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Lsoの解説(印刷版)(PDF : 283KB)

Candidatus Liberibacter solanacearum(Lso)の解説

本細菌は、2008年以降、米国やニュージーランドのばれいしょ栽培で、重量・品質の低下等の重大な影響をもたらすzebra chip diseaseの原因菌として報告された。また、本細菌は、トマト、とうがらし等の他のなす科植物に感染するほか、フィンランドにおいて、にんじんからも検出され、その後、本細菌によるにんじん被害は地中海沿岸地域へと拡大している。
我が国は、本細菌の発生国・地域からの宿主植物(栽培の用に供するもの)の輸入に関して、輸出国での遺伝子診断法による検査を要求している(植物防疫法施行規則別表2の2の第20項を参照)。
Lsoは生育不良を引き起こす

1. 学名

Candidatus Liberibacter solanacearum (Lso)

2. 英名

zebra chip、psyllid yellows又はzebra complex

3. 発生国・地域

米国、ニュージーランド、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、フランス、スペイン、ポルトガル、モロッコ、チュニジア、エクアドル、グアテマラ、ニカラグア、ホンジュラス、メキシコ等
詳しくは発生国・地域一覧を参照。

4. 寄主植物

ばれいしょ、トマト、とうがらし、なす、たばこ、にんじん、パセリ、セロリー等
詳しくは寄主植物一覧を参照。

5. 生態

本細菌は、グラム陰性の難培養性細菌で宿主植物の師部に局在する。宿主植物が異なる8種類のハプロタイプ(遺伝子型)が知られており、発生国・地域がそれぞれ異なっている。

6. 移動・分散方法

本細菌は、ベクター(媒介生物)により伝搬する。ベクターとしては、我が国未発生の3種のトガリキジラミ科(Bactericera cockerelli、B. trigonica 及びTrioza apicalis)が確認されている。また、本細菌が感染した植物の人為的な移動により分散する。トガリキジラミ科の写真はこちらを参照。
なお、にんじん種子では種子伝搬する報告(Brtolini et al,. 2015)があるが、本報告以外に種子伝搬を支持する報告はなく、その可能性が低いことを裏付ける複数の報告があることから、にんじん種子が本細菌の種の伝搬経路となる可能性は極めて低いと考えられている。

7. 病徴

なす科植物では、生育不良、新葉の直立、葉の萎黄・紫色化、過剰着果、気中塊茎の発生、果実の小型化等、特にばれいしょの地下部では、ほふく茎(わき芽)の壊死、塊茎全体におよぶ内部組織のえそ斑、維管束組織の褐変等が見られる。被害塊茎をポテトチップス、フライなどに加工した場合、暗色斑、縞及び条斑が現れるため、商品価値を失う。この症状が英名のzebra chipの由来になっている。にんじんでは、葉巻、葉の黄化・紫色化、茎根の生長阻害等が見られる。
      ばれいしょ葉の紫化                  ばれいしょ維管束組織の褐変               にんじん葉の黄化
図1     葉の紫色化(ばれいしょ)      図2   維管束組織の褐変(ばれいしょ)      図3   葉の黄化(にんじん)

その他の写真はこちらを参照。

8. 防除

効果的な方法は、ベクター(トガリキジラミ科)を防虫ネット等により生産園地に侵入させないことである。現在、日本ではベクターに対する登録農薬はないが、海外において侵入した場合は、エスフェンバレレート等による薬剤散布が実施されている。

9. 診断・検出方法

PCR法、リアルタイムPCR法等の遺伝子診断法により検出可能である。

10. 発見した場合の対応

本細菌の感染が疑われる植物の写真を撮影の上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。

11. 経済的影響

本細菌とそのベクターとなるトガリキジラミ科により、米国、中米及びニュージーランドでは、トマト及びばれいしょ、欧州ではにんじんに対し、数百万ドルの損失が生じている。また、ニュージーランドでは、温室トマトとトウガラシの本細菌による被害が100 万ドルと推定されている。

12. 海外のニュース

欧州では、2008年にフィンランドで初発見された後、急速にまん延し、同年にスペイン、2011年にスウェーデン及びノルウェー、2012年にフランス、2014年にドイツ、2016年にギリシャ、イタリア及び英国、2017年にベルギー、エストニア及びポルトガル、2019年にオーストリア、2020年にセルビア及びトルコでそれぞれ発見された(Trkulja et. Al., 2023)。

参考・引用文献

Lsoの発生国・地域一覧表

Lsoの寄主植物一覧

Lsoによる病徴の写真

トガリキジラミの写真

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発行所        横浜植物防疫所
発行人         森田   富幸
編集責任者   三角   隆