
PDF版:Pseudomonas syringaepv. actinidiae biovar3の解説
Pseudomonas syringae pv. actinidiae biovar3の解説
| Pseudomonas syringae pv. actinidiae(Psa)は、キウイフルーツ等に感染し、大きな被害をもたらす植物病原性細菌である。キウイフルーツかいよう病は、病原性の異なる系統(biovar)が存在するPsaにより引き起こされ、我が国では、2014年に病原性が強いとされる新系統のPsa biovar 3(Psa3)の発生が確認された。 我が国では、Psa3によるキウイフルーツかいよう病のまん延防止に万全を期するため、健全なキウイフルーツ苗木等が流通するよう国内移動に際し、検査を推進している(キウイフルーツ苗木等検査実施要領を参照)。 また、Psa3の発生国・地域からの宿主植物(栽培の用に供するもの)の輸入に関して、無発生生産地で生産されること、さらに花粉については輸出国での遺伝子診断法による検査を要求している(植物防疫法施行規則別表2の2の第21項を参照)。 |
感染したキウイフルーツ |
1. 学名
Pseudomonas syringae pv. actinidiae biovar 3
2. 英名
bacterial canker of kiwifruit
3. 発生国・地域
日本、韓国、中国、トルコ、イタリア、ギリシャ、スペイン、スロベニア、フランス、ポルトガル、アルゼンチン、チリ、豪州及びニュージーランド
4. 宿主植物
キウイフルーツ、さるなし、しまさるなし、みやままたたび、えのころぐさ、きり及びながえつるのげいとう
5. 生態
Psaは、1~2本のべん毛を有するグラム陰性で好気性稈菌。Psaの系統としては1、2、3、5及び6の5つが報告されており、我が国では1、3、5及び6の発生が確認されている。各系統の特徴についてはこちらを参照。
6. 移動・分散方法
感染した枝、葉等から本細菌を含む樹液が漏出し、それが雨風や媒介昆虫によって運ばれて伝染する。また、感染した花粉を介して伝染する。せん定作業や汚染した農機具の利用によっても伝染する。
7. 病徴
部位別及び時期別に以下の病徴を示す。詳しくは「キウイフルーツかいよう病のPsa3系統の防除対策マニュアル」を参照。 なお、発病の程度は、地域(園地単位を含む)、その年の天候及び品種によって大きく変動する。
| 葉 | 4月頃から、ハローを伴った不整形の褐色病斑が生じる。Psa3系統ではハローを伴わない場合やハローが不明瞭な場合もあるため、小さな褐色病斑も見逃さないよう注意して観察する。赤褐色の樹液が漏出する場合もある。 |
| 花蕾 | がくが褐色~暗褐色に変色し、症状が進行した場合は落花する。花弁は淡褐色に変色して開かないか、開花が不完全になることが多い。 |
| 新梢 | 罹病枝は発芽しないか、発芽しても4~5月に萎ちょうして枯れ込む。伸長中の新梢に感染すると黒色に変色して萎ちょうし、枯れ込む。枝に亀裂を伴う場合がある。 |
| 枝・幹 | 感染樹の枝や幹において、皮目、亀裂及び切り口から病原菌を含む白色又は暗赤色の樹液が漏出することがある。また、樹液の漏出痕が残っている場合がある。 秋季には枝が黒く変色して枯れ込む場合がある。 |
| 果実 | 果実には症状を示さない。 |
| 冬~春季 | 感染枝では12~1月のせん定時期に、落葉痕やせん定切り口から樹液の漏出が認められる場合がある。 2月以降、樹液の流動が始まるに伴って、病原菌を含む白色又は暗赤色の樹液の漏出をより明らかに確認できる。また、幹の立ち枯れが観察される場合がある。 |
| 春季 | 葉での褐色斑点が一般的な病徴であり、発病葉では不整形の褐色斑点が形成される。斑点の周囲にハローが認められる場合もある。発病の最盛期は新梢の伸長が旺盛な4~6月。 感染した枝・幹では、せん定傷や皮目、亀裂等から病原菌を含む白色又は暗赤色の樹液が漏出することがある。伸長中の新梢が感染すると水浸状となり、次第に黒色となり、亀裂を生じて枯死する。花蕾ではがくが褐色~暗褐色に変色し、花の腐敗落花が生じたり、開花が不完全となる。 |
| 夏~秋季 | 梅雨明け後には気温の上昇に伴い病徴の進展や新たな発病は少なくなるが、樹体内で病原菌が完全に死滅しているわけではない。主枝や新梢の樹皮下の褐変及び皮目の赤変、新梢の萎ちょう、葉の萎ちょうや葉巻に留意して観察を継続し、必要に応じて樹皮下の変色を確認する。 |
| 秋~冬季 | 10~12月は前年の冬~春季にかけて枝から樹液の漏出があった場合、漏出痕が残っている場合がある。 |
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図1 花蕾の枯死及び葉の斑点(キウイフルーツ)
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図2 新梢の枯死
(キウイフルーツ) |
図3樹液の漏出 (キウイフルーツ) |
その他の写真はこちらを参照。
8. 防除
感染した枝や葉は感染源となるため、発病の程度に応じて切除・伐採し、埋没又は焼却する。また、せん定等に使用した農機具は消毒する。適期に銅水和剤等の登録農薬を散布する。特に、病原菌が増殖しやすく樹体内の菌密度が高い収穫後~発芽前及び発芽期~開花期に実施する。詳しくは「キウイフルーツかいよう病のPsa3系統の防除対策マニュアル」を参照。
9. 診断、検出及び同定方法
遺伝子診断法により検出可能である。
10. 発見した場合の対応
本細菌の感染が疑われる植物及び周辺状況の写真を撮影した上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。試料を採取した場合は、散逸しないように厳重に梱包してお知らせください。
11. 経済的影響
ニュージーランドでは、2010年の発生確認後、2014年までに輸出だけで9.3億NZドル(約840億円)の損失となった。また、発生が確認されたほ場の地価は急激に下がり、1ha当たりの地価が1/6以下になったほ場があった。
12. 海外のニュース
ニュージーランドでは、本細菌を含む主要な病害虫の国内でのまん延防止に万全を期するためキウイフルーツの苗木等を対象にした国内防除規則を2022年4月から施行している。当該規則では、発生確認後の通報義務、ほ場の衛生管理、苗木等の国内移動に関する条件等が定められている(Biosecurity Order 2022)。
*画像は全て愛媛県出典
参考・引用文献
- Pseudomonas syringae pv. actinidiae biovar 3に関する病害虫リスクアナリシス(PRA)報告書
- 重要病害虫発生時対応基本指針(平成24年5月17日付け24消安第650号消費・安全局長通知)
- キウイフルーツ苗木等検査実施要領(平成30年4月25日付け30消安第228号消費・安全局長通知)
- キウイフルーツかいよう病のPsa3系統の防除対策マニュアル
- 澤田・藤川 (2019) キウイフルーツかいよう病菌(Pseudomonas syringae pv. actinidiae)における遺伝的多様性 日本植物病理学会報 85: 3-17
- Vanneste (2017) The Scientific, Economic, and Social Impact of the New Zealand Outbreak of Bacterial Canker of Kiwifruit (Pseudomonas syringae pv. actinidiae) Annual review of Phytopathology Volume 55:377-399
- Biosecurity (National Kiwifruit Pathway Management Plan) Order 2022 (accessed 15 Jan. 2025)
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