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PDF版:Tomato brown rugose fruit virusの解説(PDF : 334KB)

Tomato brown rugose fruit virusの解説

本ウイルスは、トマト等に生育不良や果実奇形等の大きな被害をもたらしている新種のウイルスである。2014年にイスラエルで初めて発見された後、急速に世界各地にまん延している。こうした世界的な拡大は主に汚染された種子の流通によるものと考えられている。
我が国は、全ての地域からの宿主植物(栽培の用に供するもの)の輸入に関して、輸出国での遺伝子診断法による検査を要求している(植物防疫法施行規則別表2の2の第36項を参照)。
     
      温室内での株の萎凋、枯死
      出典:EPPO

1. 学名

Tobamovirus fructirugosum

2. 英名

Tomato brown rugose fruit virus (ToBRFV)

3. 発生国・地域

イスラエル、トルコ、ヨルダン、中国、イタリア、英国、オランダ、ギリシャ、スペイン、米国、カナダ、メキシコ、モロッコ、アルゼンチン、豪州等
詳しくは発生国・地域一覧を参照。

4. 宿主植物

トマト、とうがらし、いぬほおずき等
詳しくは宿主植物一覧を参照。

5. 生態

本ウイルスはトバモウイルス属に属する。本属ウイルスは植物残さ中で10年以上生存することが可能で、土壌中や汚染された農業資材上での生存期間は、数か月から数年に及ぶことが報告されている。

6. 移動・分散方法

本ウイルスは、種子伝染、接触伝染、土壌伝染、水媒伝染及びベクター(媒介生物)により伝染する。
なお、ベクターとして、セイヨウオオマルハナバチによる伝搬が報告されている。また、せん定作業や汚染した農機具の利用によっても伝染する。

7. 病徴

トマトでは品種によるが、葉に糸葉症状、黄化、モザイク及び斑点の症状が見られる。花柄、がく及び葉柄にはえそ斑点が見られ、茎は壊死し花は萎れる。果実では凹凸表面を伴う黄色又は褐色の斑点及び奇形の症状を示し、商品価値を低下させる。
とうがらし属植物では、葉に奇形、黄化、モザイクの症状がみられ、果実は、黄褐色又は緑色の線条を伴う奇形の症状を示す。

   図1   葉のモザイク症状(トマト)
図2   果実の黄化(トマト)
出典:EPPO                    
図3   果実の黄化と奇形(とうがらし属)
出典:EPPO

その他の写真はこちらを参照。

8. 防除

本ウイルスに対しての防除の有効性は限定的であり、一度侵入を許すと、現段階での対策は感染植物の除去や厳しいほ場衛生管理しかない。
なお、本ウイルスと同属のトマトモザイクウイルス(ToMV)の一般的な防除方法として、感染植物の初期段階での抜き取り、資材(床土、育苗鉢等)の消毒、次作での再発を防ぐため1作はトマトを栽培しないこと等が有効であることから、本ウイルスに対しても適用できる可能性があると考えられている。ToMVに対する防除は「植物防疫第70巻」を参照。

9. 診断、検出及び同定方法

血清学的診断法又は遺伝子診断法により検出可能である。

10. 発見した場合の対応

本ウイルスの感染が疑われる植物及び周辺状況の写真を撮影した上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。試料を採取した場合は、散逸しないように厳重に梱包してお知らせください。

11. 経済的影響

イスラエルでは、トマト果実の黄色斑点症状は感染植物の果実総数の10~15%に見られたとの報告がある。また、ドイツでは、トマト生産施設の25haで発生し、そのうち10%が症状を示し、ヨルダンでは、発生したトマト生産施設において、100%近い被害報告があった。

12. 海外のニュース

豪州では、2024年8月に南オーストラリア州アデレード市郊外のトマトほ場で発生が初めて確認された。これを受け、豪州当局は、同州からの宿主植物の移動規制を講じつつ、根絶に向けて取り組んでいる(豪州当局Homepage)。

参考・引用文献

ToBRFVの発生国・地域一覧表

ToBRFVの宿主植物一覧

ToBRFVの被害写真

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発行人         森田   富幸
編集責任者   三角   隆