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バナナネモグリセンチュウの解説
| 本線虫は、バナナ、こしょう、しょうが等の様々な植物に寄生し、甚大な被害を与えるネモグリセンチュウ類の一種であり、欧州、アフリカ、北米、中南米、大洋州等で広く発生している。本線虫は、植物根内と土壌中の移動が可能で、根の組織に侵入し加害する。なお、アンスリューム属及びアヌビアス属植物では、葉や茎等の地上部の一部にも寄生する。 我が国は、本線虫の発生国・地域からの寄主植物(栽培の用に供し得るもの)の輸入に関して、輸出国での栽培地検査を要求している(植物防疫法施行規則別表2の2の第12項を参照)。 |
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1. 学名
Radopholus similis
2. 英名
banana burrowing nematode、pepper yellows nematode、slow wilt nematode、banana toppling disease nematode
3. 発生国・地域
インド、中国、フィリピン、ベトナム、オマーン、英国、オランダ、フランス、エジプト、ケニア、タンザニア、南アフリカ、米国、カナダ、エクアドル、グアテマラ、コロンビア、ブラジル、メキシコ、豪州等
詳しくは発生国・地域一覧を参照。
4. 寄主植物
バナナ、こしょう、しょうが、アボカド、アンスリューム、うこん、さといも、さとうきび、とうもろこし、トマト、なす、ばれいしょ、らっかせい等
詳しくは寄主植物一覧を参照。
5. 形態
体長は雌成虫0.5~0.9mm、雄成虫0.5~0.7mmで、体形は糸状。雌成虫の場合、唇部骨格(頭部骨格)は発達し、唇部は低いが、雄成虫では唇部骨格は発達せず、唇部は高く突き出しドアノブ状で明瞭なくびれがある。雌成虫では、口針長は17~20μmで、口針節球は丸~横長、食道の後端は背側で腸と重なる。尾は円錐形で尾長は52~80μm、尾端透明部は9~17μm。雄成虫では、口針長は12~17μmで、口針は細く、中部食道球や食道腺は退化して不明瞭、交接刺は18~22μmで先端は鋭く尖る。
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図1 雌成虫 |
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| 図2 雄成虫 |
その他の写真はこちらを参照。
6. 生態
本線虫は、主に寄主植物の根等の地下部の組織に侵入し、養分を接取しながら移動する内部寄生の線虫である。通常、受精(両性生殖)により繁殖するが、単為生殖することもある。雌成虫は、一生のうち2週間の産卵期間があり、寄生組織内で1日平均4~5個の卵を産む。卵から次世代の卵までの生活環は24~32℃で20~25日で完了するため、年間複数世代が出現する。寄主植物がない土壌中では1か月~半年程度生存する。
なお、本線虫の幼虫及び雌雄成虫全てが組織内に侵入可能であり、根への侵入・加害と土壌中への脱出を繰り返している。寄主植物の根回りでの発生が多く、こしょう栽培においては、深さ20~30cmの土壌中に多く見られる。
7. 移動・分散方法
土壌中における本線虫の移動距離は、年間約2.5mである。また、本線虫の寄生を受けた寄主植物、本線虫を含む土壌やその土壌が付着した農機具等を介して人為的に移動する。
8. 被害の特徴
本線虫が根等の地下部に寄生すると、組織が破壊され、根等に褐変や壊死が起こる。地上部においては、根への寄生の影響により、葉の黄化や萎ちょう、果実の小形化等が起こる。
なお、寄生した場合、バナナでは、根系が次第に浅くなり、干ばつや風による倒伏が多く起こる。
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| 図3 苗の倒伏(バナナ) | 図4 塊根の褐変(しょうが) | 図5 根の褐変(さといも) |
その他の写真はこちらを参照。
9. 識別のポイント
本線虫と近縁属のHirschmanniella属及びPratylenchus属線虫とは、食道と腸が重なる位置及び雌雄間における形態的特徴の差で識別が可能である。より詳しい識別方法は、侵入調査マニュアルを参照。
なお、本線虫とカンキツネモグリセンチュウ(R. citrophilus)には形態的な差はないが、カンキツネモグリセンチュウはカンキツ類に寄生する一方、本線虫はカンキツ類に寄生しない。
10. 診断・検出及び同定方法
地上部に発芽不良、葉の黄変や減少、収量の減少等が生じる場合は、植物検診又は土壌検診を実施する。褐色や黒色等の症状の根やその周辺部を中心に採集し、ベルマン法又はミキサー・ふるい分け法で本線虫を分離する。根回りの土壌は、ベルマン法又はふるい分け法で分離する。同定は、雌成虫及び雄成虫のプレパラート標本を作製後、生物顕微鏡を用いて形態的特徴及び形態計測値に基づき行う。
11. 発見した場合の対応
可能であれば本線虫、寄生が疑われる植物及び周囲の様子の写真を撮影の上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。本線虫が寄生している又は寄生の疑いのある植物(根回りの土壌を含む。)がある場合は、分散防止のためにビニール袋等に入れて密封した上で、上記連絡先までお知らせください。
12. 防除
殺線虫剤の使用が有効である。一般的に大規模商業用バナナ園地においては、年間2~4回の殺線虫剤散布が行われている旨の報告がある。また、無病苗の使用、輪作、抵抗性品種の利用等による耕種的防除法、種苗の温湯処理等の物理的防除法も有効である。
13. 経済的影響
カメルーンでは、本線虫の発生が激しい場合、バナナの収量損失が50%以上になる旨の報告がある。フィジーでは、1974~1975年の調査では50%以上のしょうが園地で本線虫が発生し、収量が40%近く減少した旨の報告がある。
14. 海外のニュース
フィジーでは、過去に本線虫によるしょうがへの被害が大きかったことがあり、まん延を防止・管理する取組として、輪作、6か月の休耕期間の設定の他、これまでしょうがの未生産園地への植え付けが推奨されている。
図3は「Coyne Daniel氏」出典
参考・引用文献
- バナナネモグリセンチュウに関する病害虫リスクアナリシス(PRA)報告書
- 侵入調査マニュアル(ネモグリセンチュウ類)
- 重要病害虫発生時対応基本指針(平成24年5月17日付け24消安第650号消費・安全局長通知)
- 海老名崇生ら (2022) 輸入植物検疫において東南アジア産水草類苗から発見されたバナナネモグリセンチュウ Radopholus similis (Tylenchida: Pratylenchidae) .植物防疫所調査研究報告58: 19-29
- Biosecurity Advice 2015/22 - Final report for the review of import conditions for fresh ginger from Fiji, Australian Government (accessed on 16 Sep. 2025)
- Chabrier, C. and Queneherve, P. (2003) Control of the burrowing nematode (Radopholus similis Cobb) on banana: Impact of the banana field destruction method on the efficiency of the following fallow. Crop Protection 22: 121-127
- Chabrier et al. (2010) Factors influencing the survivorship of the burrowing nematode, Radopholus similis (Cobb.) Thorne in two types of soil from banana plantations in Martinique. Applied Soil Ecology 44: 116-123
- Fogain, R. and Njifenjou, S. (2003) Effect of a mycorrhizal Glomus sp. on growth of plantain and on the development of Radopholus similis under controlled conditions. African Plant Protection 9(1):27-30
- Scientific opinion on the pest categorization of Radopholus similis (Cobb) Thorne and Radopholus citrophilus Huettel, Dickson and Kaplan, EFSA Journal (accessed on 16 Sep. 2025)
- Vilsoni et al. (1976) Occurrence, host range and histopathology of Radopholus similis in ginger (Zingiber officinale). Plant Diseases Reporter 60(5): 417-420
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