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近畿農政局

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北海道大学和歌山研究林「地域創り 自分づくり」の取組

― 学生と地域の交流から育まれた宝物 ―
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(研究林本館)      

  
北海道大学和歌山研究林の看板           

  和歌山県古座川町平井に北海道大学の研究林があります。
  北海道大学が所有する7か所の研究林のうち、唯一の道外の施設です。

  正式名称は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション南管理部和歌山研究林。
  七川村(当時)の誘致により1925年に創設され、2025年で100周年を迎え本館は国の登録有形文化財にも指定されています。
  森林・林業の研究はもとより、その基盤である山間地域が抱える様々な課題を解決するため数々の学びの場を提供しています。
 

【平井集落】


hokudai_3.jpg (集落の棚田風景)





  平井は傾斜地特有の棚田が開かれ、自給する水稲や野菜を栽培して食を支えていました。
  農業用水は集落から3.2km先の谷川にある取水口から送り込まれており、この水路は住民の協働で守られてきました。
  平井の豊富な山林資源は、戦前から素材販売収入や山林作業従事者の雇用機会を生み出し、製炭業(備長炭)とともに地域に多くの富をもたらしました。
  1945年頃には農業用水の取水口近くに小水力発電所が設置され、電力会社からの供給を待たずして電灯が灯っていたとのこと。平井区民会館には映写機が備えられ、映画や芝居鑑賞も行われていたそうです。

  ところが1950年代半ばに入り、林業の機械化などで山林作業が減少したため、2軒の農家がユズの栽培を開始。
  1960年代半ばに木材の輸入が自由化され木材価格が下落。これを契機として、平井にユズの栽培が広まったことがユズの主産地となった経緯です。
  1950年頃は約500人が居住していましたが、現在は約60人(北大関係者含む)にまで減少し、平均年齢は78歳となっています。

【北海道大学の取組み】
  平井の住民と100年を共にしてきた北海道大学和歌山研究林。
  この歴史が培った住民との信頼関係があるからこそ、真に地域に入ることができるし、五感で人・自然・文化を感じ取る学びができる。
  どのようにすれば地域の信頼を得られるのか。
  限界集落ともいえるこの地域で何を感じ、行動するのか。
  その経験は彼らの後の人生にとって宝となります。


<フレッシュマンセミナー>


来林者のお知らせ告知


      2026年3月9日~13日の間、北海道大学の一般教育実習である『フレッシュマンセミナー「南紀熊野の里山と林業」』が実施されました。
      1回生、2回生を対象とした単位科目である本セミナーの模様を中心にレポートします。



    〇参加者
    単位科目実習生(1回生~2回生)18名、
    サークル「ワタリドリ」(2回生以上)5名
    現場指導教員10名
    〇目的
    林業と森林、それらと切り離せない山村社会。
    その魅力と、いま直面している問題について体験を通じて知ること。
    「山や森林、山村の未来はどうなるのか」ではなく、
    「自分はこの社会にどう関わるのか」という問いに、自分の言葉で応えられるようになること。


    hokudai_5.jpg(3月12日集落住民との集合写真)


    このセミナーを、自身のこれからを考える出発点にして欲しい。



    〇スタッフから学生へのメッセージ
    実習を通じて大きく成長することを願い、スタッフは本気でサポートします。
    学生さんは、本気で学び、本気で考え、本気で向き合ってください。
    考え、議論すること。自分で考え、仲間と議論することが重要です。
    体験には全力で取り組んで下さい。
    現場での作業には真剣に向き合ってください。
    事故がないように集中し、声を掛け合うこと。

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    (ぜんざい懇親会で集落住民と語り合う)


    <地域の課題と研究林の貢献>
    研究林長は、「地域に入り住民と心を通わせるためには[ほぐし]が重要となります。[ほぐし]とは、地域を思う本気度を示し、信頼関係を構築する行動のことです」と熱く語られていたのが印象的でした。

    (1)高齢化と人口減少、独居世帯の増加への対応

    定期的に学生が研究林に来訪することにより、現役世代が地区内に常在化している。
    教職員及び家族の移住による人口および若者の在住者維持
    2024年度から数年ぶりに子ども2名が在住(5歳の双子)
    学生が住民の困りごとを聞き出し対応(鶏舎修繕、鳥獣防止柵の設置など)
    独居高齢者とのコミュニケーション(孤独感からの開放と困りごとの解決)


    hokudai_7.jpg(鶏小屋)


    hokudai_8.jpg(獣害防止柵)

    (2)空き家への対応


    hokudai_9.jpg(学生の宿舎となった家屋)




    劣化放置されている空き家所有者(貸手)との信頼。
    劣化の著しい家屋は景観保全や安全面から所有者と相談の上、解体処分をしています。
    利用可能な家屋は片付けや床の張替えなどの修繕をし、学生の宿舎として活用・管理
    平井区民館の壁面や里道にある階段手摺など共有設備の再塗装等、簡易的な補修


    (3)用排水路の荒廃への対応
           [研究林の貢献]

    hokudai_10.jpg(埋没した水路の掘り起こし)



    平井内の水田や水路のある景観は、訪れる者の癒しに大きく貢献しており、重要な資源と言えます。
      一方、地区内の稲作農家は実質2戸のみであり、受益者による水路の維持管理は限界を超え研究林の手助けが必要となっています。
    hokudai_15.png写真右側(作業1)写真左側(作業2)

    hokudai_13.jpg(耕作放棄地の除草) 

    hokudai_14.jpg(ユズの剪定)


    水稲の不作付け地に対し、景観の保持および耕地の維持の観点から草刈を行っています。
    景観保持に重要な集落の中心部にあるユズ畑が生産者の高齢化により耕作放棄されることになり、研究林が肥培管理(剪定、除草、収穫等の一連の作業)を行っています。

    <本カリキュラムの成果>
    地域の信頼を得て共に課題を解決する。地域の助け合い文化を肌で感じる学びの場となっています。
    (参加した学生の声)
    これまでボランティアには全く興味がなかった。平井に入って縁もゆかりもない我々学生に温かく接してくれる住民、自然の中で生きる厳しさと生き抜く知恵を知り、自分の価値観が変わった。
    北海道大学では、地域活動を行うサークルが集まって「地域交流祭」を開催している。
    ここで、平井サークルを紹介して、仲間を増やすことにより平井の関係人口を増やしていきたい。


    【信頼関係が生み出したお手柄】
      令和8年3月15日午後2時半ごろ、和歌山県古座川町平井地区の民家で火災が発生。
    住宅35m2が全焼し、近隣の山林約300m2も焼けた。
      この際、異臭を感じた北海道大学の学生たちが屋内に取り残された高齢男性を救出するとともに近隣住民の避難誘導を行った。
      ボランティアグループ「ワタリドリ」メンバーの同地域における活動中のお手柄。
    (2026年3月18日北海道新聞(16版)27面記事より抜粋)



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    近畿農政局和歌山県拠点

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