水を守る、未来を育てる。― 高島ビオ・オーガニック協議会の挑戦 ―
滋賀県高島市|高島ビオ・オーガニック協議会
琵琶湖の水源地の一つとして知られる滋賀県高島市。この地域は、琵琶湖へと流れ込む水の約3分の1を支える重要なエリアです。 しかし近年、気候変動や農業の持続性といった課題が顕在化し、「この豊かな自然を次世代へどう引き継いでいくか」が地域全体のテーマとなってきました。
その中で立ち上がったのが「高島ビオ・オーガニック協議会」(以下「協議会」という。)です。 農家や企業、加工業者、専門家が連携し、環境に配慮した農業や地域資源の活用を通じて、持続可能な地域づくりを目指しています。この取り組みの根底にあるのは、「水を守る農業こそが地域の未来を守る」という確かな信念です。

理事の福山さん(左)、代表理事の横井さん(中)、理事の中須さん(右)
副理事は「みのり農園」の高橋さん
協議会の取組は、「高島ローズ」、「オーガニック農業」、「ジビエ循環モデル」という3つの柱で構成されています。
まず初めに象徴的存在となるのが「高島ローズ」。
高島の冷涼な気候はバラ栽培に適しており、食用や美容、観光など多方面で活用できる高付加価値作物として注目されています。見た目の美しさだけでなく、「環境に優しい農業の象徴」としての役割も担っています。
そして次に3つの柱の基盤となるのが「オーガニック農業」。
農薬や化学肥料に頼らない農業は、水源地域である高島にとって極めて重要な取り組みです。同時に、安心・安全な食としてのブランド価値も生み出します。
最後は「ジビエ循環モデル」。
増加する野生鳥獣による農業被害は、多くの地域の悩みです。これを単なる問題として捉えるのではなく、捕獲した資源を食品として有効活用し、地域経済に還元する“循環型の仕組み”へと転換しています。
この3つの柱はそれぞれ独立した取り組みではなく環境・経済・地域循環をつなぐ、ひとつの大きな物語を形成しています。
少しずつ動き出した、地域連携の輪
協議会の活動は、すでに具体的な成果を生み始めています。まずは高島ローズ(食用バラ)の試験栽培やジャムなどの試作品開発プロジェクトが進められ、栽培・生産から商品化へ向けた動きが加速しています。さらに、料理人や専門家との連携により、バラの新たな活用法も模索しています。
また、勉強会や情報共有の場を通じて、地域内外の関係者とのネットワークづくりも進行中。
小さな実証からスタートし、着実に歩みを進めている段階です。

高島ローズの圃場
(写真提供:高島ビオ・オーガニック協議会)

高島市長への報告会に参加した役員一同
(写真提供:高島ビオ・オーガニック協議会)
多様なメンバーが支える”共創のかたち”
この協議会の特徴は、多様な主体が関わる「共創型」の組織である点です。
生産者、加工業者、流通事業者に加え、酒蔵やデザイナー、料理人といった異業種のプレイヤーも参画。
さらに行政や森林組合などにも相談し、地域全体で取り組む体制を目指しています。
高島ローズは、「つくる・加工する・伝える・売る」までを一体で考える。 それがこのプロジェクトの大きな強みです。
行政は”支える側”として伴走
高島市もこの取り組みに対し、協議会と連携しながら支援を検討しています。ただし、主体はあくまで民間。
行政は制度支援として関わり、プロジェクトの推進を応援する立場です。
こうした「民間主導+行政支援型」の体制は、スピードと柔軟性を兼ね備えた新しい地域づくりのモデルともいえます。

満開の高島ローズ
(写真提供:高島ビオ・オーガニック協議会)

摘み取られた色とりどりのバラ
(写真提供:高島ビオ・オーガニック協議会)
目指すのは”ブランド”としての地域
このプロジェクトは単なる農業振興にとどまりません。
目標のひとつに掲げられているのが、食用バラの大規模生産(2030年に10万株規模)と、それを核とした地域ブランドの確立です。バラを使った食品や化粧品、観光資源としての展開、さらには体験型プログラムなど、多様な事業化が構想されています。
「農産物」ではなく「高島地域そのもの」をブランドとして育てていく取り組みとなります。
更には2027年に開催される国際園芸博覧会への出展を視野に入れ、地域資源を活かした取組の発信に向けた準備を進めています。
ひろがる連携とこれからの可能性
すでに高級ホテルのシェフなど、外部とのコラボレーションも予定しており、今後は企業や教育機関との連携拡大も計画中です。
環境教育や食育の分野でも活用されることで、次世代への価値継承にも繋げていくことが期待できます。
協議会の取組は、今まさに新たな成長段階へと歩みを進めています。
立上げ当初、わずか4戸の農家からスタートした食用バラの栽培は、その可能性と共感の広がりとともに着実に拡大し、来年には24戸へと増加する見込みです。

講習会の様子
(写真提供:高島ビオ・オーガニック協議会)

新鮮なバラを使ったローズサラダ
(写真提供:高島ビオ・オーガニック協議会)
未来へ広がる「高島ローズ」の可能性(将来展望)
協議会には、飲食業・菓子製造・酒造など、地域の魅力を発信する多彩な事業者が参画しています。
これらの事業と「高島ローズ」を掛け合わせることで、バラの持つ香り・彩り・物語性を最大限に引き出し、新たな商品や体験価値の創出が期待されています。
バラを使ったスイーツや加工品、地元の酒蔵と連携したローズリキュールや日本酒、さらにはレストランにおける特別な一皿など。それぞれの事業者が持つ強みと掛け合わせることで、「農産物」としての枠を超えたブランド価値が生まれます。この小さな一輪のバラから始まった挑戦は、地域の未来を描く大きなストーリーへと育ちつつあります。
お問合せ先
滋賀県拠点 地方参事官室TEL:077-522-4261




