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近畿農政局

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自らの体験をきっかけに、有機農業へ込めた想い

滋賀県野洲市|中道農園 中道唯幸さん

中道唯幸さんは、野洲市で水稲の有機栽培に取り組まれています。有機栽培の経歴は長く、昭和58年頃にまず「減農薬栽培」への取組を始め、平成2年頃には当時の「特別栽培米制度」を活用し、平成9年から本格的に無農薬栽培に取り組み、試行錯誤の末、平成12年に有機JASの認証を取得されました。
滋賀県拠点では、令和3年7月15日に中道農園を訪れ、本年5月に決定された「みどりの食料システム戦略」が掲げる「耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100ha)に拡大」の目標への展望や課題などについて、意見交換を行いました

ご自身が作られた有機栽培米を手に持つ中道さん
ご自身が作られた有機栽培米を手に持つ中道さん 
           

意見交換の様子
意見交換会の様子

 

有機農業に取り組むこととなったきっかけ

中道さんが有機農業に取り組むこととなったきっかけは、農薬による健康被害をお父さんやご自身が経験され、このまま農薬に頼った農業を続けていれば、やがて命を落としてしまうのではないかという危機感から始められたそうです。
今でも、近くで農薬の散布があると、身体が感知し、体調に変化があるそうです。
           

完全無農薬・無肥料による自然栽培の様子
完全無農薬・無肥料による自然栽培の様子

 

有機栽培から更に踏み込んで

中道さんは、有機栽培から更に踏み込んで、完全無農薬・無肥料による自然栽培米に取り組んでいます。
有機栽培米の場合、10a当たり収量が360kg480kg程度となりますが、自然栽培米は施肥等を施用しないため、栽培1年目大幅に減収し、2年目には10a当たり収量は150kg程度まで減収します。
しかしながら、3年目には土壌が持っている本来の地力により、10a当たり収量は360kg程度まで回復するそうです。

            

初代の除草機で、チェーンを引き摺り除草するタイプ。田植機を自身でカスタマイズして製作したもの。材料はホームセンターで調達し、かなり簡単な構造ではあるが、効果は絶大であったとのこと。思い立って、一気に(1日で)作り上げたそうです。

初代の除草機で、チェーンを引き摺り除草するタイプ。田植機を自身でカスタマイズして製作したもの。材料はホームセンターで調達し、かなり簡単な構造ではあるが、効果は絶大であったとのこと。思い立って、一気に(1日で)作り上げたそうです。

 

雑草との闘い

有機栽培の取組では、化学肥料等を使用しないため、当然ながら除草剤も使用しません
このため、有機栽培や自然栽培では雑草対策が大きなカギとなります。有機栽培等では、除草剤の代わりにアイガモによる除草(アイガモ農法)や人力による除草が行われますが、膨大な労力が必要となるため、最大の課題となっていました。中道さんは、これらに代わって田植機を自身でカスタマイズしたオリジナルの除草機を活用し、除草作業の効率化を図っていましたが、最新式の除草機開発、市販され、現在ではこの除草機を導入しています。価格は少し高いですが、この除草機を導入することで、除草作業の効率化、省力化が図られているということでした。
     
   

最新式(3代目)の除草機。価格は高いが高効率、省力化が図られているとのこと。
最新式(3代目)の除草機。価格は高いが高効率、省力化が図られているとのこと。

 

環境に配慮し様々な資材を利用

有機農業では、化学農薬や化学肥料を使用しません。このため、それらに代わる資材を工夫して活用しなければなりません。
中道さんは、水稲の病害等の殺菌剤の代わりにお酢(酢酸)を希釈して使っています。
水稲の作付面積が32haと大きいため、使用するお酢の量も大容量となっています。その貯蔵用のタンクが右下の写真ですが、大きなタンクに入ったお酢を初めて見ました。
また、有機栽培ということもあり、お酢に添加物が含まれているといけないので、お酢選びにも余念がありません。
 
           

殺菌剤の代わりとしてお酢(酢酸)を殺菌剤の代わりとしてお酢(酢酸)を使用しますが、作付面積が大きいため、使用する量も大容量です。
殺菌剤の代わりとしてお酢(酢酸)を使用しますが、作付面積が大きいため、使用する量も大容量です。

 

当初は効率を求め大規模化を目指す

中道さんは、有機農業に取り組まれるまでは、水稲生産のコスト削減や収益増を目指して経営面積の拡大を図ってきました。
特に海外からの輸入農産物が増える中、外国産に競り勝つには、規模拡大によるコスト削減が必要と考え、日本国内で競争力のある産地として、研修で訪れたことのある北海道が頭に浮かび、農業経営のあちこちに北海道のスタイルを取り入れています。
その代表的なものとして、農機具や資材を収納する倉庫は、北海道の倉庫をモチーフにして建てられました。
ご自宅の近くにかん水用の井戸を掘られた際も、電気ポンプを使うのではなく、環境に優しい風力による水揚げポンプを導入されています。
このポンプは、アメリカに視察で訪れた際、現地から持って帰ってきたものだそうです。
今では、中道農園の農地の目印になっており、奥に見える集落まで、中道農園が管理する農地となっています。
 
           

北海道の農用建物をモチーフに整備された倉庫等
北海道の農用建物をモチーフに整備された倉庫等

 

農林水産省が令和3年5月に公表した「みどりの食料システム戦略」の1つとして、有機農業の拡大が掲げられていますが、中道さんの今後の取組にも期待しています。            

ノースダコタの農場をモチーフに風力を利用したかんがい用井戸。中道農園の目印にもなっています。
ノースダコタの農場をモチーフに風力を利用したかんがい用井戸。中道農園の目印にもなっています。

お問合せ先

滋賀県拠点 地方参事官室
TEL:077-522-4261