2. 近年の農業情勢の変化
「1.これまでの基盤整備」で紹介したように、中国管内でこれまでに整備されてきた農地や農業用水施設などは、この地方はもちろん国民共有の資産として、その役割を果たしてきました。
しかし、近年、わが国の農業、農村は、農地の減少や農家の減少、高齢化や担い手不足、また農村地域の過疎化といった、めまぐるしい情勢の変化が見られ、残念ながら、中国地方でも同様の傾向がみられます。また、整備された農業施設なども、長年にわたる利用によって老朽化等が進み、農業生産の低下や食料の安定供給が困難な状況がみられます。このような近年の農業情勢の変化を示す諸指標と課題を以下に列挙しました。
農地の減少
中国管内の耕地面積は、昭和60年の32万ヘクタールから令和2年には23万ヘクタールと、年々減少傾向にあります。大きな要因として、都市化・市街化(住宅地や商業用店舗、工場などへの農地転用)の進展や耕作放棄地(農業従事者の高齢化や後継者不足などにより耕作していない土地)などが考えられます。
【グラフ】中国管内における耕地面積の推移
資料:耕地面積-農林水産省「耕地及び作付面積統計」、耕作放棄地-「農(林)業センサス」
農業従事者の高齢化、減少
中国管内の基幹的農業従事者数は、平成2年の22万人から令和2年には10万人と、30年間で半減しています。また令和2年度では、60歳以上の割合が全体の90%を占めており、農家の高齢化を示しています。
農業従事者の減少や高齢化は、農村地域での過疎化や産業構造の変化による若年層の都市流出などが主な要因と考えられますが、これらの状況に伴う営農意欲の減退なども一因と考えられます。
【グラフ】中国管内の基幹的農業従事者数の推移
資料:農(林)業センサス
基幹的農業従事者数:農業に主として従事した世帯員のうち、ふだん仕事として自営農業に従事した世帯員
農村環境の変化
【写真】家庭雑排水が流れ込む用水路
これまで、農村地域では、用水路の草刈りや清掃をはじめとする地域の共同保全活動などにより、農地や農業用施設が適切に維持・管理され、良好な環境が保たれてきました。しかし、近年は農村の都市化・混住化などによる水路へのゴミや生活排水の流入や、農業従事者の減少などによる維持管理の粗放化など、農業生産や農村環境に悪影響を与えるような状況も顕著となっています。
施設の老朽化
【写真】老朽化した水路
これまでに整備された農業水利施設(ダム、 頭首工(とうしゅこう)、用水路など)の中には、長期にわたる利用や周辺状況の変化、耐用年数(施設の寿命)の経過などにより、老朽化などが進み、機能障害を発生しているものや、用水の安定通水に支障をきたしているものがみられます。
食料自給率の低下
農地面積の減少、農業従事者の減少など、様々な要因による農業情勢の変化や、食生活の変化などによる輸入食料への依存もあり、わが国における食料自給率は年々低下している状況です。
また、主要先進国のなかで最低の水準となっています。
【グラフ】日本の食料自給率の推移
【グラフ】主要先進国の食料自給率の推移(カロリーベース)
※1「食料自給率」:その国で消費される食料がどのくらい国内で生産されているか(自給の度合い)を示す指標
※2カロリーベース:国民1人1日当たりに必要なカロリーのうち、国内のカロリーで補われている割合をあらわすもの
※3生産額ベース:国内で消費された額のうち、国内で生産された額の割合をあらわすもの
関連リンク(詳細なデータを知りたい方はこちらをご利用ください):農林水産省「知ってる?日本の食料事情」
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