「中国四国地域食育交流会in香川」開催概要
和食文化の継承と健全な食生活
中国四国農政局は、地域での国産農産物の消費拡大をはじめとする食育の取組を促進するため、食育交流会を開催しました。
交流会では、「日本型食生活」の実践や「和食」の継承のきっかけとなる講演や、食育活動表彰受賞団体による取組事例について情報を共有したうえで意見交換を行いました。
- 日 時:平成30年11月15日(木曜日) 13時30分~16時30分
- 場 所:香川県県民ホール「レクザムホール」多目的大会議室「玉藻」B面(高松市)
- 参加者:50名(栄養士、食育ボランティア、行政等)
- 主 催:中国四国農政局
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講演
「今日からできる和食の愉しみ ~お米からしつらえまで~」※講師 日本食文化環境研究所 代表 神木千鶴氏
(※「しつらえ」とは、もてなしのための用意を整えること)
<内容>
- お米は、「長期保存ができる」、「いろいろなものに加工できる」、「味がおいしく飽きが来ない」点が優れている。
- 自然と和食になりやすく、日本人の体質に合った食事を摂取しやすいので、「まごわやさしい」を心がけて食べてほしい。
「ま」豆類やみそなどの豆を使った食品 | 「ご」ごま |
「わ」ワカメなどの海そう類 | 「や」野菜類 |
「さ」魚 | 「し」しいたけなどのキノコ類 |
「い」いも類 |
- 1日で摂ろうとがんばり過ぎず、月~水曜日、木~土曜日など3日間程度を目標にし、日曜日は自由に、と考えると家族で実行しやすい。また、みそ汁を活用すれば、たくさんの種類の食材を摂りやすいのでおすすめ。
- 子ども・親子を対象とした料理教室を開催している観点から、特に子どもは、食べ慣れた味や料理をおいしい、食べたいと感じているようだ。苦手な料理は気持ちが向いていないと食べないので、食べたくなるきっかけを逃さないためにも、めげずに食卓に出し続けることが大切。また、子どもたちで食材を決めて買い物をし、料理をして盛り付けるなどして、「選ぶ立場」になれば変わることが多い。
- 和食は、三角食べなどでいろいろな料理の風味を合わせながら食べる口中調味という特徴があり、しっかり噛むとよりおいしくなる。実は思ったほど噛めていないことが多いので、最低でも15回、できれば20回は噛むように心がけてほしい。よく噛む利点として、「20分で満腹中枢を刺激するので食べ過ぎず、ダイエットに効果的」、「消化がいいので栄養素が摂れる」、「唾液がたくさん出て消化を助ける」、「あご近辺の筋肉がよく動いて脳の活性化が期待できる」などがある。
- 人間は、楽しく、分かち合って食べたい欲求を持っている「共食」する動物。「しつらえ」とは「共食」のために、「何を、いつ、どこで、誰と、なぜ、どのようにして」を考えて、場にふさわしい食空間を作ることと考えると、日常生活に取り入れやすい。
- 「日常のしつらえ」は大げさに考える必要はなく、例として「会話が弾む仕掛け(初物を取り入れる、料理に参加してもらう)」、「体調に合わせた食事(気温に合った味つけ、季節にふさわしい料理)」、「盛り付けと彩り(中心を高く、ゆとりを持って、薬味を上手に使う)」など、ちょっとした気遣いや雰囲気作りを心がけ、食卓を少しずつ変えていこうとすればよい。
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事例発表
1 新居浜市食生活改善推進協議会(愛媛県新居浜市) 会長 秦 榮子氏
- 昭和48年、愛媛県下で最も早く結成。現在、37支部、約500人の会員が保健センターを中心に各公民館において活動。「継続は力なり」をモットーに「元気で長生き」を目指している。
- 地区での実習のレシピには、毎月、「会員の皆様へ」という会長からのメッセージを添えており、会員同士の強い絆になっていると思っている。また、献立集を発行している。
- 子どもからお年寄りまでのあらゆる年代に、様々な機会をとらえて活動をすすめており、保育園、小学校、中学校、高校で出前講座を実施している。
- 昭和55年、全国に先駆けて「男性のための料理教室」を開催し、現在も継続。卒業生を中心に「男子厨房に入るべし」を合言葉に、男性だけの支部「男の食彩」が結成された。
- 環境問題や地産地消、食文化の継承にも取り組んでおり、新居浜の郷土料理である「いずみや」、「えび天」などをイベントや出前講座で伝えている。農業まつりでは、地域でとれた人参とミカンジュースを使った「人参ゼリー」をレシピと一緒に配布している。
- 昭和50年から毎年、「健康展」を開催し、各年のテーマに沿った食育や健康寿命の延伸等に関する手作りパネルの展示や健康料理・郷土料理100品の現物展示、BMI測定、野菜の重量当てなどの体験コーナーを設けている。
- 昭和52年から毎年5月10日に、「健康づくり運動のつどい」と称して、運動に関するイベントを実施している。
- 私はこれまでいくつもの大病をし、自分に合った食べ方を工夫して病気を乗り越えてきた。元気になった秘訣は「命である食べ物を大切にしてきたこと」です。皆さんには食べられることの幸せを感じてほしい。
- これからも活動のスローガン「私達の健康は私達の手で」を皆さまにお伝えしていきたい。
新居浜市食生活改善推進協議会による事例発表の様子
2 COME☆RISH〈高知県立大学〉(高知県高知市) 健康栄養学部 福留叶子氏・畠中麻弥氏 ・古木麻優氏
- 平成24年度、中土佐町役場農林課職員から管理栄養士養成課程で食と栄養を学ぶ学生にお米の官能試験の依頼があり、学生が「お米の種類ごとに違いがある」ことに気付くきっかけとなった。
- 平成25年度春、当時の1回生を中心に大野見で田植え体験を行い、これを指導した大野見エコ米の生産者(おおのみエコロジーファーマーズ。以下、「EFさん」。)は「学生との作業はいつもの何倍も楽しい」との感想を持つ一方で、学生は「お米の魅力」と「地域の人の温かさ」を感じた。そして、専門分野を活かして大野見のために何ができるか考えていた当時の1回生を中心とした13名の学生が、大学に設立された、地域で学び地域で育つ学生たちの教育プログラム「立志社中」の選考に応募し、審査が通ったことによりCOME☆RISHが始動した。
・「大野見エコ米」の正式名称は「四万十の清粒 特栽大野見米」。EFさんが環境に配慮した栽培方法で作っているこだわりのお米。
・EFさんは、ヨーグルト、ドライイースト、納豆を原料とした「環境浄化微生物(よろずAI)」を使用し、稲作の用水をきれいにしてから川に戻すことで、四万十川の水質維持につなげている。また、土作り、有機入り肥料、減農薬により土壌を改善し、河川の水や環境を守り、「環境と生物との相互関係」を大切にすることを心がけ、おいしくて安心安全なお米を消費者に提供している。 - COME☆RISHには「米(RICE)への願い(WISH)」という意味が込められている。大野見エコ米を通して日本人の主食であるお米、日本型食事(和食)の良さを伝えたいという思いを持っている。
- 毎年10月に大野見地区で開催される「新米フェスタ」に参加し、「しんまい彩り弁当」を販売。今年は、数種類のお米を食べ、大野見エコ米を当てる「利き米チャレンジ」を実施。高知市近辺の小学校や量販店でも行っている。
- 毎年12月頃、自分たちで考案した定食を提供する定食屋を開催。大野見や中土佐町の食材を使用した定食を作り、大野見地区の方々に提供している。今年は、中土佐町の良さをより多くの人に知ってもらいたいので高知市内でも開催する。
- 自分たちでレシピの考案、試作を行い、お米に合うおかずを中心としたレシピ集をこれまでに3冊発行。現在、高知の魅力を伝えられ、和食、行事食の伝承となる、お米を主としたレシピ集を作成している。
- ホームページやTwitter、Facebook、インスタグラムで広報活動を行っている。
- 平成28年度は、大野見エコ米についてやおいしいお米の炊き方、活動内容を掲載したパンフレットを作成した。
- 平成29年度は、ローソン高知から話をいただき、健康に配慮したお弁当を企画し、3週間、1万食限定で販売した。
- COME☆RISHの活動により期待できる効果は、お米や食についての知識が増えること、実際に授業で学んだことの実践など、将来管理栄養士として働く際に重要になってくる能力の向上が挙げられる。地域への効果は、高齢化や過疎化が進む中、学生が入ることにより新しい発想が生まれること、知名度アップによる地域活性化、地域のコミュニケーションの活発化などが挙げられる。
また、毎年反省点を整理することで、次の活動に活かしている。 - 農林水産大臣賞という大変名誉な賞をいただくことができ、EFさんをはじめ関わってくださった方々へ感謝の気持ちでいっぱい。これからも地域の方々とのつながりを大切にし、より良い活動をしていきたい。
COME☆RISHによる事例発表の様子
意見交換
講演や事例発表に対する質疑応答及び意見交換を行いました。
1 「しつらえ」にこだわる理由は何か。
(神木講師)
作って食べるだけでなく、楽しく食べる、情報共有しながら食べるという「食卓コミュニケーション」が心の栄養にもなる。お互いがコミュニケーションを取るためには、マナーも大切、会話が弾む仕掛けも大切ということで、大げさでなくてもその場にふさわしい食文化を作ることが「しつらえ」。そのことで、親子関係が良くなる、友達と仲良くなる、夫婦間の仲も良くなるかもしれないので、試していただきたい。
2 農業体験の感想はどうか。
(COME☆RISH)
- 普段食べているものを一から自分で作ると食べたときのおいしさも倍増するので、農業体験は食育にとって大切なひとつの方法だと感じた。
- 地域でのイベントやEFさんとの関わりにより、お米のありがたみやあたたかさ、地域の雰囲気を感じることができ、お米の良さを感じることができている。
- 将来働いたときに生産の現場を見る機会は少なくなると思うので、今の時点で生産者の方やその想いを知っていくことで生産者のことも考えて仕事ができる。一連の流れに自分たちが関わったことにより、食の大切さに気付けたり、自分たちが参加して作ったお米はおいしいという気付きをもっと周りの人に伝えたい。
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参加者からの主な感想
- 特別なことでなく、日常からのヒントをたくさんいただけた。
- 家庭では食が一番おろそかになってしまう現状だが、皆さんの頑張る姿から元気がもらえてよかった。
- 大学生から農業体験をしたことやお米への想いを聞くことができ、農業体験を開催する意味を改めて感じた。
- COME☆RISHのような経験をされて栄養士になった先輩の意見も取り入れられるため、栄養士になった卒業生と交流すると良いと思う。
参加者アンケート
アンケート結果はこちらからご覧ください。
アンケート結果(PDF : 595KB)
お問合せ先
消費・安全部消費生活課
食育班
代表:086-224-4511
ダイヤルイン:086-224-9428
FAX:086-224-4530