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セグロウリミバエの解説
本虫は、主にうり科、なす科植物の果実に甚大な被害を与える重要な害虫であり、東アジア、東南アジア等に生息している。 我が国は、本虫を検疫有害動植物に指定しており(植物防疫法施行規則別表1参照)、輸入検査において本虫が発見された場合、輸入された荷口は廃棄又は返送となる。 2024年3月に沖縄県名護市で本虫が発見されたことを受け、薬剤散布、寄主果実の除去等の防除対策を講じてきたところである。しかし、その後も沖縄県本島北部・中部地域で発見が続いたことから、2025年4月から、沖縄県本島の26市町村を防除区域に指定して緊急防除を実施しており、まん延防止対策を講じている(詳しくはこちらを参照)。 |
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1. 学名
Bactrocera tau
2. 英名
Tau fruit fly、Pumpkin fruit fly
3. 発生国・地域
インド、インドネシア、カンボジア、シンガポール、スリランカ、タイ、台湾、中国、香港、日本*、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ブータン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー及びラオス
※日本では、沖縄本島において緊急防除実施中。
4. 寄主植物
にがうり、かぼちゃ、へちま、すいか、とうがん、きゅうり、メロン、らかんか、いんげんまめ、トマト、ピーマン、とうがらし、パッションフルーツ(くだものとけい)、パパイヤ、すもも、グァバ(ばんじろう)、ヒロセレウス・ウンダーツス(ドラゴンフルーツ)等
詳しくは寄主植物一覧を参照。
5. 形態
成虫の体長は6.7~9.0mm。一般的に雌の方が雄よりも大きい。胸背には黒色の領域及び中央部の前方と後方に赤褐色の領域があり、黄色の中央縦帯と2本の側縦帯がある。小楯板は黄色で末端に明瞭な黒色紋を有しない。前翅は透明で、前縁脈沿いと臀脈沿いに暗褐色帯がある。dm-cu脈は暗褐色帯で覆われない。蛹は長楕円形で長さ5.2~5.8mm、幅2.0~2.7mmで黄色~茶色。幼虫の体長は1齢幼虫では1.3~1.6mmで半透明、2齢幼虫では2.0~2.8mmでクリーム色、3齢幼虫では3.9~11.4mmで黄色がかった白色。卵は長さ0.8mm~1.4mm、幅0.2~0.3mmで白色。
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図1 (雄)成虫 | 図2 蛹 | 図3 幼虫 | 図4 卵 |
その他の写真はこちらを参照。
6. 生態
成虫の総産卵数は約460個で、1日平均約16個を産卵する。1~5日の産卵間隔があり、産卵期間は約50日。成虫の寿命は雌が130~150日、雄が125~145日。約25℃の飼育条件下では、卵は産卵後1日前後でふ化し、幼虫期間は5.3~13.13日で、土中で蛹化し、8.2~10.13日後に成虫となって出現する。28℃の飼育条件下では、成虫は羽化後約9日で交尾し始める。
7. 移動・分散方法
成虫が飛翔により移動する。本虫の移動距離に関する情報はないが、本虫と同属のウリミバエでは、放飼された不妊虫が海上を移動し、その距離が最大200 kmにも達したことが確認されている。また、本虫が寄生した寄主植物の人為的な移動により分散する。
8. 被害の特徴
成虫は寄主植物の果皮下に産卵し、幼虫が果肉を加害する。産卵後、産卵痕の周囲に壊死が生じることがある。加害された果実は腐敗する。
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図5 幼虫による果実(へちま)への食害 | 図6 幼虫による果実(へちま)への食害 | 図7 幼虫による果実(へちま)への食害 |
その他の写真はこちらを参照。
9. 識別のポイント
本虫と形態的によく似た害虫として、ミスジミバエがある。特徴的な違いは、翅の模様であり、ミスジミバエではdm-cu脈が暗褐色帯で覆われている一方、本虫では覆われていない。より詳しい識別手法は、侵入調査マニュアルを参照。
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dm-cu脈が暗褐色帯で 覆われている(青枠) |
dm-cu脈が暗褐色帯で 覆われていない(青枠) |
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図8 ミスジミバエ | 図9 セグロウリミバエ |
10. 発見した場合の対応
可能であれば本虫の写真を撮影(又は捕殺)の上で、最寄りの植物防疫所又は都道府県の病害虫防除所にお知らせください。幼虫や卵が寄生している又は寄生の疑いのある果実がある場合は、分散防止のために果実をビニール袋等に入れて密封した上で、上記連絡先までお知らせください。
11. 防除
本虫の発生が確認された地域及びその周辺においては、寄主植物の除去や藪地の葉や幹にベイト剤(殺虫剤+たん白加水分解物)を散布する。また、テックス板(誘引剤と殺虫剤を含浸させた板)を設置し、本虫の発生密度を抑制させる。
物理的防除として、果実への産卵防止のため、果実が未熟なうちに袋掛けを行う。被害果実及び残さは、土中に深く埋める又はビニール袋等に密封することで本虫を死滅させた上で、適切に処分する。施設栽培においては、開口部に目合い1.6mm以下のネットを隙間なく張り、本虫の侵入を防ぐ。
なお、2025年6月16日現在、本虫に対する登録農薬はないが、植物防疫法第29条第1項の規定による防除として、沖縄県では一部の農薬の使用が可能である(使用可能な農薬一覧はこちらを参照)。また、不妊虫の放飼に向けて取り組んでいる。
12. 経済的影響
中国では、本虫により、かぼちゃでは約24~32%、らかんかでは21~34%の被害が引き起こされた。
インドでは、ミゾラム州の8地域で実施されたトマトへのミバエ類の寄生率調査(無防除の施設トマト栽培から果実をサンプリング)において、寄生率は14.7~80.7%であり、寄生が確認されたミバエ類4種(本虫、セグロモモミバエ、ミカンコミバエ及びナスミバエ)のうち、種構成では本虫が71.4~96.4%と最優占であった。
13. 海外のニュース
米国では、ロサンゼルスにおいて2023年6月7日~7月6日にかけて、3地点で計9頭の本虫の発生が確認された。これを受け、米国農務省はカリフォルニア州と共同で同年7月11日から緊急防除を開始し、防除区域からの寄主植物の移動を制限するとともに、発生地域周辺の寄主果実の除去、ベイト剤の散布、誘引剤を用いた雄除去法(1平方マイル当たり1,000個のトラップを設置)等を実施した。
その後、同年7月12日~16日に13頭、8月に20頭、9月に36頭、11月に2頭発見され、その都度、防除区域を拡大した(最大128平方マイル)。2023年12月8日の最終発見日(頭数不明)から3世代相当期間発見がなかったことを踏まえ、2024年6月28日に緊急防除を終了した。
参考・引用文献
- 侵入調査マニュアル(1 トラップ調査)
- 重要病害虫発生時対応基本指針(平成24年5月17日付け24消安第650号消費・安全局長通知)
- セグロウリミバエに関する情報
- 沖縄県Homepage セグロウリミバエのまん延防止対策
- 米国農務省Homepage Exotic Fruit Flies (accessed on 16 June 2025)
- 北米植物防疫機関(NAPPO)Homepage Official Pest Reports (accessed on 16 June 2025)
- Boopathi et al., (2017) First report of economic injury to tomato due to Zeugodacus tau (Diptera: Tephritidae): relative abundance and effects of cultivar and season on injury, Florida Entomologist Volume 100(1) 63-69
- CABI (2025) Bactrocera tau, Crop Protection Compendium (accessed on 16 June 2025)
- Deng, Y. P. (1992) Biological characteristics and control of Bactrocera tau in orchards of Momordica grosvenori Swingle. Plant Prot 18(2):24-25
- Jaleel et al., (2018) Biology, taxonomy, and IPM strategies of Bactrocera tau Walker and complex species (Diptera; Tephritidae) in Asia: a comprehensive review, Environmental Science and Pollution Research Jul;25(20):19346-19361
- Meksongsee et al., (1988) Fruit Flies in Thailand. In: Vijaysegaran, S. & A. G. Ibrahim (2016) Fruit Flies in the Tropics Proceedings of the First International Symposium. 430 pp.
- Liu and Ji (2024) Review of Zeugodacus tau (Walker) (Diptera: Tephritidae): biological characteristics and control strategy, CABI Agriculture and Bioscience 5:90
- Liu et al., (2005) Studies on damage and quantity dynamics of Bactrocera tau (Walker) in different host fields. J Southwest Agric Univ (Nat Sci) 27:176-179
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