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衛生植物検疫措置の適用に関する協定
〔平成6年12月28日 条約第15号〕
 
沿革
 
 
加盟国は、
   いかなる加盟国も、同様の条件の下にある加盟国の間において意的若しくは不当な差別の手段となるような態様で又は国際貿易に対する偽装した制限となるような態様で適用しないことを条件として、人、動物若しくは植物の生命若しくは健康を保護するために必要な措置を採用し又は実施することを妨げられるべきでないことを再確認し、
   すべての加盟国において、人及び動物の健康並びに植物の衛生状態が向上することを希望し、
   衛生植物検疫措置が二国間の協定又は議定書に基づいてしばしば適用されることに留意し、
   衛生植物検疫措置の貿易に対する悪影響を最小限にするため、その企画、採用及び実施に当たっての指針となる規則及び規律の多数国間の枠組みを定めることを希望し、
   この点に関し、国際的な基準、指針及び勧告が重要な役割を果たすことができることを認め、
   加盟国が人、動物又は植物の生命又は健康に関する自国の適切な保護の水準を変更することを求められることなく、食品規格委員会及び国際獣疫事務局を含む関連国際機関並びに国際植物防疫条約の枠内で活動する関連国際機関及び関連地域機関が作成した国際的な基準、指針及び勧告に基づき、加盟国間で調和のとれた衛生植物検疫措置をとることが促進されることを希望し、
   開発途上加盟国が、輸入加盟国による衛生植物検疫措置を遵守し及びその結果として市場へ進出するときに特別の困難に直面すること並びに自国の領域内において衛生植物検疫措置を定め及び適用するときに特別の困難に直面することがあることを認め、また、この点に関する開発途上加盟国の努力を支援することを希望し、
   よって、衛生植物検疫措置をとることに関連する千九百九十四年のガットの規定、特にその第二十条(b)の規定(注)の適用のための規則を定めることを希望して、
   ここに、次のとおり協定する。
   この協定において千九百九十四年のガット第二十条(b)というときは、同条の柱書きを含む。
 
      第一条  一般規定
1  この協定は、国際貿易に直接又は間接に影響を及ぼすすべての衛生植物検疫措置について適用する。衛生植物検疫措置は、この協定に従って定められ、適用されるものとする。
2  この協定の適用上、附属書Aに掲げる用語の意義は、同附属書の定義に従う。
3  附属書は、この協定の不可分の一部を成す。
4  この協定は、その適用範囲外の措置について、貿易の技術的障害に関する協定に基づく加盟国の権利に影響を及ぼすものではない。
 
      第二条  基本的な権利及び義務
1  加盟国は、人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要な衛生植物検疫措置をとる権利を有する。ただし、衛生植物検疫措置が、この協定に反しないことを条件とする。
2  加盟国は、衛生植物検疫措置を、人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要な限度においてのみ適用すること、科学的な原則に基づいてとること及び、第五条7に規定する場合を除くほか、十分な科学的証拠なしに維持しないことを確保する。
3  加盟国は、自国の衛生植物検疫措置により同一又は同様の条件の下にある加盟国の間(自国の領域と他の加盟国の領域との間を含む。)において意的又は不当な差別をしないことを確保する。衛生植物検疫措置は、国際貿易に対する偽装した制限となるような態様で適用してはならない。
4  衛生植物検疫措置は、この協定の関連規定に適合する場合には、衛生植物検疫措置をとることに関連する千九百九十四年のガットの規定、特にその第二十条(b)の規定に基づく加盟国の義務に適合しているものと推定する。
 
      第三条  措置の調和
1  加盟国は、衛生植物検疫措置をできるだけ広い範囲にわたり調和させるため、この協定、特に3の規定に別段の定めがある場合を除くほか、国際的な基準、指針又は勧告がある場合には、自国の衛生植物検疫措置を当該国際的な基準、指針又は勧告に基づいてとる。
2  衛生植物検疫措置は、国際的な基準、指針又は勧告に適合する場合には、人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために必要なものとみなすものとし、この協定及び千九百九十四年のガットの関連規定に適合しているものと推定する。
3  加盟国は、科学的に正当な理由がある場合又は当該加盟国が第五条の1から8までの関連規定に従い自国の衛生植物検疫上の適切な保護の水準を決定した場合には、関連する国際的な基準、指針又は勧告に基づく措置によって達成される水準よりも高い衛生植物検疫上の保護の水準をもたらす衛生植物検疫措置を導入し又は維持することができる(注)。ただし、関連する国際的な基準、指針又は勧告に基づく措置によって達成される衛生植物検疫上の保護の水準と異なる衛生植物検疫上の保護の水準をもたらすすべての措置は、この協定の他のいかなる規定にも反してはならない。
注この3の規定の適用上、「科学的に正当な理由がある場合」には、加盟国が、入手可能な科学的情報のこの協定の関連規定に適合する検討及び評価に基づいて、関連する国際的な基準、指針又は勧告が自国の衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達
成するために十分ではないと決定した場合を含む。
4  加盟国は、関連国際機関及びその補助機関、特に食品規格委員会及び国際獣疫事務局並びに国際植物防疫条約の枠内で活動する国際機関及び地域機関において、これらの機関における衛生植物検疫措置のすべての側面に関する国際的な基準、指針及び勧告の作成及び定期的な再検討を促進するため、能力の範囲内で十分な役割を果たすものとする。
5  第十二条の1及び4に規定する衛生植物検疫措置に関する委員会(この協定において「委員会」という。)は、国際的な措置の調和の過程を監視する手続を作成し、及び関連国際機関とこの点について相互に協力する。
 
      第四条  措置の同等
1  加盟国は、他の加盟国の衛生植物検疫措置が、当該加盟国又は同種の産品の貿易を行っている第三国(加盟国に限る。)の衛生植物検疫措置と異なる場合であっても、輸出を行う当該他の加盟国が輸入を行う当該加盟国に対し、輸出を行う当該他の加盟国の衛生植物検疫措置が輸入を行う当該加盟国の衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達成することを客観的に証明するときは、当該他の加盟国の衛生植物検疫措置を同等なものとして認める。このため、要請に応じ、検査、試験その他の関連する手続のため、適当な機会が輸入を行う当該加盟国に与えられる。
2  加盟国は、要請に応じ、特定の衛生植物検疫措置の同等の認定について、二国間又は多数国間で合意するために協議を行う。
 
      第五条  危険性の評価及び衛生植物検疫上の適切な保護の水準の決定
1  加盟国は、関連国際機関が作成した危険性の評価の方法を考慮しつつ、自国の衛生植物検疫措置を人、動物又は植物の生命又は健康に対する危険性の評価であってそれぞれの状況において適切なものに基づいてとることを確保する。
2  加盟国は、危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠、関連する生産工程及び生産方法、関連する検査、試料採取及び試験の方法、特定の病気又は有害動植物の発生、有害動植物又は病気の無発生地域の存在、関連する生態学上及び環境上の状況並びに検疫その他の処置を考慮する。
3  加盟国は、動物又は植物の生命又は健康に対する危険性の評価を行い及びこれらに対する危険からの衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達成するために適用される措置を決定するに当たり、関連する経済的な要因として、次の事項を考慮する。
有害動植物又は病気の侵入、定着又はまん延の場合における生産又は販売の減少によって測られる損害の可能性
輸入加盟国の領域における防除又は撲滅の費用
危険を限定するために他の方法をとる場合の相対的な費用対効果
4  加盟国は、衛生植物検疫上の適切な保護の水準を決定する場合には、貿易に対する悪影響を最小限にするという目的を考慮すべきである。
5  人の生命若しくは健康又は動物及び植物の生命若しくは健康に対する危険からの「衛生植物検疫上の適切な保護の水準」の定義の適用に当たり整合性を図るため、各加盟国は、異なる状況において自国が適切であると認める保護の水準について意的又は不当な区別を設けることが、国際貿易に対する差別又は偽装した制限をもたらすこととなる場合には、そのような区別を設けることを回避する。加盟国は、この5の規定の具体的な実施を促進するための指針を作成するため、第十二条の1から3までの規定に従って委員会において協力する。委員会は、指針の作成に当たり、人の健康に対する危険であって人が任意に自らをさらすものの例外的な性質を含むすべての関連要因を考慮する。
6  第三条2の規定が適用される場合を除くほか、加盟国は、衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達成するため衛生植物検疫措置を定め又は維持する場合には、技術的及び経済的実行可能性を考慮し、当該衛生植物検疫措置が当該衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達成するために必要である以上に貿易制限的でないことを確保する。
  この6の規定の適用上、一の措置は、技術的及び経済的実行可能性を考慮して合理的に利用可能な他の措置であって、衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達成し、かつ、貿易制限の程度が当該一の措置よりも相当に小さいものがある場合を除くほか、必要である以上に貿易制限的でない。
7  加盟国は、関連する科学的証拠が不十分な場合には、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。そのような状況において、加盟国は、一層客観的な危険性の評価のために必要な追加の情報を得るよう努めるものとし、また、適当な期間内に当該衛生植物検疫措置を再検討する。
8  加盟国は、他の加盟国が導入し又は維持する特定の衛生植物検疫措置が、自国の輸出を抑制し又は抑制する可能性を有すると信ずる理由がある場合において、当該衛生植物検疫措置が関連する国際的な基準、指針若しくは勧告に基づいていないと信じ又は関連する国際的な基準、指針若しくは勧告が存在しないと信ずる理由があるときは、当該衛生植物検疫措置をとる理由について説明を要求することができるものとし、当該衛生植物検疫措置を維持する加盟国は、その説明を行う。
 
      第六条  有害動植物又は病気の無発生地域及び低発生地域その他の地域的な状況に対応した調整
1  加盟国は、自国の衛生植物検疫措置を産品の原産地又は仕向地である地域(一の国の領域の全部であるか一部であるか又は二以上の国の領域の全部であるか一部であるかを問わない。)の衛生植物検疫上の特性に対応して調整することを確保する。加盟国は、地域の衛生植物検疫上の特性を評価するに当たり、特に特定の病気又は有害動植物の発生の程度、撲滅又は防除の計画の有無及び関連国際機関が作成する適当な規格又は指針を考慮する。
2  加盟国は、特に、有害動植物又は病気の無発生地域及び低発生地域の制度を認める。これらの地域の決定は、地理、生態系、疫学的な監視、衛生植物検疫上の防除の有効性等の要因に基づいて行う。
3  自国の領域内の地域が有害動植物又は病気の無発生地域又は低発生地域であると主張する輸出加盟国は、当該地域が有害動植物又は病気の無発生地域又は低発生地域であり、かつ、そのような状況が継続する見込みがあることを輸入加盟国に客観的に証明するため、その主張についての必要な証拠を提供する。このため、要請に応じ、検査、試験その他の関連する手続のため、適当な機会が輸入加盟国に与えられる。
 
      第七条  透明性の確保
   加盟国は、附属書Bの規定に従い、自国の衛生植物検疫措置の変更を通報するものとし、また、自国の衛生植物検疫措置についての情報を提供する。
 
      第八条  管理、検査及び承認の手続
   加盟国は、添加物の使用の承認又は飲食物若しくは飼料に含まれる汚染物質の許容限度の設定に関する国内制度を含む自国の管理、検査及び承認の手続の運用に当たり附属書Cの規定を遵守するものとし、これらの手続がこの協定の規定に反しないことを確保する。
 
      第九条  技術援助
1  加盟国は、二国間で又は適当な国際機関を通じて、他の加盟国(特に開発途上加盟国)に対する技術援助の供与を促進することに合意する。当該技術援助は、特に、生産工程関連技術、研究及び基盤の整備(国内の規制機関の設立に関するものを含む。)の分野において、助言、信用供与及び贈与の形態によって行うことができる。当該技術援助には、当該他の加盟国が、その輸出市場において衛生植物検疫上の適切な保護の水準を達成するために必要な衛生植物検疫措置に適応し、かつ、これを遵守することができるようにするための技術的な専門知識、訓練及び設備を求めるための技術援助が含まれる。
2  輸入加盟国は、その衛生植物検疫上の要件を開発途上輸出加盟国が満たすために多額の投資が必要な場合には、開発途上加盟国がその関係する産品について市場へ進出する機会を維持し及び拡大することを可能にするような技術援助を与えることを考慮する。
 
      第十条  特別のかつ異なる待遇
1  衛生植物検疫措置の立案及び適用に当たり、加盟国は、開発途上加盟国(特に後発開発途上加盟国)の特別のニーズを考慮する。
2  衛生植物検疫上の適切な保護の水準に照らして新たな衛生植物検疫措置を段階的に導入する余地がある場合には、開発途上加盟国が関心を有する産品については、その輸出の機会が維持されるよう、遵守のための一層長い期間が与えられるべきである。
3  委員会は、開発途上加盟国がこの協定を遵守することができるように、要請に応じ、当該開発途上加盟国の資金上、貿易上及び開発上のニ―ズを考慮し、この協定に基づく義務を、全部又は一部につき特定し、かつ、一定の期限を付して、免除することを当該開発途上加盟国に認めることができる。
4  加盟国は、関連国際機関への開発途上加盟国の積極的な参加を奨励し、及び促進すべきである。
 
      第十一条  協議及び紛争解決
1  この協定に別段の定めがある場合を除くほか、紛争解決了解によって詳細に定められて適用される千九百九十四年のガットの第二十二条及び第二十三条の規定は、この協定に係る協議及び紛争解決について準用する。
2  科学的又は技術的な問題を含むこの協定に係る紛争において、小委員会は、小委員会が紛争当事国と協議の上選定した専門家からの助言を求めるべきである。このため、小委員会は、適当と認めるときは、いずれか一方の紛争当事国の要請により又は自己の発意に基づいて、技術専門家諮問部会を設置し又は関連国際機関と協議することができる。
3  この協定のいかなる規定も、他の国際的な合意に基づく加盟国の権利(他の国際機関のあっせん若しくは紛争解決又は国際的な合意に基づいて設立するあっせん若しくは紛争解決のための制度を利用する権利を含む。)を害するものではない。
 
      第十二条  運用
1  協議のための定期的な場を設けるため、この協定により衛生植物検疫措置に関する委員会を設置する。委員会は、この協定の実施及びこの協定の目的の達成(特に措置の調和に関するもの)のために必要な任務を遂行する。委員会は、コンセンサス方式によってその決定を行う。
2  委員会は、特定の衛生植物検疫上の問題について、加盟国間の特別の協議又は交渉を奨励し、及び促進する。委員会は、国際的な基準、指針又は勧告がすべての加盟国において用いられることを奨励し、これに関し、食品添加物の使用の承認又は飲食物若しくは飼料に含まれる汚染物質の許容限度の設定のための国際制度と国内制度との間及び国際的な取組方法と国内の取組方法との間の調整及び統合を進めることを目的とする技術的な協議及び研究を支援する。
3  委員会は、この協定の運用のために入手可能な最善の科学上及び技術上の助言を確保することを目的とし、並びに活動における不必要な重複を避けることを確保するため、衛生植物検疫上の保護の分野における関連国際機関、特に食品規格委員会、国際獣疫事務局及び国際植物防疫条約事務局との密接な連絡を維持する。
4  委員会は、国際的な措置の調和の過程及び国際的な基準、指針又は勧告の使用を監視する手続を作成する。このため、委員会は、関連国際機関と共に、委員会が貿易に重大な影響があると決定した衛生植物検疫措置に関する国際的な基準、指針又は勧告についての表を作成すべきである。当該表には、国際的な基準、指針又は勧告であって、加盟国が、輸入のための条件として適用し、又は当該基準に適合する輸入産品の当該加盟国への市場進出の根拠とするものについての当該加盟国による記述を含むべきである。加盟国は、国際的な基準、指針又は勧告を輸入のための条件として適用していない場合には、その理由、特に、当該基準が衛生植物検疫上の適切な保護の水準を与えるために十分に厳格ではないと認めるか認めないかを記述すべきである。加盟国は、輸入のための条件として、国際的な基準、指針又は勧告を使用することを表明した後に自国の立場を変更する場合には、事務局及び関連国際機関にその変更を説明し及び通報すべきである。ただし、附属書Bの手続に基づく通報及び説明を行う場合は、この限りでない。
5  委員会は、不必要な重複を避けるために、適当な場合には、関連国際機関が運用している手続、特に通報手続によって得られた情報を利用することを決定することができる。
6  委員会は、一の加盟国の発意に基づき、特定の国際的な基準、指針又は勧告に関する特定の事項(4の規定に従って記述された不適用の説明の根拠を含む。)の検討のため、関連国際機関又はその補助機関を適当な経路を通じて招請することができる。
7  委員会は、世界貿易機関協定の効力発生の日の後三年で及びその後は必要に応じ、この協定の運用及び実施について検討する。委員会は、適当な場合には、特にこの協定の実施により得られた経験を考慮に入れ、この協定を改正する提案を物品の貿易に関する理事会に提出することができる。
 
      第十三条  実施
   加盟国は、この協定上のすべての義務の遵守についてこの協定に基づく完全な責任を負う。加盟国は、中央政府機関以外の機関によるこの協定の遵守を支援する積極的な手段及び制度を企画立案し、実施する。加盟国は、自国の領域内の非政府機関及び自国の領域内の関連団体が構成員である地域機関がこの協定の関連規定に従うことを確保するため、利用し得る妥当な手段を講ずる。更に、加盟国は、当該地域機関、非政府機関又は地方政府機関がこの協定に反する態様で行動することを直接又は間接に要求し又は助長するような手段を講じてはならない。加盟国は、非政府機関がこの協定を遵守している場合にのみ、衛生植物検疫措置を実施するために当該非政府機関の役務が利用されることを確保する。
 
      第十四条  最終規定
   後発開発途上加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の日の後五年間、自国の衛生植物検疫措置であって輸入又は輸入産品に関するものについて、この協定の適用を延期することができる。他の開発途上加盟国は、世界貿易機関協定の効力発生の日の後二年間、自国の衛生植物検疫措置であって輸入又は輸入産品に関するものについて、この協定の規定(第五条8及び第七条の規定を除く。)の適用が技術的専門知識、技術的基盤又は資金の欠如により妨げられる場合には、当該規定の適用を延期することができる。
 
      附属書A定義(注)
    この定義の適用上、「動物」には魚類及び野生動物を、「植物」には樹木及び野生植物を、「有害動植物」には雑草を並びに「汚染物質」には農薬及び動物用医薬品の残留物並びに異物を含む。
1「衛生植物検疫措置」とは、次のことのために適用される措置をいう。
(a) 有害動植物、病気、病気を媒介する生物又は病気を引き起こす生物の侵入、定着又はまん延によって生ずる危険から加盟国の領域内において動物又は植物の生命又は健康を保護すること。
(b) 飲食物又は飼料に含まれる添加物、汚染物質、毒素又は病気を引き起こす生物によって生ずる危険から加盟国の領域内において人又は動物の生命又は健康を保護すること。
(c) 動物若しくは植物若しくはこれらを原料とする産品によって媒介される病気によって生ずる危険又は有害動植物の侵入、定着若しくはまん延によって生ずる危険から加盟国の領域内において人の生命又は健康を保護すること。
(d) 有害動植物の侵入、定着又はまん延による他の損害を加盟国の領域内において防止し又は制限すること。
   衛生植物検疫措置には、関連するすべての法令、要件及び手続を含む。特に、次のものを含む。
   最終産品の規格
   生産工程及び生産方法
   試験、検査、認証及び承認の手続
   検疫(動物若しくは植物の輸送に関する要件又はこれらの輸送の際の生存に必要な物に関する要件を含む。)
   関連する統計方法、試料採取の手続及び危険性の評価の方法に関する規則
   包装に関する要件及びラベル等による表示に関する要件であって食品の安全に直接関係するもの
2「措置の調和」とは、二以上の加盟国による共通の衛生植物検疫措置の制定、認定及び適用をいう。
3 「国際的な基準、指針及び勧告」とは、次のものをいう。
(a) 食品の安全については、食品規格委員会が制定した基準、指針及び勧告であって、食品添加物、動物用医薬品及び農薬の残留物、汚染物質、分析及び試料採取の方法並びに衛生的な取扱いに係る基準及び指針に関するもの
(b) 動物の健康及び人畜共通伝染病については、国際獣疫事務局の主催の下で作成された基準、指針及び勧告
(c) 植物の健康については、国際植物防疫条約事務局の主催の下で同条約の枠内で活動する地域機関と協力して作成された国際的な基準、指針及び勧告
(d) (a)から(c)までの機関等が対象としていない事項については、すべての加盟国の加盟のため開放されている他の関連国際機関が定めて委員会が確認した適当な基準、指針及び勧告
4 「危険性の評価」とは、適用し得る衛生植物検疫措置の下での輸入加盟国の領域内における有害動植物若しくは病気の侵入、定着若しくはまん延の可能性並びにこれらに伴う潜在的な生物学上の及び経済的な影響についての評価又は飲食物若しくは飼料に含まれる添加物、汚染物質、毒素若しくは病気を引き起こす生物の存在によって生ずる人若しくは動物の健康に対する悪影響の可能性についての評価をいう。
5 「衛生植物検疫上の適切な保護の水準」とは、加盟国の領域内における人、動物又は植物の生命又は健康を保護するために衛生植物検疫措置を制定する当該加盟国が適切と認める保護の水準をいう。
注釈多くの加盟国は、この意義を有する用語として「受け入れられる危険性の水準」も用いている。
6 「有害動植物又は病気の無発生地域」とは、一の地域(一の国の領域の全部であるか一部であるか又は二以上の国の領域の全部であるか一部であるかを問わない。)であって、特定の有害動植物又は病気が発生していないことを権限のある当局が確認しているものをいう。
注釈有害動植物又は病気の無発生地域は、特定の有害動植物又は病気が発生することが知られているが当該特定の有害動植物又は病気を封じ込め又は撲滅する地域的防除措置(保護及び監視の実施並びに緩衝地帯の設定等)が適用されている地域(一の国の領域の範囲内であるか二以上の国の領域の一部又は全部を含む地域であるかを問わない。)を取り囲むか、これらの地域によって取り囲まれるか又はこれらの地域に隣接することがある。
7 「有害動植物又は病気の低発生地域」とは、一の地域(一の国の領域の全部であるか一部であるか又は二以上の国の領域の全部であるか一部であるかを問わない。)であって、特定の有害動植物又は病気が低い水準で発生し、かつ、効果的な監視、防除又は撲滅の措置が適用されていることを権限のある当局が確認しているものをいう。
      附属書B  衛生植物検疫上の規制の透明性の確保
規制の公表
1  加盟国は、制定されたすべての衛生植物検疫上の規制(注)を、利害関係を有する加盟国が知ることのできるように速やかに公表することを確保する。
注衛生植物検疫措置のうち一般的に適用される法令等をいう。
2  加盟国は、緊急事態の場合を除くほか、輸出加盟国、特に開発途上加盟国の生産者がその産品及び生産方法を輸入加盟国の要求に適合させるための期間を与えるため、衛生植物検疫上の規制の公表と実施との間に適当な期間を置く。
照会所
3  各加盟国は、利害関係を有する加盟国からのすべての妥当な照会に応じ及び次の事項に関する関連文書を提供する責任を有する一の照会所を設けることを確保する。
(a) 自国の領域内において制定され又は提案された衛生植物検疫上の規制
(b) 自国の領域内において運用されている管理及び検査の手続、生産及び検疫に係る処置並びに農薬の許容限度の設定及び食品添加物の承認の手続
(c) 危険性の評価の手続及び衛生植物検疫上の適切な保護の水準の決定並びにこれらについて考慮に入れる要因(d)衛生植物検疫措置に係る国際機関及び国際的な制度並びに地域機関及び地域的な制度並びにこの協定の範囲内の二国間及び多数国間の協定及び取極への自国又は自国の領域内の関連機関の加盟及び参加の状況並びに当該協定及び取極の条文
加盟国は、利害関係を有する加盟国が文書の写しを要求した場合には、送付に係る費用を除くほか、当該写しが自国民(注)に要求される価格と同一の価格で提供されることを確保する。
注この協定において「自国民」とは、世界貿易機関の加盟国である独立の関税地域については、当該関税地域に住所を有しているか又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有する自然人又は法人をいう。
通報手続
5  加盟国は、提案された衛生植物検疫上の規制について、国際的な基準、指針若しくは勧告が存在しない場合又は当該提案された衛生植物検疫上の規制の内容が国際的な基準、指針若しくは勧告の内容と実質的に同一でない場合において、当該提案された衛生植物検疫上の規制が他の加盟国の貿易に著しい影響を及ぼすおそれがあるときは、
(a) 特定の規制を導入しようとしている旨を、利害関係を有する加盟国が知ることのできるように早い段階で公告する。
(b) 提案された規制が対象とする産品を、当該提案された規制の目的及び必要性に関する簡潔な記述と共に事務局を通じて他の加盟国に通報する。その通報は、当該提案された規制に対する修正を行うこと及び意見を考慮することが可能な早い段階で行う。
(c) 要請に応じ、提案された規制の写しを他の加盟国に提供し、及び可能なときは、国際的な基準、指針又は勧告と実質的に相違する部分を明示する。
(d) 書面による意見の提出のための適当な期間を他の加盟国に差別することなしに与えるものとし、要請に応じその意見について討議し、並びにその意見及び討議の結果を考慮する。
6  加盟国は、健康の保護に係る緊急の問題が生じている場合又は生ずるおそれがある場合には、5の(a)から(d)までの通報手続のうち必要と認めるものを省略することができる。ただし、次のことを行うことを条件とする。
(a) 特定の規制及びその対象とする産品を、当該規制の目的及び必要性に関する簡潔な記述(緊急の問題の性格についての記述を含む。)と共に事務局を通じて他の加盟国に直ちに通報すること。
(b) 要請に応じ規制の写しを他の加盟国に提供すること。
(c) 他の加盟国に書面による意見の提出を認めるものとし、要請に応じその意見について討議し、並びにその意見及び討議の結果を考慮すること。
7  事務局への通報は、英語、フランス語又はスペイン語によって行う。
8  先進加盟国は、他の加盟国から要請があった場合には、特定の通報が対象とする文書の写し又は、当該文書が長大なものであるときは、当該文書の要約を英語、フランス語又はスペイン語によって提供する。
9  事務局は、通報の写しをすべての加盟国及び関係を有する国際機関に速やかに送付するものとし、開発途上加盟国が特に関心を有する産品に関する通報については、開発途上加盟国の注意を喚起する。
10  加盟国は、5から8までの規定に従い通報手続に関するこの協定の規定を国家的規模において実施する責任を負う単一の中央政府当局を指定する。
一般的な留意事項
11  この協定のいかなる規定も、加盟国に対して次のことを要求するものと解してはならない。
(a) 自国の言語以外の言語による原案の詳細若しくは写しの提供又は文書の公表。ただし、8の規定が適用される場合を除く。
(b) 衛生植物検疫措置に係る法令の実施を妨げることとなるような又は特定の企業の正当な商業上の利益を害することとなるような秘密の情報の開示

      附属書C  管理、検査及び承認の手続(注)
    管理、検査及び承認の手続には、特に、試料採取、試験及び認証の手続を含む。
1  加盟国は、衛生植物検疫措置の実施を確認し及び確保するための手続について、次の(a)から(i)までに規定することを確保する。
(a) 手続が、不当に遅延することなく、かつ、輸入産品が同種の国内産品よりも不利でない方法で、行われ、完了すること。
(b) 次のことを行うこと。
各手続の処理に要する標準的な期間が公表され、又は要請に応じ処理に要する予想される期間が申請者に通知されること。
権限のある機関が、申請を受理した場合には、書類が不備でないことについての審査を速やかに行い、及びすべての不備について正確かつ十分な方法で申請者に通知すること。
権限のある機関が、必要に応じて是正手段がとられるように、手続の結果を正確かつ十分な方法で申請者にできる限り速やかに伝達すること。
申請に不備がある場合であっても、申請者が要請するときは、権限のある機関が実行可能な限り手続を進めること。
申請者が、その要請により、手続の段階を通知され、及び遅延があればその説明を受けること。
(c) 要求される情報が、適切な管理、検査及び承認の手続(添加物の使用の承認又は飲食物若しくは飼料に含まれる汚染物質の許容限度の設定に関するものを含む。)に必要なものに限られること。
(d)  管理、検査及び承認から得られ又はこれらに関連して提供される輸入産品に関する情報の秘密が、国内原産の産品よりも不利でない方法で、かつ、正当な商業上の利益が保護されるような方法で尊重されること。
(e)  産品の個々の試料の管理、検査及び承認のための要件が妥当かつ必要なものに限られること。
(f)  輸入産品の手続に課されるいかなる手数料も、同種の国内原産の産品又は他のいずれかの加盟国を原産地とする産品に課される手数料との関係において公平なものとし、また、役務の実際の費用よりも高額のものとすべきでないこと。
(g)  手続に用いる施設の場所の選択及び試料の抽出については、申請者、輸入業者若しくは輸出業者又はこれらの代理人に対する不便を最小限にするように輸入産品に係るものと国内原産の産品に係るものとの間において同一の規準が用いられるべきであること。
(h)  適用される規制に照らして産品の管理及び検査が行われた後に当該産品の仕様が変更された場合には、仕様が変更された産品に対する手続が、当該産品が関連する規制に引き続き適合しているという十分な確信が得られるか得られないかを決定するために必要なものに限られること。
(i)  手続の運用に関し申し立てられた不服を審査し及び申し立てられた不服が正当とされた場合に是正手段をとるための手続が用意されていること。
輸入加盟国は、食品添加物の使用の承認のための又は飲食物若しくは飼料に含まれる汚染物質の許容限度の設定のための制度であって、承認がなければ産品の自国内における市場への進出を禁止し又は制限するものを運用している場合には、最終的な決定が行われるまでの間、市場への進出を認める根拠として関連する国際的な基準を使用することを考慮する。
2  衛生植物検疫措置が生産の段階における規制について定めている場合には、自国の領域内において生産が行われている加盟国は、当該規制及び規制を行う当局の事務を容易にするために必要な支援を行う。
3  この協定のいかなる規定も、加盟国が自国の領域内において妥当な検査を行うことを妨げるものではない。