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東北農政局

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青森地域からの便り(令和4年度)


青森の「農山漁村の季節の風物詩」、「農産物直売所、農漁家民宿等の取組」、「村おこしイベント」、「農山漁村の行事、お祭り」、「郷土料理」など東北各地域の取組や様子などを紹介します。

マタギ文化が活きる「白神ジビエ」 -青森県・西目屋村-(2023年1月20日掲載)

西目屋村は、津軽地域の南西部に位置し、広大で原生的なブナ林からなる世界自然遺産白神山地、白神の自然を湖面に映す津軽白神湖(津軽ダム)を有する青森県一人口の少ない村です。主な産業は、豊饒な土地や水を活かした農業、魅力的な自然を活かした観光業などで、「悠久の森 源流の里」をキャッチフレーズに、自然と共生する村づくりを進めています。
 
村は、三方を山に囲まれるという地形から、古来より、クマやサルなどによる農作物の食害等に見舞われてきた中で、鳥獣を狩猟する者があらわれ、“山からの授かりもの”として、捕えた鳥獣を食し、皮革等を日用品に加工するなどの「マタギ文化」が生まれ、これが代々継承されてきました。
 
このような中、2004年に世界自然遺産白神山地が鳥獣保護地区に指定され、全域が狩猟禁止となったため、狩猟者は減少し、これまで育まれてきた「マタギ文化」は衰退することとなりました。そのため、鳥獣は増加し、特にクマによる農産物の食害や、居住地区での目撃が増えたため、人的被害の防止対策としての捕獲が行われてきたものの、食肉としては有効活用されてきませんでした。
 
そこで村は2021年から、捕獲したクマを利活用する新しいビジネスチャンスとした「白神源流・マタギ文化伝承プロジェクト」をスタート。村内に、捕獲後の野生鳥獣を速やかに解体処理して食用加工するための施設「ジビエ工房白神」を整備して、クマ肉は「白神ジビエ」としてメニュー開発し、観光施設で提供されるなど、村に観光客を呼び込むアイテムとして名物の一つになっています。
 
2022年、村は農地の保全や村の維持・発展に寄与する一端を担いながら、農作物の鳥獣被害対策や捕獲した鳥獣のジビエを活用した観光振興などを担う地域おこし協力隊員を募集し、弘前市出身の山形祐介さんが着任しました。山形さんは、狩猟に携わった活動がしたいと、2022年10月に第一種銃猟免許・わな猟免許を取得し、今後は捕獲作業にも従事する予定で、若い世代へのマタギ文化の承継も期待されています。
 
マタギ文化が息づく西目屋村。そこは、自然との共生と山への深い感謝にあふれています。
 
 

  • 白神ジビエ料理提供:ブナの里白神館、道の駅津軽白神ビーチにしめや
  • お問合せ先:西目屋村役場 産業課
  • 住所:青森県中津軽郡西目屋村大字田代字神田57
  • 電話:0172-85-2801

(情報収集)青森県拠点  電話:017-775-2151

マタギ文化が活きる「白神ジビエ」

ジビエ工房白神前にて
ジビエ工房白神前にて(左から役場産業課 三浦主事、協力隊 山形さん)

クマ捕獲檻(箱ワナ)を設置する山形さん
クマ捕獲檻(箱ワナ)を設置する山形さん

ジビエ工房白神でのクマ解体の様子
ジビエ工房白神でのクマ解体の様子

熊御膳とクマ丼(左下)
熊御膳とクマ丼(左下)

(写真:西目屋村役場 提供)

地中に秘めたパワーを蓄える「赤キクイモ」 -青森県・五所川原市-(2022年10月20日掲載)

初秋、3メートル近くになる草丈の先に、菊に似た可憐な黄色い花を咲かせる「赤キクイモ」。キク科ヒマワリ属の多年草で、日本在来の野生種が由来。数年前に品種登録されたことを受け、2020年7月に有志が集い、五所川原赤キクイモ生産者協議会(以下、「協議会」)を設立しました。五所川原市内の農地で栽培し、新たな特産(地域ブランド)化を目指しています。
 
「赤キクイモ」は、毎年5月頃に植え付けすると、草丈はあっという間に人の背丈を超し、9月下旬頃に開花。その間、地中の根菜は栄養分を蓄え続け、11月に収穫期を迎えます。掘り起こされたイモの表皮が、見るも鮮やかな赤色をしていることから「赤キクイモ」と呼ばれています。
 
この「赤キクイモ」。弘前大学などの研究発表によると、水溶性植物繊維イヌリンや植物色素成分アントシアニン等が豊富に含まれているとのこと。このイヌリンは、腸内環境を整える効果や、糖尿病などさまざまな生活習慣病の原因となる血糖値の上昇を抑える効果があると言われています。また、イモの部分だけでなく、葉や茎の部分にもイヌリン等が含まれていることがわかりました。さらには、「イモ」と呼称されているにも関わらず、デンプンをほとんど含まない低カロリーな野菜としても注目されています。
 
協議会では、生芋での販売は行わず、パウダー(粉末)状に加工し、五所川原産「赤~い喜久芋パウダー」との商標登録名で販売しています。パウダーは、お茶やコーヒー、お味噌汁に加えるとコクが増し、サラダや天ぷら、お菓子等に加えると、手軽にたくさんのイヌリンを摂取することができるとのこと。副会長の川口哲氏は「化学肥料や農薬を使用しないこだわりの栽培方法で作っている「赤キクイモ」を、是非、試していただきたい。これからも、栽培管理、加工や販路等に関する課題をひとつずつクリアして、五所川原市の「赤~いりんご」に並び立つ特産品になるよう努力していきます。」と力強く話していました。
 
「赤~い喜久芋パウダー」は、五所川原市の名所、太宰治記念館「斜陽館」、金木観光物産館「産直メロス」、RABオンラインショップ等で購入することができます。

 

  • お問合せ先:五所川原赤キクイモ生産者協議会
  • 住所:五所川原市字金木町蒔田桑元78
  • 電話:0173-52-2874
  • WEBページ:https://aka-i-kikuimo.com[外部リンク]

(情報収集)青森県拠点  電話:017-775-2151

地中に秘めたパワーを蓄える「赤キクイモ」

菊に似た可憐な黄色い花
菊に似た可憐な黄色い花

草丈は2~3mに成長 岩木山をバックに
草丈は2~3メートルに成長
岩木山をバックに

収穫したキクイモ
収穫したキクイモは鮮やかな赤色

五所川原赤キクイモ生産者協議会のみなさんと「赤~い喜久芋パウダー」
五所川原赤キクイモ生産者協議会のみなさんと「赤~い喜久芋パウダー」

(写真:五所川原赤キクイモ生産者協議会 提供)

次世代に継ぐ八戸市の夏の風物詩~糠塚きゅうり~ -青森県・八戸市-(2022年7月20日掲載)

皆さんの地元の「伝統野菜」にはどんなものがあるか知っていますか?
ここ八戸市には、江戸時代から地元で愛され続ける伝統野菜「糠塚きゅうり」があります。
見かけはずんぐりでも、涼しげな翡翠色の果肉はシャキシャキと食感も良く、ほんのり苦みのある味わいが特徴の糠塚きゅうりは、藩政時代に参勤交代の途中で種を持ち帰り、野菜の生産が盛んであった糠塚地区で栽培が始められたと伝えられています。
昭和30年代頃まで、八戸できゅうりといえば糠塚きゅうりを指すほどの身近な野菜でしたが、白イボ系細身きゅうりの登場により、病弱で栽培が難しい、収穫量(本数)も少ないとの理由から、徐々に店頭から姿を消していったそうです。
 
半世紀にわたり身を潜めていた糠塚きゅうりが、再び表舞台に立つ時がやってきました。八戸市が、糠塚地区に住む金濱さんの手によって純粋な系統が長年守り継がれていることを知ったのです。八戸市は、金濱さんから種子を譲り受け、糠塚きゅうりを歴史ある食の文化財として後世に継承するため、平成26年「八戸伝統野菜糠塚きゅうり生産伝承会」を設立しました。伝承会のメンバーは、種子を次世代に引き継ぐだけでなく、食材に季節を想い、愛でることを楽しみにしている消費者の笑顔のために、手間暇を惜しまず、他品種との交雑に細心の注意を払いながら栽培しています。
収穫期になると長さ約20センチメートル、太さ直径約5センチメートル、重さ約500グラムとずんぐりとした形となる糠塚きゅうり。その表皮は、成熟の始めは薄緑色で、完熟するにつれ黄色から金褐色へと変化してきます。種をくり抜き、皮を剥いて現れる翡翠色の涼しげな果肉は味噌をつけていただくのがオススメです!表皮が薄緑色のものは、昔懐かしいシャキシャキ食感でほんのり苦みがあり、熟してくると柔らかな食感で苦みもマイルドになるのも特徴のひとつ。旬の時期にしか味わえない「糠塚きゅうり」を味わい尽くしたい方は、是非食べ比べてみてください。
 
昨年は、「糠塚きゅうりをつかった子ども料理教室」が開催され、参加した子ども達は給食風じゃじゃ麺や漬け物等の調理に挑戦し、特有のほろ苦さを経験しました。大人になった後も、糠塚きゅうりを愛し続けてくれるよう、次世代へ継ぐ取組みが進められています。また、今年は「八戸夏やさいマルシェ22」において、「糠塚きゅうり」の新レシピ料理が振る舞われるなど、八戸市の夏の風物詩と言わしめるまでの復活を果たしています。
残念なことに、日持ちがしない糠塚きゅうりは、生産量のほとんどが八戸市内で消費されるので、夏に八戸市を訪れた際は、小売店等の野菜売り場を覗いてみることをお勧めします。見つけたときは「翡翠色のシャキシャキ食感」を味わってみてはいかがでしょうか。

 

  • お問合せ先:八戸市農業経営振興センター 経営支援グループ・生産振興グループ
  • 住所:青森県八戸市尻内町毛合清水29
  • 電話:0178-27-9163

(情報収集)青森県拠点  電話:017-775-2151

次世代に継ぐ八戸市の夏の風物詩~糠塚きゅうり~

生育初期の糠塚きゅうり
生育初期の糠塚きゅうり

収穫時期を迎えた糠塚きゅうり
収穫時期を迎えた糠塚きゅうり

糠塚きゅうり収穫の様子
糠塚きゅうり収穫の様子
(生産者 水野 浩司さん)

子ども達が作った給食風じゃじゃ麺
子ども達が作った給食風じゃじゃ麺

(写真(左から)1、2枚目:青森県拠点職員 撮影  3、4枚目:八戸市農業経営振興センター 提供)