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印刷版:Pea early-browning virusの解説(PDF : 303KB)

Pea early-browning virusの解説

本ウイルスは、えんどうやそらまめ等のマメ科植物に感染し、葉の変色や生育不良を引き起こすトブラウイルス属の一種である。1949年にオランダのえんどう生産園地で初めて発生が報告され、その後、欧州及び北アフリカ各地で確認されている。
我が国は、本ウイルスの発生国・地域からの宿主植物(栽培の用に供するもの)の輸入に関し、輸出国での血清学的診断法又は遺伝子診断法による検査を要求している(植物防疫法施行規則別表2の2の第35項を参照)。
     
えんどうにおける茎葉の症状(左:健全葉   真中・右:感染葉)

1. 学名

Tobravirus pisi

2. 英名

pea early-browning virus

3. 発生国・地域

イタリア、英国、オランダ、スウェーデン、ベルギー、ポーランド、アルジェリア、エチオピア、モロッコ及びリビア

4. 宿主植物

えんどう、そらまめ、アルファルファ、いんげんまめ及びきばなのはうちまめ

5. 生態

本ウイルスは、トブラウイルス属に属する一本鎖RNAウイルス。血清型の違いにより、イギリス系統、オランダ系統及びイタリア系統が報告されている。

6. 移動・分散方法

本ウイルスは、種子伝染(えんどう及びそらまめ)、土壌伝染及びベクター(媒介生物)により伝染する。ベクターとしては、複数の線虫が報告されている。また、感染植物の根に付着した線虫を含む土壌の移動等の人為的な移動によって分散する。

7. 病徴

宿主植物ごとに以下の病徴を示す。

えんどう えんどう 茎内部、維管束の壊死による紫褐色の変色が生じ、茎が折れやすくなる。茎内部、維管束の壊死は茎や葉脈に沿って広がり、葉に小さな褐色の斑点を生じる。植物の茎頂部には黄化や斑紋症状が見られ、しばしば壊死し、新芽は斑点や条斑を呈する。さやに紫色の変色や壊死斑点、輪紋又は凹みが生じる。植物体はわい化する。病徴はウイルスの系統により異なり、ほとんど病徴を生じない品種も報告されている。
そらまめ 自然感染したそらまめは、多くの場合は病徴を生じないが、全身感染しウイルスは高濃度を保持する。イギリス系統は野外では無病徴感染することが報告されている。イタリア系統では、葉脈に沿った黄色い帯状の変色、輪紋、条斑及びさやの褐変えそを引き起こすが、無病徴感染することもある。オランダ系統は、無病徴感染のみだったが、植物体は高いウイルス濃度を有していた。
アルファルファ 無病徴で自然感染する報告もあるが、英国の自然感染したアルファルファでは、葉にしばしば奇形を伴って、鎌形の黄化斑や白色の線条斑を生じた。
いんげんまめ モザイク症状、壊死斑点、輪紋の形成、生育不良、わずかな葉の奇形等。全身感染がまれである品種もある。
きばなのはうちまめ
生育不良と茎の枯死を引き起こすが、本ウイルスとキュウリモザイクウイルスが混合感染していたため、本ウイルスがどのような影響を及ぼしたかは不明。

病徴の写真はCABI Home pageを参照。

8. 防除

健全種子を用いることが最も重要である。雑草防除により感染源やベクター(線虫)を減らすことができる。

9. 診断、検出及び同定方法

血清学的診断法又は遺伝子診断法により検出可能である。

10. 発見した場合の対応

本細菌の感染が疑われる植物及び周辺状況の写真を撮影した上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。試料を採取した場合は、散逸しないように厳重に梱包して上記連絡先までお知らせください。

11. 経済的影響

発生国・地域では、えんどうの生育不良、植物体の枯死等による減収が報告されている。また、本ウイルスをそらまめに接種したところ、収量が平均27%減少した。

12. 海外のニュース

モロッコでは、1974年に大西洋岸地域のえんどう生産園地で生育不良や葉の斑点や壊死症状が確認された。その後、その他の地域においても同様の症状が確認され、本ウイルスが原因であることが判明した。これは欧州地域以外での初めての発生確認事例である(Lockhart et al., 1976)。


写真は「Daowen Wang氏」出典

参考・引用文献


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