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PDF版:モモシンクイガの解説(PDF : 441KB)

モモシンクイガの解説


本虫は、りんご、なし、モモ等のバラ科植物等の果実を食害し、大きな被害を与える蛾の一種であり、我が国を含め、韓国、中国及びロシアに生息している。
また、未発生国・地域の多くが本虫の侵入を警戒している。例えば、本虫への対策が条件に含まれる台湾向け生果実の輸出においては、台湾側の輸入検査で本虫が発見された場合、輸出年度ごとに、発見1回目は当該果実が生産された都道府県からの全ての生果実、発見2回目で全都道府県からの全ての生果実の輸出が停止となる(詳しくは台湾向け生果実検疫実施要領を参照)。
     

1. 学名

Carposina sasakii

2. 英名

Peach fruit borer (Peach fruit moth)

3. 発生国・地域

日本、韓国、中国及びロシア

4. 寄主植物

りんご、なし、モモ、スモモ、アンズ、ウメ、マルメロ、ヒメリンゴ、ハマナス、サンザシ等
詳しくは寄主植物一覧を参照。

5. 形態

成虫の体長は、開張時に12~20mm。前翅の地色は灰白色で基部は暗灰褐色で、前縁には半円状紋を持ち、鱗片の隆起した部分が散在する。後翅は灰色。蛹は体長6~8mm。黄白色で羽化直前に灰褐色になる。幼虫は、1齢幼虫ではやや赤みを帯びるが、2~3齢幼虫は乳白色で、4齢幼虫になると、赤みを増し、果実脱出時にはかなり赤くなる。1齢幼虫は1mm程度、2齢幼虫は4mm程度、3齢幼虫は5~7mm、4齢幼虫は12~13mm。卵は球状で直径0.4mm程度。産卵直後は黄白色であるが、成熟すると橙赤色~赤色になる。

      図1   成虫(左:雄、右:雌) 図2   幼虫 図3   卵
     その他の写真はこちらを参照。

6. 生態

幼虫は孵化後20日程度で老熟し果実から脱出する。休眠しない幼虫は紡錘形の夏繭を土中で作り蛹化し10~15日で羽化する。秋期の休眠幼虫は球形の冬繭を土中で作り、幼虫態で越冬し、翌春に夏繭を作り蛹化する。繭はいずれも地表下に多い。成虫は日没2~3時間後から夜半にかけて活動する。走光性は弱い。北海道・東北地方は年1~2回、本州の南西部で年3回発生する。

7. 移動・分散方法

成虫が飛翔により移動する。飛翔距離は通常短いが、室内試験においては24時間で8~24km飛翔した記録がある。また、本虫が寄生した果実の人為的な移動により分散する。

8. 被害の特徴

卵はりんご及びなしでは果実底部の凹み、モモでは果面全体に産卵され、スモモでは縫合線部に多く産みつけられる。6~10日間(20~25℃の条件下)で孵化した幼虫は果面を少し移動してから果実中に食入し、果心部及び果肉部を食害する。果実の表面から排泄物を排出することがあるが、収穫果では脱落していることが多い。

 
   図4   りんごでの加害
(青円は食入痕を示す)
図5   りんごへの加害
(青円は脱出口を示す)
図6   りんごへの加害
(青円は果実内部の加害部を示す。)
     その他の写真はこちらを参照。

9. 識別のポイント

本虫のフェロモントラップには、類似の在来種として、ニッポンシロシンクイ、コウスグロシンクイ等も誘殺される。外観での識別手法は、輸出相手国が侵入を警戒する主要検疫対象病害虫発生調査マニュアル(P5~6)を参照。
輸出検査において発見される主なチョウ目の幼虫は、ナシヒメシンクイ、モモノゴマダラメイガ等が挙げられる。本虫は腹部第3節から6節の腹脚背方にあるSV刺毛が各節4本であること(メイガ上科は3本)、および腹部第8節と9節後方のD1刺毛が微小であることにより、識別が可能である。詳しい識別手法はモモシンクイガの幼虫と卵の見分け方、本誌第80号及び第88号を参照。

10. 防除

りんご及びなし園地では、成虫が5月下旬~9月上旬頃に連続的に発生し、産卵が続くため、定期的な薬剤散布が有効である。無袋栽培では、有袋栽培に比べ、果実に本虫が侵入しやすいので特に注意が必要である。

11. 経済的影響

中国では、りんご栽培における経済的損失として、少なくとも年間17億ドルと試算されている。韓国では、りんご園地で本虫に対する農薬を使用しなかった又は減らした場合、26~63%の果実が被害を受けた一方、農薬を使用した場合は、1%未満の果実の被害に収まったとする報告がある。

12. 海外のニュース-本虫の発生状況-

ロシアでは、本虫の発生が極東ロシア地域に限定されているとみなし、その他の地域では検疫病害虫として指定している。ロシアの研究者等が2015年~2019年にかけて、南シベリア地域の17地点で蛾類の生物相調査を実施したところ、クラスノヤルスク市内の市場に設置したフェロモントラップから本虫が極東ロシア地域以外では初めて発見された(Akulov et al., 2019)。

参考・引用文献

モモシンクイガの寄主植物一覧

モモシンクイガの写真

モモシンクイガの被害写真

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発行人         森田   富幸
編集責任者   三角   隆