平時より植物防疫所及び都道府県が連携し、本虫のトラップを設置して侵入を警戒しており、必要な防除措置が迅速かつ的確に実施できるよう、万が一に備えている。
ウリミバエ成虫

1. 学名

Bactrocera cucurbitae

2. 英名

Melon fly

3. 発生国・地域

インド、インドネシア、タイ、カンボジア、シンガポール、ベトナム、台湾、中国、フィリピン、エチオピア、ケニア、ナイジェリア、パプアニューギニア、ハワイ等
詳しくは発生国・地域一覧を参照。

4. 寄主植物

すいか、かぼちゃ、メロン、きゅうり、いんげんまめ、トマト、なす、とうがらし、スィートオレンジ、マンゴウ、パパイヤ、グァバ(ばんじろう)等
詳しくは寄主植物一覧を参照。

5. 形態

成虫の体長は8~9mm。胸背は赤褐色で、黄色の中央縦帯と2本の側縦帯がある。小楯板は全体が黄色で、小楯板刺毛は1対。翅は透明で、前縁脈沿いと臀脈沿いに細い褐色帯がある。蛹は長さ 4.8~6.0mmで黄褐色。幼虫は1齢から3齢までの発育段階があり、1齢は体長1.5~2.6mmで半透明、2齢は体長3.0~5.5mmで乳白色、3齢は体長7.0~11.0mmで中期までは乳白色で、後期には黄白色になる。卵は長さ平均1.38mm、幅0.28mmで乳白色。
ウリミバエ成虫      ウリミバエ蛹      にがうりに寄生するウリミバエ幼虫      ウリミバエ卵
       図1   成虫                                 図2   蛹                                 図3   幼虫                           図4   卵

その他の写真はこちらを参照。

6. 生態

成虫の総産卵数は1,000個以上。1回の産卵数は20~30個であるが、1個の果実に100個以上産卵することもある。熟果よりも幼果を好んで産卵する。うり科のすいか、かぼちゃ等では、幼苗の新芽、雄花の蕾、若茎にも産卵することがある。
卵は、産卵後1~2日以内に孵化し、幼虫が果実等の内部を加害する。幼虫期間は4~17日間で、土中で蛹化し、7~13日後に成虫となって出現する。成虫は1年を通じて発生し、5~15か月生存する。

7. 移動・分散方法

成虫が飛翔により移動する。日本では放飼された不妊虫が海上を移動し、その距離が最大200kmにも達することが確認されている。また、本虫が寄生した果実等の人為的な移動により分散する。

8. 被害の特徴

成虫は果実の果皮下に卵を産み、孵化した幼虫が果実内を加害する。加害された果実は腐敗・落下し、防除をしていない場合は収穫が皆無になることがある。果実表面には産卵痕が生じるが、寄生初期段階では発見が困難である。
メス成虫による果実への産卵      ウリミバエによるかぼちゃ被害      ウリミバエによるにがうり被害
図4   成虫による果実への産卵         図5   幼虫による果実(左:がぼちゃ   右:にがうり)への加害

その他の写真はこちらを参照。

9. 識別のポイント

本虫と形態的によく似たミバエとして、在来種のミスジミバエがある。特徴的な違いは、本虫の胸背は赤褐色である一方、ミスジミバエの胸背は黒色。より詳しい識別手法は、侵入調査マニュアルを参照。

ウリミバエ胸部背面               ミスジミバエ胸部背面
図6   ウリミバエ            図7   ミスジミバエ
胸部背面は赤褐色            胸部背面は黒色

10. 発生した場合の対応

可能であれば本虫の写真を撮影(又は捕殺)の上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。幼虫や卵が寄生している又は寄生の疑いのある果実がある場合は、分散防止のために果実をビニール袋等に入れて密封した上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。

11. 防除

本虫の発生が確認された地域においては、生産園地周辺の藪地の葉や幹にベイト剤(殺虫剤+たん白加水分解物)をスポット散布する。過去に沖縄県や奄美群島で実施された根絶事業では、不妊虫の大量放飼による防除が行われた(本誌第42号を参照)。

12. 経済的影響

本虫の寄主範囲は広く、防除をしない果実は100%の被害に達する場合もある。本虫の我が国での根絶前の調査では、沖縄県ですいか60.5%、とうがん58.6%、にがうり34.3%、かぼちゃ61.3%の被害果が、鹿児島県奄美群島ですいか11.3~20%、とうがん35.7~86.4%、にがうり2.3~41%、かぼちゃ16.7%の被害果が確認された。

13. 海外のニュース

米国では、2010年8月にカリフォルニア州の一部地域で本虫が複数頭発見され、同州において緊急防除を実施した。主な防除対策は、大量のトラップ(殺虫剤+キュウルア)の設置やベイト剤の散布で、2011年6月に根絶を達成した(NAPPO Official pest reports)。

参考・引用文献

ウリミバエの発生国・地域一覧表

ウリミバエの寄主植物一覧

ウリミバエの形態の写真

ウリミバエによる被害の写真

「病害虫情報」トップページ



発行所        横浜植物防疫所
発行人        森田   富幸
編集責任者   三角   隆