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近畿農政局

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令和元年度第1回「食育シンポジウム」概要

  近畿農政局は、令和元年6月28日(金曜日)、京都市において、令和元年度第1回「食育シンポジウム」~農業体験して、食生活を考えよう!~を開催しました。
  このシンポジウムは、参加者が農業体験の効果を共有することで、今後の農業体験の参画を促し、より良い食生活を広めていく場として開催し、72名の方にご参加いただきました。


  以下にシンポジウムの概要をご紹介します。

講演
   神戸大学大学院農学研究科 附属食資源教育研究センター 教授 大山 憲二 氏

活動事例報告
  (株)野木源 代表取締役 野木 武 氏(きょうと食いく先生)
  こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 代表 大坪 さやか 氏(管理栄養士)
  中京学院大学短期大学部健康栄養学科 助教 藤岡 美香 氏 

パネルディスカッション
 「農業体験を実践し、よりよい食生活を広めていくために」
   コーディネーター  神戸大学大学院農学研究科 附属食資源教育研究センター 教授 大山 憲二 氏
   パネリスト           (株)野木源 代表取締役 野木 武 氏
                            こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 代表 大坪 さやか 氏
                            中京学院大学短期大学部健康栄養学科 助教 藤岡 美香 氏

講演

神戸大学大学院農学研究科 附属食資源教育研究センター 教授 大山 憲二 氏

『農業実習によって、学生は何を学び感じるのか』

 


食資源教育研究センターは、大学の設置基準で定められているいわゆる「附属農場」である。神戸市灘区の六甲キャンパスから車で1時間半程度かかる加西市にあって、大学農場としては中規模の40haの敷地にスタッフ27名がいる。私は牧場に所属しており畜産を担当している。牧場では但馬牛を100頭ほど飼育している。
食資源教育研究センターでは、基幹業務として神戸大学農学部の1年生及び3年生に対して、年間55日の農場・牧場実習を行っているほか、社会貢献として、地元中学校生徒を対象にした「トライやるウィーク」での体験学習、全国和牛登録協会の登記検査員認定講習会、附属小学校児童へのコメ作り出前授業等を行っている。
食資源教育研究センターの業務は3つの柱(教育、研究、生産)であるが、国立大学の財政上の課題もあり、自助努力を求められている中で、飼育牛や収穫物の販売に取組み、神戸大学ビーフとして販売したり、香りの良い野生種の梨をジャムに加工して販売したりしている。消費者へ生産物が手に渡ることで、教職員及び学生は生産者としての意識が芽生えるし、大学の知名度も高まる。

    神戸大学大学院農学研究科 附属食資源教育研究センター 教授 大山 憲二 氏による講演
 

現状の神戸大農学部の学生だが、3分の2は京阪神の都市部出身で農作物が育つのを知らないし、育てたことがない学生、3分の1は郊外出身で農作物が育っているのを見たことがある学生である。ましてや、食肉の生産については知る機会がなく、残酷、かわいそうというイメージをもっている。農学部の学生でさえ、農畜産物生産の仕組みとプロセス、自然の恵み・命をいただくということの認識が少ない。従って、入学後に農業の実体験をしてもらうことが重要であると考えている。
農学部では応用植物学をはじめ、6つのコースがあり、1年次と3年次に農牧場実習を行っている。55日間で1,617人・日が受講している。例えば、応用植物学の1年次では、自主栽培として、学生各自に与えられた一定区画で野菜(ナス+好きな野菜)と果樹(ブドウ)を1人1本割り当てて栽培しており、毎週金曜日に六甲キャンパスからバスで半年間通って、栽培管理、収穫を行っている。また、3年次では専門的に細分化した実習を行っている。
続いては、他学部、他大学の学生に対する教育についてである。文部科学省の制度で、教育関係共同利用拠点がある。拠点は大学教育全体としてより多様で高度な教育を展開していく中で、教育の充実に特に資するときに文部科学省によって認定される。食資源教育研究センターは、近畿圏の農場で初の教育関係共同利用拠点「農場と食卓をつなぐ先端農業フィールド教育拠点」として、平成26年に文部科学大臣に認定され、現在6年目を迎えている。
拠点としては、5つの提供プログラム(農場から食卓まで、農業と遺伝資源、実践食料生産、Agricultural Products in Japan、スマート農業)がある。例えば、「農場から食卓まで」のように、食と農業を体感し食の安全を学ぶプログラムや、「農業と遺伝資源」のように農業における遺伝資源の重要性を学ぶプログラムを提供していて、平成30年度には近畿圏を中心に23大学、599人・日の利用実績がある。大事なことは、これらの利用結果の反省点をフィードバックすることである。
例えば、神戸女学院大学人間科学部の学生に対しては、9月の3日間で、イネの収穫、キャベツの追肥施用、野菜やブドウの収穫、ウシの鼻紋採取などを行い、作業を振り返りワークショップや試食会を行った。大阪市立大学は年2回の実習をし、5月に田植え、9月に稲刈りで収穫し、試食を行った。年2回実習すると作物の生育がわかる。途中の生育状況はFacebookで紹介している。試食会は、他の大学の実習においてもできる限り開催するようにしている。
これら実習で大事にしていることであるが、例えば、食の安全については、無農薬であるもの、そうでないもの、いろいろあるが、その是非は自分たちで判断してもらえるようにしたり、その時期にすべきことについては、旬に収穫するためには、どの時期にどう効率的に作業するかをわかるようにしたりしている。年に複数回実習し、播種から収穫、試食まで一連のものとして学ぶことができれば良いと思うが、管理栄養士を目指す学生など、カリキュラムが多く、1回しか受講できない場合もある。イチゴ狩りのように、単に収穫作業をしてもらうのではなく、事前にその作業の必要性を説明することが、一番大切と考えているが、ウシのエサも種類がたくさんあり、与える時間にも意味があることを教えたりしている。説明が長くならないように配慮もしている。学生はウシがたくさんエサを食べることを実感したり、そのエサは外国から来ていることや、食料自給も学んだりする。作業終了後は、ワークショップを行い参加者同士で考えを共有し、作業の意味などを振り返り、理解を深めることとしている。
利用学生には終了後にアンケートを実施している。農学部以外の学生なので、「農業の問題を解決する仕事に就きたいと思う」に対する回答は、そう思うが少ないのは仕方ないところであるが、それ以外の「農業の技術や技能について学べた」、「食べ物を大切にしようと思った」、「動物や植物に対する興味が増した」では9割がそう思うという回答が得られ、総合的な満足度については、96.5%の学生が「非常に満足」あるいは「満足」と回答している。
アンケートでは、「食べ物を大切にしようと思った。」、「好き嫌いをなくそうと思った。」、「パックに入った肉しか見たことがないが、牛を見て、尊い命をいただいていると改めて感じた。」、「農家の人たちの苦労がわかった。」、「自然を感じながら、食事をするとおいしくなると感じた。」等が自由回答で得られた。
アンケートにおける自由回答のコメントを体系的にまとめると、「学んだこと」、「実習内容の評価」、「施設・運営面の評価」に大別できた。
そのうち、「学んだこと」について、何を学んだか説明したい。
まずは、「大変さ」について、「労力的な大変さ」の「手作業が多く大変」、「体力的にしんどい仕事」、「追肥作業がとても大変」、「ウシを扱うのが大変」といった26の回答に加えて、「高い技術が必要」なことについて、「収穫物のうち、出荷できるものは一部」、「品質のいいものを出荷するのには、様々なことに気を配らねばならない」といった5つの回答があり、農業が大変なものであることについて、合計で31の回答があった。
また、大変な中でも、「農業の経済性」では、「ウシは手間暇がかかる割に利益が少ない」、「キャベツやバレイショは、出来不出来によって価格変動が激しい」、「経費を差し引くと利益は少ない」といった11の回答があり、利益を得るのが難しいことを学んでいる。
「農業の技術やコツ」に関しては品目別に、畜産では「成長とともにエサの量を変えている」、「鼻輪、除角の方法や意義」といった17の回答、果樹では「カキの渋抜きの方法」、「美味しい果実を育てるための工夫。摘果など」といった17の回答、作物では「キャベツを傷まないよう葉を余分に残して出荷」、「田植えでは植える本数、間隔も最適な方法がある」といった6つの回答があり、技術やコツの知識を得たことがわかる。
「フードプロセス」に関しては、「ウシは10桁の個体識別番号があり、スーパーのパックにまで付いて行くこと」、「出荷基準に満たない農作物が多く廃棄されている」といった5つの回答があり、農作物の流通に関して実感したことがわかる。そのほか、農業は自然とは切っても切れないものであり、「農業は気候に大きく左右される」、「気候や土壌によって適した作物が異なる」といった回答、神戸大学にはたくさんの品種を栽培していることから、「野生ナシと栽培品種ナシとの違い」を知り遺伝資源の重要性を学んだとの回答があった。
意識の変化として、「農作物は手間暇がかけられているので、感謝しなければならない」といった「食べ物の大切さ」に係る回答、「お米をもっと食べようと思った」といった「農業に対する意識」に係る回答、「ウシに関わる仕事につきたいと思った」といった「専門分野に対する意識」に係る回答が、合計16あった。
これらの回答から、学生は実習により、「食を支える技術と労働、食べ物への感謝」について学んだということで取りまとめたい。
食資源教育研究センターは、神戸大学での農学研究において、農業の問題解決、実証する場であるが、最近は他大学を含めた農業実習にも取り組んでいて、農場と食卓とを結びつける活動も行っている、これらの取組で本日紹介したところである。

活動事例報告

(株)野木源 代表取締役 野木 武 氏

『栽培体験指導で心がけていること・食育活動にかける思い』

 

「栽培体験指導で心がけていること・食育活動にかける思い」という題であるが、私の思いを伝えたい。
農業の経営規模であるが、水稲を17ha栽培している。無農薬栽培を希望するユーザー向けの合鴨農法も含まれている。そのほか、メロンを20ha、ブロッコリーを50ha栽培している。堀川ごぼうも栽培していて、先般もテレビで放映された。秋冬野菜や大豆・あずきも栽培しているが、これらは会社で加工するためである。
循環型農業を目指していて、環境を重視して、できることから取り入れている。私の住む京丹後は海が近いので、その資源を使用したり、消費者から出た天ぷら油の廃食油の燃料活用に取り組んできた。廃食油の利用については、今は機械が故障するため中止している。
間人(たいざ)ガニが地域の産物で、旅館で発生したカニ殻を粉砕し、肥料として利用して水稲を栽培し、そこで収穫した、地域に根ざしたこだわり米を旅館に提供するという循環を作っており、米ぬかも田んぼに戻している。

  (株)野木源 代表取締役 野木 武 氏による活動事例報告
     

食育を進めるためには、日頃から、自らが情報提供をし、常に学校、行政、食生活改善委員などとつながりを持っていないと難しいし、呼んでもいただけない。
現在は、京都府の「きょうと食いく先生」で年2、3回呼ばれたり、他の説明機会をもったりしている。日頃から、役員をやるとかで地域との関わりを持っておくことが重要であり、イベントやSNS発信により情報提供もしている。
5年生社会科の稲作の勉強に、地元の丹後小学校で20年間関わってきた。単に田植えしてもらうではなく、苗作りの種まき、育苗管理から教えている。畦端で農業の大切さを教えている。
幼稚園の栽培体験での話だが、園児が田んぼに入りたくない、にゅるっとして嫌だと言いだした。先生と相談した結果、代掻きをする前の田んぼで運動会をして、馴れるようにした。田舎の子どもでも、田んぼに入りたくないという時代になった。でも、一旦、田んぼに入れば、楽しいみたいで、「遊びじゃない、ちゃんと最後まで、まっすぐ植えなさい。」と伝えると、みんな最後まで頑張って取り組んでいた。収穫作業までやっている。
先ほどの大山先生の講演のとおり、農業はしんどい仕事がたくさんあるが、それを味わうことに意味がある。
地域とのつながりを持つため、プロのそば打ちに来てもらって、できたそばを皆で食べることで地域のコミュニケーションをとったり、食生活改善委員さんに丹後で有名なばら寿司を作ってもらったりしている。自分の力だけでなく、食育にはプロの力を借りることも重要である。
食育で取り上げていることであるが、食育の講義を始める前に必ず、一番最初に質問することがある。「神様が最初に平等に与えてくれたものは何ですか?」と参加者に問いかけている。答えはいろいろあるが、「食べること」としている。食べないと死んでしまう。当たり前のことから農業を伝えたい。
食育の話では、他に日本の食料自給率が40%について、危機感がないのではないかといったこととか、一方で、食文化はカルチャーであり、アグリカルチャーである農業は地域のお祭りとのつながりもあるとかも話している。
しかしながら、経済のこと、お金の話は大切であり、私も農業で儲けないといけない。
単にたくさん儲けることが幸せなのか、モヤモヤした考えがあるが、それを解決するのが、田舎の良さであったり、農業体験することなのではないか、食べることが幸せだと感じることではないかと思っている。
最近、大学生がインターンシップで農業体験しに来るカリキュラムができて、私のところに来ている。最初はお客様扱いしていたが、現在はかかる経費は負担してもらい、お客様扱いしないように変えてきた。経済感覚も身につけてもらうことも重要であると思う。

 

こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 代表 大坪 さやか 氏

『体験型食育のすすめ~百聞は一験に如かずとは~』

 

私からは農業体験の関連の取組を紹介したい。まず、一番長く働いた少年院についてである。私が働いていたのは全国に2つしかない医療機関を持つ少年院のうちの1つである京都医療少年院である。医療少年院の子どもは、精神疾患8割、身体疾患2割であり、私は身体疾患(糖尿病など)の子どもを担当していた。
子どもが病気になった原因は不明な場合も多いが、明らかに食生活習慣によると思われるものもある。大人はある程度は病気を受け入れられるが、子どもは自分だけが病気にかかっていることに劣等感を持っていたり、それによって非行に走ったりしている場合があり、私は早い時期から食育ができていれば、そのようなことにはならなかったのではないかと考え、子どもたちの食生活の乱れを治したいとの思いから、少年院で働くことにした。
まず、嗜好品の摂取状況について、アンケートしてみると、「1日に炭酸飲料を1~2リットル、スナック菓子2~3袋摂る」といった回答があり、びっくりした。中には「好きな物を好きなだけ食べて何が悪いの?」という子どももいた。そもそも栄養バランスのことも知らないようなので、私は教えることで、なんとか改善してあげようと思い、理解が難しい子どもにも、砂糖の摂りすぎの影響などを丁寧に教えた。でも、終わったあとで、「ご飯より、お菓子がいい。」と言いだし、びっくりした。教えても子どもの自制心を押さえるのは難しく、無力感を感じた。

  こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 代表 大坪 さやか 氏による活動事例報告
     

ある日、全国の少年院には畑があって、植えていたサツマイモでお菓子を作ろうということになった。料理を始めると子どもたちの目が輝きはじめ、薬の副作用で表情がうつろな子どもも、皆、夢中になっていた。これを見て、料理体験することで、言葉で言っても伝わらないことが伝えられるのだということを強く感じた。
文部科学省の学習指導要領では、「生きる力」は、「確かな学力」、「豊かな人間性」、「健康・体力」の3つの要素からなることが示されている。これは20年くらい前から示されているが、生きる力は、はたして、子どもたちの身についてきているのか、疑問に思った。少年院の子どもたちには、死にたいと思う子どももたくさんいて、本当に自殺未遂する子どももいる。生きる力が小さい。「生きる」のでははく、「生き抜く」力が必要なのではないかと考えるようになった。厳しい社会だから生き抜いてほしいと思った。
少年院の子どもたちには、「心身の健康」、「自尊感情」、「人とのつながり」の3つがなかった。私もこの3つがなければ、死にたいと思うかもしれない。逆にあれば「生き抜く」ことができると思った。この3つを得るには「料理体験だ」とひらめいた。
まず、「心身の健康」では、料理をすることで、健康に気を遣うようになる。例えば、野菜を食べてバランスをとろうと考えたり、調味料を減らそうと考えたりする。
「自尊感情」では、勉強やスポーツは人と比べた優劣が発生するが、料理は人と比べない。自分が好きなように作るので、自分が一番である。
「人とのつながり」では、まず、料理で親とのコミュニケーションがとれる。そして、お母さんの大変さに気づき、感謝するようになる。
この「生き抜く力」は私が考えたものであるが、国立青少年教育振興機構の「青少年の体験活動等に関する実態調査(平成28年度)」によると、「料理体験をすると自己肯定感が高まる」との結果が示されていた。これをもとに、少年院で料理体験を進めたかったが、なかなか時間がかかり、難しいことがわかり、退職した。
その後、子どもの料理教室を始めた。農業体験も興味があったが、なかなか、取りかかれないでいるが、農業体験も食べ物と接する機会をつくるものであり、料理体験と同じ効果があると思っている。
一般に食育には時間がかかると思われているが、料理体験は即効性が高いと考える。大人でも、食生活改善が必要とはわかっていても難しいが、体験することで改善効果があると思う。
現在は、体験型食育を推進し、生き抜く力を育む料理教室(ゆめつぼ)で実践している。

 

中京学院大学短期大学部健康栄養学科 助教 藤岡 美香 氏

『幼児期からの農業体験の大切さ~食農教育研究から分かってきたこと~』

 

本日は、まず、幼児期からの農業体験にはどんないいことがあるのかをお話して、その後、私が行っている食農教育研究の結果、そして、さらに食農教育を効果的にする方法について、お話したい。
まず、言葉の定義について、「幼児期」とは幼稚園児、保育園児であり、1歳から5、6歳児のことである。「農業体験」とは、農林水産省のホームページでは、「種まきから収穫までの一連の農作業を体験すること。田植え(種まき)、稲刈り、野菜の収穫、家畜の世話などが含まれる。」となっている。私のところでは幼稚園児にトマトやサツマイモの栽培をさせていて、この栽培活動を農業体験に含まれることとして取り扱うこととする。
食育基本法ができて15年ほど経っている。幼児教育要領、保育所指針も今から10年くらい前に見直されている。
幼児教育には、「言葉」、「表現」、「健康」、「人間関係」、「環境」の5領域があり、栽培活動のねらいには、そのうち、「健康」、「人間関係」、「環境」の3つが該当する。

  中京学院大学短期大学部健康栄養学科 助教 藤岡 美香 氏による活動事例報告
     

「健康」については、自然の中で伸び伸びと体を動かして遊ぶので、体の発達が促され、「人間関係」については、自然や身近な動植物に親しむことなどを通じて豊かな心情が育ち、「環境」については、生命の尊さに気づき、いたわったり、大切にしたりするようになる。これらが、栽培活動をするねらいである。
幼児期に農業体験するとどんないいことがあるのか?ということについては、配付されている「「食育」ってどんないいことがあるの?~エビデンス(根拠)に基づいて分かったこと~Part2(平成31年3月)」によく書かれている。幼児期については、「食べ物に関する関心が高まる」、「野菜嫌いの克服のきっかけになる」、「食べ残しが減る」、「豊かな心が育つ」といった研究結果が掲載されているので、また、見ていただきたい。
食農教育とは、食教育(食べ物のこと、栄養のこと、調理のこと)に農業教育(農業に関しての知識や体験)を合わせたものである。「食べる」という一連の流れを体験しながら、この過程を通じて食や農業について、知ってもらうことをねらいとしている。
私が行った研究の対象は、5~6歳の幼稚園児とその保護者43組であり、園児には農作物の植え付け、水やり、成長の観察、収穫を週に1回、3ヶ月間行ってもらい、保護者には、実際の体験はないが、疑似体験として、園児の栽培活動の様子を、観察の記録・写真や食教育に関する内容をお便りにして渡すことで実施した。
そのほか、親子の食育・料理教室を開催して、育てた野菜の成長記録を振り返り、食や命の大切さの講話をしてから、収穫した野菜を利用した調理実習・試食を行った。
この前後に、アンケートをとったところ、農業体験した後、食事への集中、食べ残しに改善がみられ、食への興味については、改善について、統計学的な有意差がみられた。園児は食への興味が沸いて、食事に集中でき、食べ残しが改善されたのではないかと考察している。なお、保護者については、実施前後で改善の有意差はみられていない。保護者はそもそも意識が高かったこと、体験を実際にしていないことが原因していると考えている。
料理教室の結果であるが、園児の「食事前後の挨拶」について、改善傾向がみられたが、統計学的な有意差はみられなかった。それでも、保護者からは、「子どもが食事の手伝いをしてくれるようになった」との声もあったところである。子どもは料理に興味がある。
食農教育をどうやったら効果的にできるのかということは、私たちの研究で一番のねらいである。フィードバック、すなわち、行動などの結果を参考にし、その元の行動をより適切な仕組みにしていくことが大切と考えている。つまり、「行動の振り返り」が大切であると考えており、単にやりましたで終わらないことが大切である。
具体例として、お便りを配布することで、園児だけでは振り返られないところを家庭で保護者とやりとりすることで、振り返ることができる。家庭以外でも、料理教室などで、集団で振り返ることも大切である。
課題については、幼稚園教育では、時間が十分にとれないこと、畑など場所の確保が難しいこと、保護者との連携にも課題がある。難しく考えず、プランター栽培でも効果があがっているので、取り入れることもできるし、お便りでなくSNS、Facebook等を利用した野菜の成長記録を発信する方法もあると考えている。
まとめると「幼児期からの農業体験は体や心の健康面、そして将来の社会的なスキル面の発達においてとても重要であることがわかってきている。食育と農業をつなげた食農教育を行ってみると、園児では、食への興味が高まり、食事に集中できるようになり、食べ残しが改善する効果がみられた。この食農教育には、フィードバック、振り返りが大切である。」ということになる。
私には3歳の子どもがいるが、先日、きゅうりを食べたと言っていて、どうしてと聞くと、年長さんが作ったきゅうりで美味しいから食べたとのこと。身近な人が農業体験することでも効果があったと感じたところである。

 

パネルディスカッション

コーディネーター:神戸大学大学院農学研究科 附属食資源教育研究センター 教授 大山 憲二 氏
パネリスト         :(株)野木源 代表取締役 野木 武 氏
                      :こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 代表 大坪 さやか 氏
                      :中京学院大学短期大学部健康栄養学科 助教 藤岡 美香 氏

  『農業体験を実践し、よりよい食生活を広めていくために』

 

(神戸大学大学院農学研究科 大山氏)
3名の方の活動事例報告を聞かせてもらって、皆様が様々な食育活動をされていて、農業体験をはじめとした手法は、食べ物への意識を変えたり、食生活を改善したりするのに有効であると感じた。
まずは、パネリストの皆様から、本日の自分以外の発表についての感想、意見、質問等をいただきたい。

((株)野木源 野木 氏)
大山先生の話の中で、農業体験することで生産者としての意識が高まりますといった話があったが、実は農家の8割は食育に関心がない。農家は経済的な理由で、お金を得るために作物を栽培している。必ずしも、食育に熱心なわけではない。
大坪先生の少年院でのお話はとても興味深かった。小さい頃から食環境を変えないとと思った。有機栽培をしている農家の子どもが、駅でたむろしている不良と言われる少年たちに、「甘いものばっかり食べるから、そんな風になるんだ。」と説教している話を思い出した。「甘いもの」とは、「白い」砂糖、小麦粉などからできる食品である。栄養バランスをとらないとダメだと、小さい子どもが大きい子に言っている。
藤岡先生の話に関して、私も幼稚園児に農業体験させている。実はほとんどの田舎の子どもは周りに田んぼがあるのに農業を知らない。農業体験は都会から来ている子どもの方がしていると思う。

(こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 大坪 氏)
ずっと、農業体験を取り入れたいと思っていたが、できないでいた。野菜のプランター栽培からでも始めたい。野木先生に是非、教えてもらいたい。

   パネルディスカッションの様子1
    

((株)野木源 野木 氏)
今どきは、ホームセンターで野菜苗と鉢が買える。とにかく、育て始めたらいいと思う。虫に食べられた、枯れたとかで、子どもが泣くこともあるかもしれないが、生き物を育てること、食べ物を作るのは難しいことを失敗しながら学ぶと良い。

(中京学院大学短期大学部 藤岡 氏)
教育者の視点で見ると、大山先生のお話で、私の研究対象の幼児と違って、大学生には、経済のことも考えて教えることに感心した。私の大学には管理栄養士を目指す学生がいて、以前、豚肉の解体見学をしようとしたが、残酷だとの話もあって、取りやめた。神戸大学では、解体現場の見学に関してはどのように取り組んでいるのか。

(神戸大学大学院農学研究科 大山氏)
農業は大変な労力のかかる仕事であるが、1円でも安ければ良いという消費者の意識もある。みんなが安いものばかり求めると日本の農業は健全になるのか、経済面をしっかり考えてもらうことにしている。
学部によって取組に温度差がある。畜産専攻の学生には、牛の世話を1年間終えた後、最後に近くの食肉流通センターに解体の見学に連れて行っている。畜産専攻の学生であっても、見るのに耐えられない者もいる。
牛、豚の大中家畜は難しいが、鶏はどうか。以前、鶏を絞めて、解体する実習をしたことがある。教育としては大きな意義があると思う。案外、女子学生の方が平気な場合が多い。

   パネルディスカッションの様子2
 

((株)野木源 野木 氏)
経済の話を考えるとグローバルな話になる。安いものを求めると牛肉はオーストラリア産とかばかりになる。一方で、日本の食料自給率が40%を切っている中で、他国にお腹を満たしてもらっている状況にもある。その辺りを含めて、日本の農業を考えないといけない。
安いものだけでなく、選ぶ力を学ぶのも食育だと思う。また、子どもを育てる保護者への食育も大切である。

(中京学院大学短期大学部 藤岡 氏)
野木先生の地域で出るカニ殻の利用し、地域の魅力を生かした循環型農業をされていることに興味を持った。私の住んでいる地域でも栗が特産で、その殻を再利用する取組がある。
大坪先生のお話では、全ての少年院に畑があることを知り驚いた。少年院の子どもたちは自己肯定感が低いという問題があるということについて、幼児教育にもその点を主眼に入れた取組をしないといけないと思った。

(神戸大学大学院農学研究科 大山氏)
今日、発表いただいた方々が教えている年代は、幼稚園児から大学生まで幅があった。私は学生を相手にしているが、時々、小学生に教える機会があって、実は、どんな言葉で伝えればよいのかわからなくなってしまい、苦手に感じている。農業体験といっても、年代別に教え方が違って、また、その食育に適した年代があると思うがいかがか。

((株)野木源 野木 氏)
私は小学生から大学生まで、幅広い対象の食育に取り組んでいる。小さい頃から取り組むことが大事である。例えば、トマトを育てて、食べて美味しいと感じるのが大切である。
小学校、中学校は給食があるので、朝食が悪くても、なんとか食事のバランスがとれる。高校生からが自分で食べ物を選べるようになるので、その頃がポイントになるのかなと思う。少年院でのお話でもあったように、炭酸飲料とスナック菓子だけの食事という子どももいる。
その子たちには「そんなものばかり食べてたら、死んでしまうよ。」と厳しく教えている。

 

 パネルディスカッションの様子3
 

(こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 大坪 氏)
食に関しては、だいたい小学校2年生くらいまでに味覚が形成されると言われているので、その時期までの食育が効果的だと思う。それより、大きくなると、先入観で嫌いなものを口にさえしなくなるが、小さいうちは親がなんとか与えると嫌いとかわからないうちに食べられるようになっていることもある。私は中学生の時に食生活が乱れた経験があり、少年院で同じような子どもを治そうと思ったが難しかった。それで、今は小さい子どもに料理体験による食育をしている。
最近は、小学生で英語やプログラミングの科目が増えるとの話があるが、食育を後回しにしないでほしい。生きることは食べること、一番大切である。

(中京学院大学短期大学部 藤岡 氏)
私も食育が一番大切と思う。大坪先生に同感である。家庭科とか大事にして欲しい。農業体験による食育も、幼稚園児くらいまでが、大切と思う。
主に年長児を対象にしているが、年中児にも一緒について来てもらっているが、とても興味深く見ている。
高校生や大学生は、食育するのに効果的な時期であるかどうかの問題は別にして、食育をする必要性は高いことは違いない。これから、親になる前に学ぶ必要性は高い。

(神戸大学大学院農学研究科 大山氏)
大学生までの食育の話をしてきて、幼児期といった早い時期が効果的という話だったと思う。ただし、年代別で伝える内容が違ってくると思うが、小学校から大学生まで幅広い食育に取り組まれている野木先生にお聞きしたい。

((株)野木源 野木 氏)
今の小学生には時間が足らない。大切な給食の時間は20分しかなくて、栄養士の先生が作ってくれたのに。私の作った野菜の話をしたかったが、教員からお話しないでと言われた。黙々と食べるしかない。ただし、学外で私に任されたときは、私のペースでたくさん話しながら食事している。そのときには、食べることに感謝しようね。両親がお金儲けてくれたからだよとか教えている。地元の農作物を食べることについては、京丹後で農業を体験した子どもたちには、大きくなって、美味しかったなと思い出してもらって、京丹後の農産物を選んでもらいたいと思っている。
私は、地域で小さい子どもの頃からコミュニケーションをとっていて、大きくなっても声をかけられる。今はそんなことができない世の中になってきている。私は、引き続き、子どもたちに熱く食育を教えて行きたいと思う。

(こどもの食育すぽっと ゆめつぼ 大坪 氏)
高校生や大学生の食生活が悪いことについて、自分も経験があるので、良くしてあげたいが、なかなか言葉で伝えて改善できるものではないと思う。私は料理をすることが大切と考えている。30分、1時間かかるので面倒くさいという話もあるが、慣れれば、30分で料理できるようになる。そうなれば、買ってくるよりも料理した方が早くて簡単、しかも自分が美味しくて、栄養が摂れるものが食べられるようになる。小さいうちに料理する習慣ができればと思う。大人も料理を楽しめたらと思う。

(中京学院大学短期大学部 藤岡 氏)
幼稚園児は遊びが勉強の1つなので、栽培体験を遊びにしている。園児の様子を観察しながら、園児の気持ちになって、「虫さんいるね。」とか言って、周辺の生き物についても、学びながら、取り組んでいる。
保護者の方には、食育とかを難しく伝えるのではなく、手軽にできるレシピを伝えていきたいと思っている。

(神戸大学大学院農学研究科 大山氏)
今回の議論では、高校生の食育について具体的な話がなかったが、会場で経験のある方がいれば。

(会場の参加者)
私は、最近まで高校生相手の食育をしていた。農業高校に来ている農家の子どもでも農業を知らないことが多い。自分で育てた物がいかに美味しいかということを教えることが大事と思う。卵から鶏を育て、親鶏になったら、絞めて解体して、料理して食べるという授業をしていた。嫌がる子がいたが、案外、女子は強い。ある時、小中学校の先生から、残酷だと言われた。その人たちに、私は、あなたたちは卑怯だと言った。誰かが解体処理してくれるから、肉を食べられるのであって、それを避けようとするのは良くないと。
高校生は食が乱れて、キレる行動を取らないように農業体験をさせたいが、時間がない。いかに工夫して時間を作るかと悩んでいる。

(会場の参加者)
私は教育関係OBだが、学校教員も働き方改革で言われているとおり、相当忙しい。農業体験の授業は、ボランティアの活動、地域が支えないと成り立たないと思う。学校にお願いするだけでは食農教育が進まないと思う。これからボランティアに取り組もうと勉強中である。

((株)野木源 野木 氏)
3年生で野菜を勉強して、5年生で水稲の栽培をやる。そこをつなげた勉強をすることが大切である。そこを埋めるように私は努力している。農家もお金のために農業をやっている。ただで教育に時間を割くというのは厳しい。高額でなくても、報酬は必要である。子どもたちも費用がかかることを学ぶことは大切である。

(神戸大学大学院農学研究科 大山氏)
本日の議論をまとめる。農業体験は子どもたちを健康な食生活にするのに有効であって、それぞれの年代に応じた食育の取組があり、それを年代別につないでいくことが大事。年代別では特に幼児期の食育が効果的。ということで整理したい。また、食育の推進は、教育者、農業者、ボランティアなど多くの方が関わっているので、それらの方のネットワーク作りが大切だと思った。ポータルサイトで関係者が情報共有できる仕組みも有効であると思うし、このシンポジウムの場も一つのネットワークになると思う。本日、会場に来ていただいた皆様も、良い機会なので、今後、交流していただければと思う。 

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