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印刷版:チュウゴクアミガサハゴロモの解説(印刷版)(PDF:473KB)

チュウゴクアミガサハゴロモの解説

 本虫は、カメムシ目ハゴロモ科に属する中国原産の害虫である。極めて広食性であり、かんきつ類やキウイフルーツなどの果樹、キク科などの花き、茶や植木類に寄生し、吸汁や産卵により植物を加害する。
 我が国では、2017年に大阪府で初めて発見されて以降、本州、四国及び九州の各地で発見され、2024年には国内での農作物への被害が初めて確認された。2026年1月9日時点で、28都府県から特殊報が発表されている。


図1 成虫 

1. 学名

Pochazia shantungensis

2. 英名

brown winged planthopper

3. 発生国・地域

 中国、韓国、日本、トルコ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ブルガリア、ハンガリー及びロシア

4. 寄主植物

 かんきつ類、キウイフルーツ、ブルーベリー、オリーブ、りんご、もも、かき、ぶどう、くり、うめ、宿根アスター、ヒメジョオン、茶、いぬつげ、くちなし、えのき、いちょう、たらのき、かつら、くすのき、つばき、まさき、けやき、さるすべり、はなみずき、もちのき、さかき、ろうばい等

5. 形態

 成虫の体長は11~15mm。一般的に雄は雌よりもやや小さい。頭部は明褐色~暗褐色。前翅は茶褐色~鉄錆色のろう物質の粉をまとい、前翅長は10.0~13.5mm。前翅前縁中央部には三角形の白斑がある。幼虫は白色で、黄色~褐色の斑紋や黒点を持つ。体長は1齢では1.19~1.28mm、2齢では1.32~1.34mm、3齢では1.64~1.66mm、4齢では2.23~2.30mm、5齢では3.18~3.28mm。各齢期とも腹部から白色糸状のろう物質の毛束をまとい、放射状又はクジャクの尾羽状に広がる。卵は白色、楕円形で直径約1mm。
 本虫は終齢幼虫から蛹を経ず成虫になる不完全変態の昆虫である。

図2 成虫 図3 3齢又は4齢幼虫 図4 1齢幼虫 図5 卵

その他の写真はこちらを参照。

6. 生態

 我が国において、大阪府では年2化性であることが確認されている。本虫は枝にて卵の状態で越冬し、6月~7月及び9~12月に羽化する。韓国では、年1化性であると報告されており、5月後半~6月前半にかけて卵からふ化して幼虫になり、7月中頃から成虫が現れ、8月上旬に産卵が開始される。
 産卵習性として、直径10mm以下の新梢などの細い枝が選好され、雌成虫は産卵管で維管束部に達するほどの傷をつけ、生じた空間に1粒ずつ、2列になるように産卵する。産卵後、腹端から白色で綿状のろう物質を出し、産卵した部位を被覆する。

7. 移動・分散方法

 本虫は、成虫が飛翔により移動するが、飛翔能力は低いと考えられている。また、本虫が寄生した植物の人為的な移動により分散する。

8. 被害の特徴

 成虫及び幼虫が吸汁加害するほか、甘露を排泄することで、すす病を誘発し、果樹では果実の外観品質を損ねる。また、成虫が枝に傷をつけて産卵するため、維管束が破壊され、枝先が枯死したり、産卵された部位がもろくなり、重さにより枝折れ被害が生じる。

図6 キウイフルーツに寄生している幼虫 図7 茶に寄生している幼虫 図8 茶に産卵している成虫 図9 ゆずでの産卵痕

その他の写真はこちらを参照。

9. 識別のポイント

 本虫と形態的によく似たハゴロモ科として、在来種のアミガサハゴロモ(P. albomaculata)がある。両種の特徴的な違いとしては、成虫における前翅の長さや白紋の形状、幼虫における体色が挙げられる。

図10 チュウゴクアミガサハゴロモの前翅

図11 アミガサハゴロモの前翅

白色ベースに
褐色の斑紋を持つ
赤橙色ベースに
白色の斑紋を持つ
図12 チュウゴクアミガサハゴロモの幼虫 図13 アミガサハゴロモの幼虫

10. 防除

 本虫の産卵痕がある枝は見つけ次第除去するなど耕種的防除を実施する。また、成虫は比較的大型であるため、産卵加害の防止目的であれば、防虫ネットの設置も有効である。
 我が国では、2026年1月9日現在、本虫を対象にした登録農薬はない。韓国では、本虫を対象にした多数の登録農薬があり、その中でもアセタミプリド、ジノテフラン、イミダクロプリド及びエトフェンプロックスが高い致死性を示している旨の報告がある。

11. 経済的影響

 原産地である中国以外では、韓国で2010年に初めて本虫が発見され、公州市及び礼山郡のりんご及びくり園地において、ほとんどの樹が枯死するなどの被害が生じた。その後、100種類以上の農薬が登録され、適期に効果的な防除が実践されたことから被害は減少している。

12. 海外のニュース

 欧州では、2018年にフランス、2019年にイタリア、2022年にロシア、2023年にオランダ、2024年にベルギー、ブルガリア及びハンガリーで発見されるなど分布が拡大している。



図1、6及び7は「静岡県病害虫防除所」出典
図2、3及び5は「大阪府環境農林水産部」出典
図4、8、9、12及び13は「埼玉県病害虫防除所」出典


参考・引用文献

  • 阿久津純一(2025)侵入種チュウゴクアミガサハゴロモに対する各種殺虫剤の殺虫活性 植物防疫第79巻第10号
  • 大阪府環境農林水産部 令和7年度病害虫発生予察特殊報第1号
  • 神奈川県農業技術センター 令和6年度病害虫発生予察特殊報第1号
  • 埼玉県病害虫防除所 令和7年度病害虫発生予察注意報第8号
  • 埼玉県病害虫防除所 病害虫防除情報 「チュウゴクアミガサハゴロモが各地で多発しています」(accessed on 21. Jan. 2026)
  • 酒井和彦ら (2025) 埼玉県におけるチュウゴクアミガサハゴロモの発生について 植物防疫第79巻第10号
  • 静岡県病害虫防除所 令和7年度技術情報第3号
  • 兵庫県病害虫防除所 令和7年度病害虫発生予察特殊報第1号
  • EFSA (2023) Pest categorization of Pochazia shantungensis (accessed on 21. Jan. 2026)
  • EPPO Global Database: Pochazia shantungensis(accessed on 21. Jan. 2026)
  • EPPO (2025) Report of a pest risk analysis for Pochazia shantungensis and Pochazia chinensis (accessed on 21. Jan. 2026)
  • Jaek et al. (2019) Current and future distribution of Ricania shantungenis (Hemiptera: Ricaniidae) in Korea: Application of Spatial analysis to select relevant environmental variables for MaxEnt and CLIMEX modeling. Forests 10(6) 490.
  • Jaek et al. (2024) Damage analysis of Pochazia shantungensis (Hemiptera: Ricaniidae) in persimmons. PLoS One 19(4): e0301471
  • Kim et al. (2016). Comparison of management effects of a few plant extracts and chemical pesticides for Ricania shantungensis in field conditions. pp 115. Proceedings: 2016 fall meeting of Korean Society of Applied Entomology. 20-21 October. Buyeo Lotte resorts, Buyeo, Korea. (In Korean)
  • Kobayashi et al. (2024) Reevaluation of taxonomic identity of the recently introduced invasive planthopper, Pochazia shantungensis (Chou & Lu, 1977) (Hemiptera: Fulgoroidea: Ricaniidae) in Japan. Zootaxa 5446(2):151–178.

    チュウゴクアミガサハゴロモの写真

    チュウゴクアミガサハゴロモによる被害写真

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    発行所   横浜植物防疫所
    発行人   森田   富幸
    編集責任者 横山 亨

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