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PDF版:コドリンガの解説(PDF : 617KB)

コドリンガの解説

コドリンガは、ハマキガ科に属する小型の蛾の一種で、北米地域では200年以上も前から、バラ科果樹のりんごや西洋なしの主要な害虫とされている。本虫は、欧州原産であるが、現在は朝鮮半島、東南アジア等を除き、広く世界に分布している。幼虫がバラ科果実やくるみ果実及び核子に食入し、加害する。
我が国は、本虫の発生国・地域からの寄主植物の輸入を禁止している(植物防疫法施行規則別表2の項目5参照)。
     

1. 学名

Cydia pomonella

2. 英名

Codling moth

3. 発生国・地域

イタリア、英国、フランス、エジプト、チュニジア、南アフリカ、インド、中国、パキスタン、アフガニスタン、イスラエル、イラク、イラン、トルコ、米国(ハワイ諸島を除く)、カナダ、アルゼンチン、コロンビア、チリ、ブラジル、豪州、ニュージーランド等
詳しくは発生国・地域一覧を参照。

4. 寄主植物

りんご、なし、あんず、さくらんぼ、すもも、もも、まるめろ及びくるみ

5. 形態

成虫は、体長が約7~9mm、開張は14~22mm。前翅の地色は灰褐色~茶褐色で、後翅の地色は灰色。翅表の斑紋は個体変異が大きい。蛹は、8~10mm、紡錘形で褐色。幼虫は、終齢幼虫では、体長が約20mm、頭部、硬皮板及び肛門板は褐色で、他の部分は赤又は黄色がかった白色。
幼虫、成虫とも形態は、ナシヒメシンクイやリンゴコシンクイに類似するが、これらより大型である。

      図2   成虫   出典 EPPO 図3   成虫   出典 EPPO 図4   成虫   出典 EPPO 図5   幼虫(りんご)
        出典 EPPO
     その他の写真はこちらを参照。

6. 生態

地域によって年間世代数は異なり、米国では、太平洋北西部で年2回、カリフォルニア地域で年最大4回である。
越冬は、樹皮下や地上の落葉下等に作った繭の中で、老熟幼虫で行う。春に蛹になり、2~3週間後に羽化する。産卵は、受粉直後の未熟果やその近くの葉面に行われる。卵期間は5~10日間。幼虫の加害様式は世代によって異なり、りんご果実では第1世代の幼虫は、果頂部の萼窪(がくあ)や葉と果実のふれ合う部分から果実内部に食入するが、第2世代以降は果実が肥大して加害しやすくなるので果実の横腹から食入するものが多い。種子を含む果芯部を好んで加害し、生育とともに侵入孔から褐色の虫糞を外に押し出す。幼虫期間は3~4週間である。

7. 移動分散方法

成虫が飛翔により移動する。定着性が強いと考えられているが、飛翔距離は数百m~最大11kmまで報告されている。また、本虫が寄生した果実の人為的な移動により分散する。

8. 被害の特徴

幼虫が果実内部を加害し、商品価値を失う。また、幼虫が果実内へ深く侵入した場合は、内部で細菌やカビが発生して果実が腐敗するため、貯蔵果実で問題となる。

   
   図6(りんごでの加害)出典 EPPO 図7(りんごを加害する幼虫)出典 EPPO

9. 識別のポイント

本虫と形態的によく似たハマキガ科の蛾として、在来種のイッシキヒメハマキ、ヤナギサザナミヒメハマキ及びトビモンシロヒメハマキがある。翅の斑紋の違いによりおおよその区別が可能である。より詳しい識別手法は、侵入調査マニュアルを参照。

図8   コドリンガ
学名   Cydia pomonella
開張   14~22mm
前翅の地色は灰褐色~茶褐色で、さざ波状の斑紋がある他、前縁に黒色と白色からなる鋸目状紋がある。外縁に濃褐色部があり、後翅の地色は灰色。
図9   イッシキヒメハマキ
学名   Aterpia issikii
開張   10~14mm
前翅の地色は濃紺色で、基部に白色鱗粉を散在し、灰色となる。


図10   ヤナギサザナミヒメハマキ
学名   Saliciphaga acharis
開張   17~20mm
前翅の地色はは淡い灰褐色で、基部に多数の暗褐色と乳白色の横線を持ち、後縁に褐色紋を持つ。

図11   トビモンシロヒメハマキ
学名   Eucosma metzneriana
開張   16~25mm
前翅の地色は白色で、暗褐色の楔状斑を持つ個体もいる。


10. 発見した場合の対応

可能であれば本虫の写真を撮影(又は捕殺)の上で、植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。なお、幼虫や卵が寄生している又は寄生の疑いのある果実がある場合は、分散防止のために果実をビニール袋等に入れて密封した上で、上記連絡先までお知らせください。

11. 防除

日本では発生していないため、登録農薬はない。海外の発生国では、薬剤散布が主な防除法となっているが、幼虫はふ化直後を除き果実に穿孔することから、薬剤散布の効果が低い。効率的に防除を行うためには、成虫発生期、卵やふ化直後の幼虫をターゲットに散布する必要がある。 なお、発生国では、カーバメート系 (1A)* 、有機リン系(1B)、ピレスロイド系(3B)、ネオニコチノイド 系(4A)、スピノシン系(5)、アベルメクチン系(6)、フェノキシカルブ系(7B)、ベンゾイル尿素系(15)等の薬剤が用いられ、薬剤抵抗性を発現させないよう作用機構が異なる薬剤をローテーションで使用することが推奨されている。*( )はIRACコードを示す。

12. 経済的影響

無防除のりんご園地においては、最大80%の果実に本虫が寄生し、全世界で年間620億米ドルの経済的被害を引き起こすと試算されている。 ポーランドでは、本虫によるりんご果実の寄生率及び被害数量は、2012年に3.7%及び106,500トンであった。

13. 海外のニュース-中国での発生状況-

中国では、1950年代に新疆ウイグル自治区での初発見後、当面の間は同区内のみでの発生であったが、1989年以降、発生地域が拡大し、2023年6月時点において、北部(新疆ウイグル自治区、甘粛省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区、黒竜江省、吉林省、遼寧省、天津市及び河北省)での発生が確認されている(Zhu et al., 2017;中国農業農村部Home page)。

参考・引用文献

コドリンガの発生国・地域一覧表

コドリンガの写真

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発行人         森田   富幸
編集責任者   三角   隆