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北海道農政事務所

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JAとまこまい広域(参与 佐藤 美奈子氏、参与 大井 弘美 氏)

JAとまこまい広域
(とまこまい広域農業協同組合)
参与 佐藤 美奈子 氏(写真右)
参与 大井 弘美 氏(写真左)

・佐藤氏は、厚真町で水稲を栽培。2020年からJAとまこまい広域の参与として活躍されています(現在1期目)。

・大井氏は、厚真町でてん菜や小麦を栽培。2020年からJAとまこまい広域の参与として活躍されています(現在1期目)。

取材日:2023年2月7日
取材場所:JAとまこまい広域本所

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震災からの復興  -------経営概況を教えてください。-------

佐藤   酒米を含めてうるち米を8ha作付けしています。品種は「彗星」「ななつぼし」「おぼろづき」で、2018年の北海道胆振東部地震の前はほうれん草も栽培していました。まずは、収入を得るために米を中心に復旧してきましたが、米だけの収入では中々、厳しい部分もあるので、ほうれん草の復旧もしていきたいと思っています。作業は夫と私、跡取りの息子(三男)の3人で行っています。今は夫が主体となり、息子に教えている感じです。

大井   元々は、酪農を行っていましたが、牛の大きい病気を機に畑作に転換しました。経営面積は30haぐらいで、てん菜、小麦、小豆、スイートコーン、大豆を栽培しています。
跡取りの息子もいて、息子からは作付面積を増やしたいという要望もあり、跡取りとして楽しみではあります。しかし、私たちの時代は、てん菜や小豆を栽培していればそれだけで良かったのですが、これからはそういう時代ではないのかなと、今ちょっと悩んでいます。次は何を栽培するか。何が北海道や私たちの地域に適した作物なのか。家族の間で模索しています。
作業は夫と私、息子夫婦の4人で行っています。今は、息子に機械など任せて覚えさせるという格好で、夫は少し手を引いている感じです。

理事会は男社会  -------理事会のイメージは?-------

佐藤   参与になる前は役員のイメージはあまり無かったです。何をするのだろうか、理事会の雰囲気もわからなかったです。

大井   理事会は男社会(男の人の仕事)のイメージでした。夫が理事をしていたので何となくはわかっていましたが、まさかそこに私が入るとは全然思っていませんでした。

佐藤大井   参与になったきっかけは、農協から頼まれたから。参事・理事の方からの声かけです。

大井   家族中でびっくりしたのを覚えています。夫にお願いしにきたのだろうと思っていたんです。そしたらお前じゃないかって。あの時は家族で爆笑でした。息子夫婦も私が参与になることに対しては、家のこととか協力してくれています。母親も同居しているので、やっぱり協力してくれる息子夫婦がいるのといないのでは違うので、ちゃんと理解を得て参与をやらせてもらっています。

佐藤   私の場合は、女性部の部長を6年担っていましたが、その頃から女性役員を登用することに関しての声かけはありました。「女性部から誰か参与を出してくれませんか」という事も言われていましたが、お断りしていた経緯もあり、中々、女性の役員登用が進まないでいました。私たちの前任で参与を一期務めた方が退任する際に、農協から私に声が掛かかり、私が受けないと女性役員登用の話も先に進まないのかなとの想いがあったこと、夫も大手を振って賛成ではなかったですが、良いよと言ってくれましたので、引き受けました。やはり家族の反対があったら出られないです。

大井   前任の参与は女性一人でやられていたので、すごいなと思っていました。よく一人で理事会に出てやってたなと思います。やっぱり女性二人だと安心感があります。理事の方とは理事会でしか会わないので、話をすることがないのです。コロナ禍ということもありますが、座ってお疲れさまでしたって、そのまま帰る状態でした。
なので、この前研修に参加させてもらった時は、理事会以外で話が出来たので、とても良かったです。牛屋(酪農家)さんの事とか、今はこういう状況とか、理事会以外で話すとこんなに話ができるんだと思いました。息子に聞かせたい話もありましたし、こういうやり方もあるのだと気づかされる話もあり、いいもんだなと思いました。コロナ禍でそういう機会もなく、ついこの前まで一言も話したことのない人がたくさんいたので、良かったです。

佐藤   会議で顔を合わすだけという感じでしたので、それではお互いを知る事は出来ないですよね。ただ会議に来て座って議題だけを進めて、相手の人がどういう人かわからない状況が2年ぐらい続き、去年ぐらいから少しずつ会話をする機会が増えましたね。

大井   だから佐藤さんがいてくれてよかったです。「これ、なんだろうね」とか話ができました。慣れてくると隣の理事の方にも聞けるようになりましたが、やっぱりいてくれて良かったと思いました。
前任の参与の方が退任する時に女性が二人になると言われました。これが一人だったらやってなかったかもしれないと思いました。男社会のイメージがある私にとっては、女性一人ではハードルが高いと思いました。


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思っているより大変ではない -------女性登用に対する地域の反応は?-------

大井   参与の認知度は地域ではあまりないと思います。集落周りに行った時も、「そういえばやってくれてるんだね」「頑張ってるね」と言ってくれる人はいますが、地域での認知度はあまりないと思いました。女の人からは「頑張ってくれてありがとう」と言ってもらえますが、私には参与はちょっとみたいな人はたくさんいます。

佐藤   地域の反応というのはちょっとわからないです。私は私なりに色々やってるので、「大変だね~」と声は掛けてもらえますけど、だからといって代わってくれる人はいないです。

女性正組合員の推進  -------参与を務めてみた感想を教えてください。-------

佐藤   参与だからという活動は特にないです。農協役員とほぼ同じで、役員が集まる場には出席しています。他の地域の理事の方に聞いたら「参与は役員ではないよね」と言う方もいましたが、とまこまい広域農協の参与は役員になっています。 総会資料の役員名簿に参与も並びで名前が出ます。
また、総会資料には総代や組合員も名前が載りますが、組合員に奥さんの名前が載っていると、「お前の奥さんの名前が載っている」と言ってくる男の人もごく少数ですがいるみたいで、それを言われるのを嫌がる旦那さんもいるようです。
もっと女性の正組合員が増えれば、それが普通になると思うので、もう少し女性の正組合員の推進をしても良いと、今回任期改選にあたって思いました。

大井   今、総代にも女性を出すという話があるのですが、私は先に総代を参与や理事の前に選出すべきだったと思いました。総会に出席してもらい、少し理解してからの役員だったら良いのではないか?と思いました。役員をやらしてもらった当初は思わなかったのですが、今は順番が逆だったのではないかなと思いました。

佐藤   総代になるには正組合員であることが前提です。複数正組合員という制度があり、ご主人以外の家族、妻でも息子でも良いのですが、その取組ももっとしていかないとならないと思います。正組合員になるには、規約上でのハードルのような厳しい制約はなく、主人が良いと言ってくれれば簡単になることはできます。しかし、奥さんが正組合員になることを旦那さんが反対してる場合もあり、そこでストップされてしまうと総代にもなれないし、参与・理事も無理になってくるので、まずは、いかに女性の正組合員を増やしていくか。それには旦那さんの考え方、男の人の考え方をどうやって変えていったらいいかということです。
例えば、旦那さんが奥さんに対して「正組合員になると総代になる可能性があるし、参与・理事に声が掛かる可能性があるんだよ」と言って、旦那さんが奥さんを正組合員にさせないという話もあるようです。そこが一番ネックかなと思います。そのための取組として、農協において複数正組合員を推進する期間があってもいいのかなと思います。それで変わるかどうかわからないですが、まず正組合員にならないことには総代にもなれないし、参与・理事も無理になってくる。やはり旦那さんの影響が強く、女性にやる気があっても、旦那さんの反対によって出来ないということもあるので、そこを変えるには私たちはどうしたらいいのか。男の人たちの考えをどうやって変えたらいいのか。家庭の問題と言ってしまったら女性登用は先に進まない。ただ、取組が遅いとか役員のなり手がいないことのひとつ大きな原因だと私は思います。
ただ、今の30代40代の男の人たちは、私たちの年代の男の人たちとは考え方が違ってきているとも思いますので、その若い世代が積極的になれるような取組をしていくことが大事だと思います。

大井   若い男の人たちは、割と、嫁は家にいればいいんだという感覚はないと思います。息子達を見てても、私たちの世代の時よりは男女平等という感じがしますので、これからに期待しようと思っています。
私は、女の人に「組合員になって一緒に頑張りましょう」と言った時に、「旦那を説得してから話をしてくれ」と言われたことがあります。婦人部でも「組合員になって総代に!」という話をたくさんしてきましたが、やはり「旦那を説得してくれないと」と言われました。
旦那さんに対しての遠慮なんですかね。婦人部でも役員をして活動している人でも、正組合員にという話になると旦那を説得してくれという話になる。ただ、家庭の事なので、私が旦那さんのOKをもらえば良いという話でもないので難しいです。

大井   今までは子育てから親の介護まで全部奥さんがやるみたいな世代が、今は違ってきている。話を聞いていても、よく面倒を見てくれているし、仕事に対しても昔だったら奥さんのことをパワハラみたいに使う旦那さんもいたけど、息子達の代を見てるとそうではなさそうなので、子育てにしても仕事にしても、今私たちが悩んでいることも少しは緩和されていくのではないかと期待しています。農家も変わってくるのではないかと思います。


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勉強になりました  -------参与のやりがい何ですか?-------

佐藤   もうすぐ3年を迎えますが、何をしてきたのと思ったときに、勉強させてもらえたという思いはあります。

大井   やりがいまでは達していないのですが、参与を受けて良かったなと思うことは、私は元JA職員ですが、今のJAの活動というか仕事が知れて勉強になったという方が強いです。

息子との会話  -------家族の反応はどうですか。-------

佐藤   うちは今水稲しかやっていなくて、草刈りとかも主人と息子でやっているので、私が手を掛けることはあまりないです。ハウスものをやっていたら家から出るのは大変だと思いますが、今は特に問題は無いです。

大井   うちは息子の質問が多いです。肥料の関係とか、商社はこうだけど、農協どうなのと言う会話は増えました。

役員は思うほど大変じゃない  -------女性が活動する上で、メリット・デメリットはありますか。-------

佐藤   たまに会議が長くなる時があり、家に帰ってからのことを考えると時間内に終わって欲しいなと思うことはあります。
流れで会議が長くなることは仕方ないのですけど、女の人は家事をやらなきゃならないので、時間がはっきりしないと女性の人も外に出にくいというのはあると思います。

大井   婦人部に出て、農協のことを少し詳しく話せるようになり、総代で組合員になってほしいという説明をできるようになりました。「婦人部の仕事にしてもそんな辞めるほどのことではなくて、皆で助け合ってやっていけば役員はそんな苦ではないよ。」とかも言えるようになってる自分がいました。農協のことでも「農協ってこうだよね。」と言われても、「いやそうではなくて…」と少しは説明ができるようになりました。
それで、そうなんだって理解してくれる人もいます。「役員さんだってどうしても会議とか行けない時もあるじゃないですか、その時は他の人に頼むとかどうにでもなるでしょ。それが協同の精神だから。」って、そういう話がうまくなったって自画自賛です(笑)。農協の役員になって是非手を挙げてとか、総会に行って総代になって手を挙げて発言してということではなく、まずは出席して、話を聞いて農協がどんなことをやっているかをわかって欲しいとか、そういう話は結構するようになりました。参与から始まって総代の問題とか沢山あるので、そういう話は以前よりは理解して話せるようになったと思います。

佐藤   参与は実際やってみたらそんなに大変ではない。女性部の役員にしても参与にしても大変なことではないという訳ではないですけど、周りの人が思うほど大変ではないと私は思っていて、女性部の部長に比べたら参与は楽だなと思っています。

大井   私もそう思います。

佐藤   女性部長は人を集めて意見をまとめて先に進んで行かなければならないけど、参与は理事会に出て、皆の意見を聞いて、疑問があったら質問すれば良い。出る側なのでみんなが思ってるほど大変ではない。部長に比べたら簡単だよって思います。

大井   役員をやっていない人からしたら、「役員の仕事って何やってるの?」みたいな感じかなと思います。私だったら、参与は質問の権利はあるけど責任とか決定の権利はない一番良い立場だよって、もし農協に言いたいことがあるんだったらチャンスだよって言いますね。意見がある人は総代より、ずっと良いと思います。お勧めです。

佐藤   ただ、今年も理事会等に参加してみて、やっぱり女性部から参与を出すのは難しいと思いました。女性部から出すという方向で動いてもらったのですが、よほどやる気のある方だったり、推薦がない限りは女性部だけで話し合って役員を出すというのは難しいと思います。結局、責任感で誰かがやらなければならないということに走っちゃうと思います。結果的に私はそうなったんですけど(笑)。
そう追い詰めちゃうと女性部に入らなくなるんです。役員に声が掛かるのが嫌といって、女性部に入らなくなるというのが女性部としては困るので、女性部枠っていうのはどうなんだろうというのはあります。

大井   枠にとらわれない方が良いと思います。女性部と決めないで、組合員の中からが良いのでしょうけど、それが中々、うまくいかない。

佐藤   女性部役員も監査あたりから入ってもらって、役員をある程度やっていく中で、「組合もやらないと」「皆も頑張っているから」という意識を持ってもらえる方は、副支部長や支部長も無理と言いながらも引き受けてくれるので、私もやらなきゃと思ってもらえるような環境や雰囲気を作っていけたらと思います。


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役員はチャンス  -------これから役員になられる方に一言お願いします。-------

大井   婦人部でもし意見があって、こういうことを聞いてほしいという意見を言ってくれたらありがたいです。婦人部でもいいし、私は農協に対して、こう思ってるんだけどという意見でも何でも良いからみんなから言って欲しい。考え方は人それぞれ違うので、せっかく役員になっているので、そういう意見を農協に伝えられたらと思います。また、婦人部でもそういう想いがある人がいたら役員とかにもなって欲しいと思います。目指してる人には、そう意味で勧めたいし、もしやるのであれば、思っていることを言うチャンスだということは言いたいです。やれる状況であれば、やるのは絶対にチャンスだと思います。

佐藤   目指してくれる人がいればこんなうれしいことはないです。こればっかりはやってみないとわかんないですけど、思ってるほど大変なことではないんだよって。

佐藤様、大井様、
JAとまこまい広域の皆様、
取材のご協⼒ありがとうございました

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企画調整室

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