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印刷版:スイカ果実汚斑細菌病菌の解説(印刷版)

スイカ果実汚斑細菌病菌の解説

本細菌は、すいか、メロン、とうがん等のウリ科植物に感染し、主に種子伝染する。本細菌によるウリ科野菜果実汚斑細菌病は、感染種子が一次伝染源となり、幼苗で発病し、かん水や接ぎ木によって二次伝染が起こる。本細菌病は、1989~1995年に米国ですいかに甚大な被害をもたらした。
なお、我が国では1998年から発生が確認された事例がいくつかあるが、いずれの事例においても終息したことが確認されている。(詳しくはこちらを参照)。
我が国は、本細菌の発生国・地域からの宿主植物(栽培の用に供するもの)の輸入に関して、輸出国での栽培地検査又は遺伝子診断法による検査を要求している(植物防疫法施行規則別表2の2の第19項を参照)。
     
      感染したすいか果実、枯死

1. 学名

Acidovorax avenae subsp. citrulli, Acidovorax citrulli

2. 英名

bacterial fruit blotch

3. 発生国・地域

インド、タイ、中国、韓国、台湾、イスラエル、トルコ、イタリア、ギリシャ、南アフリカ、米国、コスタリカ、ブラジル、豪州等
詳しくは発生国・地域一覧を参照。

4. 宿主植物

すいか、メロン、とうがん、きゅうり、にがうり等
詳しくは宿主植物一覧を参照。

5. 生態

本細菌は、1本のべん毛を有するグラム陰性で好気性稈菌。蛍光色素を産生せず、オキシダーゼ活性は陽性で41℃でも生育する。炭素源としてスクロース及びグルコースは利用しないが、多種類の有機酸を利用する。

6. 移動・分散方法

本細菌は、主に種子によって伝染し、育苗時にかん水や接ぎ木によって二次感染する。また、せん定作業や汚染した農機具の利用によっても伝染する。

7. 病徴

苗では子葉にえそ斑・陥没やコルク化、茎に水浸状の斑点が形成される。本葉では、葉脈に沿った暗緑色~灰褐色のえそ斑、黄緑色のハローを伴う不整形の褐色斑点が形成される。果実での病徴は特徴的であり、はじめ暗緑色の水浸状不整形斑点を形成し、後に拡大して暗緑色~黒褐色の大型病斑となる。
病斑表面には粉状の白色斑点を伴い、亀裂を伴うこともある。病斑は、果実の上部や側部などの陽光があたる面に観察されることが多い。果実内部は、皮層から水浸状に褐変し、果肉が軟化腐敗する。さらに病勢が進展すると果実全体が軟化腐敗する。

   図1   子葉のえそ斑(すいか)
図2   本葉のハロー(メロン)      
図3   果実の亀裂(すいか)

その他の写真はこちらを参照。

8. 防除

健全種子を用いることが最も重要である。種子に対しては、薬剤浸漬処理、乾熱処理等の消毒方法も報告されている。育苗施設での発病に際しては、発病株と同一の種子ロットのすべてを焼却等により処分するとともに、同一ハウスで育苗している他の苗にはカスガマイシン・銅水和剤等の登録薬剤を散布して発病拡大を防ぐ。なお、農薬の使用にあたっては最新の情報を確認し、使用基準を遵守する。
また、使用した農機具は消毒する。発病が認められたほ場では、収穫後は、植物残さをほ場外へ持ち出して処分し、翌年のウリ科植物の作付けを控える。詳しくは「ウリ科野菜果実汚斑細菌病防除マニュアル(一般栽培用)又は(種子生産・検査用)」を参照。

9. 診断、検出及び同定方法

血清学的診断法又は遺伝子診断法により検出可能である。

10. 発見した場合の対応

本細菌の感染が疑われる植物及び周辺状況の写真を撮影した上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。試料を採取した場合は、散逸しないように厳重に梱包してお知らせください。

11. 経済的影響

米国では、1960年代の初確認以降、大きな被害は見られなかったが、1989年にフロリダ州のすいかほ場の果実での被害が確認された後、急速に各地にまん延した。1994年には被害が最も大きくなり、インディアナ州では出荷果実の被害が90%以上に達した事例があるほか、少なくとも10州で数千haの被害が確認された。

12. 海外のニュース

中国では、1990年代に新疆ウイグル自治区で初確認後、急速に国内各地にまん延した。同国で流通しているすいか等のウリ科植物の種子4,839ロットを2010年~2018年に調査した結果、18%のロットから陽性が確認された(Tian et al., 2020)。

参考・引用文献

スイカ果実汚斑細菌病の発生国・地域一覧表

スイカ果実汚斑細菌病の宿主植物一覧

スイカ果実汚斑細菌病の被害写真

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