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東北農政局

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福島地域からの便り(令和4年度)


福島の「農山漁村の季節の風物詩」、「農産物直売所、農漁家民宿等の取組」、「村おこしイベント」、「農山漁村の行事、お祭り」、「郷土料理」など東北各地域の取組や様子などを紹介します。

これがないと正月じゃない! いかにんじん -福島県・国見町-(2023年1月5日掲載)

「いかにんじん」は、福島県の北部、主に福島市や伊達地方の各家庭で冬場の保存食として広く作られ、正月など冬の食卓には欠かすことのできない福島県の郷土食です。一般的な作り方は千切りにしたにんじんとスルメイカを、しょうゆベースの調味液に漬け込むだけのシンプルなものですが、一口食べれば歯切れのいいにんじんとかむほどに味の出るスルメイカの風味が口いっぱいに広がります。また、にんじんの種類、材料の切り方、味付けなどに各家庭のこだわりや特徴がみられ、家庭の数だけ違う味があると言っても言い過ぎではありません。最近は、食生活の変化等もあり市販品をいつでも気軽に購入して食べることができるようになりました。
 
さて、「いかにんじん」は松前漬と似ていると言われますが、その発祥については、「江戸時代末期に行われた松前藩(北海道松前市)と梁川藩(福島県伊達市)との国替えによるものである」との説があるほか、「当時高価だったにんじんを無駄なく使うため、にんじんの両端などをスルメイカと一緒に醤油に漬けて冬の保存食にした」など諸説あります。
 
このシンプルな料理のメインは何と言ってもにんじんですが、冬に収穫する「長にんじん」を使うと食感と香りがより一層良くなり、おいしさが増すと言われています。福島県の北部の国見町川内地区で50年近く長にんじんを栽培している鈴木耕治さんは「12月上旬から長にんじんの収穫作業に入ります。畑は阿武隈川の近くにあり、栄養分が豊富で柔らかく、水はけもよいので、1メートル近くまで成長する長にんじんを栽培するには最適の場所です。収穫作業は折れたり傷ついたりしないよう慎重に行います。今年も香りや甘みが強くシャキシャキ感のある長にんじんができました。」と笑顔で話されました。なお、鈴木さんが栽培した長にんじんやごぼうは、同じ町内の「道の駅国見あつかしの郷」で求めることができます。
 
最近はテレビで取り上げられたり、いかにんじん風味のポテトチップスが販売されたりと、広く知られるようになった「いかにんじん」。みなさんも材料や味付けに工夫して「マイいかにんじん」を作ってみてはいかがでしょうか。福島県のトップブランド米「福、笑い」のごはんのおかずに、全国新酒鑑評会で金賞受賞数9回連続日本一の福島のお酒のお供に是非どうぞ。

 


(情報収集)福島県拠点  電話:024-534-4142

これがないと正月じゃない! いかにんじん

色鮮やかな「いかにんじん」
色鮮やかな「いかにんじん」。ごはんやお酒との相性ばっちり。

長にんじんの収穫は、細長いスコップを使って慎重に行います。
長にんじんの収穫は、細長いスコップを使って慎重に行います。

収穫された長にんじん。
収穫された長にんじん。

長にんじんを生産する鈴木さん。
長にんじんを生産する鈴木さん。
(写真:福島県拠点職員 撮影

多様なライフスタイルに支持される市民農園 -福島県・下郷町-  (2022年10月5日掲載)

ドイツ語で「小さな庭」を意味する、滞在型の市民農園「クラインガルテン」。会津地方の南に位置する、下郷町の「クラインガルテン下郷」は平成22年にオープンし、今年で13年目を迎えました。施設は30区画あり、1区画200平方メートルの畑で利用者は農作業を楽しみ、畑に隣接するラウベ(台所、居間、トイレ、浴室完備のコテージ型休憩施設)には、長期滞在も可能です。常駐の管理人が、滞在生活をサポートし、農機具の貸し出しもしてくれます。野菜栽培が初めての人でも、町内のベテラン農家の方に農業指導員として手取り足取り指導してもらえるので安心です。

テレワークの普及や、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、二地域居住というライフスタイルが支持され、満員御礼で空き待ちが出るほどの人気です。30名の利用者には、近隣市町村の他にも首都圏等の都市部から足を運ぶ方もいます。1年ごとの貸し出し(1~3月まで冬季閉鎖)ですが、最長5年間まで利用できることから複数年利用されるリピーターもいます。田植体験、稲刈り体験、町のお祭りへの参加などの毎月開催されるイベントを通じて利用者同士や地域住民との交流も生まれています。クラインガルテン下郷を拠点に会津地域をゆっくりと観光される方、町内の農家のお手伝いや棚田オーナーへの参加など町のファンとして活動される方もいらっしゃり、クライガルテン下郷が農業や農村の理解促進、交流人口の創出の一翼を担っています。

主に週末滞在をしている利用5年目のMさんにお話を伺ったところ、野菜作りの喜びと難しさを語ってくれました。「野菜は天候による影響や、小動物やカラス等による被害などで毎年同じように出来るわけではなく、常に自然と向き合う必要があり、対策や栽培方法などを農業指導員に相談しながら進めています。」とのこと。年間50種類ほどの野菜を育て、ご家族で収穫を楽しみ、様々な料理に活用されているそうです。

市村春絵さんは、昔から会津が好きだったことから、今年1月までの3年間、町の地域おこし協力隊としてクラインガルテン下郷の運営に従事しました。地域おこし協力隊卒業後、新規就農に向け研修を受けている現在も、クラインガルテン下郷で飼育する羊の世話や、各種イベントのお手伝いなど、クラインガルテン下郷のサポート活動を続けています。

クラインガルテン下郷を通じて、都市と農村の交流推進や地域活性化が期待されます。

 


(情報収集)福島県拠点  電話:024-534-4142

多様なライフスタイルに支持される市民農園

農地の様子
 200平方メートルの農地、様々な野菜の収穫が楽しみです。

管理棟
 管理棟では農機具が貸出し可能です。
 毎月、交流イベントが開催されます。

ピザ釜
 ピザ釜も自由に利用できます。

市村さんと羊
 クラインガルテン下郷のサポートを続ける市村さんと羊たち。
(写真:福島県拠点職員 撮影

有機農業と福祉をつなぐ農福連携 -福島県・郡山市-  (2022年7月5日掲載)

一般社団法人「空(くう)」(以下「空」という。)が運営する「土水空(どみそら)ファーム」と「有限会社ハッピーファーム」は、共に協力し福祉事業を主体とした農福連携に取り組んでいます。

「空」の代表理事で「土水空ファーム」の青空相談役である熊田芳江さんは、泉崎村の社会福祉法人こころんで施設長を務め、引退後の現在は郡山市を拠点に福祉活動に取り組んでいます。同じく「空」が運営する「土水空ファーム」施設長の今村直美さんは、千葉県で農福連携を進める法人で農業指導を行った経験があり、その時から農福連携の先駆けで全国的に注目を集めていた熊田さんのこともご存じだったとのこと。そんななか、今村さんが地域おこし協力隊として福島県矢吹町に移住したことをきっかけに一緒に活動されるようになりました。
そして今年5月に、郡山市で有機農業を営む有限会社ハッピーファームの安田潤一さんが所有する農地の一部を借り受け、「土水空ファーム」を開設しました。「土水空ファーム」では、もともと有機農業を主とした農福連携への取り組みを希望していたため、安田さんの農地提供に感謝しておられました。
なぜ、有機農業なのかと問うたところ、「機械化が進む大規模農家との連携では、障がい者ができる作業は限られてしまう。しかし、有機農業であれば、機械に頼る部分が少なく、草刈り、肥料散布や病虫害の駆除など、手間のかかる作業が多いことから、障がい者一人一人の個性に合った作業が見つけやすい」とのこと。また、「農作業を通じて少しずつ症状が回復し元気になっていく方をたくさん見てきたので、今後も後押ししていきたい」とお話しされました。

現在、お三方はCSAにも取り組んでおり、「あさかのCSA」で郡山市と須賀川市を中心に有機農産物を集めて販売する活動をしています。
CSAとは生産者と消費者が連携し、1年あるいは半年といった単位での前払いによる農産物の契約を通じて相互に支え合う仕組みです。前払いには、天候不順による不作のリスクを消費者と生産者が共有することを意味しています。
あさかのCSAは、前払いによる定期購入に加えて、会員が必要とするときに1回限りの購入もできる、利用しやすいスタイルが取られています。事前に申込をすると、隔週木曜日に両市にある4か所の受け取りステーションに野菜セットが届きますので、指定日にステーションでの受け取りが可能な方は、あさかのCSAで地域の生産者の新鮮な有機野菜をぜひ注文してみてはいかがでしょうか。

 

  • 問合せ先1:一般社団法人 空
    • 住所:〒963-0205 福島県郡山市堤3丁目191 ウエストステージB-106
    • 電話:090-6253-5190
  • 問合せ先2:有限会社ハッピーファーム


(情報収集)福島県拠点  電話:024-534-4142

有機農業と福祉をつなぐ農福連携

有限会社ハッピーファームの安田さんと一般社団法人「空」の熊田さんと今村さん
  障害福祉事業と有機農業の連携に取り組む、有限会社ハッピーファームの安田さん(左)、一般社団法人「空」の熊田さん(中央)と今村さん(右)

定植された有機ミニトマト
  5月の開所式に定植された有機ミニトマト

有機ぶどうと原木シイタケ
  有機ぶどうと原木シイタケ

有機野菜セットの一例
  あさかのCSAの利用者に届く有機野菜セットの一例
(写真(左から):1~3枚目 福島県拠点職員 撮影
(写真:4枚目 熊田芳江さん 提供)