「受け継ぎたい北海道の食」動画コンテスト表彰式及び交流会
【とき】平成31年3月14日(木曜日)14時00分~16時30分
【ところ】北海道大学農学部大講堂
【主催】農林水産省 北海道農政事務所
第1部 表彰式
開会挨拶 大坪北海道農政事務所長
北海道といえば、食の宝庫として日本内外にも定着しています。まだまだ知られていない北海道ならではの地域に根ざした興味深い食文化が沢山あります。これらは今後、北海道の各地域の魅力として、もっともっと広く発信していく必要があるのではないかと思います。
今回の動画コンテストは、北海道に住む、あるいは北海道に関心のある皆様が、自ら北海道の食文化の素晴らしさを再認識し、後代に伝えていこうという気運を高めるべく進めて参りました。 応募者の多くは、学生や地域おこし協力隊の皆様等、自ら食文化について調べたり、地域の皆さんへの聞き取りを行うなどして、動画を作り上げ、地域を盛り上げていくきっかけにしたいという思いが伺われる作品が見受けられました。
本日お集まりの皆様の多くは、北海道の素晴らしい食文化を今後も受け継き、広めていこうとする方々が多いのではないかと思います。北海道食文化の保護・継承の推進に向けて、リーダーシップを発揮していただくとともに、本日は様々な立場の方々がご参加されております。これまで交流のなかった方々とも協力体制を築くということで、より力強く北海道の食文化を北海道内外に発信していただければと思います。
来賓祝辞 北海道庁農政部 甲谷食の安全推進監
この動画コンテストは、食の分野で様々な物語とともに、地域ならではの食文化・自慢の食を我々がしっかりと受け継ぎ、そして次の世代に繋げる意義ある大切な取り組みだと思います。
寄せられた作品を拝見いたしますと、様々な光景が想像されました。どのように作成したのかな、ご家族・地域のおじいちゃん・おばあちゃんのところに行って話をきいてきたのかな、若い方々が動画をとって、作ってくださるのは地域の年配の方々なのかな、いろんな会話をしたんだろうな、そうした光景がひとつひとつイメージされました。 伝統料理はもとより、会話の中から伝える人・受け継ぐ人・会話・行動が、まさに今後受け継ぎたい・引き継ぎたい文化そのものであることを強く感じられました。
道では、今年第四次の食育推進計画を発令しました。その中で食育の視点のひとつとして、地域の豊かさを支えるというポイントを掲げています。道では、食づくり名人を登録し、北海道の食をもっともっと広げていく取り組みを進めています。
今後とも皆様と一緒に、北海道の郷土料理・食文化の魅力・底力を大いに発信し、技術・食を架け橋にして、地域が元気になるその姿を次の世代にしっかりと引き継いでいけると考えます。
表彰、受賞作品の上映・作品紹介・講評
◆「親子3代でニシン漬け」(千田 治子、千田 安枝、千田 美咲)(北海道札幌市)
毎年たくさんの種類の漬物を作る漬物名人のお姑さん。 嫁いでから16年、いつかはお姑さんから漬物作りを教わりたいと思いつつ月日が 流れ、この度ついに親子3代でニシン漬けを漬けることになりました。 キャベツは札幌大球という7.5kgの大きなものを使います。漬物は発酵食品としての素晴らしさに気づきました。野菜の中の乳酸菌と麹菌により発酵が進み、腸の中で活発に働いて、ヨーグルトなどと同じような効果が得られることを知りました。改めて日本の食文化の素晴らしさを実感しました。
・講評:小田嶋政子(北翔大学 名誉教授)
北海道におけるニシン漬けは、かつての北海道鰊業の繁栄を物語るもので、歴史的食の文化遺産であると考えています。 現代社会において、毎日の食べものやお料理は、簡便さ・時間短縮にという視点が求められる傾向にあります。ニシン漬けは、発酵という工程が加わることによって、味がまろやかになり香りが増します。栄養的にもより優れたものに成ることが知られています。特に北海道のニシン漬けの特徴は、身欠き鰊に加えて、大きなキャベツや大根などの野菜が沢山漬け込まれることが特徴です。北海道という寒さが発酵を緩やかにして、じっくり発酵できるということから、沢山の野菜を加えてより美味しいニシン漬けを作ることができます。そういう意味で『札幌大球』というキャベツは、地域に特徴のある品種が途絶えながらも、なんとか受け継がれてきした。
北海道という良い気候から、良い発酵文化が生まれていくことを願いまして、今回受賞された親子三代ニシン漬けご一家も、北海道の伝統的なニシン漬けをお母さんからお嫁さん、そしてお子さんへと受け継がれていくプロセスが見られましたので、選定させていただきました。寒い地域ならではの、発酵の食文化ということを今一度見直して、受け継がれ伝統食になっていったらいいなという思いをこめています。
◆『北国の食文化「いずし」を漬ける』(浦木 明子)(北海道帯広市)
私達は十勝帯広において、親子二代で、料理教室を展開しています。母は昭和11年生まれの83歳。13歳の中学生の時から毎年欠かさず「いずし」を作り続け、今年70周年目の節目の年となります。残していきたいと思いながら、なかなか残すことが出来なかったのですが、今回、料理教室メンバーの若者が動画をスマホで撮影してくれました。 我が家の「いずし」の特徴は、「いずし」の材料がすべてご近所の農家さん漁師さんが届けてくださった野菜や魚などです。みなさんのお志の材料で感謝を込めて、お正月に向けて仕込んでいきます。近年は『いずしの会』をお正月に開催し、皆さんに味わっていただいています。 『こうして、様々な世代が集まって、笑って味わえることが素晴らしいことだね』と参加した方々に言われ、そのことが一番大事なことだと気づき『絆』を実感しています。1年中、四季折々の循環の中で漬物を漬けて楽しんでいます。 これからも日本の伝統食を若者に伝えていけるよう動画撮影など続けていこうと思います。
・講評:本間勇司(さっぽろ川甚本店料理長、札幌割烹調理師会支部長)
料理人の立場からコメントさせていただきます。日本料理においては伝統が大事です。先人たちの残してくれた伝統を後者が受け継いでいかないと、時代とともに新しいものが増えていき、アナログのものがなくなってしまいます。その中で、昔から残されているもの、『肉じゃが・ふき煮物・ひじきの煮物』など家庭で料理されるものが、受け継がれていく料理だと思いながら、今回の作品を拝聴させていただきました。この映像を見て感動したことは、70年続けて自分の家で作り続けていることです。当時、今ほど物がなく冷蔵庫もままならない時代に、食の貯蔵の方法を工夫していました。それを70年伝えていくことは、なかなかできないことです。これからも、多くの方々にPRしてどんどん広めていって、北海道の食文化がこれほど素晴らしいことを伝えていってほしいと思います。
◆「じいちゃんのべこ餅」(石井 清太朗、石井 なつ美)(東京都)
ぼくたちは東京に住んでいますが、夏休みになると、浦河町のじいちゃんの家に遊びにいきます。89歳になるじいちゃんのべこ餅は美味しくて、毎年楽しみにしていました。じいちゃんは去年の夏にべこ餅を作るのをやめてしまったので、代わりに僕たちが作り、受け継いでいこうと思いました。
今回作り方をじいちゃんに教わって、作ってみて、模様はそこそこ出来ましたが、味はやっぱりじいちゃんのべこ餅の方がおいしいなと思いました。
講評:小田嶋政子(北翔大学 名誉教授)
北海道の伝統菓子の中でも5月の節句菓子として知られてるべこもちですが、檜山などの道南地域では、『くじら餅』とも呼ばれ、法事などの時にも使われる人寄せの時のポピュラーなお菓子で、長く親しまれてきました。 先程、清太朗くんが『おじいちゃんのべこ餅はもっと美味しかった』とお話されていましたが、昔は、米を叩いてふるいにかけて自分で米の粉を作って、手間をかけてべこ餅を作りました。
それぞれの家庭に様々な形の木型が数個あり、それぞれの木型でおこして、作ります。
今回受賞された「じいちゃんのべこ餅」は、じいちゃんから娘さんへ、そしてお子さんへと受け継がれました。
『束ね熨斗』という模様が生み出されています。大変美しい模様で、浦河町でこのべこ餅に出会ったときには大変感動しました。
『束ね熨斗』という模様は、かつては婚礼の時の風呂敷、花嫁がくぐる暖簾模様など、おめでたい時の祝いの模様で、由緒ある形です。
お祝いの時に使われる美しい模様のべこ餅が、北海道の家庭で受け継がれてきたことを大変嬉しく思います。いつまでも受け継がれていることを願ってやみません。
節句にはべこ餅を食べて是非受け継いでいってほしいという思いをこめて、受賞おめでとうございます!
◆「ジンギスカン」(ハンドルネーム「ジンくん」)(北海道苫小牧市)
今現在、ジンギスカンを食べる機会が減ってきていると感じ、ジンギスカンが誕生したきっかけなどを道民以外にも知ってもらい、ジンギスカンを食べたいという動機に繋がったらいいなと思い、この作品をつくりました2020年のオリンピックに向け観光客が増加するからこそ、その機会を逃さず、栄養豊富で健康的なジンギスカンが北海道に欠かせない北海道の文化食として広まっていけばいいなと思います。
講評:萬谷利久子(北海道6次産業化プランナー、野菜ソムリエ上級PRO)
本州の友達に「北海道は何故ジンギスカンなの?」と聞かれた時に答えられませんでした。この作品を見て、正解をいただきました。
こうした映像を作る時に、何を伝えたいかが重要です。私達の生まれ育った歴史の中では、しあわせのシーンと共に、必ずそこにジンギスカンがありました。 それを受け継いで、だんだん食べなくなっていることを払拭したい、インバウンドに対して、ジンギスカンを郷土食として感じてもらったりして、一緒にしあわせな食のシーンという未来的な思いが、この作品には描かれていました。深く心に刻まれたのではないかと思います。家庭の中のシーンとして、食があることで、家庭愛や郷土愛がうまれるんだなと実感できたことがこの作品の素晴らしさではないかなと思いました。 映像の美しさも北海道の美しさを感じることができて、羊の表情もキュートで、見ている人をしあわせな気分にさせてくれる良さもありました。
◆「とりめし~開拓と稲作の歴史が織りなす郷土の味~」(美唄市地域おこし協力隊)(北海道美唄市)
美唄市中村地区の郷土料理であるとりめし。中村地区のお母さんたちがその味を守り続けています。
開拓の時代、中村豊治郎が貧しさや栄養不足などを解消するため、知恵を絞って各家庭に鶏の飼育を奨励しました。美唄の本格的な養鶏はここから始まったと伝えられています。いまでは日本を代表するこめどころと言われている北海道ですが、冷害や水害を乗り越えその稲作の歴史は大変なものでした。この貴重な鶏と大切なお米を一緒に炊いて作ったのが美唄の名物に育ったとりめしです。とりめしは遠方からの客人を迎えるおもてなし料理であり、特別な日のごちそうでした。これが中村地区の歴史と思いのつまった中村のとりめしのはじまりと言われています。市内でも店舗によってそれぞれ味もレシピも違います。これからも中村のとりめしを食べていただきたいですし、味を大切に守って行きたいと思います。
講評:荒川義人(札幌保健医療大学 栄養学科長)
この『とりめし』は、美唄に入植された方々の出身地域が稲作と養鶏が盛んだったという背景があります。そこで、おもてなし料理として、また自分たちの健康を守るための素材として活用してきました。本作品は、時代と共に若い人々が受け継ぎ、動画でアピールするというストーリー性があり、その点において高く評価されました。これを期に、益々美唄の地域おこしに繋げていっていただきたいと思います。今回の受賞本当におめでとうございます。
第2部 交流会
交流会では、応募作品に関連する料理等の試食や展示、入賞作品やダイジェスト版動画の上映、べこもち(束ね熨斗)成形の実演を行い、
北海道の伝統の味を再確認しながら参加者同士が交流を深める場となりました。
べこ餅の成形の実演
優秀賞を受賞した石井清太朗さんとなつ美さんに、動画でも作っていた「束ね熨斗」柄のべこ餅作りを実演していただきました。
応募作品に関連する料理等の試食、展示
料理一覧(提供者敬称略)
・甘納豆の赤飯
・とりめし(提供:合同会社なかむらえぷろん倶楽部)
・石狩鍋
・いももち
・かぼちゃ団子
・北海道ざんぎ
・サーモンのエスカベージュ
・ジンギスカン(提供:株式会社ソラチ、株式会社伊藤商事)
・ニシン漬け ほか(北日本フード株式会社)
・ハタハタのいずし(提供:カネシメ髙橋水産株式会社)
・べこもち ほか(提供:日糧製パン株式会社)
展示一覧(五十音順、敬称略)
・カネシメ髙橋水産株式会社
・北日本フード株式会社
・黒千石事業協同組合
・国土交通省 北海道開発局
・株式会社 坂口製粉所
・一般社団法人さっぽろ産業振興団(SFC)
・株式会社ソラチ
・日糧製パン株式会社
・美唄市地域おこし協力隊
・二見 裕子
・ベル食品株式会社
・株式会社モグマグ
協力(五十音順、敬称略)
・株式会社アドバコム(エコチル)
・生活協同組合コープさっぽろ
・北海道
・北海道食文化研究会
・北海道ライカーズ
お問合せ先
生産経営産業部 事業支援課
担当者:食育担当
ダイヤルイン:011-330-8810
FAX番号:011-520-3063